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2020.02.04

5Gだけじゃない!AI時代を支えるWi−FI技術を総ざらい

最終更新日:

今となってはWi-Fiなしに毎日の生活を送ることは難しいでしょう。YouTubeやNetFlixをはじめとした動画サービスだけでなく、配信もWebを通して盛んに行われるようになり、大容量の通信を下支えしている技術であるWi-Fiが不可欠な社会になりました。

また、企業においても、手軽に持ち運べるノートパソコンの利用にはWi-Fiが欠かせません。膨大なデータのダウンロードにかかる時間の違いが、業務の効率に大きく影響してきます。

AIの技術が発達し、「データが石油」とも言われるようになった昨今、ネットワークの進化において、5Gの進化が注目されていますが、Wi-Fi技術の進化も見逃すことができません。さまざまなデバイスがインターネットにつながるIoTの時代にWi-Fi技術がどのように進化していくのか、この記事を通して深堀りしていきたいと思います。

この記事では、Wi-Fiプラットフォーム事業を手がけるPicoCELAの古川氏に詳しく話を伺いました。

世界のトラフィックの6割はWi-Fi ーAIの進化も支えてきたWi-Fi

今となっては使ったことがない人はいないであろうWi-Fi技術はAIの進化においても重要な役割を果たしています。

ーWi-Fi技術はもはや生活の大事なインフラになっていると思います。今、Wi-Fiはどれくらい使われているのでしょうか?

「No Wi-Fi, No Life」と言えると思います。もはやWi-Fiは必需品です。スマートフォンなどの端末がインターネット接続する際の通信回線として、有線ではなく無線を第一とする「ワイヤレス・ファースト」の時代になりましたが、まさにその通りです。

今、Wi-Fiは、会社や自宅などの自営のブロードバンド無線通信網としてだけではなく、公衆網としても広く浸透しています。Wi-Fiスポットなどに注目が集まっていますよね。実は、世界のモバイルトラフィックの6割超はWi-Fiを経由しています。携帯キャリアの回線(LTEなど)から吐き出されるトラフィックは実は4割にも満たないんです。

ー6割もの通信トラフィックがWi-Fi経由とは驚きです。これから5Gなどが普及していくかと思いますが、Wi-Fi技術は衰退していくのでしょうか?

Wi-Fi技術は今後も必要とされるでしょう。 特に、スマートフォン、タブレットやPCの利用において、Wi-Fiは、まだまだなくてはならない存在です。

そもそも、スマートフォンやタブレットには有線LANポートが搭載されていません。

昨今のノートPCにも、大半は有線LANポートが搭載されない時代です。 これらのデバイスでは携帯通信機能は搭載されてなくても、Wi-Fiの通信機能はほぼ100%搭載されており、今後もWi-FI技術の発達が欠かせません。

ー今後もWi-Fi技術は衰退することなく、さらに活躍の幅が広がっていきそうです。AIの文脈では「データ」が重要かと思いますが、今後Wi-FI技術はAIの発展にどのように寄与していくのでしょうか。

今まで多くのデバイスがWi-Fiに接続され、さまざまなデータが授受されてきました。小売店舗での決済端末や監視カメラ、オフィスのプリンタ、工場での工作機械など、インターネットで無線に接続するための通信手段としてWi-Fiは利用されてきました。

さらに今、家庭内においてもスマート家電の台頭に代表されるように浸透が進んできています。エアコン、冷蔵庫、テレビは言うに及ばず、最近はスマートスピーカーの浸透が著しいですよね。
ちょっと前の家庭内で利用されるWi-Fi機器はせいぜい数台だったものが、現在では十数台のWi-Fi機器が接続されているケースも珍しくありません。

これから、IoTがますます広がり、今後もWi-Fiに接続するデバイスは急増していくでしょう。家庭内利用ではスマートウォッチやヘルスケア家電、ビジネス利用では、スマートロック(施錠)やAIカメラなどが挙げられます。

特に画像認識機能を備えたAIカメラはさまざまな用途に活用できることから、大いに普及が進んでいくと予想されます。

ーーIoTが進むとなるとWi-Fi接続が可能な機器の増加も気になりますが、どれくらい増加していくのでしょうか?

