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Facebookが先日発表したチャットボット専門のプラットフォーム「Discover」。今更?という向きもあるだろうが、そこには訳がある。大きな成長を遂げるメッセンジャーアプリはMAUベースで2015年にSNSアプリを超え、すでにマーケティングの場としてメッセンジャーはSNSを超えてしまっているのだ。
そこで今日は、とくにToBのチャットボットサービスが増えているFacebookを中心に、チャットボットマーケティングの「なぜやるか」から「どうやるか」までをご紹介する。
目次
Facebookが先日発表したチャットボット専門のプラットフォーム「Discover」
Facebookは先日様々なチャットボットをまとめたハブ的なプラットフォームである「Discover」を発表した。既に米国ユーザー向けに公開されている。「Discover」はまだ始まったばかりではあるが、Facebookが自前でチャットボットのプラットフォームを用意した背景には、2つの理由がありそうだ。
1つ目は検索、SNS、アプリと並ぶ大きな集客導線となりそうなチャットボットの元締めとしてプラットフォームを確立しておきたい、という狙いだ。Appleやgoogleがアプリマーケットで同じ動きを、検索広告でYahoo!やGoogleが広告入札マーケットを出してきたところと共通する。
もう一つは有力なチャットボットサービスの囲い込みの意図などがありそうだ。これまでもFacebookは「Instagram」を約810億円という高額で買収したり、全世界で広く使われ高いシェアを誇る、海外版LINEのようなサービス「WhatApp」を買収した過去がある。
プラットフォームを用意することで、今後成長が著しいと予測されるチャットボットサービスを事前に見つけ、Facebookとして買収することで、同社の成長をさらに加速させていこうとする意図が感じられる。
Facebookは自前のチャットボットにも取り組む
Facebook Messengerという巨大なメッセンジャーツールを運用しているFacebook。当然チャットボット分野に興味がないはずはない。Facebookは、2016年4月にFacebook Messenger向けチャットボット用プラットフォームを正式発表して以来、チャットボット関連の開発を継続して行っている。今春には、Messenger上で機能するAIアシスタント「M」を米国でリリースしている。
「M」は、チャット内での会話から様々なことを分析し、ユーザーの作業を手助けしてくれる。例えば「一緒にご飯を食べよう」といったメッセージを送ると、「M」が反応し、カフェ・レストラン予約の提案をしてくれる。そして場所と時間を設定すると、それがスケジューラに登録されるという仕組みだ。ほかにも、Uberなどタクシーの配車や注文したものの決済なども提案してくれ、まるでパーソナルアシスタントのように活用できる。現在は、英語とスペイン語に対応している。
チャットボットマーケティングを加速させるmessenger-news-feed-adsの登場
チャットボットを作成しただけでは、ユーザーとのコミュニュケーションは始まらない。そこでFacebookはメッセンジャーを広告で利用できる「messenger-news-feed-ads」を2016年年末からスタート。海外では事例が増え始めた。
国内でもようやく最近、事例が増え始めている。これだけプラットフォーマーが注力してくるとやらない理由は減ってくる。
国内チャットボットマーケティングの活用事例
そんなチャットボットを用いたマーケティングが国内でも増えている。特に法人向けのマーケティングでの事例をよく見かける。その事例を紹介していくのでぜひ参考にしていただきたい。
PR Table(ピーアール・テーブル)
