
営業職の採用が難しいなか、今の人数で商談数を増やすよう求められていませんか。本記事では、AIエージェントが営業で担える業務と、自社に合うツールの選び方・導入手順を、国内企業の事例とあわせて解説します。
リスト作成や日報、CRMへの入力に追われ、肝心の商談に時間を割けない。営業マネージャーやDX推進担当の多くが、このジレンマを抱えているでしょう。
解決策の1つが、営業業務を自律的に進めるAIエージェントです。サイバーエージェントの一部門では、AIエージェント導入で事務工数を約50%削減し、1人あたりの月間商談数を最大30件まで増やしています。
一方で、目的を決めずに高額なツールを入れると、現場で使われず投資効果を説明できなくなります。競合が営業AIで商談数を伸ばすなか、手作業の営業を続ける差は年々広がるでしょう。
本記事では、営業プロセスごとにAIエージェントができることと、4つのタイプ別ツール、失敗しない導入ステップを中心に解説します。
読み終えれば、営業のどこをAIに任せ、どこを人が判断するかを線引きでき、稟議に出せる導入計画を描けるようになります。ぜひ最後までお読みください。
目次
営業AIエージェントとは?生成AIやSFAとの違い
営業AIエージェントは、営業の目標を与えると調査・判断・実行を自律的に繰り返すAIです。違いを押さえるべき観点は以下の3つです。
- 営業AIエージェントは営業業務を自律的に進めるAI
- 生成AIチャットとの違い
- SFA・CRMとの違い
ChatGPTやSFAとの違いを理解しておくと、社内説明で「今のツールと何が違うのか」と問われても答えられます。
営業AIエージェントは営業業務を自律的に進めるAI
営業AIエージェントは、人が1つずつ指示しなくても、複数の営業タスクを順に実行するAIです。
たとえば「製造業の新規見込み客と商談を作る」という目標を与えます。するとAIエージェントは、企業の調査、見込みの判定、メールの作成と送信、返信への対応、日程調整までを自ら進めます。
Microsoftも、Dynamics 365 Salesのエージェントを「リードを自律的に調査・判定し、メールを送る」ものと説明しています。
出典:AI agents in Dynamics 365 Sales(Microsoft Learn)
営業担当者の役割は、AIの結果を確認して商談に臨むことに変わります。作業の担い手ではなく、判断と顧客対応の担い手として時間を使えるようになるでしょう。
生成AIチャットとの違い
ChatGPTなどの生成AIチャットとの違いは、指示待ちか、自ら次の行動を決めるかです。
生成AIチャットは、「この企業向けの提案メールを書いて」と頼めば文章を返します。ただし、送信やCRMへの記録、返信が来た後の対応は人が行う必要があります。
営業AIエージェントは、CRMやメール、カレンダーと連携し、結果を見て次の行動を選びます。返信がなければ別の切り口で再送し、前向きな返信なら日程調整に進むといった動きです。
個人がChatGPTで文章を作る段階から、業務の流れごとAIに任せる段階へ進めるのがAIエージェントです。組織としての生産性向上を狙うなら、この違いが投資判断の軸になります。
SFA・CRMとの違い
SalesforceやHubSpotなどのSFA・CRMとの違いは、情報を管理する道具か、情報を使って動く担い手かです。
SFA・CRMは、顧客情報や商談の進捗を記録・可視化する仕組みです。入力も分析も、基本的には営業担当者やマネージャーが行います。
営業AIエージェントは、SFA・CRMのデータを読み込み、次の打ち手を提案したり、入力作業を代行したりします。SFA・CRMを置き換えるものではなく、その上で働くAIの同僚と捉えるとわかりやすいでしょう。
すでにSFA・CRMを使っている企業ほど、蓄積データを活かしてAIエージェントの効果を早く出せます。既存投資を無駄にせず、上乗せで成果を伸ばせる点は稟議でも説明しやすいはずです。
AIエージェントが営業でできること7選
AIエージェントが営業プロセスで担える業務は、以下の7つです。
- ターゲット企業のリストを作成できる
- 見込み顧客への初回アプローチを自動化できる
- 商談前の企業リサーチを任せられる
- 提案資料のたたき台を作成できる
- 商談の議事録を作りCRMへ入力できる
- 商談後のフォローと次の打ち手を提案できる
- 商談ロープレで営業担当者を育成できる
リスト作成から育成まで営業の流れに沿って並べているため、自社のボトルネックがどこにあるかを照らし合わせながら読んでみてください。
ターゲット企業のリストを作成できる
AIエージェントは、自社の理想顧客の条件に合う企業を探し、営業リストにまとめられます。
