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不動産業界でのAI活用が活発化しています。
今まで、不動産は人が経年劣化の状態や日当たりなどを目で見たり、大量の書類を介して契約するなどアナログな部分が多いのが一般的でした。
しかし、人口減少による人手不足深刻化などの影響を受けて、従来のやり方には限界が来ています。
そこで活躍するのがAIです。AIを使えば定型業務を自動化できるため、業務の効率化と省人化に貢献するのではないでしょうか。
今回は、不動産業界におけるAI活用について説明していこうと思います。
【この記事でわかること】 ※クリックすると見出しにジャンプします |
不動産業界が抱える課題
勘と経験に頼った相場感
例えば、不動産の売却価格や家賃の提案では、担当者の勘と経験をベースとした相場感による部分が多いのが現状です。
そのため、担当者によってその金額にばらつきが生じます。
不動産を売却したい人や貸したい人は、複数の業者に見積もりや相談をお願いし手間がかかっていました。
そういった現状を踏まえ、担当者の勘と経験によらない画一的な評価方法が必要だと言えます。
膨大な書類が発生
不動産取引には大量の書類が発生します。
というのも、不動産取引では取引価格から契約内容、名義などありとあらゆる項目を詳細に決めておく必要があるからです。
以下は、不動産のタイプにもよりますが、仮に不動産会社に不動産を売却しようとした際に生じる必要書類です。
- 登記簿謄本or登記事項証明書
- 売買契約書
- 物件購入時の重要事項説明書
- 登記済権利証or登記識別情報
- 土地測量図・境界確認書
- 固定資産税納税通知書
- 固定資産税評価証明書
- 物件の図面
- 設備の仕様書
- 建築確認済証
- 検査済証
- 建築設計図書
- 工事記録書
- マンションならば、管理規約、使用細則、維持費関連書類
- 耐震診断報告書
- アスベスト使用調査報告書
さらに、買い手に引き渡す際には、- 本人確認書類
- 実印・印鑑証明書
- 住民票
- 銀行口座の通帳
- ローン残高証明書orローン返済予定表
- 不動産のパンフレット
どれだけ、膨大な書類が必要かがおわかりいただけたかと思います。
必要書類を用意して、必要項目が記載されているかどうかを確認した上で全て揃っているかどうか確認するだけでも大変な労力を消費するのではないでしょうか。
人口減少による需要の低下
不動産の相場は需要に敏感に変化します。需要以上に高い価格を提示していては、いつまで経っても買い手は付きません。
特に、近年不動産業界に影響を与えている課題として人口減少による需要の低下があります。
実際、国内の出生数が今年は90万人を下回るという予測がニュースになりました。
人口減少は不動産に対する需要の低下に繋がります。
そのため、社会の需要に対して適性価格を正確に把握することが重要となります。
売り手と買い手のマッチングに時間がかかる
不動産取引では売り手と買い手のマッチングに時間がかかることが多いです。
誰から見ても良い物件であれば売却は簡単ですが、そうでなければ買い手を見つけるのは一苦労です。
その原因としては、上記に挙げたような適正価格からの乖離もありますが、買い手にとっての選択肢の多さもあります。
不動産を探す場合、情報はWeb上の仲介サイトや不動産屋の実店舗、広告などありとあらゆる媒体から情報を集める必要があります。
しかし、人間の処理能力には限界があるため、全ての情報を把握して最も自分に合った不動産を見つけるのは不可能に近いです。
そのため、人間の代わりに膨大な不動産情報を分析し自分に合った不動産を選んでくれる存在が必要となります。
人手不足
現在の日本では、少子高齢化の影響で慢性的な人手不足が起きています。不動産業界も例外ではなく、少子高齢化の影響が及んでいます。特に、就業者の高齢化や後継者不足が顕著になっています。
国土交通省によると、2019年の段階で不動産業界の就業者のうち半数以上が60歳以上であることがわかります。
後継者不在率も2018年に68.9%と他の職種に比べて高い傾向があります。
このように、不動産業界は深刻な人手不足の課題を抱えています。
労働環境
