HOME/ AINOW編集部 /課題特化集団“ギルド”がAIで課題と技術の架け橋に ーconnectome.designが目指すコンサルのいらない世界ー
2019.03.29

課題特化集団“ギルド”がAIで課題と技術の架け橋に ーconnectome.designが目指すコンサルのいらない世界ー

最終更新日:

2018年6月、日本ディープラーニング協会の理事を務め、国内のディープラーニングの活用を最前線で推し進めてきた佐藤聡氏が、新たに会社を設立することを発表しました。社名は「connectome.design株式会社(コネクトーム・デザイン)」。多くの国内企業と共にAI事業を作り、数年で立派なAI事業を構築した佐藤聡氏は、新たに何にチャレンジしていくのでしょうか。詳しく記事でお伝えします。

佐藤聡
1989年東京理科大学工学部機械工学科卒。ロボット技術の研究室にて機械制御に利用するため初めてニューラルネットに触れる。人工知能を用いた自動演奏の実現を目指して株式会社ローランド入社。その後、ソフトウエア開発会社勤務を経て創業メンバーとしてソフトウエア開発会社立ち上げ。20年弱にわたり、主にJava™による多種多様なシステム構築を行うと共に経営に従事。2011年人工知能技術開発に特化した大学発ベンチャーに創業メンバーとして参加。2018年5月末に同社を退職し、同年6月、新たにconnectome.design(コネクトーム・デザイン)株式会社を設立し代表取締役社長に就任。また、2017年より「日本ディープラーニング協会」の理事ならびに「産業活用促進委員会」の委員長として日本の産業分野でのディープラー二ング活用促進を進める。

connectome.design 佐藤が感じてきた課題

佐藤氏は日本ディープラーニング協会では産業活用促進委員会の理事として、ディープラーニングの産業活用を進めるために尽力してきた立役者の一人です。かつては、AI開発ベンチャーを起業しを大きく成長させ、市場全体をマクロに見る力だけでなく、AI事業を手がけてきました。

そんな佐藤氏は、日本のAI利活用に対して何を課題と捉えて起業という選択肢を選んだのでしょうか。

佐藤氏:今までAIの事業を成長させ、10億円弱ぐらいの会社に成長させてきました。その中でコンサルティングをいろいろ経験して感じたことがあります。それは結局、課題と技術の間を足りないということです。社会や企業の課題を技術で解決できるように導ける人が少ないと実感できたので、課題と技術の架け橋となりたいと思い、AI活用のためのコンサルテーションを主力事業とする会社を始めました。

AIに関連した技術を用いて、スタートアップがさまざまな業界で垂直型に事業開発をしています。これは悪いことではありませんが、ディープラーニングを含む今のAIの技術は水平展開できる、結構、珍しい技術だと思うんですよね。

だからこそ、各領域に特化して開発された技術を横に展開できる環境づくりをしたいと考えました。受託開発の専門ではなく、技術を横にも展開できるようにコンサルティングを中心にした事業展開を行い、ゆくゆくはコンサルティングの自動化を目指したギルド(後述)の構築を行っていきたいです。

connectome.designのビジネス領域は上記の図の白い枠線内です。AIのプロジェクトの上流工程であるコンサルティングやR&Dなどを手がけながら、connectome.guild(ギルド)を構築するべく開発を進めるといいます。

それでは、connectome.designが構築を目指すギルドとはどんなものでしょうか?

connectome.guildは知の爆縮を起こす

connectome.guildとは

佐藤氏:AIのプロジェクトでは、知財や営業、広報、経理、総務など、それぞれの部署での細かな調整が必要になります。他にはマシンパワーやデータ、最新の研究結果が必要です。

AIのプロジェクトはAI技術者だけでは完遂できません。特定の領域におけるAIプロジェクトを組織の枠組みを超えて組成し1つのソリューションを築き上げる。そしてこのソリューションを横展開することで、効率的なAIの産業に活用可能となるのではないか。そこで行き着いた答えがギルドです。

それぞれのステークホルダー(知)が結集するギルドを構築していきたいと考えています。このギルドでは、それぞれの参加者が協力しあって、AIを活用して特定の大きな課題を解決していく集団となります。

データをもっているクライアント企業やアカデミアとのネットワーク、や日本ディープラーニング協会とのネットワークも活用していきたいです。

AIプロジェクトを推進する分散型の組織をギルドと捉えるとわかりやすいかもしれません。同じ目的をもった人々がギルドを作って集まることで、さまざまな知見を結集させてプロジェクトを進行させることができます。

企業のように、企業価値の向上・利益の追求を目的とするのではなく、同じ課題を感じている人々がそれを解決するべく知を結集し、ギルドの内側、つまり取組むべき課題に彼らの知見を集約させることで、よりスピーディかつ斬新にプロジェクトを進行させることができるでしょう。これをconnectome.designは「知の爆縮」と呼んでいます。

内向きの力を強化する「知の爆縮」

佐藤氏:このギルドが一つのベンチャーだとしちゃうと、資金調達でどーんと資金が入って爆発してしまうと思っています。上場しなければいけないというIPOの圧力も大きく、さまざまな配慮が必要です。

