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2019.07.18

人類の進化はこれで終わりではない、AIの“推論”によってさらに加速する【SoftBank World 2019 基調講演レポート前編】

最終更新日:

2019年7月18日 東京都内のホテルにて「SoftBank World 2019」が開催され、基調講演にソフトバンクグループ 代表取締役会長 孫正義氏が登壇しました。

孫正義氏は2018年の「SoftBank World 2018」で人工知能(AI)が全ての産業を再定義する」と述べ、大きく話題になりました。「SoftBank World 2019」においても人類の進化における推論の重要性や、AIの真の役割、ソフトバンクグループのファミリーカンパニーの紹介など、AIを中心に基調講演が繰り広げられました。

今回は前半の孫正義氏の講演部分をお伝えします。後編では、基調講演内で登壇したソフトバンクグループが出資しているファミリー4社についてお伝えする予定です。

人間の進化は推論によって生み出されてきた

孫正義氏:もし、我々に未来を語ってくれる水晶玉が手に入ったとしたら、すごいことだと思いませんか?これから15分後、30分後、1日後に何が起きるか、もし未来を予見することができれば、みなさんは世界一の大金持ちになっていますよね。未来を予見してくれる水晶玉は残念ながら実在していないのかもしれません。しかし、それに変わるものが今、まさに出現しようとしています。

人類は今まで多くの進化を遂げてきました。例えば、空を高く飛んでいる鳥を見て、あんなふうに空を飛べたらいいなと想像しながら飛行機の原型をダヴィンチが生み出しました。星空を見て、天空が動いているんではなくて地面が動いているんではないかと考えた人がいました。当時は宗教的にもタブーとされていたコペルニクスの地動説は人間のものの考え方を根底から変えてしまいました。磁石を見て羅針盤の力を推論し、それを生み出した人物もいました。川に浮かぶ木を見て、もしかしたらあの木の上に乗って川を渡ることができるのではないかと人類はボートを作り出しました。また、光を見て相対性理論のもとを考えたアインシュタインが人間の物の考え方を根底から変えました。

孫正義氏:人類はいろんなものを推論しながら、あんなふうになれたらいいな、自分たちの将来の姿を変えると思って推論してきながら進化をしてきました。人間の持っている推論するという力は進化の最も大きな源泉になっていると思います。

欠かすことのできないデータ、今後30年間で100万倍に

孫正義氏:推論をする上で欠かすことができないのがデータです。今現在はデータという言葉が使われていますが、目に見えるもの、触れるものを見て、推論してきたのです。

例を上げたらきりがないくらい、人間の推論の力で生み出されてきました。この人類の進化はほぼ行き渡ったのか、それともここからさらに加速していくのか?

私はさらに加速していくと思います。そもそもデータは、コンピュータにデータを食べさせているのですが、インターネットの上に流れているデータの量はこの30年間で約100万倍になりました。ここから先の30年間で、どのくらいになるのか、私は推論します。もう一度100万倍になるということです。

孫正義氏:データの増加は決して、行き渡った状況ではない、まだまだこれから爆発的に増加していくという風に思っています。

自動運転の車はまさに最大のロボットに値すると思います。この車が自動運転化され、事故が起きない世界が生まれる。少なくとも我々人類は多くの自動車事故を起こしながらそれでも妥協して、文明の利器を使っています。

しかし、この事故が100万分の1に削減することができたら、もっと安全で、便利さが増していくと思います。

自動運転の世界はLiDARやカメラから入ってくるデータを使って人工知能が今から起きることを予見しながら、事故を未然に防ぎます。急に猫が道を横切るかもしれない。ボールを追いかけて子供が横切るかもしれない。反対車線から突然トラックがこちらに向かってくるかもしれない。そういうことをさまざまなデータをもとに予見し、推論して未然に事故を防ぐというわけです。そのためには膨大なデータが必要です。

孫正義氏:我々のグループにはARMが存在していますが、ARMの今後10年の予想では、約1兆個のIoTチップが出荷されると予想されています。1兆個のチップが、今までは人とものがつながっていたわけですが、ものとものが直接データのやり取りをする時代になると、また膨大なデータが飛び交うことになるでしょう。どう見ても、どう推論しても、もう一度ここから30年間で100万倍くらいデータの量が増えると思います。

