内容の理解はわずか3.8%!崖っぷちの「匿名加工情報」 −データサイエンティスト協会が発表−

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一般社団法人データサイエンティスト協会が、一般消費者 1,643名を対象に「匿名加工情報利用」に関する意識調査を実施し、その結果を2019年7月12日に発表しました。マーケティング・リサーチのインテージが委託を受け、実施しました。昨今のデータ流通市場形成に関する国や市場の動向を踏まえたものです。

匿名加工情報とは、特定の個人を識別することができないように個人情報を加工し、当該個人情報を復元できないようにした情報のこと。

この調査の結果、データ活用の促進に重要な「匿名加工情報」の内容を理解している人は、わずか3.8%にとどまり、国民の理解が進んでいない現状が明らかになりました。

データサイエンティスト協会は、2013年に設立した一般社団法人で、データサイエンティスト育成のため、そのスキルの要件定義や標準化を推進し、社会に対する普及の啓発活動を行う団体です。2019年7月時点で、113社が加入しており、過去最速のペースで増加、個人会員数は12,064人に登ります。代表理事の草野隆史氏は「データサイエンティストを社内で育成している事業会社が増えている。」と述べました。

一般社団法人データサイエンティスト協会 代表理事 草野隆史氏

匿名加工情報利用に関する意識調査の結果

一般社団法人データサイエンティスト協会理事の中林紀彦氏から、この調査の結果について詳しく説明がありました。

一般社団法人データサイエンティスト協会 理事 中林紀彦氏

匿名加工情報とは

匿名加工情報とは、「特定の個人を識別することができないように個人情報を加工し、当該個人情報を復元できないようにした情報のこと」です。

そして事業者は匿名加工情報の利用に関して以下の義務が生じます。

以下は、中林氏の情報を匿名化した例です。名前や団体名など、個人を特定できる部分は匿名加工され、さらに写真もモザイク加工されています。

会員企業の匿名加工情報利用へのモチベーションの高まり

中林氏によると、データサイエンティスト協会会員企業の中から以下のように匿名加工情報を活用したいという意見が多く聞かれたといいます。

分析サービス企業A
個人情報はセキュリティポリシーの課題などがあり、ハードルが高い。可能であれば匿名加工情報を使いたい
事業会社B
会社としては匿名加工情報も含めて積極的に活用していきたい。ただし、個人としては利用目的や使用される情報が不明確だと気持ち悪い。
事業会社B
少子化子育て支援や健康増進など社会貢献目的の利用で合えば許容されるのでは?

しかし、2013年の交通系ICカードのデータ流通問題以降、企業側にリスクを回避する動きのほうが強く働き、データの自由な流通・利活用が進んでいないのが現状だといいます。

この調査では、そんな匿名加工情報に関して、一般消費者がどのように捉えているのかを客観的に捉え、公共の目的であれば利用が許容されるのか、調査を行いました。

匿名加工情報の認知度

データサイエンティスト協会による調査では、「匿名加工情報」を知っていると答えた回答者は15.9%でした。そのうち匿名加工情報の内容まで知っていた回答者はわずか3.8%にとどまりました。

2017年5月に施行された現在の個人情報保護法は2020年度で3年となり、見直しのタイミングを迎えています。前回の改正ではデータの自由な流通·利活用を促進することを目的として匿名加工情報の導入が目玉の1つとなっていました。

現在、法的な一定のルールのもとでは、企業は本人の同意を得ることなく、匿名加工情報を活用することができます。

中林氏:データを扱う人間なので匿名加工情報は当たり前だと認識しており意外な結果でした。この認知度の低さが一番の課題だと思います。

匿名加工情報利用の賛否

匿名加工情報利用の賛否に関しては、「どちらでもない・わからない」という曖昧な意見が56.6%と半分以上を占めました。認知度が15.9%と低迷している中で、匿名加工情報の利用に関しても意見を持っていない人が多いことが伺えます。