従来は、企業データベースを検索し、Webサイトを1社ずつ確認してExcelにまとめる作業が必要でした。担当者によって選定基準がぶれ、リストの質が安定しない点も課題です。
HubSpotのProspecting Agentは、資金調達や経営陣の交代、Webサイト訪問などの購買シグナルを監視し、理想の顧客像に合う企業を評価します。
出典:Prospecting Agent(HubSpot)
リスト作成をAIに任せれば、営業担当者は「どの企業に、なぜ今アプローチするのか」の判断に集中できます。
見込み顧客への初回アプローチを自動化できる
AIエージェントは、企業ごとに文面を変えたメールを送り、返信対応から日程調整まで進められます。
テンプレートの一斉送信は、相手企業の状況に触れないため返信率が上がりにくい手法です。かといって1社ずつ文面を考えると、送れる件数が限られます。
SalesforceのAgentforceセールスディベロップメントは、見込み客へのメール送信や質問・反論への対応を担います。商談が決まれば営業担当者に引き渡します。
出典:クラウド Watch
多数の見込み客に同時並行で対応できるため、インサイドセールスの人数を増やさずに接点を広げられます。
商談前の企業リサーチを任せられる
AIエージェントは、商談相手の事業内容やニュース、過去の取引履歴をまとめた事前資料を作成できます。
商談準備では、相手企業のWebサイトやIR資料、最新ニュース、CRMに残る過去のやり取りを確認する必要があります。1件あたり数十分かかることも珍しくありません。
Dynamics 365 SalesのSales Opportunity Agentは、商談を自律的に調査し、新たに生じたリスクや有望な案件を可視化します。複数の情報源を横断して要点だけ抜き出す作業は、AIエージェントが得意とする領域です。
準備時間が短くなれば、1日にこなせる商談数が増えます。浮いた時間で仮説を練れば、初回商談の質も上がるでしょう。
提案資料のたたき台を作成できる
AIエージェントは、顧客の課題と自社の過去提案をもとに、提案資料の初稿を作成できます。
提案資料をゼロから作ると、構成を考えるだけで時間がかかります。経験の浅い営業担当者ほど、何を盛り込むべきか迷い、手が止まりがちです。
AIエージェントに商談メモと類似業界の過去提案を読み込ませれば、「顧客の課題、解決策、期待効果、導入ステップ」の流れで下書きを出せます。営業担当者は、数値や表現の正確さを確認して仕上げるだけです。
資料作成の時間を減らしつつ、トップ営業の提案の型をチーム全体で再利用できるようになります。
商談の議事録を作りCRMへ入力できる
AIエージェントは、商談の録画や録音から議事録を作り、CRMの活動履歴へ反映できます。
CRMへの入力は後回しにされやすく、更新されないまま放置されることが多い業務です。入力が滞ると、マネージャーは案件の状況を把握できず、正確な売上予測も立てられません。
サイバーエージェントのAmebaLIFE事業本部では、Agentforceで商談録画の保存、議事録の生成、活動履歴への反映を自動化しています。
出典:サイバーエージェント、Salesforceの「Agentforce」を導入(Salesforce)
入力の手間がなくなれば、CRMのデータが自然と貯まり、組織の営業判断の精度も高まります。
商談後のフォローと次の打ち手を提案できる
AIエージェントは、商談内容から次にとるべき行動を提案し、フォローメールの文面まで用意できます。
商談後のフォローは、担当者の忙しさによって遅れたり抜けたりしやすい業務です。タイミングを逃すと、顧客の検討熱が下がり、失注につながります。
Dynamics 365 SalesのRecommended Actions Agentは、案件ごとに優先度の高い行動を提示します。サイバーエージェントの事例でも、ネクストアクションの提案やメール文面の作成をAIが担っています。
抜け漏れのないフォローが仕組みで回るため、担当者のスキル差による失注を減らせます。
商談ロープレで営業担当者を育成できる
AIエージェントは、顧客役になって商談ロープレの相手をし、改善点をフィードバックできます。
ロープレはマネージャーの時間を大きく使うため、十分な回数を確保できない組織が多いでしょう。指導内容もマネージャーによってばらつきます。
Salesforceは2025年10月に「Agentforce セールスコーチング」の日本語提供を始めました。AIが顧客への説明や反論への切り返しを再現し、商談履歴をもとに担当者ごとの指導内容を生成します。
出典:Agentforce セールスコーチング 発表(Salesforce)
新人が何度でも練習できる環境を作れれば、早期に戦力化でき、マネージャーは大型案件の支援に時間を回せます。