孫正義氏:我々グループの中のモバイルやブロードバンドなどの通信の世界も5Gで止まるのではなく、6G、7G、8G、9G、10Gという風にこれから30年の間で、まだまだ通信速度も増やしていく。

データのトラフィックの量はさらなる次のキャパシティを求め、さらなるスピードを求め、さらなるレイテンシーの圧縮を求めて進化していくと思います。

100万倍やってくるデータを人間が使って推論していくのは不可能に近いくらいの規模です。だから我々は一気にAIの力を使って推論していく、こういう世界になっていくと思います。

AIの役割は「プリディクション(予測)」

孫正義氏:AIはまさに人間が勘と経験と度胸に頼ってきた今までの意思決定に変わって、もっと科学的でデータに基づいた推論を成す、それによって人類の進化はこれで行き渡るのではなく、さらに加速して進化がやってくると思います。

今日、現在は例えば天気予報というと、漁師のおじいさんに聞くよりもコンピュータやデータを使った天気予報を見たほうがより当たる時代になりました。僕らの子供の頃は天気予報をテレビで見て、「今日の午後は雨が降るでしょう」といって傘を持っていっても全然振らないで、逆にがっかりした経験もあります。今日現在ではコンピュータを使った天気予報が、漁師のおじいさんの勘と経験に頼るよりも当たります。

でもそれ以外の部分でまだまだ人間のほうがAIの推論よりも当たるという場面がたくさんあります。しかし、これから5年後、10年後、30年後にはAIを使ったAIがデータを徹底的に集め、分析し、これから5分後、15分後、1日後に起きることを予見する、このほうがはるかに当たるという時代がやってくると思います。

AIが一番得意なこと、これを一言で言い表すなら、AIは「プリディクション(予測)」に最も適した役割を果たします。「AIになにかものを考えてください」と言っても「考えるってなんなの?」となってしまいます。今から5分後、1日後、3日後に起きることを予見する、これをやらせるとAIのほうが人類よりもはるかに得意だと言われる時代が目の前にあります。

AIになんでもかんでもやらせるのはアプローチとして間違っています。最も得意なことをそのものにやらせる。適材適所です。人間も適材適所で使ってはじめて、より大きな効果を果たすわけですが、AIの世界も適材適所で、「プリディクション」に使うべきだと思います。

今日現在のビジネスで、物を売っている場合が多いと思います。例えば、在庫の回転率を向上させると、その会社の利益は莫大に増えます。この在庫の回転率を増やすためにAIを使って、例えば、「金曜日の夜7時にどれくらいの注文がくるのか、ちなみに今日の夜7時は大雨が降りそうだ」というと、大雨だというデータをもとに出荷されるだろう注文の数を予見することができます。ですから、より在庫の回転率は科学的に上がるはずです。

孫正義氏:例えば、ソフトバンクグループの決算発表でも紹介しましたが、中国で最も進んだ中古車販売の会社 Guaziは、一般的に次のオーナーに転売するのに一般的に60日くらい在庫をかかえないといけないのですが、Guaziはすでに平均15日間で次のオーナーに売りさばくことができるようになりました。

在庫が60日から15日に減るということは経営効率は4倍ほど上がるということです。

中古車は生鮮食品と同じように時の経過とともに価値が刻々と下がっていきます。在庫の日数が短くなればなるほど商品価値を守って、運転資金もより少なく、その会社の利益に直結するわけです。

これがAIの力でさらに2日くらいまで圧縮されるような時代がくると私は推論しています。

孫正義氏:マーケティング、販売活動も、今までは人間が販売の効率を上げるためにさまざまな推論をしていました。マーケティングもAIの力で、より適した人に適した宣伝をできるようになります。例えば、私が一人でテレビを見ている時にヘアドライヤーの宣伝をされても「最近使ってないな」となってしまいます。また、女子高生に高級車のメルセデス・ベンツを宣伝しても売上に直結しません。

