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株式会社サイバーエージェントにおける人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」が、早稲田大学 田中 宗准教授との産学連携を開始したと発表しました。
AI(人工知能)開発の急速な発展に伴い、機械学習の性能を向上させる可能性がある新しい計算技術への注目が高まっています。それと同時に計算を行うハードウェアの研究開発も加速しており、特に、量子コンピュータやイジングマシンの研究開発が盛んに行われています。
イジングマシンは、膨大な選択肢から最適な選択肢を求める問題、いわゆる「組合せ最適化問題」の高精度な解を、高速に得ると期待されている専用ハードウェア。なかでも量子力学的な効果を利用した量子アニーリングマシンの活用法を探索する研究開発が世界各地で繰り広げられています。
上記、イジングマシンの一種。ゆらぎ効果として量子力学的な効果を利用することにより動作するマシンである。現在商用化されているマシンの量子ビットは超電導で作られており、極低温で動作する。
「組合せ最適化問題」は社会の様々な場面で登場する一方で、しばしばその計算の困難さが課題とされています。サイバーエージェントの事業の軸となる広告の分野でも、効率的な広告配信を行うためには、ある種の最適化問題に基づくアルゴリズムを構築する必要があるため、量子アニーリングマシンなどイジングマシンを用いた高速な計算手法の確立が広告配信最適化の高度化に繋がると期待されています。
このような背景のもと、「AI Lab」では早稲田大学田中宗准教授とともに、量子アニーリングマシンなど、イジングマシンを活用した広告領域における最適化問題の共同研究を開始しました。広告領域においては、イジングマシンを用いることで最適化問題の近似解を極めて高速に得ることができる点に注目しており、リアルタイム性が求められるRTB広告における配信の最適化や、広告クリエイティブ自動生成における画像素材の組合せ選択など、様々な面での活用が期待されます。
「Real Time Bidding(リアルタイムビッディング)」の略。広告主とメディア(媒体)をリアルタイムで結び、より最適化された広告配信を実現する技術。メディアにとっては広告収益の最大化を図れる。
この研究で得られた知見は、サイバーエージェントから提供しているダイナミックリターゲティング広告「Dynalyst」などの広告プロダクトや、広告クリエイティブ自動生成の研究などに応用されていく予定。
その活用に資する研究として、グラフ理論や統計力学を背景としたイジングマシンへの埋め込み手法の改良、およびライブラリの開発を行い、オープンソースでの公開を予定しています。
早稲田大学高等研究所准教授、JSTさきがけ研究者
2008年東京大学にて博士(理学)取得。東京大学物性研究所特任研究員、近畿大学量子コンピュータ研究センター博士研究員、東京大学大学院理学系研究科にて日本学術振興会特別研究員(PD)、京都大学基礎物理学研究所基研特任助教、早稲田大学高等研究所助教を経て、2017年より現職。また、2016年10月よりJSTさきがけ研究者を兼任。専門分野は物理学、特に、量子アニーリング、統計力学、物性物理学。NEDO IoTプロジェクト「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト」委託事業における「組合せ最適化処理に向けた革新的アニーリングマシンの研究開発」に従事している。量子アニーリングの研究開発を加速させるため、多種多様な業種の方々との情報交換を積極的に行っている。
http://www.shutanaka.com
▼田中宗准教授による寄稿記事
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