HOME/ AINOW編集部 /世界のユニコーンはAIをいかに事業に取り入れたか。日本も目覚めないとやばい。【SoftBank World 2019 基調講演レポート後編】
2019.07.19

世界のユニコーンはAIをいかに事業に取り入れたか。日本も目覚めないとやばい。【SoftBank World 2019 基調講演レポート後編】

最終更新日:

2019年7月18日 東京都内のホテルにて「SoftBank World 2019」が開催され、基調講演にソフトバンクグループ 代表取締役会長 孫正義氏が登壇しました。

孫正義氏は2018年の「SoftBank World 2018」で「人工知能(AI)が全ての産業を再定義する」と述べ、大きく話題になりました。「SoftBank World 2019」においても人類の進化における推論の重要性や、AIの真の役割、ソフトバンクグループのファミリーカンパニーの紹介など、AIを中心に基調講演が繰り広げられました。

今回は後半のソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先ユニコーン4社の創業者の登壇部分をお伝えします。前編の記事もぜひご覧ください!

後半では、各業界で功績を残してきた各社が、AIの技術をどのようにビジネスに活用しているのか。語られました。

AIを徹底的に活用。世界一のホテルチェーンへ|OYO Hotels&Homes

孫正義氏に最初に紹介されたのは、OYO Hotels&Homes(以下OYO) Founder & CEOのRitesh Agarwal氏です。

OYO Hotels&Homes Founder & CEO Ritesh Agarwal氏

OYOはAIをはじめとしたテクノロジーを駆使し、より豊かな居住空間を求める32億人以上の世界中のミドルクラスの人々の暮らしに変革をもたらすことを目指し、生まれた企業です。フランチャイズ創設からわずか6年で、歴史あるブランドをしのぎ、110万客室を達成。マリオットホテルに次ぐ世界第2位のホテルブランドに成長しました。2〜3ヶ月後には世界最大のホテルチェーンになる勢いです。

そんなOYOの急成長の裏にはAIを活用してホテルビジネスを急加速させるメソッドが隠されていました。

まずはじめに紹介されたのは、フランチャイズの拡大のスピードです。AIを活用することで、既存のホテルチェーンに比べ、約36倍の速さでフランチャイズを拡大しているというから驚きです。その契約期間は最短で会議3回、長くても5日間と、まさに即断即決です。

なぜ、これほどのスピードで客室を増やせるのか。それはOYOが所有する全世界1000万以上のビルデータベースなどを活用しているからです。また、テクノロジーを駆使し、1億を超えるデータを分析、この分析力がスピードの秘訣のようです。

また、客室の価格の最適化(ダイナミックプライシング)にもAIの技術を活用しています。1秒あたりに730件の価格最適化を実施し、1日あたり5000万件にも及ぶ価格調整を行っているといいます。

この価格調整は一般的な傾向と比べて97%の精度が実現できているといいます。

また、客室清掃にも着目。アプリを用いて効率的な客室清掃体制とを整えることで、スタッフ1人あたりの生産性が2.5倍に向上。これに伴い、スタッフへの報酬も高く設定するなどモチベーションを高める仕組みも活用されていました。

また、客室のデザインにもテクノロジーを活用しています。構築したデザインアルゴリズムを活用して最適な家具を選択することで、客室の稼働率が2倍になりました。

中には稼働率が3倍になったケースもあるというから驚きです。

まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで事業拡大を続けるOYO。OYOはマリオットホテルに次ぐ世界第2位ののホテルブランドとなり、すでにヨーロッパからアジア、アメリカに至る80カ国において、110万室がすでにOYOになっています。

全世界で利用可能な客室数は、1.6億室。そのうち90%はOYOになる可能性があるそうです。人間の意思判断を膨大なデータとAIを駆使することで効率化し、人間が管理しきれない量の客室を管理、拡大していく。AIをうまく活用することで、いかに事業が劇的に拡大していくか。それが伝わってきた講演でした。