AIエージェントを営業に導入する3つのメリット
AIエージェントを営業に導入するメリットは、以下の3つです。
- 商談に使える時間を増やせる
- 営業ノウハウの属人化を解消できる
- データにもとづいて受注見込みを判断できる
稟議で導入効果を説明するときの軸として使ってください。
商談に使える時間を増やせる
最大のメリットは、事務作業をAIに任せ、商談に使える時間を増やせることです。
営業担当者の1日は、リスト作成、メール、日報、CRM入力などの事務に多くの時間を取られています。人を増やさずに成果を上げるには、事務の時間を商談に振り替えるのが近道です。
サイバーエージェントの事例では、事務工数を約50%削減し、1人あたり月間商談数が10〜15件から最大30件に増えました。
採用が難しい営業職でも、今のメンバーのまま商談数を伸ばす道筋を描けます。
営業ノウハウの属人化を解消できる
AIエージェントを使うと、トップ営業の勝ちパターンをチーム全体に広げられます。
成果が一部の担当者に偏る組織では、その人が異動や退職をすると売上が大きく落ちます。ノウハウが頭の中にあり、言語化されていないためです。
AIエージェントは、成約した商談の議事録や提案資料を学習材料として、全員に同じ水準の提案やフォローを促します。ジャロックでは、AIによる商談分析とレビューを社員育成に活用しています。
個人の経験に頼らない営業体制を作れれば、新人の立ち上がりも早くなり、組織の売上が安定します。
データにもとづいて受注見込みを判断できる
AIエージェントは、商談データを分析し、受注見込みの高い案件を客観的に示せます。
従来の案件管理では、受注確度を担当者の感覚で入力するケースが多く、売上予測がぶれる原因でした。楽観的な担当者と慎重な担当者で、同じ案件でも確度が変わります。
ジャロックでは、Agentforceで商談をスコア化し、受注・失注理由の分析にも活用しています。
出典:【Agentforce事例】AIが社員を育てる(Salesforce)
マネージャーは根拠のある数字で優先案件を判断でき、経営への売上報告の精度も上がります。
AIエージェントを営業で使うときの4つの注意点
AIエージェントを営業で使う際の注意点は、以下の4つです。
- 誤った情報を顧客に送るリスクがある
- 顧客情報の取り扱いにルールが必要になる
- CRMのデータが少ないと精度が出ない
- ランニングコストが継続的にかかる
注意点を知らずに導入すると、顧客の信頼を損ねたり、費用だけがかさんだりします。
誤った情報を顧客に送るリスクがある
AIエージェントは、事実と異なる内容をもっともらしく書くことがあります。
生成AIは、学習データや参照情報が古い、または不足している場合に誤った内容を出力します。相手企業の社名や役職、自社製品の価格を誤ったメールが届けば、信頼を一気に失います。
HubSpotのProspecting Agentも、送信前に下書きを確認・編集するモードと、確認なしで送るモードを選べる設計です。導入初期は、顧客に届く文面を必ず人が確認する運用にしましょう。
精度を確かめてから自動送信の範囲を広げれば、リスクを抑えつつ効率化を進められます。
顧客情報の取り扱いにルールが必要になる
営業AIエージェントは顧客の個人情報を扱うため、入力・保存・利用のルールを決めてから導入する必要があります。
名刺情報や商談内容には、担当者の氏名や連絡先などの個人情報が含まれます。サービスによっては、データが国外のサーバーで処理される場合もあります。
個人情報保護委員会は、生成AIサービスに個人情報を入力する際、利用目的の範囲内か十分に確認するよう注意喚起しています。
出典:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(個人情報保護委員会)
情報システム部門や法務と早めにルールを決めておけば、導入後に利用停止となる事態を防げます。
CRMのデータが少ないと精度が出ない
営業AIエージェントの精度は、参照するCRMデータの量と質に左右されます。
AIエージェントは、過去の商談履歴や顧客情報をもとに提案や判断を行います。CRMの入力が抜けていたり、表記がばらばらだったりすると、的外れな提案が増えます。
たとえば、失注理由が記録されていなければ、AIは受注確度を正しく判定できません。同じ企業が別名で重複登録されていると、フォローの抜けや重複送信も起こります。
導入前にデータの整備状況を確認しておくと、AIエージェントの効果が早く出ます。
ランニングコストが継続的にかかる
営業AIエージェントは、月額料金や利用量に応じた従量課金が継続的に発生します。
