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2021.02.05

多面評価とは メリット・デメリットや導入事例を解説

最終更新日:

多面評価アイキャッチ労働人口の減少、働き方改革、転職市場の活発化など、労働環境が以前よりも大きく変化した現代では、「人事評価制度」の重要度が以前より増しています。

「評価」に対する従業員の不満は、離職率にも大きく影響を与えます。従って、多くの日本企業が旧来の評価方式から、従業員の能力をより適切に評価することが求められています。そこで注目されているのが「多面評価」です。

多面評価とは

多面評価とは別名360度評価とも呼ばれ、さまざまな立場の関係者が1人の従業員を評価することです。

従来の評価制度では、ほとんどが上司によって評価されるもので、その問題点を解決する評価制度として昨今注目されています。

多面評価では、上司だけでなく同僚や部下、他部署の社員などによって多面的に評価されるものです。従業員が仕事上のさまざまなフェーズ(360度)で関わる人たちです。取引先や顧客の声も評価として抽出される場合があります。

より多くの従業員からの評価によって、上司の属人的な評価を防げるほか、従業員の本来の実力を見出し、適切な人材配置も可能となります。

また部下から上司に対して、マネジメント能力を評価することもあります。

多面評価イメージ図

多面評価の例

多面評価はさまざまな立場から評価するため、被評価者によって評価項目を変更する必要があります。具体的には以下のような例があります。

  • 管理職に対してマネジメント能力を評価する
  • 一般職員に対して仕事を実行する能力を評価する
  • 意欲評価
  • 行動評価

などがあります。

多面評価をする際に、重要な点が2つあります。

  1. 改善点や問題点は根拠を明確化して指摘する
  2. 批判ばかりの評価はしない

上記のように、多面評価は、評価の客観性を担保し、人材育成に活用するために用いられます。

従来の評価制度との違い

評価制度として日本では昔から、勤続年数に伴って能力が上がるとみなす、勤続年数をベースとした「年功序列制」が採用されています。

そのため、上司が部下を評価する制度が今でも浸透しています。

年功序列制では、高い賃金を得ているベテラン社員の定着率が高い一方、ベテラン社員と比較して賃金が低い若手社員の定着率は低くなります。そのため企業の人件費の高騰が問題となります。

その後、成果主義が浸透し、従業員を適切に評価するために多面評価が注目されるようになりました。

多面評価により、能力が適切に評価されることで、従業員のモチベーションが高まり、早期離職を防止する効果があります。

なぜ多面評価が注目されている?

多面評価は、旧来の年功序列制度や終身雇用制度が崩れたため、注目されるようになりました。それに伴い、組織形態をフラット組織に移行する企業が増加しています。

フラット組織とは、管理職を減らし、組織の下位層の権限を増やして、それぞれの従業員が高い自立性を持って行動する組織形態です。

この組織形態では、管理職のマネジメントする人数が増えるため、部下の働きぶりをチェックする時間、コミュニケーションをとる時間を確保しにくくなります。

さらに、成果主義の浸透により、昇給や昇格といった処遇の格差も広がってきました。そこで、評価に納得度が必要となり、評価の信頼性を高めるため、多面評価に注目が集まりました。

多面評価メリット

主な多面評価のメリットは以下5点です。

  • 評価の属人化を防止
  • 評価を納得しやすい
  • 職場がより活性化する(チームワークが高まる)
  • チームが透明化され従業員の満足度が向上
  • 従業員の自律性を育成

評価の属人化を防止し従業員が納得する評価ができる

従来の評価制度では、上司から部下に対する一方通行型の評価が一般的でした。

上司の主観的な評価も含まれ、評価の格差が広くなり、従業員の評価納得度は低くなるという問題点がありました。

しかし、多面評価をすれば被評価者は、上司だけでなく同僚(横のつながり)、部下、時には顧客や別のチームの従業員など、様々な立場から評価されることで客観性が高まり、今まで出てこなかった評価を知れます。