企業や団体のストーリーテリングサービスを展開するPR Tableも、Facebook Messenger Botを活用している。PR Tableの簡単な説明から入り、中盤で以下のように自社内での課題を選択すると、その課題に沿って提案がされる。選択式なので文字を打ち込む手間もなく、分かりやすい。実際のBotはこちら。
(出典: PR Table公式サイト)
HubSpot Bot(ハブスポットボット)
マーケティングソフトウェアを提供するHubSpotも自社の営業にFacebook Messenger Botを活用している。以下のように従業員数などをユーザに質問し、営業対象や内容のスクリーニングを行っていると考えられる。このようにマスでは対応できなかった細かな部分に簡単にフォーカスできるのがチャットボットマーケティングの利点と言えそうだ。実際のBotはこちら。
Tech In Asia(テック・イン・アジア)
アジアのテックやスタートアップのメディアであるTech In Asia。テック系メディアらしく、Facebook Messenger Botも活用している。以下のように流れに沿って答えるだけで、おすすめの記事を紹介してくれたり、テック系に特化したクイズで遊ぶことができる。会話口調でラフに回答できるため、メディアに対する親近感を読者に抱かせる効果もありそうだ。実際のBotはこちら。
東洋経済オンライン
海外ではCNNなどがFacebook Messenger Bot上での記事配信などを開始しているが、日本でも東洋経済オンラインがチャットボットのサービスを開始。毎朝自動で最新記事が配信される機能や、キーワードを入力することでそのキーワードに関連する記事を紹介する機能なども。例えば「トランプ」と入力すると、以下のような形で記事が紹介される。導入に至った経緯などが掲載された記事もぜひチェックしておきたい。実際のBotはこちら。
Foxsy
最後に変わり種。北米などではTinderなどのデーティングアプリが成長しているが、Facebook Messenger、Viberでは特別なアプリなどをインストールする必要なく利用できる、人工知能・機械学習を活用したマッチングを自動化するチャットボットサービス。メッセンジャーで動く実名マッチングチャットボットとしては唯一。記事もぜひチェックしておきたい。実際のBotはこちら。
誰でも簡単にチャットボットは「つくれる」!?〜チャットボットマーケティングに使えるチャットボット制作サービス〜
そんな注目のチャットボットだが、実は誰でも簡単にチャットボットをつくることが可能だ。しかも、プログラミングは一切不要で。最近は企業のアンケートなどをチャットボットで行う例も増えてきているが、プログラミング未経験者でも簡単にチャットボットを制作することができるサービスを以降いくつか紹介していく。
■代行制作してもらうタイプ
まずはややコストはかかるがノウハウのある事業者にサービスを作ってもらったり特化した作成プラットフォームを利用するサービス。非IT部門が運用する場合やリアルビジネスの事業会社など、ノウハウはないがすぐにやりたいという方にお勧めだろう。
fanp Biz(ファンプビズ)
fanp Bizは、商品をFacebook Messenger上で紹介してくれるマーケティングツール。チャット形式で紹介がされるので、まるで対面で商談をしているかのように話を聞くことが可能。Facebookユーザの情報も回収できるので、一人ひとりのCVRや開封率をチェックできる。
(出典: fanp Biz公式サイト)
ChatBook(チャットブック)
Chatbookは、企業ボットを作ってくれるサービス。登録フォーム形式やアンケート形式など様々なタイプのボットが作成できる。代行制作してもらうだけでなく、自作も可能だ。AINOWでも、Chat Bookでアンケートを作成してみた紹介記事があるので、ぜひご覧いただきたい。
プログラミング知識ゼロでもできる!プログラミング不要のチャットボット作成ツール「Chat Book」を利用して、アンケートを作ってみた!