料金体系はツールごとに異なり、ユーザー数単位、会話数単位、リード数単位などさまざまです。たとえばHubSpotのProspecting Agentは、アプローチを推奨したリード1件ごとに1ドル分のクレジットを消費します。
利用量が増えるほど費用も増えるため、効果を測らずに使い続けると投資対効果を説明できなくなります。
導入前に削減できる工数や増える商談数を試算し、費用と比べておけば、経営層への説明もスムーズです。
営業AIエージェントの4つのタイプと代表ツール
営業AIエージェントは、提供形態によって以下の4タイプに分かれます。
| タイプ | 代表ツール | 向いている企業 |
|---|---|---|
| CRM搭載型 | Agentforce、HubSpot Breeze、Dynamics 365 Sales | 同じCRMをすでに使っている企業 |
| 業務アプリ連携型 | Microsoft 365 CopilotのSales agent | OutlookやTeamsで営業している企業 |
| 営業特化SaaS型 | アポドリ、Sales Marker、JAPAN AI SALES | 新規開拓など特定業務を強化したい企業 |
| 自社構築型 | Dify、n8n | 独自の営業フローに合わせたい企業 |
今使っているCRMや業務アプリによって最適なタイプが変わるため、自社の環境と照らし合わせて確認しましょう。
CRM搭載型のAIエージェント
CRM搭載型は、SalesforceやHubSpotなどのCRMに組み込まれたAIエージェントです。
CRM内の顧客データや商談履歴をそのまま参照できるため、データ連携の手間がかかりません。すでに同じCRMを使っている企業なら、最も導入しやすいタイプです。
代表例は以下のとおりです。
- Agentforce(Salesforce):見込み客対応のセールスディベロップメントや、ロープレを担うセールスコーチングを提供
- Breeze Prospecting Agent(HubSpot):購買シグナルをもとに見込み客を調査し、アプローチ文面を作成
- Dynamics 365 Sales(Microsoft):リード判定、商談調査、推奨アクションなど用途別のエージェントを搭載
一方で、別のCRMを使っている企業が乗り換えるとなると、移行の負担が大きくなります。既存CRMとの相性を最優先に考えましょう。
業務アプリ連携型のAIエージェント
業務アプリ連携型は、OutlookやTeamsなど日常の業務アプリの中で営業データを扱えるAIエージェントです。
代表例は、Microsoft 365 Copilot内で動く「Sales agent」です。営業担当者はCRMを開かなくても、Microsoft 365のアプリから営業データの検索・要約・更新を行えます。
Sales agentはDynamics 365 SalesだけでなくSalesforceにも接続できるため、CRMを乗り換えずに導入できる点が強みです。
出典:AI agents in Dynamics 365 Sales(Microsoft Learn)
すでにMicrosoft 365 Copilotを全社導入している企業なら、営業部門への展開から始めると効果を出しやすいでしょう。
営業特化SaaS型のAIエージェント
営業特化SaaS型は、新規開拓やアポイント獲得など、特定の営業業務に絞ったAIエージェントです。
機能を絞っている分、日本企業の商習慣に合わせた作り込みや、短期間で成果を出す設計が特徴です。代表例は以下のとおりです。
- アポドリ(Algomatic):顧客リスト作成からアプローチ実行、活動分析までを担い、商談獲得を目指す
- Sales Marker(Sales Marker):企業の検討シグナルをもとに、今ニーズがある企業を見つけてアプローチを支援
- JAPAN AI SALES(JAPAN AI):営業管理システムと連携し、商談管理の事務負担を減らす
CRMとは別のツールになるため、データ連携の方法を事前に確認しておきましょう。
出典:ASCII.jp(アポドリ)、ASCII.jp(Sales Marker)、ASCII.jp(JAPAN AI SALES)
自社構築型のAIエージェント
自社構築型は、Difyやn8nなどのツールで、自社の営業フローに合わせてAIエージェントを作る方法です。
Difyはノーコードで生成AIアプリやエージェントを作れるツールで、n8nは複数のアプリをつなぐワークフロー自動化ツールです。組み合わせれば、CRMやメール、チャットをまたいだ処理を自動化できます。
たとえば「問い合わせが来たら企業情報を調べ、見込み度を判定してSlackに通知する」といった、自社独自の流れを作れます。市販ツールにない業務や、社内システムとの連携が必要な場合に向いています。
