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2021.08.31

DX推進をするには?指標や課題・4つの企業事例をガイドラインに沿って解説

最終更新日:

  • 人手不足解消や顧客満足度や利益向上のためにDXを推進したい
  • DX推進活動の方向性を決めたい
  • DX推進を成功させたい

と感じている方は多いのではないでしょうか

DXを推進するにあたり、DXの定義を確認し事例やコツを踏まえておけばDX推進をスムーズに進められます。

今回はDX推進の背景や事例・課題を紹介します。

DX推進とは

DX推進とは、企業内でDXを推めることです。そもそもDXとはなんなのでしょうか。DXの定義を確認しましょう。

DXの定義

DX(デジタルトランスフォーメーション)はスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した「人間の生活に何らかの影響を与え、進化し続けるテクノロジーであり、その結果、人々の生活がよい方向に変化する」という概念です。

また、日本経済産業省は2018年に「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義しました。

このように、データやデジタル技術といったテクノロジーの力を企業が利用して優位性を獲得し、顧客や社会を豊かにすることとされています。

DXについて詳しく知りたい方はこちらの記事を読んでみてください。

経済産業省のガイドライン

経済産業省の「DX推進ガイドライン」では、DXの進め方として「DX推進のための経営のあり方、仕組み」と「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」を掲げています。

DX推進ガイドラインの目的は、DXの実現やその基盤となるITシステムを構築する上で、経営者が抑えるべき事項を明確にすること、取締役会や株主がDXの取組をチェックする上で活用できることです。

DX推進のための経営のあり方、仕組み

DX推進のための経営のあり方、仕組みには以下の5つが示されています。

  • 経営戦略・ビジョンの提示
  • 経営トップのコミットメント
  • DX推進のための体制整備
  • 投資等の意思決定のあり方
  • DXにより実現すべきもの:スピーディな変化への対応力

こちらの項目でDXを推進する際の経営者やリーダー層に求められているのは、デジタル技術を利用することではなく、デジタル技術によりどのような価値を生み出していくのかを明確にすることと書かれています。

DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築

DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築では、以下の6つが示されています。

  • 全社的なITシステムの構築のための体制
  • 全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス
  • 事業部門のオーナーシップと要件定義能力
  • IT資産の分析・評価
  • IT資産の仕分けとプランニング
  • 刷新後のITシステム:変化への追従力

DXを推進する上でITシステムの構築や導入は欠かせません。

ここで示される、IT資産とは、PCやサーバーなどのハードウェアから、OSやアプリケーションなどのソフトウェア、情報が詰まったデータファイルなど、デジタルデータに関わる全てのものが含まれます。

経済産業省の推進指標

経済産業省は、企業におけるデジタル経営改革を推進するために『「DX推進指標」とそのガイダンス』を取りまとめました。

各企業がDXに関する簡易な自己診断を可能とするものであり、経営幹部や事業部門、DX部門、IT部門などの関係者の間で現状や課題に対する認識を共有し、次のアクションにつなげる気付きの機会を提供することを目的としています。

定性指標は35項目からなり、現在の日本企業が直面している課題やそれを解決するために押さえるべき事項を中心に項目を選定されているのです。

上の図のように、9つの主な質問とそれらに関連する質問から構成されています。

これらの質問に対して、それぞれの項目の達成度に合わせた成熟度が定義されており、これら質問に回答することで、各企業は現時点の自社のDX推進に向けた立ち位置を成熟度認識できます。

質問に対して、経営層が中心となって回答するという点が特徴です。

出典:経済産業省, 「『DX推進指標』とそのガイダンス」

DX推進の必要性・推進される3つの理由

競争力強化・利益向上・顧客体験向上

顧客データの活用により、競争力強化・利益向上・顧客体験向上が期待されます。

日本経済産業省は2018年に

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

と定義したように、豊かな顧客体験が期待できるのです。

例えば、顧客データを活用して購入額が高い顧客に対してはさらに高価なサービスの提案、購入回数が少ない顧客に関しては購入回数が増えるようなクーポンの配布など、顧客に合わせたサービスを提供できます。

顧客体験が豊かになるにつれて企業間同士の競争力強化にもつながります。

このように、DXが推進されれば競争力強化・利益向上・顧客体験向上が期待されるのです。

人材不足解消

例えば、勤怠管理システムを導入した場合、今まで勤怠管理者がやっていた各従業員の出勤時間の登録や月末の給与に反映するといった作業が勤怠管理システムで代用されるため、勤怠管理者の負担が軽減されます。

