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2021.08.19

自治体がDXを進めるための2ステップ|4つのポイントと3つの成功事例も紹介

最終更新日:

自治体DXアイキャッチ

労働力不足が懸念される日本では、あらゆる産業分野でデジタルによる変革が重要視され、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進する企業が増えています。

さらに、コロナウイルスの流行などにより社会が大きく変化するなか、DXの必要性は自治体にまで広がり、「自治体DX」が注目されるようになりました。

そこで今回は、自治体DXの意義や事例、推進する上でのポイントを紹介します。

DXとは?

DXの定義

日本経済産業省は2018年に、「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を発行し、ビジネスシーンにおけるDXを以下のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

引用︰デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(経済産業省)

自然災害やコロナウイルスの流行により、社会や住民の生活が大きく変化しました。そのため、地方自治体でも業務内容やサービスの変革が求められ、多くの自治体がDXに取り組んでいます。

▼DXについて詳しくはこちら!

自治体DXが推進される背景、自治体におけるDXとは?

総務省が示す自治体DXの意義

総務省は、自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画(2020年)の中で、DXの必要性について以下のように述べています。

新型コロナウイルス対応において、地域・組織間で横断的にデータが十分に活用できないことなど様々な課題が明らかとなったことから、こうしたデジタル化の遅れに対して迅速に対処するとともに、「新たな日常」の原動力として、制度や組織の在り方等をデジタル化に合わせて変革していく、言わば社会全体のデジタル・トランスフォーメーション(DX)が求められている。

また、2020年に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」によって示された目指すべき社会のビジョンである、

“デジタル の活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~”

の実現に向けて、自治体DXの意義は大きいとされています。住民にとって身近な自治体がDXを推進することは、社会全体におけるDXの実現に繋がります。

引用・参照︰自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画(総務省)

自治体DXに求められていること

総務省が自治体に求めていることは、大きく分けて以下の2つです。

  1. デジタル技術やデータを活用して、サービスにおける住民の利便性を高める
  2. デジタル技術の導入で業務を効率化し、人的資源で更なるサービス向上を図る

デジタル技術の導入はサービスの質を向上させるだけではありません。デジタル化により、業務が効率化されると、職員の業務負担が軽減されます。

そのため、労働力を更なるサービスの向上のために使えるようになり、新たな価値の創造も目指せるでしょう。

参照︰自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画(総務省)

自治体DX推進計画の重点取り組み事項

総務省は自治体DX推進における重点取り組み事項を6つ掲げています。

  1. 情報システムの標準化・共通化
  2. マイナンバーカードの普及促進
  3. 行政手続きのオンライン化
  4. AI・RPAの利用促進
  5. テレワークの推進
  6. セキュリティ対策の徹底

①情報システムの標準化・共通化

自治体の中心となる業務システムを、国が定めた標準に準拠したシステムへの移行する標準化・共通化が求められています。

自治体の規模や地域に関わらず、どの自治体でも同じサービスを受けられるようになります。

情報システムの標準化・共通化はシステム全体の再構築が必要となり、時間がかかるため、計画的に取り組むことが重要です。

②マイナンバーカードの普及促進

オンラインでの本人確認を可能とするマイナンバーカードは、ユーザーインターフェース(yユーザー・コンピュータ間で情報をやり取りする仕組み)におけるデジタル化の基盤となります。

マイナンバーカードが普及すれば、サービスや支援を受ける際の手続きが迅速かつスムーズになるでしょう。

③行政手続きのオンライン化

行政手続きのオンライン利用を可能にするシステムが整っていない自治体が多く、窓口に行かなくては手続きができないという現状があります。

行政手続きのオンライン化が達成されれば、住民は、気軽で便利にサービスや支援を受けられます。

処理件数が多く、住民の需要が高いサービスから優先的に取り組みしょう。

④AI・RPAの利用促進

AIやRPAなどデジタル技術の利用は、事務作業の自動化による業務の効率化の達成に繋がります。少子高齢化による人材不足の課題に対応するためにも、デジタル技術は積極的に活用するべきです。

⑤テレワークの推進

時間や場所を問わないテレワークが可能になれば、職員が個々にあった働き方を選択できます。新型コロナウイルスの対策としても、テレワークは推進するべきです。

⑥セキュリティ対策の徹底

デジタル化が進み、積極的にデータが活用されるようになると、サイバー攻撃などにより住民の個人情報が流出するリスクが高くなります。

よって、セキュリティ対策の見直し・強化はDXの推進と同時に進める必要があります。

参照:自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画(総務省)

自治体DXの現状

自治体のDXが進まない4つの要因

①職員の自治体DXに対する理解不足

自治体職員のDXに対する理解不足や関心の薄さは、大きな課題となっています。

自治体DXの目的の1つである「更なるサービスの向上や新たな価値の創出」の実現には、従来のシステムにとらわれないアイデアが必要ですが、「DXとは何か?」を理解していないためにアイデアが出てこないという現状があります。

また、自分の業務とDXの関連性が掴めない職員も多く、DXを自治体全体へ広げることも難しくなっています。

②予算などの財政事情

自治体DX実現のために、デジタル技術を導入するには資金が必要です。

そのため、厳しい財政状況におかれている自治体は、DXに取り組もうとしないという課題があります。DXの必要性やその可能性について、理解を得ることが課題の解決に繋がるでしょう。

③住民情報に関する業務へのDX導入が困難

住民情報に関するデータは他のネットワークと分離されているため、データ利用の手続きが複雑であり、業務の効率化の壁となっています。

また、外部のサービスを利用するにも、個人情報が含まれたデータの匿名化処理が必要なため、個人を特定する業務に活用できないという課題も出てきます。

 ④個々の自治体への対応が困難

IT製品を販売する企業(ITベンダー)の立場から見て、各自治体の住民情報におけるシステムが異なっていることは、自治体DXを広げていく上での課題となります。

システムが統一されていないと、ある自治体に導入した製品を他の自治体に展するためにカスタマイズする必要が出てくるからです。

この点からも、システムの共通化の重要性が分かります。

参照:自治体DXをより加速するために何をすべきか(NRI野村総合研究所)

自治体でDXが必要とされる理由は?