一体、視聴者の年齢や性別、職業などを推論していくことで、より適切な広告宣伝、プロモーションができるようになります。そうすると当然利益に直結します。

例えば、相乗りをする自動車が今日現在が100としたときに、中国のDiDiでは彼らのAIのエンジンを使って140%の相乗り効率を実現しています。近い将来、さらに200%に改善すると思っています。

孫正義氏:つまり、AIの力で推論をすることによって経営は直接、より強く、より儲かり、よりスピーディで、よりしなやかになると思っています。

ちょうど25年前に、インターネットがはじまったばかりのときに私は毎日興奮して、さまざまなインターネットの事業を開始したり投資をしていましたが、同じくらい、もしくはそれ以上のの興奮で、AIの革命の入口で全速力で向かおうとしています。

今、世界中にベンチャーキャピタルが約5000社あります。この世界中のベンチャーキャピタルが全5000社合計すると約9兆円の資金を調達し、投資をしました。我々ソフトバンクグループは約5000社約9兆円に対して、1社で10兆円の規模の資金を集めて、AI革命に一気に同時多発的に出資を行っています。このあり方も一つの確信だろうと私は思っています。今までのベンチャーキャピタルはアーリーステージの会社に資金を10億円、20億円入れているのに対して、ソフトバンク・ビジョン・ファンドはレイトステージのすでにユニコーンになった会社だけに特化して、その分野の世界一、あるいは最低でも国、地域のナンバーワンの会社ばかりに投資をしています。

孫正義氏:つまり、AIに特化して、ユニコーンに特化して、しかもナンバーワン集団だからよりシナジーを出しやすい、こういう形でファミリーを構成しているのは世界ではじめてのアプローチだと思います。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先は80社以上に

孫正義氏:このファミリーの数は、2年間で80社を超えました。産業革命の時に起業家たちが、推進役、エンジンであったと同じように、AI革命も起業家たちがまさに推進のエンジンだと思います。1人の人物では何もできないかもしれないけど、たった1人の人物が全てを変えてしまう、そんなことが人類の歴史の中で何度も繰り返されてきました。

孫正義氏:私はまさにAI革命の起業家たちは、そういうたった一人の誕生が、人類のこれからの未来を決定的に変えてしまう、そういうことを最近ひしひしと感じてきています。

今日はその中の何社かの起業家に集まってもらいました。彼らにそれぞれ自分の角度から、AIの力をどのように使って、自分たちの業界のビジネスを決定的に革新していってるのか。

もはやAIの技術革新を事業に使う、単なるAIであれが猫なのか犬なのか、虎なのか、単に画像認識を技術的にやる時代はもう終わりました。実験室の中の実験的な理論開発ではなく、AIをビジネスそのものに直接使って自分たちの業界を革新し始めている代表的な何人かに一緒に登壇してもらいたいと考えています。彼らがどのように新しい武器を活用しているのか、直接語ってもらいます。

に対して、1社10兆円超えで、同時多発的に出資を行っています。今までのベンチャーキャピタルがアーリーステージに投資していますが、ビジョンファンドではユニコーンに特化し、業界や国でのトップの企業に投資しています。

世界でも初めてのアプローチです。

産業革命の時に起業家たちがエンジンであったように、AI革命においても起業家たちがエンジンになると思います。

たった一人の人が世界を変えたことが何度もありました。このたった一人の誕生が、人類のこれからの未来を決定的に変えてしまうと、最近ひしひしと感じています。

今回はこの中の何社かの起業家に一緒に集まってもらいました。彼らにそれぞれ自分の角度からAIのちからをどのように使って自分たちの業界のビジネスを革新的に推進しているのか。AIの技術革新を事業に使う、画像認識を技術的にやる、そんな時代は終わったわけですよね。

実験室の中の理論開発ではなく、ビジネスに直接使って革新し始めている人物、その代表的な何人かに登壇してもらいたいと考えています。彼らがどのように新しい武器を活用しているのか。彼らの口から直接語ってもらいたいと思います。

後編はこちら

 

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