配車にとどまらず金融にも進出|Grab Group

次に紹介されたのは、スマホ操作で簡単に車やタクシーを呼ぶことができるアプリとして有名なGrabのCEO and Co-FounderのAnthony Tan氏です。東南アジアで圧倒的なシェアを誇る最大の配車サービスです。筆者もマレーシアに旅行に行った際にはGrabを活用して観光を楽しみました。

一見、Uberのような配車のみの機能のみがあるのかと思いきや、AIを活用してさまざまな事業展開をしていることが特徴です。

Grab Group CEO and Co-Founder Anthony Tan氏

まずは、Grabに関する各データを見てみましょう。1億5500万回以上のダンロードが行われ、配車サービスでは、累計30億回以上の利用があるといいます。また、配車だけでなく、フードデリバリーやフィンテック領域にも進出。個人の信用をスコアリングすることで、お金の貸し出しなども行っています。Grabは人々の生活を支えるサービスとして、拡大を続けてきました。

では、いかにして充実したサービスを届けているのか。GrabでもAIが積極的に活用されています。Grabが保有するデータの量は4ペタバイト(紙にすると2兆ページ分)にのぼり、日々、30TBのデータが蓄積しているといいます。

AIの活用では、天気や交通雨量、需要に応じてリアルタイムに価格をAIエンジンで予測しています。また、経路の最適化を行うことで、ドライバーは渋滞を避けることができるほか、場所に応じて食のレコメンデーションも行われます。

また、Anthony Tan氏は予測に関する技術力に自信を見せ、東南アジアにおける食品廃棄の問題に関して、予測技術を活用することで食品廃棄物を削減する取り組みへの意欲も見せました。

4年間で2000%の急成長|Paytm

次に登壇したのは、インドで電子決済や電子商取引のサービスを展開する「Paytm(ペイティーエム)」のCEO、Vijay Shakhar Sharma氏です。

Paytm Founder & CEO  Vijay Shakhar Sharma氏

創立時から急成長を続けており、2018年には4億人以上の利用者数を掲げ、4年間で2000%成長を遂げた企業です。ソフトバンク株式会社とヤフー株式会社により生まれた電子決済サービスのPayPayも、Paytmと連携し、QR・バーコード決済サービスを開始しているなど、日本国内への影響力も大きいことが特徴です。

Paytmでは、AIがビジネスを成長させるとして、保有するデータを活用して事業を拡大しています。

例えば、店舗とユーザ間のリアルタイムクレジット決済では、Paytmが蓄積した膨大なデータを活用し、ローン審査をおこっています。

また、決済の安全性の担保にも、AIを活用しています。70億の取引に対して、わずか1000分の1秒で1000以上のルールを適用して、決済の管理を行っています。

AIで野菜の生育スピードや味をコントロール|Plenty

最後に紹介されたのは、わずかな空きスペースを活用して、野菜や果物を栽培する技術を有する農業ベンチャー Plentyです。Plentyが行う「インドア農業」は、経済成長が続く途上国など、作物が不足する地域の課題を解決するソリューションとして注目されています。

Plenty CEO and Co-Founder Matt Barnard氏

PlentyはAIの技術を野菜の生育に活用しています。Plentyは野菜の味にこだわり、IoTセンサーが収集したデータとAIを活用し、味や生育のスピードなどをコントロールする技術を有しています。

無農薬ながら、少ないスペースの温室環境で95%以上の節水を行い、無農薬、高い栄養価をもつ美味しい野菜を育てることができます。まだ、最大約350倍の収穫性は、通常、年に1〜2回程度しか収穫できない野菜ですが、Plentyでは数十回の収穫が可能です。

その成長の速度はIoTセンサーを農場に置くことで、湿度や温度、光の周波数などをAIで分析しながらコントロールすることで実現しているといいます。
Plentyは美味しさ、高収穫、低価格の農作物を継続して提供することで、さらにデータを蓄積し顧客を開拓する循環をうまく回し、AIを活用した事業拡大を加速させています。