既存の勤怠管理者は他の業務に手が回るため、このようにDXが推進されれば人材不足が解消されます。

グローバル化への対応

日本は海外と比べてIT教育が進んでいないゆえ、DXが進んでいないとされています。しかし、グローバル化で世界中の人々とつながるためには、DXの推進は必須です。

DXが推進されれば、グローバル化に対応できるとされています。

DX推進企業の主な事例4つ

【成功事例】クボタ

クボタは、世界各地のユーザーニーズに対応した建機・農機などの製品を用いてトータルソリューションを提供する企業です。

課題

建機の修理対応の多くは現地販売代理店のサービスエンジニアの手で行われており、担当者の経験・スキルによってはマニュアルだけではサポートが不十分なケースも発生していました。

ダウンタイムによる建機の稼働率低下は、ユーザーの収益減少に直結する問題であるため、迅速かつ効率的で誰にでもわかりやすく、サービスエンジニアの能力に左右されない故障診断サポートが求められていました。

また、米国での故障診断のニーズが最も高かったことから、運用開始と効果検証のスコープを米国市場に設定。その後のグローバル展開も視野に入れていたため、グローバル市場における知見を持つプロダクト開発のパートナーが求められていたのです。

推進されたDX

時間効率を改善するための解決策として、機械が発するエラーコードや不具合症状の入力により自動的に点検箇所や修理方法が表示されるシンプルな故障診断フローを構築。サービスエンジニアの知識・経験に頼ることなく、故障箇所を迅速に割り出すことを可能にしました。

また、3DモデルとARを組み合わせ、スマートフォンをかざすことで建機内部の故障箇所や対象部品の特定をビジュアルで認識できる機能を搭載。建機の内部を実際に確認する手間を省くことで、効率的な修理が行えるようにしました。

UIデザインや設計においては、グローバルなプロジェクトの実績を豊富に持つネイティブのデザイナーをモンスターラボ グループのA.C.O.からアサインし、米国ユーザー向けのトレンドの取り入れや日本語のマニュアルを英語圏向けに再構築しました。これは、現地ユーザーが使いやすいタッチポイントを意識したためです。

同時に、クボタ現地法人スタッフとのコミュニケーションにおける橋渡し役という面でも寄与しました。

ユーザータッチポイントでは、建設現場での使用を意識したUIデザインを取り入れました。

開発面では、マルチデバイスへの対応が可能なFlutterを採用したのです。独自のCMSを構築し、ログとユーザーからのフィードバックを蓄積させて、今後の診断フローの整備や故障余地につながるさまざまな情報を収集できるようになりました。

結果

リリースに先駆けてアプリの発表が行われた海外販売代理店向けのMTGでは、操作性に優れたUIデザインとともに、3Dモデル・ARを活用してビジュアルで故障診断ができる仕組みに大きな注目が集まりました。

また、サービスエンジニアの教育や人員の確保といった面でも今後の貢献が期待されています。

今後、本アプリは日本を含む世界各地の市場に順次展開していくことが予定されており、同時に本アプリをベースにした対象機器の拡充も視野に入れられています。

参考:株式会社モンスター・ラボ クボタ(製造)3Dモデル・ARを活用した診断を提供し、建機故障時のダウンタイムを低減 

【成功事例】JapanTaxi(日本交通)

JapanTaxiは、日本交通の情報部門からスピンオフしたITベンチャーです。

推進されたDX

JapanTaxiは日本版のUberといえ、アプリを立ち上げて乗車場所を選択し、「今すぐ呼ぶ」ボタンを押すだけで、周辺のタクシーを呼べるサービスです。迎えにかかるまでの時間や、乗車前に料金相場を確認できます。

また、JapanTaxiにはJapanTaxi Wallet機能があり、タクシーの後部座席にあるタブレットのQRコードをアプリで読み取ると、目的地に到着する前に支払いを完了できます。

結果

顧客にとっては、急いでいる場合もスムーズに支払いを済ませられるためストレスフリーな体験を提供しているといえます。

また日本交通や加盟店にとっては、運転手の現金管理における作業負担削減したり、事務所で釣銭を確保するなどロスの削減に繋がっています。また、現金が盗まれるといった犯罪の危険性も抑制できています。

さらにJapanTaxiは、後部座席のJapanTaxiタブレットを活用し、新たな収益源として広告事業を始めています。

電車やバスでは一般的であった車載広告をタクシーの後部座席にも持ち込み、ビジネスマン向けの広告媒体として売り上げを伸ばしています。

また各車両から膨大な移動データを取得できるため、今後様々なビジネスを展開するための土壌も育っています。

参考:ITreviewタクシー会社のITベンチャー「JapanTaxi」は、どんなスマート社会を目指すのか?