不動産業界は過酷な労働環境も問題視されています。
パーソル研究所が実施した研究によると、月に30時間以上残業する人の割合が3割を超えており、残業の多い業種ランキングの4位にランクインしています。
このように、不動産業界には「残業が多い」「長時間労働」という問題が挙げられます。
不動産Techに注目が集まっている
上記のような課題を解決する手段として注目されているのが不動産Tech(もしくはProp Tech、ReTech、Real Estate Tech)です。
不動産Techとは「不動産×Technoloogy」の略称で、不動産業界が抱えていた課題を最新のテクノロジーで解決しようとする取り組みをいいます。
特に最近では、インターネットを活用したマッチングやシェアリングサービスが盛んです。使われる技術としても、AIやVR、ARなどさまざまです。
不動産Techの中でもAIが活用される理由
不動産Techの中で、特に活用されているのがAIです。
AIにとって重要なのがデータです。不動産業界はデータが豊富に蓄積されているのが特徴です。
築年数や面積、立地とその価格などのデータがほとんど全ての不動産に登録されています。
そのため、これからはそういった蓄積されたデータをいかに活用していくかが重要になってきます。
AIを不動産に活用するメリット
ではAIを不動産に活用するメリットを紹介します。
AIを使えば業務効率化に
不動産にAIを活用するメリットは、不動産会社と一般ユーザーの業務や手間の負担削減につながることです。
AIは大量のデータから特徴量を自動抽出することで、人間のように作業を処理することができます。
そのため、人手不足が深刻化する今後は人手に代わる労働力としてAIが注目されています。
データ管理、分析作業の精度向上
データ管理や分析作業の精度も向上できます。不動産会社では膨大な量の顧客データや不動産情報を抱えています。そのため、データ管理やその分析作業に正確性が求められます。
AIにその作業を任せることで、ニーズをシステム上で把握できるため、顧客に対して最良な物件を分析から導けます。
新サービスの開発
AIを活用した新しいサービスを開発できます。これまでの常識からかけ離れた画期的なシステムもAIを活用すれば開発できます。
「不動産査定AI」はAIを活用した新サービスの一例です。不動産仲介をAIが代行するサービスで、ユーザーが気軽に素早く利用できるといったメリットがあります。
このような新しいサービスは人が行う作業と分担して業務効率化を図れます。
顧客満足度の向上
上記で挙げたメリットから、AIを不動産に活用させると一般ユーザーも気軽に利用しやすくなることがわかります。今までは不動産の利用に壁があった人たちも気軽に利用できるようになりました。
また、AIを使うことで正確なデータから物件を提案できるので、業務の精度も向上します。
したがって、AIを導入することで顧客満足度の向上も見込めることがわかります。
不動産業界の仕事がなくなる可能性はあるのか
AIが不動産業界に導入されるにつれて、不動産業界の仕事がAIにとって代わられるという話が出てきています。
しかし、AIにできない仕事もたくさんあるので不動産業者の仕事はなくならないでしょう。
不動産の価値は、住み心地や気持ちなどのデータ化できない感情で決まる側面があります。そのためお客様の気持ちを汲み取るといったAIにはできない仕事は、人間がしたほうが顧客満足度が上がります。
不動産業界のAIサービス11選
不動産業務を円滑化させるAIサービスがたくさんあります。人間がすると時間がかかったり、専門知識が必要な作業をAIが担います。
- AI move – 住まい探し
- BRaiN – 資産価値の算出
- VALUE AI – 投資用不動産AI診断
- キャッシュフローシミュレーター – 収支の予測
- AIさくらさん – 不動産管理
- SQ-2 – 不動産警備
- Airbnb – スペースシェアリング
- Gate-不動産業務システム
- Neo Face-顔認証システム
- EXA AI SmartQA-チャットボット
- SmartTargeting-物件売り出し
それぞれ紹介します。
AI move – 住まい探し
AIがあなたに最適な家屋を提案してくれます。
