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2020.08.10

シンギュラリティの提唱者 ーレイ・カーツワイルとは

最終更新日:

『2045年にAIが人間の知能を超える。』

そんな言葉を聞いたことはありますか。

まるでSFのような話ですが、この主張は世界を驚かせ大きな話題となりました。

2045年問題」とも呼ばれるこの主張を展開したのはAI研究者、または未来学者とも言われるレイ・カーツワイル氏です。

「2045年問題」は2005年に出版した著書で語られ、当時から15年経った今でも多くの研究者が注目しています。

今回は、この2045年問題を提唱したレイ・カーツワイル氏という人物像や研究内容、主張などに関して解説します。

 

芸術的な天才肌!?レイ・カーツワイルという人物

1948年、アメリカ・ニューヨークで生まれたカーツワイル氏。

父親は音楽家、母親は画家という芸術一家で育ちました。

12歳の頃に当時ではまだ珍しかったコンピュータに出会い、プログラミングに熱中したそうです。高校生の頃には統計分析や作曲プログラムを作っていたようで、学生時代から天才ぶりを発揮していたのでしょう。

理系大学の世界最高峰とも言われるマサチューセッツ工科大学に在学中に起業して以降、OCRソフトウェア(画像のテキストをデジタル文字に変換する技術)やスキャナー、文章音声読み上げマシンなどさまざまな技術を発明し、世に送り出しています。

そして30代の頃には世界的音楽家スティーヴィー・ワンダーと会社を設立しています。

ワンダー氏はカーツワイル氏の発明に興味を持ち、「機械を使って楽器をの音を再現する仕組みを作ってほしい」と依頼しました。そうしてシンセサイザーという鍵盤楽器が開発され、大いにヒットしたそうです。

このように天才発明家として活躍していたカーツワイル氏ですが、40代以降は多くの本を執筆し、その中で「技術革新」に関してさまざまな予測を展開していきます。このことが彼が未来学者と言われるゆえんとなります。(著書に関してはこの記事の一番下で紹介しています!)

『The Singularity Is Near:When Humans Transcend Biology』(2005) では「シンギュラリティ」という言葉を世間に初めて広め、彼を世界的に有名にした著書となりました。

なぜこんなにもシンギュラリティが世間の注目を集めたのでしょうか。ここからはカーツワイル氏の予測を元に、技術革新・AIの進歩がどこまで来ているのかを探ります。

シンギュラリティ・2045年問題とは

シンギュラリティは技術特異点と訳され、将来AIが人間の知能を超える、その地点のことを指します。

そしてその時が2045年にやってくるとカーツワイル氏は予想しているわけです。

▼シンギュラリティ・2045年問題に関して詳しくはこちら

カーツワイル氏の予言・予測内容

1990年〜現在(2020年)までに起こると予測した技術発展

カーツワイル氏はシンギュラリティを予測する以前に出した著書でも技術進歩に関する予測をしています。

『The Age of Intelligent Machines』(1990)で予測した内容の的中率は86%だったとカーツワイル氏本人は主張しているように、その一部は現在に至るまでに実現しています。

彼がこれまでの著書の中で具体的にどのような予測を立てたのか見ていきましょう。

・インターネット社会の到来、検索エンジンの誕生

・コンピュータの小型化

・ブロードバンドインターネット(光回線など)はどこでも利用できるようになる

・2000年までにチェスや囲碁で人間を打ち負かすAIが誕生する

・バーチャルリアリティの生成がされ、映像が投影される眼鏡の誕生

・2015年までに家庭用ロボットの普及している可能性がある

 

このようにカーツワイル氏が2010年代までに起こると予測した多くのことが的中しています。

彼がこうした予測を始めた1990年代は、パソコンがやっと一般に普及し始めた時代です。彼の将来を見通すような分析力もさることながら、たった十数年でここまで発展したコンピュータや人工知能(AI)の技術にも驚きです。

現在〜2045年までに起こると予測した技術発展

次に、カーツワイル氏が2020年以降の未来で起こると予測する技術発展に関して説明します。

彼はGNR技術が発展していくことでシンギュラリティの未来に近づくと考えています。

GNR技術

G(Genome Science・遺伝子技術)遺伝子を人工的に操作する技術。医学や生物学の分野で多く研究されている。「ゲノム編集」という新たな技術によって、遺伝子改変されたデザイナーベビーやクローン生物の誕生、若返りも近い将来可能になるといわれている。

N(Nano-technology・ナノテクノロジー):原子や分子のスケールにおいて、自在に制御する技術。太陽電池や3Dプリンターなどもナノテクの結集された製品。データ科学との組み合わせで高性能な製品や薬を研究・開発されている。

R(Robotics・ロボット技術):ロボットの構成、制御、情報認知、知能などの多分野にわたる技術。 IoTやビッグデータを活用したAGIなどの人工知能の開発で私たちの日常にも浸透してきている。

 