少子高齢化が進む日本では、労働力不足・人材不足が懸念されています。

それに加えて、厳しい財政状況が問題となっています。しかし、業務内容を変えずに人件費を削減すれば、職員の業務負担が増加してしまうでしょう。

そこで、DXによる業務の効率化が求められているのです。DXは職員の業務負担軽減にも繋がります。

また、新型コロナウイルスの流行により、自治体も変化を求められるようになりました。以前は紙での手続きが主でしたが、オンライン手続きを可能にするなどのデジタル化が進んでいます。

自治体DXの進め方

自治体と企業のDX推進には,知識と当事者意識に差があります。つまり、企業のDX推進モデルより以前のステップを踏む必要があります。担当者がこれらを達成した上で自治体DXを推進しましょう。

ステップ①知る・関心を持つ

自治体DXにおける職員の理解不足の課題を解決するには、DXの可能性を知り、関心を持ってもらう必要があります。

DXによって何が実現できるのかを学ぶにあたり、他の自治体の事例やその効果を知ることも大切です。

担当者が得た情報や知識を職員に共有して、各部署とDXの関連性が分かれば、職員の自治体DXに対する関心向上にも繋がるでしょう。

ステップ②必要性を感じる

自治体DXの実現に向けて積極的になるには、必要性を感じてもらうことが重要です。

具体的な成功事例を知ることで、DXの必要性を理解し、当事者意識が向上するという期待できます。

職員がDXに関して当事者意識を持つことにより、部署に止まらず自治体全体でDXの実現を目指せるでしょう。

▼DXの推進方法について詳しくはこちら!

自治体DXの推進におけるポイント・課題

①DX人材の育成

自治体DXの実現には、DXに対する職員の知識・理解が不可欠です。

そこで必要とされるのが、データやデジタル技術に関する知識を持ち、自治体を変革していく取り組みができるようなDX人材です。

しかし、一般企業においてもDX人材は不足しており、DX人材の十分な確保は困難です。そのため、自治体では職員のDXに関する知識を深めるといった、DX人材の育成が必要となるでしょう。

▼DX人材について詳しくはこちら!

②横断的な体制の構築

自治体の一部でDXを実現するのではなく、自治体全体でDXの実現を目指ししましょう。

自治体全体の状況を把握し、小規模な施策から取り組むことから始めましょう。徐々に対象範囲を広げていくことが確実な進め方です。

③長期的な計画と取り組み

DXの推進による自治体の変革には、多くの時間と労力がかかります。

業務の効率化はすぐに効果を感じられますが、サービスの質や利便性の向上の効果が現れるには数年かかると言われています。そのため、自治体DXの実現には、長期的な視点がポイントになります。

④自治体間の連携

各自治体がDXの実現だけではなく、社会全体としてのDXが求められているため、自治体同士や国と自治体が連携してDXを推進する必要があります。

横断的なDXの実現が達成できれば、社会全体が豊かになるでしょう。そのためにも、システムの標準化・共通化が重要です。

自治体DXの事例

広島県〜ひろしまサンドボックス〜

2018年に広島県が立ち上げた「ひろしまサンドボックス」は、ビッグデータや最新技術を使って、広島県内の企業が生産の効率化・新たな価値の創出に取り組むことを目的として作られました。

そのための技術やノウハウを持つ企業や人材を県外から呼び込み、産業や地域の課題解決のために試行錯誤する実証実験の場とされています。

愛媛県〜エールラボえひめ〜

2020年に愛媛県が策定した愛媛県デジタル総合戦略の核となる取り組みである「エールラボえひめ」は、身近にある愛媛の課題を自分たちの力で解決するためのプラットフォームです。

課題のあるコミュニティが集い、プロジェクトを立ち上げるなど共に課題解決取り組みます。愛媛県からのサポートを受けることもできます。

2020年、行政手続きデジタル化ツール「LoGoフォーム電子申請」は石川県加賀市で提供が開始されました。

行政手続きデジタル化ツール「LoGoフォーム電子申請」は、窓口で紙の手続きをしなくともオンラインで行政手続きが完了し、自治体職員の行も効率化され、住民の利便性向上も図れます。

DXの理解が深まるおすすめ書籍

  • いちばんやさしいDXの教本

「DXとは何か?」といった基礎からDXに必要な知識やアクションを解説してくれます。図を用いた分かりやすさが特徴です。

  • DX人材の教科書

日本の大手企業3000社以上にヒアリングを重ね、500社近くにDX人材育成サービスを提供する株式会社Standardの2人が、DX人材をテーマに解説した書籍です。

45個の業界別のDX事例も掲載されており、より具体的にDX人材について学べます。

まとめ

コロナウイルスの流行などにより社会が大きく変化するなか、DXの必要性は自治体にまで広がり、「自治体DX」が注目されるようになりました。

自治体でDXが実現すれば、私たちの生活は豊かになるでしょう。まずは、DXについて興味を持ち、知識や理解を深めることから始めてみてください。

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