築年数やエリア、間取りなどユーザーの好みをAIが学習し、最も好みに近いと思われる物件からレコメンドしてくれますので、部屋探しの手間を大幅に削減できます。
また、契約までアプリ内で簡潔に済ませることができるのも嬉しい点です。
BRaiN – 資産価値の算出
マンションディベロッパーの土地取得をサポートする推定土地価格算出システムです。
土地を取得する際の価格査定において、担当者間の相場感の差や相場の不明瞭さという課題を解決できます。
購入したい土地の位置を入力すると、不動産の供給データからAIが価格を推定。周辺の不動産やエリアの情報などを盛り込んだ報告書を作ることができます。
VALUE AI – 投資用不動産AI診断
投資用不動産AI診断サービスです。
所有している不動産の今後の価値をAIが正確に査定してくれます。
実際に不動産に足を運ばなくても、最寄駅や間取りなどの必要項目をネットで入力するだけで簡単に賃料の変動などを推定できます。
俯瞰的な立場で、最適な不動産の運用を行えるのではないでしょうか。
キャッシュフローシミュレーター – 収支の予測
Aiを生かして最長50年間のキャッシュフローを推定することができます。
不動産の家賃収入でローンを返済できるのかを検討するうえで重要な賃料や空室率などをAIが正確に予想してくれます。
よりリスクの低い不動産投資が可能になるのではないでしょうか。
AIさくらさん – 不動産管理
不動産管理人の代わりをしてくれるAIです。
様々なキャラクターのアニメーションで、人間に近いコミュニケーションを実現できるのが特徴です。
居住者からの問い合わせにも迅速に対応できるため、満足度向上にも繋がります。
SQ-2 – 不動産警備
AIを生かした不動産警備ロボットです。
先端についたセンサーで周囲の環境を認識し、自律的に動き回ることができます。
建物内の警備のほか、消化器などが適切な位置にあるかなど不動産管理も担ってくれます。
三菱地所が自社で扱うビル内での活用を目指しています。
SQ-2の取材記事はこちら▼
Airbnb – スペースシェアリング
Airbnbは世界に展開する民泊プラットフォームです。
Airbnbでは需要予測にAIが使われています。シーズンによってどれくらいの需要があり、いくらで貸すのが適性かをAIが正確に予測してくれます。
Gate-不動産業務システム
GateはLEEWAYS株式会社が開発した不動産業務システムです。
不動産ビッグデータをAIが分析し、賃料・利回り相場・価格などの市場分析情報を正確に分析できます。
Neo Face-顔認証システム
Neo FaceはNECが開発したAIの顔認証解錠システムです。認証制度は99.2%で、安全面が保証されています。
マンションなどでのエントランスで顔認証のオートロックが可能になるので、住人が玄関に近づくだけで素早く解錠できます。
EXA AI SmartQA-チャットボット
EXA AI SmartQAはソフトバンクの開発したAIチャットボットです。営業活動の業務効率化や営業力強化に役立ちます。
このチャットボットにさまざまなデータを学習させ、営業担当者の疑問に即座に回答できるシステムを導入することで営業に必要な情報を簡単にチャットボットから収集できるメリットがあります。
SmartTargeting-物件売り出し
SmartTargetingはアメリカのSmartZip Analyticsが開発したターゲットを推定するAIシステムです。
膨大な量の住宅や世帯情報から不動産価格データや保有者のパーソナルデータなどをAIに学習させ、物件を売り出す可能性が高い世帯を絞ります。
営業活動において、ターゲットをAIがデータに基づいて選定してくれるので業務の効率化が図れます。
まとめ
不動産にAIが活用されることで、今まで課題だったあらゆる問題を解決することができます。
業務効率化のほか、買い手と売り手の間に立つことによる市場の効率化、顧客満足度向上などその効果は計り知れません。
今後も、不動産へのAI活用はさらに活発化していくと予想できます。
慶應義塾大学商学部に在籍中
AINOWのWEBライターをやってます。
人工知能(AI)に関するまとめ記事やコラムを掲載します。
趣味はクラシック音楽鑑賞、旅行、お酒です。