ただし、設計・保守を担う人材が必要です。社内にエンジニアやDX推進担当がいるかを確認してから選びましょう。
営業AIエージェントの選び方
営業AIエージェントを選ぶときに確認すべきポイントは、以下の4つです。
- 任せたい営業プロセスに対応しているか
- 既存のSFA・CRMと連携できるか
- 日本語の精度と国内サポートがあるか
- セキュリティ要件を満たしているか
このチェック項目を比較表の軸にすれば、ベンダーの説明に流されずに選定できます。
任せたい営業プロセスに対応しているか
最初に確認すべきは、自社のボトルネックになっている営業プロセスに対応しているかです。
営業AIエージェントは、新規開拓に強いもの、商談管理に強いもの、育成に強いものなど得意分野が異なります。機能の多さで選ぶと、使わない機能に費用を払うことになります。
たとえば、アポイントが足りないなら新規開拓型、商談数はあるのに入力が追いつかないなら議事録・CRM入力に強いツールが適しています。
課題から逆算して選べば、導入後すぐに効果を実感でき、現場の協力も得やすくなります。
既存のSFA・CRMと連携できるか
次に、今使っているSFA・CRMとデータを双方向に連携できるかを確認します。
連携できないと、AIエージェントの結果を手作業でCRMに転記する必要があり、効率化の効果が薄れます。逆に、CRMのデータをAIが読めなければ提案の精度も上がりません。
確認するときは「連携可能」という表記だけでなく、どのデータを読み書きできるか、同期の頻度はどうかまで質問しましょう。MCP(Model Context Protocol)など、AIと外部ツールをつなぐ標準規格への対応状況も判断材料になります。
連携の範囲を事前に把握しておけば、導入後に「思っていた動きをしない」というギャップを防げます。
日本語の精度と国内サポートがあるか
海外製ツールを検討する場合は、日本語での出力品質と国内サポート体制を必ず確認します。
顧客に送るメールや提案資料では、敬語や業界特有の言い回しが不自然だと信頼を損ねます。英語では高精度でも、日本語では精度が落ちるツールもあります。
Dynamics 365 Salesのエージェントのように、機能ごとに対応地域・言語が決まっている場合もあります。無料トライアルやデモで、自社の実際の商談メモを使って出力を試すのが確実です。
日本語の問い合わせ窓口や導入支援があれば、トラブル時の対応も早く、現場への定着がスムーズに進みます。
セキュリティ要件を満たしているか
顧客情報を扱う以上、自社のセキュリティ要件を満たしているかは外せない確認項目です。
確認すべき項目は以下のとおりです。
- 入力したデータがAIの学習に使われないか
- データが保存・処理される国や地域はどこか
- ユーザーごとのアクセス権限を設定できるか
- 操作ログを監査に使える形で残せるか
情報システム部門のチェックリストに沿って早めに確認しておけば、稟議の段階で差し戻されるリスクを減らせます。
AIエージェントを営業に導入する5つのステップ
AIエージェントを営業に導入する手順は、以下の5ステップです。
- ステップ1:任せる営業業務と目標KPIを決める
- ステップ2:CRMの顧客データを整備する
- ステップ3:1チームで小さく試験導入する
- ステップ4:人が確認するポイントを決める
- ステップ5:効果を測定して他チームへ広げる
いきなり全社展開せず、段階を踏むことが「導入したのに使われない」状態を避ける近道です。
ステップ1:任せる営業業務と目標KPIを決める
最初に、AIエージェントに任せる業務と、成果を測るKPIを決めます。
「営業を効率化したい」という目的のままでは、ツール選定も効果測定もできません。営業プロセスを洗い出し、時間がかかっている業務や成果のばらつきが大きい業務を特定しましょう。
KPIは、任せる業務に合わせて以下のように設定します。
- 新規開拓:アポイント獲得数、商談化率
- 商談準備・事務:1件あたりの作業時間、1人あたりの商談数
- 育成:新人の初受注までの期間、受注率
導入前の数値を記録しておけば、後で効果を比較でき、経営層への報告にもそのまま使えます。
ステップ2:CRMの顧客データを整備する
次に、AIエージェントが参照するCRMのデータを整備します。
重複した企業データの統合、入力ルールの統一、空欄が多い項目の補完が主な作業です。とくに受注・失注理由や商談のフェーズは、AIの判断精度に直結します。
すべてを完璧にする必要はありません。ステップ1で選んだ業務に必要な項目から優先して整えましょう。
あわせて、個人情報をどこまでAIに渡すかのルールも、情報システム部門や法務と決めておきます。データとルールの準備が整えば、試験導入で正しく効果を測れます。