【失敗事例】P&G

Procter & Gamble社はアメリカの日用品大手企業です。

課題

CEO、Robert McDonald氏(当時)は2011年、「地球上で最もデジタルな企業」になるためのDXイニシアチブ(主導権)を提唱しました。

このイニシアチブは、同社のあらゆる事業部門にテクノロジー(データ解析)を大々的に適用し、消費者向け商品・サービスを改善するという漠然とした目標が掲げられていたのです。

結果

世界経済危機後の不況下で具体的な達成目標を示すことなく行われた莫大な投資に対して得られた効果(ROI)は僅かであった一方、一部で競争力が低下する結果となりました。

McDonald氏は株主から業績不振の責任を追及され、2013年に辞任しています。

参考:JETRO「アメリカにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状」

【失敗事例】B社

目的

B社ではDXのプロジェクトリーダーが詳細な要件定義をせずに、大手ITベンダーから高機能なAIやビッグデータ解析システムを導入しました。

結果

B社のプロジェクトでは、B社にとって高度なシステムが本当に必要かどうか検討しなかったため、結果として導入時に大混乱が起きました。

現場の従業員がシステムを使いこなせず、業務が止まってしまったのです。

その結果、システムを1週間停止してシステムを改修しました。1週間の間、B社の従業員たちはシステムが使えないため、紙を使って業務を進めたそうです。

参考:HR大学 DX推進を成功へ導くには?本当にあったDX失敗事例と活用事例

▼DX推進による事例をさらに読みたい方はこちら

DXを推進するために必要なこと3つ

経営戦略・目標の提示

経営層でDX推進し関して決定したら目標や戦略を共有しましょう。また、目標や戦略の根拠となるデータを提示しましょう。

すぐに共有すればDX推進に関わる人の疑問や質問に対処しやすくなります。

DX推進のための人材を確保

DXを推進するにあたり、DX推進のための人材を確保しましょう。

DXの推進を管理する人やシステム構築や導入関わる人など、さまざまな人が必要です。

社内の人材だけでDXを推進するには教育に時間やコストがかってしまうため、DX推進のための人材は外部から調達するという手段もあります。

コストや時間配分を考えてどれくらいDX推進のための人材が必要なのか、外部から調達する必要はあるのかを考えましょう。

DX推進のためのツールを確保

DX推進のためには人材と資源が必要です。DX推進のためのツールを確保しましょう。DX推進のためのツールと言っても、AI・IoTVR・ARなど、さまざまな手段があります。

DX推進における目標や戦略で必要な手段やツールを決めて導入しましょう。

DX推進の課題4つ

経営戦略の明確化

失敗事例でも紹介したように、DXを推進する際に経営戦略が明確でないと、業績不振を招いてしまいます。

戦略が明確化されていなければ、具体的に行動に移せる人がいないほか、指示に従える人がいなくなってしまいます。

DX推進においてはITツールに関する知識が必要とされるため経営戦略をたてるのが難しいとされているため、経営戦略の明確化は、DX推進課題の1つと言えます。

目標と目的を定めたら、DX推進に関わる全ての人が理解しやすいように具体的なアクションプランまで定めましょう。

一貫性のあるシステム構築

DXを推進するに当たりIT機材の導入は必須です。しかし、一貫性のあるシステムが構築されていなければうまく推進できません。

システム構築や導入に一貫性がなければ、DX推進の効果は感じられません。ただIT資材を活用して見るだけでは当然目的や売上向上には繋がりません。

DXを推進するに当たりどのような目的があるのか再確認し、そのためにはどのようなシステムを開発・導入しなければいけないのか考案しましょう。

DX人材の確保・育成

DX人材を確保したり育成したりするには資金や時間を有します。今までDXに関わって来なかった人たちで推進するには、資材を導入したりDXについて学んだりするのに時間を有します。

経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」では、既存システムがブラックボックス化し、そのまま残ってしまった場合に想定されるリスクを「2025年の崖」と呼んでいます。

(参照:経済産業省「DXレポート」2018年

このように日本はDX化が遅れており、IT教育を「する側」であるDX人材が少ないのも課題です。

また、DX人材を外部から調達したりコンサルタントをつけたりするには、相当の資金が必要とされます。

そのため、DX人材の確保や育成は容易とは言えず、DX推進における課題と言えます。

DX推進のカギとなるDX人材についてはこちらの記事をご覧ください。

IT資材にかけられる予算問題

DX推進に当たりIT資材の導入は必須ですが、予算がかかってしまいます。DXを推進するにあたってどのようなIT資材を導入するかにもよりますが、予算がかかるものもあります。

クラウドサービスであれば比較的安価なものもありますが、IoTやAIを導入するとなると、かなりの予算がかかってしまいます。

DXを推進するには

DXを推進するには、まずはDXを推進してどのような成果を得たいのか決めて、そのためには何が必要なのかを考えましょう。

そして必要な人材像・IT資材・資金・時間が明確に決まったら目標に向けて具体的な行動計画をたてましょう。

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