出荷台数が多いWi-Fi端末としては、スマートフォン、タブレット、PC、ゲーム機が挙げられます。

これらの総出荷台数は国内だけで年間5000万台にのぼります。我が国のケータイ電話加入者数はおおよそ1億8000万ですので、その4分の1もの新規のWi-Fi端末が毎年、世の中に投入されているということです。

世界のWi-Fi端末出荷台数に目を向けると、日本の40倍以上の規模にのぼります。

そもそもWi-Fiとは?

みなさんが何気なく使っているWi-Fiですが、そもそもWi-Fiとはどのようなものなのか説明できますか?

Wi-Fiの歴史などについて振り返っておきましょう。

ーWi-Fiの歴史について教えて下さい

インターネットの商用利用が解禁され、普及が一気に進み始めたのが90年代半ばです。

それまでインターネット通信は有線LANケーブルを使って接続することが前提でしたが、これを無線化する、つまり無線LAN化の機運が高まっていました。世界最大の電気通信関連学会である米国IEEEは802.11委員会を設立し、インターネットを無線接続するための通信規格の策定を進めました。

IEEE802.11と命名された無線通信方式は1997年に標準化が完了しましたが、通信速度はわずか2Mbps(1秒間に2Mビットの通信しかできない)でした。

その後、通信速度を速めるための新規格が順次策定されました。99年に策定されたIEEE802.11bは11Mbps、同時期に5GHz帯という高い周波数帯で策定されたIEEE802.11aは54Mbpsというブロードバンド性が与えられました。

2020年に標準化策定が終了するIEEE802.11ax規格は最大およそ10Gbpsの通信速度が実現されます。最初のIEEE802.11規格と比べると、実に5000倍のスピードです。

ーーもとからインターネットの利用が目的に作られた通信規格なんですね。

携帯電話とWi-Fi、通信速度競争をけん引してきたのは常にWi-Fiです。

携帯電話は、文字通り「電話」を無線化するために作られた規格であるのに対し、Wi-Fiはインターネットを無線化するために作られた規格です。

例えばLINE通話やZOOM、Skype通話などの普及に見られるように、すでに「電話」はインターネット上のアプリケーションの一つに過ぎません。Wi-Fiは、生まれながらにしてインターネット・ネイティブな無線通信規格なのです。

ーーそもそもWi-Fiの名前の由来はなんですか?

「Wi-Fi」という言葉は、IEEE802.11シリーズに準拠した無線LAN機器の相互接続性を担保するために設立された業界団体(Wi-Fi Alliance)のことを指しています。

複数ある無線LAN通信規格の呼称は、長くIEEE802.11n/ac/axなどが正式な名称でしたが、最近、IEEE802.11n規格をWi-Fi 4、IEEE802.11ac規格をWi-Fi 5、そしてIEEE802.11ax規格をWi-Fi 6と呼ぶようにWi-Fi Allianceが定めています。

これからのAIの進化

ここまでWi-Fiがどのように発達してきたのかに触れてきました。Wi-FIは引き続きさまざまなデバイス同士を接続する大事な通信網を担っていくでしょう。

これからWi-Fiはどのように進化していくのでしょか。

ーーWi-Fiには新規格「Wi-Fi6」が誕生するというニュースを拝見したことがあります。Wi-Fi6について教えてください。

新規格「Wi-Fi 6」はIEEE802.11axの通称です。

「Wi-Fi 6」の標準化は2020年に完了する予定で、同規格に正式準拠した製品が今後続々と市場へ投入されていくでしょう。

従来のWi-Fi 5に比べて、単位時間あたりに伝送できる最大データ量が1.38倍に拡張されたり、混雑時の電波の奪い合いを回避する機構が投入されていて、利便性が大きく向上する規格です。

ーーこれからのWi-Fiの進化にあたって課題はあるのでしょうか?

Wi-Fi通信が一般化し、普及が進むにつれて電波の混雑が深刻になってきています。

空港やカンファレンス会場などで多くの人が同時にWi-Fiを利用する場合、通信品質が著しく劣化する現象を経験した人は多いでしょう。

Wi-Fi 6が導入されれば、電波混雑の問題はある程度の改善は期待できます。

しかし、同時に接続する他の利用者も等しくWi-Fi 6規格を使ってはじめて効果は最大化されます。

Wi-Fi 5が主流の現在でもWi-Fi 4やそれ以前の旧い通信規格の端末が混在する現状をみると、Wi-Fi 6製品が市場に投入されてもすぐに劇的な改善を期待することは難しいといえます。

ーーこれからのWi-FIはどうなっていくのでしょうか?その課題は解決できるのでしょうか?

