脳波を機械学習すればアルツハイマー病も予測できる。

2018.2.21 編集:おざけん@ozaken_AI

医学の進歩はめまぐるしい。どんどん進歩しています。人生100年時代といわれることもありますが、AIによる予測や検知によって病気になりにくい社会も訪れることでしょう。

AIにおいては機械学習技術を応用した医療の進歩がめまぐるしいです。血液一滴でガンの有無を調べたり、心拍数のデータをもとに糖尿病を予測したり、かつては発見や解決が難しかった病気もだんだんと治癒できるようになってきているのかもしれません。

しかし、脳波とAIをかけあわせた事例は多くありません。数千万規模のコストがかかる脳波計測機器が必要だったり、実用性がなかったため、データの収集が難しかったのです。

今回、AINOWがピックアップするのは、PGV株式会社です。東京 日本橋にある脳波デバイスのベンチャー企業です。わずか数万円の価格の軽量なデバイスを使って脳波を計測することを可能にし、そのデータに機械学習を応用して病気の予測や感情分析に活かそうと取り組んでいます。

詳しく話を聞いてきました。取材に対応してくれたのは水谷さんです。

水谷治央さん

PGV株式会社最高科学責任者。東京大学で博士号(医学)を取得後、東京大学特任助教、ハーバード大学博士研究員、ドワンゴ人工知能研究所上席研究員を経て現職。東京大学・理化学研究所客員研究員、ボンド大学客員准教授兼任。

わずか24g、価格は従来の1000分の1 革命的脳波センサ

脳波の計測は今までも行われてきています。睡眠状態の解析など、頭の中の研究には欠かせないのが脳波計測です。

従来の医療用脳波計測機器は重さが70kgにのぼり、価格に関しても数千万にのぼる高額な機器です。

脳波のデータを効率的にあつめ、機械学習で十分な精度を導き出せる量の教師データを集めるには、デバイスをより安く、軽くして普及させなければなりません。

PGVは大阪大学発のベンチャーです。大阪大学の関谷教授が開発した、わずか24g、価格も数万円というパッチ式の脳波センサを使うことで、手軽に脳波を計測することが可能になるそうです。

コンパクトにして、従来の医療用脳波計測器と同等の精度で脳波を計測することができます。またコンパクトながらもワイヤレスで通信ができるため、場所の制限がないことも特長です。

計測部分には電極がついており、この部分で計測をするそうです。

脳波の波形データはどのようにAI・機械学習で活用するのか

水谷さんによると波形データの活用法は3つあるといいます。

  1. C: モニタリング(睡眠など)
  2. M: 医療(簡易脳波測定)
  3. B: ニューロマーケティング(商品開発)

それぞれ、AI・機械学習を使わない従来の統計手法でも、ある程度の分類はできるそうです。しかし、手軽なデバイスが普及して、より多量なデータが簡単に集まるようになれば、機械学習によってより多様な推測などが可能になります。

モニタリング

脳波の状態をモニタリングします。睡眠状態や興奮状態など、脳波のモニタリングをすることによって、さまざまな活用用途があります。

睡眠の計測実験では、睡眠技師とほぼ同じような計測が可能だといいます。

脳波は従来から注目されており、さまざまな会社が睡眠に主眼を置いたビジネスに手を伸ばそうとしています。
しかし、脳波の計測にはコストがかかることから、寝返りの数など睡眠による外部要因をもとに睡眠を行っているのが現状ではないでしょうか。

PGVの技術によって脳波に簡単にダイレクトアプローチできれば、より正確な脳波の計測が可能になるかもしれません。

また、睡眠だけでなく脳のさまざまな状態のモニタリングの需要が想定されます。

たとえば 自動車の運転手のモニタリングも需要があります。
泥酔中の脳波や眠たい時の脳波を計測するだけでなく、どのような脳波の人が事故を起こしやすいかなどがはっきりすれば、保険金を人によって別々に設定することも可能になるかもしれません。

脳波を直接計測してモニタリングすることでいろいろな可能性が見えてきそうですね。

それぞれ機械学習技術を使って細かな分類や推測ができれば、機微な違いからでも自分のことについて意外な発見があるかもしれません。

医療

水谷さんによると、医療分野の適用が一番時間がかかるといいます。

医療分野は法規制も厳しく、また医療機器認定がないと臨床試験が行なえません。
しかし、大変意義のあるのがこの医療です。水谷さんによると2年以内に厚生労働省の医療機器認定をとり、臨床試験を行っていきたいとおっしゃっています。

2015年1月の厚生労働省の発表では、日本国内のの認知症患者数は2012年時点で約462万人、65歳以上の高齢者の約7人に1人と推計されています。

今も増加を続けており、2025年には、認知症患者数は700万人前後に達し、65歳以上の高齢者の約5人に1人を占める見込みです。

さらに認知症やアルツハイマー病は一度なってしまうと、あとから治療することが難しくなります。

しかし、症状が出る前の段階から適切な薬の投与などを行えば、精神疾患や神経変性疾患のリスクを大幅に減らすことができるそうです。

これまでの研究で、アルツハイマー病患者は健常者と比べると脳波に傾向の違いがあることが分かっています。
しかし、アルツハイマー病の進行度やなりそうかどうかなどの判断まではできていません。

機械学習によって、その人がどれくらい精神疾患になりやすそうなのかを可視化することができれば、医学の大きな一歩となるでしょう。

ニューロマーケティング

マーケティングへの応用も可能です。

ニューロマーケティングとは脳科学をマーケティングに活用していく手法のこと。

例えば、映画を見ている観客に脳波デバイスを装着して脳波の動きを観測するだけでその映画がどれくらい感動するものなのかを数値化できるかもしれません。
これを応用すれば、より効果的な映像製作もできそうです。

PGVはデバイスだけでなく、その分析アルゴリズムまで通貫して提供するため、ビジネスでの幅広い活用が見込めます。

水谷さんによると、ビジネスへの活用の分野が一番実現が早いのではないかといいます。医療ほどハードルも高くなく、小さく始められる部分なので、これからさまざまな企業と連係して、事例を蓄積していきたいとも意気込んでいました。

これから脳波で社会はどう変わっていくんだろう

PGVは脳波を追求することで、どのような未来社会を作っていくのでしょうか。

水谷さん「いろいろな可能性が考えられると思います。大学や製薬会社などとの連係だけでなく自動車などさまざまな産業に利益をもたらせると考えています。実は、このデバイスは脳だけでなく、腕などでも筋電を図ったり、心電図もとれます。胎児の心拍なども測れるので、とにかく可能性が広いです。

今後は、医療などロングスパンの計画と、マーケティングなどショートスパンの目標をバランスよく進めていきたいと考えています。」

編集後記

脳の研究は、人工知能の分野で広く取り組まれています。汎用人工知能といわれるように自律した人間同様のAIが研究されています。

水谷さんは、今までのこの研究をビジネスに活かして社会を改善したいとおっしゃっていました。脳は、今までうまくアプローチできなかった領域ですが、これから、脳波を使った活用がどんどん進んでいくでしょう。

アルツハイマー病を事前に察知できることは、特に意義があることです。高齢化が進む社会において、脳の疾患が増えていくでしょう。そうなったときに、脳波を駆使することができれば、より心身ともに健康でいられるようになるかもしれません。

 

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