「あれもやらなきゃ。これもやらなきゃ。事業も進めなきゃいけない。」

となると企業の目が外向きになってしまい、プロジェクトにフォーカスする内側に向く力が薄まるんじゃないかなと思っています。

それを逆手に取って、視点を中に向けて、ひたすらプロジェクトに集中できる環境を作ろうと思って構想したのがこのギルドなんです。爆発は英語で Explosion、その対義語がImplosion、つまり爆縮というんですが、「知の爆縮」を起こしたいと思っています。

集合知はAI技術者だけでは形成できない

AI業界では、「橋渡し人材」「ジェネラリスト」などの言葉が頻繁に使われるようになり、AI技術者およびAIを導入しようと考える企業だけではAIのプロジェクトを技術的・ビジネス的に成功させられないという主張が多く見られるようになりました。

同じようにconnectome.designが構築するギルドは、AI技術者だけでなく、領域に特化した人々が参加することで、業界に特化した課題解決型の集団にしていきたいと佐藤氏は強調しています。

佐藤氏:知識を持ち合って集合知を形成しようとしても、それはAI技術者だけでは不可能です。領域に特化したな知識も必要で、業界をよく知る知見とデータを有する企業や最新の研究結果を有するアカデミア、そして我connectome.designのようなコンサルタントがプロジェクトに参画することにより、connectome.designのギルドを業界に特化させたいと思っています。

だからこそ、ギルドの形は一つではなく、それぞれの領域に特化したギルドを特定領域別に作っていこうと考えています。例えば製造業の異常検知専門のギルドなどです。

そして生まれたAIは、プラットフォーム上で流通させ 横展開していけるようにしたいです。

ギルドの先 connecome.platform(仮)のUIはまるでNetflix

さまざまな立場の人が集まって、業界に特化した課題を解決するギルド。ギルドから生まれたAIは、まるでNetflixのようなUIのマーケットプレイス上で流通し、さまざまな人が活用できるようになるといいます。

佐藤氏;ディープラーニングを中心としたAIを活用するノウハウやAIの各種モデルを共有するために特化したプラットフォームです。プラットフォームに集まっている人たちはギルドでAIを作り上げる当事者だけでなく、ギルドで生まれたAIを活用するユーザもいます。

イメージは、AppleのApp Storeでしょうか。

さらには、企業が持つ大量のデータもそこで売買できたり、なかなか外部に公開しづらい事例なども掲載して、売買できるようなマーケットプレイスにしていきたいです。

「車輪の再発明」とも呼ばれるように、まだ多くの企業には世の中ですでに開発されている技術を利用せずに、1から自社で開発しようという動きがあります。しかし、技術の発展が著しく速くなった今、1社だけですべての研究開発を賄うことは非効率的かつ不可能に近いといえます。

だからこそ、開発したAIや、ノウハウは積極的に公開し、APIのようにオープンに提供していくことで、社会の中で各社がお互いに利益を享受できるようになります。

connectome.platform(仮)のようなマーケットプレイス上でアプリのようにAIが販売される日も近いかもしれません。

目指すのはコンサルティングの自動化

最後に佐藤氏にconnectome.platform(仮)の目指す姿をうかがいました。

佐藤氏:ノウハウを共有する事例集は元から一番作りたい部分でしたし、その事例を実装するための仕様やデータ、モデルなどなど実装までに必要な各種要素が紐づいていると、コンサルティングの自動化にも繋がるんじゃないかなと思っています。

今、コンサルティング事業も行っていますが、課題となっているのは人に依存しまうことです。コンサルタント一人で担当できる会社の数の限界があるからこそ単価が高くなっていると思うんです。

実装を可能とする知の集合体であるギルドと、ノウハウの共有が可能なプラットフォームが完成すれば、自社のエンジニアが、自社のデータですぐPoCを回してみることが可能になります。

だからこそ使いやすさ重視で、UIにこだわったプラットフォームを構築していきたいです。

最後に

オープンイノベーションという言葉がよく聞かれるようになり、現代の企業、特にICT企業においては、オープンに連携しあっていくことが、成長の速度をあげるために必須となりました。

しかし、一方で別の目的をもった企業同士が、連携しあい、目標を達成していくことは容易ではありません。コネクトーム・デザインが目指すギルドは「課題」を共有することができるステークホルダー=知が集まることで、大きな力になるでしょう。これからコネクトーム・デザインがこのプラットフォームを実現していけるのか、興味をもった人はぜひギルドに参加してみてください!

佐藤氏からの今後のビジョンを語っていただきました。

佐藤氏:我々コネクトーム・デザインは、技術の急激な進歩とそれに伴う急激な社会の変化に対応しながら社会全体のWell-beingの向上に貢献出来るよう、少数精鋭のチームを編成していきたいと思っています。我々のチームに加わってみたいという技術者、コンサルタント、研究者の皆様を募集しております。興味を持っていただけたらぜひ、ご連絡いただけましたら幸いです。

【佐藤理事インタビュー】ディープラーニング協会は国内のAI状況をどう見ているのか

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