被評価者にとって、従来の上司の評価だけでは納得がいかなかったことも、多面評価により納得しやすくなります。

職場がより活性化する

多面評価をすることで、職場が活性化します。

従業員同士のコミュニケーションが増えて、チームワークの強化、チームの改善点がより明確化されるため、課題解決に向けて従業員同士が切磋琢磨することが期待できます。

また多面評価で従業員の自己分析が進むことで、自律性が育まれることが期待されます。

評価基準の透明化 従業員満足度の向上

評価基準が曖昧な場合は、上司や人事担当者に対する不満が募ります。

これは離職率の原因となります。一方で、多面評価をする際には評価基準を明確にする必要があります。評価基準が透明化された企業では、従業員満足度が高まる傾向にあります。

多面評価デメリット

人事評価の知識が何もない従業員が評価に参加すること

上司が従業員を評価する従来の手法はデメリットばかりではありません。経験則に基づいた人事評価は成功する場合もあり、人材配置などに大きく貢献していた事実は否定できません。

多面評価では、今まで人事評価をしたことのない従業員にも人事評価を依頼するため、従業員を適切に評価できない可能性があります。

また、他人の評価を自分が決定する責任感がない場合や、関係性の悪化を懸念して適切な評価がされない危険性もあります。

多面評価の導入事例

カオナビ

株式会社グローバルトラストネットワークスは今期で12期目に入ったばかりの会社で、現在スタッフは150名ほどです。企業の特徴は、外国からの社員の割合が7割にのぼることです。

この企業はチームワークを駆使しながら、業務バランスをとる方法を模索していました。そこで、さまざまな国籍の従業員がいる企業で、従業員一人ひとりを適切に評価するために多面評価を導入しました。

チームのメンバー同士(横のつながり)で評価し合うことで互いに切磋琢磨していく環境を作ることにも成功しました。

参考:株式会社グローバルトラストネットワークス

デメリット解決法

この企業では多面評価と合わせてMBO評価を合わせて採用しました。

MBOとは「Management by Objectives」の略で目標管理制度と呼ばれ、個別またはグルーブごとに目標を設定し、それに対する達成度で評価を決める制度です。

多面評価により横のつながりが強くなると、チームワークを意識しすぎて、数字などの具体的な到達目標に対する意識が低くなる可能性があります。

欠点を補う形で、異なる人事評価制度を組み込み、この企業はデメリットを解決しました。

360度評価支援システム

住商セメント株式会社は被評価者への「気づきの機会」となることを期待して、管理職を対象とした多面評価制度を導入しました。

管理職の課題として、部下に指示を出すばかりになってしまったり、部下からの声に聞く耳を持たず、改善すべき点を正しく認識できなかったり、といったものが挙げられます。

多面評価の導入により、その課題に対して匿名性を担保しながら率直にフィードバックができるため、管理者が自らの行動を振り返る機会を作れました。

参考:住商セメント株式会社の導入事例

デメリット解決法

部下から管理職に対して評価することは、心理的障壁が高く困難なことです。そこで、この企業は評価に用いるアンケートの匿名性を担保しました。

さらに導入当初、コメント欄に「何か特筆すべき点があれば記入してください」と自由記述の欄を設けていましたが、回収率がよくありませんでした。

そこで、定性的な評価として有効なフィードバックになるため、自由記述欄の記入を必須にしたり、問い方を具体的にしたりなど、コメント欄の改善について検討しました。

このように、運用する中であがる問題点を分析し、新たな方法を考えることは多面評価では重要です。

まとめ

多面評価は、従業員の適切な評価につながりますが、企業風土の改善や評価基準を明確化しなければ、上司の発言に従業員が依存し、適切に評価できません。

また、多面評価はすべての企業に万能ではないため、導入する際には、企業に合わせることや従来の評価制度と組み合わせるなどの工夫が必要です。

また、評価基準の明確化・評価後の従業員の適切なフォローも必要になります。場合によっては、通常の査定期間とタイミングをずらしたり、人材育成にのみ活用することも有効です。

これを機に、自社の人事評価制度を見直し、従業員のモチベーションアップや企業風土の改善について深く考えるなど、企業の成長のための施策を考えましょう。

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