「AIの活用をオフィスで進めたい!」という人や「社内でツールを導入したが、なかなか業務効率が上がらず困っている…」という人は多いのではないでしょうか。
深刻な人手不足が進んでいる中、AIをはじめとした機械を使いこなして業務を効率化することは企業が生き延びるための必須条件だと言えるでしょう。
そんな業務を効率化するロボットは世の中にあまたありますが、AI-OCRの分野に着目している人は少ないかもしれません。
AI-OCRとは、収集した大量の文字データから文字の特徴をディープラーニングし、高精度な文字認識を可能とするソリューションのことです。
このAI-OCRは幅広い業種に応用することができ、作業効率を飛躍的に高めることができます。
そんなAI-OCRの中で、400社のアクティブユーザーを抱え、シェア1位を誇っているのが、AI inside 株式会社。
AI inside 株式会社はどのようにして、AI-OCR業界でトップに登りつめたのでしょうか。また、これからさらに発展していく「AI inside Cube」とは?会社としての展望は?
代表取締役社長CEO渡久地択さんにインタビューをしてきました。
AI inside 株式会社について
AI inside 株式会社の代表的なプロダクト「DX Suite」はだれでもかんたんに使える高精度の、AI-OCRを提供しています。
このプロダクトには、3つの機能があります。あらゆる書類を、高精度でデジタルデータ化する「Intelligent OCR」、アップロードした書類をまとめて機能ごとに自動仕分けができる「Elastic Sorter」、AIが自動で読みたい項目を抽出し、読み取る「Multi Form」です。
これらの機能に加えて、デジタルの促進とプライバシーの保護を実現するEdge AI「AI inside Cube」を発表しました。
「DX Suite」は、400社のアクティブユーザーを抱えて AI-OCR市場シェアNo.1。それでは、なぜこれほどまでに大きなシェアを獲得できたのはなぜなのでしょうか。
渡久地氏:私たちがシェアを獲得できた理由は、商品化が一番早かったという単純な理由です。メディアなどでAI-OCRを先に出したのはコージェントさんだと思うんですが、その時にはもうDX Suiteはお客様に使っていただいていました。
早く商品化していたので、データがそれだけたくさん集まり、精度を高められたんです。
また、弊社が誇る素晴らしい開発チームだけでなくセールスやカスタマーサクセスなどの必要な部署が育ってきていることも理由の1つですね。今のDX Suiteの成長は彼らがいたからと言っても過言ではありません。お客様からのご評判も良く、チャーンレートも0.5%ほどになっています。
これらの理由からDX SuiteはAI-OCR市場でシェアを獲得できたのだと思います。
画像データの取込みで発生する画像のズレ補正機能だけでなく、FAXデータをクリーンアップするなど、数多くの画像補正機能を自動で最適実行することで、高い精度を誇る「DX Suite」。
この高い精度を実現するまでにはどんな苦労があったのでしょうか。
渡久地氏:現在、DX Suiteは手書きであれば、あらゆるフォーマットの読み取りが可能になっています。定型・非定型(フォーマットの決まっていない文書)に限らずなんでも対応できるような状態です。
ここまでの精度にするまでには、お客様のご協力がありました。
というのも、2015年に1番最初にお客様にDX Suiteを提供したときは、ある項目の認識の精度は90%・他の項目は60%という精度はまばらな状態だったんです。それでもユーザーの方は、活用してくれるような場所を見つけてくれて。(当時のサービス名は「intelligent OCR」)
ユーザーの方に使っていただけたおかげで、細かいヒアリングができ、精度を上げていくことができました。
AI-OCR業界でナンバーワンの実績を誇るDX Suite。では具体的に、どんなユーザーが導入しているのでしょうか。詳しいユーザー像に迫ります。
渡久地氏:DX Suiteは、幅広い業種の方に使っていただいています。どこの業種に特化しているというようなことはあまりないんです。
もともとは金融機関向けにサービスを提供していました。そのため、銀行などのご利用が多かった。
しかし、現在では月間およそ400社に使っていただいているので、業種はばらけています。7月の数値では、1万種類以上のの業務に使われています。リクエスト数としても約2億ぐらいになっています。
AI inside Cubeについて
2019年6月28日、AI inside 株式会社は新製品「AI inside Cube」申込受付開始を発表しました。AI inside Cube は、デジタルの促進とプライバシーの保護を実現するEdge AI。実際にどんなプロダクトなのでしょうか。
渡久地氏:AI inside Cubeは30センチ四方のプライバシーを守るためのオンプレミスのシステムとして紹介しています。月間約1500万件のリクエストを1個のAI inside Cubeで対応できます。