データ利活用の促進に関して、匿名加工情報の仕組みや安全性の啓発がもっと進み、個々がその利用に対して賛成シてもらえるような活動が必要です。

公共の研究を目的とした匿名加工情報利用の賛否

この調査では、匿名加工情報の公共目的での利用が中心でした。公共の研究を目的とした匿名加工情報利用の賛否に関しては、「自然災害に関する公的な研究」への匿名加工情報利用の許容度が43.8%と、他に比べて高い傾向があります。

昨今、多発している災害に対する危機意識が定着していることが現れていると考えられますが、一方で半分以上が反対と回答しており、まだまだ匿名加工情報利用の許容度は高いとは言い切れない状態です。

自然災害など、多くの国民の命にかかわる分野における匿名加工情報の利用を促進するためにも、今後は匿名加工情報によってどんなメリットが生まれるかなどをアピールしていくことも大切そうです。

自然災害時の活用における許容範囲

なた、自然災害ににおける匿名加工情報に関して、どの程度まで自分のデータの活用を許容できるかの質問に対して、「性別」や「年齢」「居住地(市都道府県)」は約9割が許容している他、「居住地(市区町村)」「家族構成」は半分以上が許容すると回答しています。

一方で、所属団体や企業名、役職、年収などのデータに関しては、居¥用できると答えた人が20%未満となっており、匿名加工情報の安全性の理解促進が必要です。

中林氏:京都府の防災対策の方もお話していましたが、自治体からすると交通機関の移動情報における「性別・年齢・居住地・時間帯別位置情報」などを把握できれば時間帯別の避難計画を立てることができるかもしれません。また72時間以内の対応や通行可能な道路の特定や救援隊の派遣などにも役立てることができます。公共目的では細かくなくても活用することができます。

データ種別毎の許容度(性別・年齢・居住地)

また、性別や年齢、居住地(都道府県)に関しては、種別によらず75%以上が許容すると回答しています。

データサイエンティスト協会からの提言

以上の結果を踏まえ、以下の2点についてデータサイエンティスト協会からの提言がありました。

認知度向上の取り組みを加速

一般消費者の理解を得ることが重要であり、2020年度に向けた個人情報保護法改正の動きに合わせた認知度向上と理解の促進に官民共同で取り組むべき

自然災害時の活用を促進

許容度が高い自然災害時の活用についてはすぐに取り組みを開始できる状況。活用する場の提供や事例公開を行い、企業からのデータ提供を後押ししていく。

中林氏:匿名加工情報をオープン化すると利益を享受できます。今後は、提供者へのインセンティブの付与なども提言できればと考えています。

調査結果のまとめ

  1. 一般消費者における「匿名加工情報」の認忍知度は15.9%と低い
  2. 利用目的に関しては「自然災害に関する公的な研究」の許容度が比較的高い
  3. 属性情報の利用に関しては「性別」、「年齢」、「居住地(都道府県)」の許容度が高い

さいごに

AIの観点では、中国では国家統制型のAIの発展が進んでいます。国民の情報の多くを政府が把握し、昨今では国民のスコアリングなども始まっています。ディープラーニングを活用した顔認識の活用も進み、スムーズな決済の導入など国民の利便性という観点でも、さまざまな部分でデジタルイノベーションが起きているといえます。

アメリカでは、世界的なプラットフォームが多く存在します。GAFAはもとより、多くのマーケティングのプラットフォームなどが世界に進出し、使えるデータも多いと言えるでしょう。

そんな世界の状況を見た上で、国内の状況を俯瞰してみると匿名加工情報の認知度はわずか15.9%。内容まで知っているのは3.8%という結果でした。さらに自然災害に関する公的な研究への匿名加工情報の活用の許容度ですら43.8%と、かなり低く、ただでさえデータプラットフォームの構築が進んでいない日本において、「匿名加工情報」の認知度を上げ、多くの国民の理解を得ることが急務です。

2019年7月12日 2019年7月16日更新

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