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2020.08.13

ディープラーニングの活用はこれから。産業ごとにバーティカルに変化 -JDLA理事長 松尾豊氏の特別講義レポート

2020年7月4日(土)に、2020年第2回 G検定(ジェネラリスト検定)の試験が行われ、今回は過去最高となる12,552名が受験し、8,656名の合格者が誕生しました。

そしてG検定およびE資格(エンジニア資格)を主催している日本ディープラーニング協会(JDLA)は、G検定/E資格の合格者を対象に「JDLA 合格者の会」を7月23日にオンラインで開催しました。

昨年の合格者の会のレポートはこちら▼

合格者の会では、JDLA 理事長の東京大学教授 松尾豊氏から合格者に特別講義が約45分間行われました。特別講義では、AIを取り巻く現状やこれから向かうディープラーニング技術の方向性、松尾氏の描くビジョンなどが語られました。

この記事では、合格者の会で語られた松尾氏の特別講義の内容の詳細をレポートします。

松尾氏はこちらのイベントでもAIの未来に関して語っています。

ディープラーニング技術は進展しているが活用はまだこれから

松尾氏:AIと一口に言ってもいろんな意味合いがあり、IT活用やデータ利用、ディープラーニングなどを指したりします。中でも、技術的に大きな変化が起きているのはディープラーニングであり、これからもかなり大きな変化が起こり続けると思っています。

ディープラーニングは今回の新型コロナウイルスにもいろんな形で活用が進んでいます。日本でも感染可能性を推定するアプリや、CTなどの医療画像の診断、創薬にも活用されています。

しかしマクロで見ると、日本はこうしたITへの投資額が諸外国に比べると成長に寄与していません。クラウドの利用や行政のオンラインの利用も軒並み低い傾向にあり、全産業の底上げに寄与していないというのが現状です。ディープラーニングを積極的に使って日本のITのレベルを上げていく必要があると思っています。

ディープラーニング技術はどこへ向かう?

変化に対応できる対応できる企業が生き残る世の中に

松尾氏:「ディープラーニングを使ってなにか新しいことができる」というだけで大きな価値になることはほとんどなく、ディープラーニングを使って一部業務のデジタル化が進み、それをきっかけにして全体の効率化が進むことが価値になります。

例えば車のナンバープレートを読むことがディープラーニングでできますが、それだけで価値になるのではありません。それによってトラックがどこにいるかが分かり、オペレーションの効率化に繋がるから価値があるということなんです。
ディープラーニングを使うことによって従来できなかったことができるようになり、それよって業務の効率化、そして業界全体のサプライチェーン、バリューチェーンの効率化がこれから起こっていくんだと思います。

すると業界全体の変化のクロックスピードが上がっていきます。これは従来、人間がやっていたことが自動にかわることでプロセスが高速化し、それによって社会全体がいろんな変化に対応することができるようになっていくのではないかと考えています。

こうした変化に早く対応する企業ほど生き残るのではないかと思います。特に今回のディープラーニングで大きな変化がおこるのは、フラグメント化された産業ではないかと思っています。

松尾氏:現状はこのように色々なステップがありサイクルの長さが変わってきます。一般的にいって、速く回すように変わってきています。

従来はデジタルの世界、インターネットの世界でサイクルが非常に速かったものが、今、少しずつリアルの場に滲み出てきてそれが加速してきているということだと思います。

ライフサイクルの短縮率をみると、家電とか食品などの消費者に近いところでライフサイクルが短縮してきていることが言われています。企業の側から見ると、競争優位を保てる期間が短くなってきていると言われていることから、確実にクロックスピードは上がっています。

次にくるのはB2Bの垂直SaaSか

松尾氏:注目するポイントは、人間系が律速(システム設計上の制約)になっている部分が早くなることです。100%の認識精度は出ないのでどのように(プロセスの中で)人間系を組み合わせていくのかをうまく作る必要があります

うまくいっているビジネスの多くは完全に機械に置き換えるのではなくて、従来の業務を自動化することで効率化し、人間系にテイクオーバーする仕組みを含めてつくりだすことをやっているように思います。

これが業界全体にまたがってくると融資、マッチングなどに大きな影響が出てくると思います。一言で言えばB2Bの垂直SaaSだと思います。人事、マーケティングなど水平SaaSだと上場した企業も多いのですが、食品や金融など分野ごとに区切ったSaaSは、今現在水面下で急速に伸びています。

特にリアルな場が関わることが多く、ディープラーニングとの相性がいいはずなのでチャンスなのではないかと思っています。特にこの部分というのは業界知識やヒアリングの能力が重要で、その業界におられる方の知識が効いてくるので、いろんなアプローチができるのではないかと思っています。

産業ごとのバーティカルな変化へ

松尾氏:これからは業界ごとのバーティカルな変化が起こってきます。これからはディープラーニングの自動化の技術をきっかけにしてリアルとデジタルを繋ぐのは大きな目的になってきます。

当然、大企業とスタートアップの連携が重要になってきます。従来的なものづくりとディープラーニングの新しい技術を融合させることが求められるので、お集まりの合格者の皆さまの技術が使えるのではないかと思います。特に日本が強い領域でグローバルな競争に繋がっていければいいのかなと思ってます。

これからのAIの技術発展

松尾氏:これから技術的発展が起こるのは、「機械/ロボット系への活用」と、そのあとに「言語処理での真の意味理解」ではないかと思っています。

僕は、以前から知能の構造はおそらく二階建ての構造をしていると思っていて、一階部分がパターンの処理、二階の部分が言語の処理をしていると言ってきました。

一階部分には世界モデルが重要です。世界モデルというのは人間の頭の中にあるモデルをいいます。ガラスのコップを落とすと、割れる映像を想像できます。もし下に布団があったら割れないと分かるわけですが、それは我々の中にモデルがあるからです。これが世界モデルです。これを学習によって作る技術がここ2,3年で急激に進んでいます。DQN(Deep Q-Network)もそうした技術の1つです。

こういうことができると、ロボットの制御がしやすくなります。モデルベースの強化学習ができるようになるんですね。あらかじめ定義されたものではなくて学習でやることができてくるはず。そのためのシュミレーターの開発競争が活発になっています。

松尾氏:次に二階部分の話です。最近はDeepLが非常に良くて、論文を読むときにも便利です。またGPT-3がでてきて、いかにこれがすごいかがというのを英語圏では話題になっています。何がすごいかというと、この記事自体をGPT-3が書いたということなんです。自動で記事をつくれる非常にすごい技術です。

しかし限界があります。水の入ったガラスを床に落とすとどうなるかをGPT-3に当てさせると、「転がる」や「もっと壊れて床の上に散らばる」などと答えるんです。それっぽいんですけど違いますよね。本当に何が起こるかが理解できていない、これが現在のAIには真の意味理解ができていないと言われる所以です。

これを世界モデルと繋ぐことで解決できると考えています。言語が世界モデルを駆動すればいいんです。言語モデルが世界モデルを駆動してある種のシュミレーターとして動くのではないかと思っています。これ自体がある種の世界モデルになって、また新たな言語モデルができるということです。

講義の後半の学術的な話はほとんど僕の妄想です。ですが、言えるのは、今のディープラーニングの技術というのは、まだほんの始まりに過ぎなくて、人間の知能の奥深さや言語、意識の仕組みの奥深さを考えるといろんなブレイクスルーや技術が発見されて、いろんな産業に使えるようになるのではないかと思います。この技術は始まったばかりで10年20年かけていろんな驚きをもたらしてくれるのではないかと思っています。

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