我々はこのAI inside Cubeを製造メーカーとして実際に作っています。デザインや内部設計まで弊社で行っているんです。
プライバシーを守るオンプレミスのシステムとして誕生したAI inside Cube。そのサービスが誕生した背景にはどんな思いがあったのでしょうか。ユーザーとともに詳しく掘り下げていきます。
渡久地氏:AI inside Cubeを開発した1つの理由は、今までのDX Suiteのクライアント様が、プライバシーを理由に懸念を示される方がある程度いらっしゃったからですね。
例えば、地方自治体のユーザー様はマイナンバーなどの個人情報の扱いは非常にシビアになります。そのため、オンプレミスでシステムを構築するか、クラウドを使うしか手段がないというところもあります。
このように、官公庁やある程度情報のセキュリティやプライバシー性が高い情報を扱っている会社さんにAI inside Cubeを使っていただきたいと思います。
なぜ渡久地氏は、なぜハードの計算機械をイチから作ろうと思ったのでしょうか。
渡久地氏:帳票をOCRで認識する時に、帳票をバラバラにして、どれがどれだかわからないようにしてクラウドに送っています。
これを他社さんのハードでやろうとすると、さまざまな工数がかかり、スケールしないと思ったんです。だからこそ、一番低価格に、さらに一番処理量が多い最適なハードを自分たちで作ろうと思ったんです。さらに、それはAI-OCR以外のすべてのAIの推論環境に応用できると考えました。
さらに、サブスクリプション形式で提供することで、さらにユーザのコストを抑えるようにしています。
AI inside プラットフォーム構想
情報の統制が厳しい企業でも、独立したAI inside Cubeを提供することで、セキュアにOCRなどの導入を進め、業務を効率化できます。「DX Suite」は、クラウド、エッジを問わずに各企業に業務効率化のきっかけを与えるプロダクトにまで進化しました。
しかし、AI insideの業務効率化は「DX Suite」ではとどまりません。OCRにとどまらない企業のAI導入を見越し、AI inside Platformの構築を進めています。
フェーズ1:
AI insideのOCRエンジンは「DX Suite」としての提供だけでなく、パートナーのサービスにもAPIとして提供されています。
それらのサービスを通して得られたデータは、個人を特定できない状態で、AI inside Learning Centerに送られ、さらなる精度向上のための学習用データとして活用されます。
フェーズ2以降:
2019年8月現在のAI inside Platformは以下のような構成になっています。フェーズ1との違いは、AIファンクションを作れるようになっていることです。
今まで社内に限定していた「AI inside Learning Center」を外部のディベロッパーにクローズドに開放することで、新たなAIの機能を作ることが可能になります。
例えば、ディベロッパーはOCR以外に、一般物体認識の機能などを実装することができます。Learning Centerで、GUI(マウス操作)のみでさまざまなモデルを構築できます。さらに将来的にはアーキテクチャの作成・編集も可能にするようアップデート予定される予定です。
構築したAIのモデルは、クラウドかエッジか実装先を選択することが可能、それらを総じて、AI inside Computing Engineと呼んでいます。
なんと、このLearning Centerは無料で利用できます。
渡久地氏:ラーニングセンターの利用料は実は0円なんです。
AI insideのDX Suite以外にもいろいろなソフトウェアを誰もが配信できるようにしようと考えています。例えば、あるベンチャー企業のサービスもAI inside Platformで提供できます。
このように環境を貸し出すので、AWSをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
AI inside Platformの今後のビジョンについても伺いました。
渡久地氏:今は一般物体認識の機能にとどまっていますが、AI insideには優秀なデータサイエンティストも在籍していますので、データ分析やスコアリングのAIモデルの構築が可能になるようアップデートしていきたいと思っています。
最後に
「DX Suite」はAI-OCR市場シェアNo.1を獲得し、デジタル化の促進とプライバシーの保護を実現する「AI inside Cube」を開発したAI inside 株式会社。
今後はOCRにとどまらない企業のAI導入のために、AI inside Platformを構築していくとのことでした。
AI inside Platformが実現できれば、さらなる精度向上の実現とAIファンクションの開発が可能になります。データ分析やスコアリングのAIモデルの構築も目指しているとのこと。
労働生産性の向上が求められる日本において、AI inside 株式会社が開発するサービスはさらに重要な役割を果たすようになるでしょう。今後の動きに期待です。