ステップ3:1チームで小さく試験導入する
準備ができたら、1つのチームと1つの業務に絞って試験導入します。
最初から全社で使うと、問題が起きたときの影響が大きく、原因の切り分けも難しくなります。新しいツールに前向きなメンバーがいるチームを選ぶと、改善点のフィードバックも集まりやすいでしょう。
試験期間は1〜3か月を目安にし、終了時に何を達成していれば次へ進むかを先に決めておきます。KPIの改善幅、誤出力の件数、現場の利用率などが判断基準になります。
小さな成功事例を作れれば、他チームを説得する材料になり、全社展開がスムーズに進みます。
ステップ4:人が確認するポイントを決める
試験導入と並行して、AIに任せきりにせず人が確認する工程を決めます。
顧客に直接届くものと、社内で完結するものでは、確認の重さを変えるのが現実的です。たとえば、以下のように線引きします。
- 人が必ず確認する:顧客へのメール、提案資料、見積もり
- 抜き打ちで確認する:議事録、CRMへの入力内容
- AIに任せる:社内向けの商談サマリー、リサーチメモ
確認の責任者と手順を決めておけば、誤りがあっても顧客に届く前に止められ、安心して利用範囲を広げられます。
ステップ5:効果を測定して他チームへ広げる
最後に、試験導入の効果を数字で測り、成果が出たら他チームへ広げます。
ステップ1で記録した導入前の数値と比べ、作業時間や商談数がどれだけ変わったかを算出します。費用と比べて投資対効果を示せれば、追加予算の承認も得やすくなります。
展開時は、試験導入チームのメンバーに使い方のコツを共有してもらうと、現場への浸透が早まります。うまくいかなかった点も共有し、運用ルールを見直しましょう。
効果測定と改善を定期的に回せば、AIエージェントを一時的な施策で終わらせず、営業組織の仕組みとして定着させられます。
AIエージェントを営業に導入した企業の事例
AIエージェントなどの営業AIを導入し、成果を公表している国内企業の事例は以下の3つです。
- サイバーエージェントが営業事務工数を約50%削減した事例
- ジャロックが受注率を15ポイント高めた事例
- ギブリーが商談情報の更新率を90%に高めた事例
どの業務にAIを使い、どの数字が変わったかに注目すると、自社での効果を見積もる参考になります。
サイバーエージェントが営業事務工数を約50%削減した事例
サイバーエージェントのAmebaLIFE事業本部は、Agentforceを導入し、事務工数を約50%削減しました。
同本部では、営業担当者の情報が属人化しやすいことが課題でした。そこで、商談録画の保存、議事録の生成、活動履歴への反映、ネクストアクションの提案、メール文面の作成をAIエージェントに任せています。
その結果、1人あたりの月間商談数は10〜15件から最大30件に増えました。マネジメント層の分析・レポート作成工数も約3分の1に減っています。
出典:サイバーエージェント、Salesforceの「Agentforce」を導入(Salesforce)
事務の削減を商談数の増加につなげた事例として、人を増やさずに成果を伸ばしたい組織の参考になります。
ジャロックが受注率を15ポイント高めた事例
ジャロックは、Agentforceを営業と人材育成に活用し、受注率を15ポイント高めました。
同社は、日報作成の自動化、商談のスコア化、受注・失注理由の分析、ナレッジ共有をAIエージェントで進めています。AIが営業活動をレビューし、社員を育成する役割も担っている点が特徴です。
成果として、受注率15ポイント向上に加え、商談化率は24ポイント向上し、日報作成時間は45分短縮されました。
出典:【Agentforce事例】AIが社員を育てる(Salesforce)
効率化だけでなく受注率という成果指標が改善した事例のため、売上への効果を示したい場合に参考になります。
ギブリーが商談情報の更新率を90%に高めた事例
ギブリーは、営業部門でSalesforceのAI機能を活用し、商談情報の更新率を20%から90%に高めました。
同社の営業部門では、Einstein for Salesによる商談の自動文字起こしと、生成AIによる要約機能を導入しました。フィールドセールスの入力負担を減らし、商談の進捗をリアルタイムで把握できる体制を整えています。
同社は営業だけでなくサポートや人事でもAgentforceを導入しており、部門をまたいでAI活用を進めています。
出典:株式会社ギブリー 導入事例(Salesforce)
CRMへの入力が定着しない組織にとって、入力の自動化がデータ活用の土台になることを示す事例です。
AIエージェントと営業に関するよくある質問
AIエージェントと営業に関する質問は以下の4つです。
- 営業職はAIエージェントに仕事を奪われますか?