この3つの分野が同時並行で革命的に発展していくことによって、人間と社会の革命的な変化が進んでいくとカーツワイル氏は主張しています。

上記の技術の発展で将来の社会をカーツワイル氏は次のように予言しています。

2020年代

「ナノテクノロジー革命が始まる10年。」

  • サイズが100ナノメートル未満のコンピュータが可能になる。
  • 2029年、教育をうけた人間と「強いAI」は同等の知性になる。
  • 医療用ナノマシンが使用される。
  • 血流にナノボットをいれることができるようになる。

2030年代

  • 精神転送(自分の脳をスキャンして意識や記憶をバーチャルな世界に送ること)が可能になる。
  • 他人の感覚をリモート体験できるようになる。
  • 人の脳内のナノマシンは脳の認知、メモリ、感覚機能を拡張することが可能になる。
  • バーチャル売春が盛んになり、法規制が行われる。

2045年

  • 人工知能が技術的特異点を超え、人間を上回るようになる。
  • 人間強化によりサイボーグ化され、人間とコンピュータの区別が存在しなくなる。

シンギュラリティ後

  • 宇宙が錯覚する。テクノロジーと合体して死を克服した人類の知性が宇宙を覆う。

 

なんだか信じられないような話ばかりが並んでいますね。本当に実現するのか、疑問に思う方も多いでしょう。しかし、世界ではカーツワイル氏のシンギュラリティ論が大きな注目を集めています。なぜでしょうか。

2045年にシンギュラリティは本当に実現するのか

今までカーツワイル氏はインターネット社会の発展など、さまざまな予測を当ててきていますが、シンギュラリティに対しては懐疑的に考えている研究者は少なからずいます。

ピューリッツァー賞を受賞した作家ダグラス・ホフスタッター氏は、2045年までに人間を人工知能が超えるという予測は実行不可能であると主張しています。

シンギュラリティ予測の概念であるムーアの法則を示したことで知られるゴードン・ムーア氏でさえ、それは決して起こらないとしています。

一方でシンギュラリティが注目されるようになった背景には、2012年以降のディープラーニングの発展があります。近年、自動運転車などさまざまな分野で研究・開発、実用化が進んでいることから、GNR技術の発展にも大きな影響を与えそうです。

例えば、これから先の10年でナノテクノロジーが大きく進展するとありましたが、これにもディープラーニングの技術が寄与していくと考えられます。

ナノテクノロジー × ディープラーニングに関して気になる方はこちら▼

現在のレイ・カーツワイル

2012年からカーツワイル氏は自然言語処理の理解のためのシステムをGoogleで開発しており、Gmailの返信をAIによって自動生成するスマートリプライ機能の開発に携わっています。

また、「不老長寿」へ挑戦をしているようです。カーツワイル氏の父親は若くして亡くなっています。自分にもその遺伝を受け継いでいることを自覚し、毎日サプリメントを250粒飲み、毎週6回血液に栄養剤を注入しているという話もあります。これによって老化を遅らせ、シンギュラリティの瞬間を見届けたいと考えているそうです。果たして叶うのでしょうか…?

著書紹介

最後に彼がこうした予測を書いた著書の一部を紹介します。彼が提唱するシンギュラリティやこれからの技術進歩に興味を持った方はぜひお手に取ってみてください。

『The Age of Intelligent Machines』(1990)

カーツワイル氏はこの著書でインターネット社会の発展とチェスにおけるコンピュータの勝利を予測し、若干の誤差はあったものの、見事に的中させました。

米国出版社協会から「ベスト・コンピュータ・サイエンス・ブック」に選ばれた書籍です。

https://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/0262111217/acmorg-20

 

『The Age of Spiritual Machines: When Computers Exceed Human Intelligence』(1999)

こちらではシンギュラリティの元となった「収穫加速の法則」(科学技術は指数関数的に進歩するという法則)をまとめた著書です。

https://www.amazon.co.jp/Age-Spiritual-Machines-Computers-Intelligence/dp/0140282025

日本語訳(田中三彦・翻訳)はこちら▼

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798100226/hnishim-22/

 

『The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology』(2005)

シンギュラリティに関して初めて書かれた著書です。

英文はこちらのサイトで公開されています。

日本語訳(井上健・翻訳)はこちら▼

https://www.amazon.co.jp/ポスト・ヒューマン誕生-コンピュータが人類の知性を超えるとき-レイ・カーツワイル/dp/4140811676

終わりに

今回は大天才・レイ・カーツワイル氏の人物像や研究内容を紹介しました。

皆さんは私たちの住む世界は2045年にどうなっていると思いますか?

バーチャル空間や他人の感覚を体験できるなど、本当に実現したら面白そうですが、一方で倫理面での問題や人間としての心を失ってしまいそうな恐怖も覚えます。

私たち人間ができることの役割を見失うことなく、正しく技術を扱っていかなくてはいけないのかもしれません。

 

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