AIによる効果としては、400万の作物に対して、64億の栽培方式を見出し、高い満足で健康に良い農作物の精算を可能にしています。

Plentyの技術を活用すれば、例えばカリフォルニアで栽培されるケールの50%が枯れてしまっても、栽培方式を調整することで需要に合った供給を行うことができます。21世紀の最大の社会課題でもある食糧不足の問題を、AIの力で解決しようとする、まさに先進的な取り組みです。

日本はまだ手遅れではない。でも目覚めないとやばい。

孫正義氏:ビジョンファンドをやってよかったと思うのは、世界中のAIを使ったナンバーワンの会社が年率2倍、3倍、4倍と伸びている企業集団が我々のファンドに入っているということです。

私は郡戦略をソフトバンクグループの経営戦略として掲げていますが、AIに特化して世界中のナンバーワン企業を作りたいと思っています。

冒頭で申し上げましたが、私は人類の進化は続くどころか、ますます加速すると思っています。もともと人類の進化は推論によって促されましたが、データの量が100万倍になり、そのデータをAIを使って最大限に活用し、AIシフトによって初めて、より大きな進化がやってくるということです。

先程、少し辛辣な言い方で日本はAI後進国になってしまったと言いました。

別に、日本を批判したいわけではなく、日本が嫌いなわけではなく、日本が大好きで日本に貢献したいと思っているから、日本に住んで、日本で生まれ育って、日本を愛しているからこそ、日本も早く目覚めて、早くこの進化に追いつき、追い越さなくてはいけないと思っています。

よく「ビジョンファンドは世界中の会社に投資しているけど日本の会社にちっとも投資しないじゃないか」と聞かれますが、悲しいことに世界でナンバーワンと言えるようなユニコーンがまだほとんどないのが現実で、だから投資したくても、そのチャンスがないのが実態です。

AIの革命は始まったばかりですから、今でもまったく手遅れではありません。

孫正義氏:ちょうど、インターネットが25年前にヤフーが生まれたときから考えて、そのころはまだFacebookやGoogleはありませんでした。Amazonは生まれたばかりでしたが、Netflixもありませんでした。

そう考えれば、最初の5年、10年過ぎたあとに生まれた会社が、そこからまたたく間に世界一のインターネットカンパニーになったという事例がいくつもありますよね。

ですから、今はまだ、あの25年前のインターネット革命が始まったばかりだということでいえば、まだ手遅れではありません。でも目覚めないやばい。ということを言いたいです。

なんのために、このAI革命、情報革命をやるのか。それは、我々人間が幸せになるためです。AIの革命が進むと、人間が置いてけぼりになって不幸せになるんじゃないか、人間は仕事を奪われて、存在そのものが疑われるように悲観的に悲しい見方をする人がいますが、決してそうではありません。

AIの情報革命は人間を幸せにするためにあると私は心から思っています。

なんのための革命か。150年前、人々の職業の90%は農業だったんです。働く人々の90%が農業に従事していたんです。2000年近く続いているわけです。

農業が機械化されて、そして農業に従事している数がアメリカで2%、日本では5%を切ったんじゃないんですかね。シンガポールでは0%だそうです。

農業の仕事が機械化されて、それ以外の仕事がたくさん生まれて、結局機械化されたことによって90%の人が職を失ったのかというと、新しい仕事に人間は進化していったということです。

孫正義氏:私はハイテクの世界が生まれて、ハイタッチの世界はすでに人間に別の感動をたくさん与えてくれて、両方が人間の生活、幸せには欠かすことができないものだと思っています。今日は紹介していませんが、がんで亡くなる人が世界中にたくさんいます。そういう悲しい出来事を減らすためにもAIは大いに活躍し始めている。これからもっともっと力を発揮していくと思います。

孫正義氏:我々は情報革命をこれからも進めていくわけですが、AIが人を不幸せにするためではなくて、人々をより幸せにするために人間が中心である、人間の幸せのためのAI革命、情報革命を我々は迎えていかなくてはいけない。そういうチャンスが目の前に来ていると申し上げたいと思います。

人々の幸せのためにAI革命を。

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