- 中小企業でも営業AIエージェントを導入できますか?
- 営業AIエージェントの費用はどれくらいですか?
- ChatGPTだけで営業AIエージェントは作れますか?
質問に対する回答を確認して、社内での導入検討の参考にしてみてください。
営業職はAIエージェントに仕事を奪われますか?
営業職そのものがなくなるのではなく、営業担当者の仕事の中身が変わると考えるのが現実的です。
リスト作成や議事録、CRM入力などの定型業務はAIエージェントに置き換わっていきます。一方で、顧客との信頼関係づくりや、複雑な課題を聞き出して提案をまとめる仕事は人が担います。
AIエージェントを使いこなし、浮いた時間を顧客対応に回せる営業担当者ほど、成果と市場価値を高められるでしょう。
中小企業でも営業AIエージェントを導入できますか?
中小企業でも、小さく始められるツールを選べば導入できます。
HubSpotのProspecting Agentは、Starterエディションから利用できます。利用量に応じた課金のため、少ない件数から試せます。
営業担当者が少ない企業ほど、1人あたりの事務負担を減らす効果は大きくなります。まずは議事録作成やリサーチなど、1つの業務から試してみましょう。
営業AIエージェントの費用はどれくらいですか?
費用はツールのタイプと料金体系によって大きく異なります。
CRM搭載型は、CRM本体のライセンスに加えてAIエージェントのアドオン料金がかかるのが一般的です。HubSpotのProspecting Agentのように、リード1件あたり1ドル分のクレジットを消費する従量課金もあります。営業特化SaaS型は、問い合わせで見積もりを出す形式が多い傾向です。
複数社から見積もりを取り、削減できる工数と比較して判断しましょう。
出典:Prospecting Agent(HubSpot)
ChatGPTだけで営業AIエージェントは作れますか?
ChatGPT単体では、CRMやメールと連携して自律的に動くエージェントにはなりにくいのが実情です。
ChatGPTはメール文面や提案書の下書きに役立ちますが、送信やCRMへの記録は人が行う必要があります。営業プロセス全体を自動化するには、CRMやメールとつなぐ仕組みが必要です。
自作したい場合は、Difyやn8nでChatGPTなどのAIと社内ツールをつなぐ方法が現実的です。
AIエージェントに営業の事務を任せて商談に集中しよう
AIエージェントは、営業の目標に向けて調査・判断・実行を自律的に進めるAIです。リスト作成から議事録、フォロー、育成まで7つの業務を担い、営業担当者が商談に集中できる環境を作ります。
導入では、CRM搭載型・業務アプリ連携型・営業特化SaaS型・自社構築型の4タイプから自社の環境に合うものを選びます。そのうえで、任せる業務とKPIを決め、1チームで試験導入してから広げる5ステップで進めましょう。
まずは自社の営業プロセスを書き出し、最も時間がかかっている業務を1つ特定してください。そこがAIエージェントに最初に任せる業務の候補です。
ただし、ツールを入れるだけでは、営業担当者が使いこなせず定着しないケースも少なくありません。AIに任せる業務を見極め、出力を正しく評価できる人材を育てることが、導入効果を最大化する鍵になります。
