解決策は大きく2つあります。1つ目の解決策は、Wi-Fiに新たな周波数帯を開放することです。

2019年9月に米国のFCC議長は、6GHz帯という新たな周波数帯へWi-Fi 6を開放する検討を始めたことを認めました。これを受けてWi-Fi Allianceは「Wi-Fi 6E」という新規格の策定に着手しています。
6GHz帯はWi-Fi以外の無線通信システムがすでに利用していて、今後、周波数の移動についての議論が活発化するでしょう。

この状況は、日本においても同様で、動向に目が離せません。新たな周波数帯は、Wi-Fi 6つまりIEEE802.11ax規格に準拠した端末のみが利用できるので、効率の低い旧規格の通信を排除することができます。Wi-Fi 6が持つ最新の電波混雑緩和技術の効果が大いに発揮できるでしょう。

2つ目の電波混雑問題への解決策は、とにかく「アクセスポイントをたくさん設置すること」です。

アクセスポイントの設置台数を増やすと、電波干渉が余計に増えると感じる読者もいるかもしれません。

しかし、正確には、たくさんの端末が同時に電波を送信した場合に電波干渉は増えます。

ある与えられた空間に、ある一定数の端末が通信を行う場合、アクセスポイントの設置密度を増やしたほうが確実に電波の混雑は緩和できます。Wi-Fi通信規格では、端末とアクセスポイント間の通信速度を常に調整しており、両者の距離が長くなればなるほど、通信速度は低下します。

例えば、端末とアクセスポイントが10Mbpsで接続した場合と、100Mbpsで接続できた場合を考えてみましょう。

同じファイルをダウンロードする場合、後者は前者の10分の1の時間で受け取ることができます。逆に前者は、後者に比べて10倍の時間、「電波を送信し続ける」ため、その期間、電波干渉を周囲へまき散らしてしまうのです。

アクセスポイントの設置密度を高めると、平均的な端末とアクセスポイント間の距離を短くすることが出来ます。つまり、通信速度を高めることができるようになります。至極簡単な手法ですが、アクセスポイント(あるいは基地局)の設置密度を高める手法は、電波干渉問題を解決しモバイル通信システムの容量を飛躍的に高める、きわめて効果的で現実的な解決法だと思います。

ーーしかし、たくさんのアクセスポイントを設置するにはコストもかかりそうです。また自宅への設置なども大変そうです。

たくさんのアクセスポイントを設置することは確かに大変な作業です。

特に各アクセスポイントへのLANケーブル配線は、美観への配慮、既存の電源線との干渉を回避するための慎重な配線計画、100mが限界であるLANケーブル配線長を考慮した中継ハブ設置計画など、大掛かりな設置工事が必要となってしまいます。

ーーでは、しばらく課題は解決はデキないのでしょうか?

「メッシュWi-Fi」の技術などを活用するべきです。

「メッシュWi-Fi」は、アクセスポイント同士が無線で中継しあうことでLANケーブル配線を不要にする技術です。大元となる親玉のアクセスポイントのみにLANケーブルでインターネット接続すれば、高密度Wi-Fi化のための追加のアクセスポイントはLANケーブル配線なしで、電源コンセントに挿すだけで直ちに増設ができます。

2016年前後からコンシューマ市場で現れた小規模メッシュWi-Fi製品は、瞬く間にブームとなり、米国では市場に出荷されるコンシューマ製Wi-Fiアクセスポイントのおおよそ半分はメッシュWi-Fiであるとの統計もあります。

同様の流れは、今後、エンタープライズ市場へも広がると予想されます。今後、ますますWi-Fi通信の利用者が増える状況を考えると、あらゆる利用シーンにおいて「メッシュWi-Fi」が必須の技術となっていくでしょう。

さいごに

5G技術が注目される今、しかし、多くのPCやタブレットはWI-Fiを経由してネットワークに接続されています。

さらにこれからは多くのデバイスがWi-Fiを通してネットワークに接続されることで、膨大なデータが行き交い、そのデータを処理するAIの活躍の幅も広がっていくでしょう。

特に「Wi-Fi6」や「メッシュWi-Fi」の技術については知らない方も多いと思います。さらに通信速度が大事になる時代、一度、自宅や会社のWi-Fiネットワークについて、考え直してみると良いでしょう。

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