(出典: ChatBook公式サイト)
■自作するタイプ
次に、コストは安めだが、自作で設計をしていくタイプのサービス。IT部門やIT系の事業会社など、ノウハウはあって自社で設計改善を行っていきたいという方にお勧めだろう。
hachidori(ハチドリ)
hachidoriは、Facebook Messenger BotやLNE BOTを制作することができるサービス。2個までは無料プランでBOTをつくることができる。ツリー状に分岐図のようなものをつくり、Aをユーザーが選択したらこちら、Bをユーザーが選択したらこちらと枝分かれ式にチャットボットを組み立てていく。
【こんな人におすすめ】ツリー状なので、ロジカルにチャットボットを組み立てていきたい人やロジカルな組み立てが得意な人におすすめ。理系的な考え方ができる人には、一番おすすめだ。
Fast Sonar(ファーストソナー)
Fast Sonarは、Webページ(URL)ベースでのチャットボットを制作することができるサービス。hachidoriと比べると、より感覚的にチャットボットをつくることができる。Webページなので、プラットフォームに関わらず広く利用できるのが魅力だ。
(出典: Fast Sonar公式サイト)
【こんな人におすすめ】hachdoriとは逆にロジカルに考えずに感覚的にボットをつくりたい人におすすめ。また、Facebook MessengerやLINEなどプラットフォームに縛られないチャットボットを制作したい人向きだ。
fanp(ファンプ)
fanpは、Facebook Messenger Botを制作することができるサービス。こちらも、hachidoriと同じく2個までは無料プランでBOTを制作可能。GIZMODOやエン・ジャパンなど大手企業でも導入されている。アナライズ機能が充実しており、アクティブ率や開封率などを細かくチェックできる。
(出典: fanp公式サイト)
【こんな人におすすめ】開封率などより細かい分析(アナライズ)を利用したい人におすすめ。大手企業でも多数導入されているので、大規模な組織での導入にも向いているのではないだろうか。
First Contact
(出典: FirstContact公式サイト)
指定のコードを既存のサイトに挿入することで、サイト上にチャットが表示される仕組みのチャットボット。
基本はユーザが自分でシナリオを作成するが、専門家によるチャットボット制作代行も可能。
低コストながら高機能なのが特長で以下のような機能を実装している。
・Webプッシュ通知
・画像の送信
・自由入力とボタン選択の併用
・AIとオペレーターを自由に切り替え
IBM Watsonと連携しているため自然言語処理に強いことも特長。
チャットボットを知りたいあなたにおすすめのWebサイト
今回の記事でチャットボットに興味を持ち始めた!けれども、どこで情報を探せば良いか分からない。そんな方におすすめのサイトを紹介する。
Bot Market : https://bot-market.sonicmoov.com
(出典: Bot Market)
このサイトは、チャットボットに特化した情報サイト。様々なチャットボットが紹介されているので、ここから気になるチャットボットを見つけてみてはいかがだろうか。LINE向け、Facebook Messenger向けなどカテゴリ分けもされているので、見つけやすいはずだ。
国内チャットボット検索: https://chatbot-list.userlocal.jp
こちらも国内のチャットボットを一挙にまとめたサイト。上の「Bot Market」は記事という形で色々なチャットボットを紹介しているが、こちらは記事というよりは簡単な使い方とスクリーンショットの構成でまとめられているので、データベース的な活用ができる。
チャットボットマーケティングは今後どんどん広がっていく?
ここまでチャットボット、そしてチャットボットマーケティングを取り巻く現状をまとめてきたが、いかがだっただろうか。チャットボットという言葉をよく耳にするようになって数年。今年に入ってさらにチャットボット界隈が活気を帯びてきたように感じられる。
今までのマスなマーケティングでは目の届かなかった細かいニーズに対応できる、チャットボットマーケティング。ユーザ属性を細かに取得できることで、より的確なマーケティングが可能になることは間違いない。現状のチャットボットはまだ完璧とは言えず、応えられる内容が限られていたり、細かい内容については対人での対応が必要な段階だが、今後さらにチャットボット分野が発展していけば、ボットを営業担当者の代わりと考えても遜色ない時代が来るかもしれない。今後の動向に注目だ。
チャットボットをもっと詳しく知りたい方におすすめの本はこちら
チャットボットについてもっと詳しく知りたいという方にはこの本がおすすめだ。チャットボットのビジネス的な活用法はもとより、Facebookなどチャットボットのプラットフォームを提供するプラットフォーマーについての情報やLINEなど国内勢の動向もまとめられている。ぜひ読んでいただきたい。
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