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2021.09.07

DX人材を育成する4ステップ−企業での育成事例を3つ紹介

最終更新日:

DX人材育成のアイキャッチ
近年、あらゆる産業分野でデジタルによる変革が重要視されるなか、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」に注目が集まり、DXの推進に取り組む企業が増加しています。

しかし、まだDX人材は数が少なく確保が困難であるため「DXを担う人材の不足」という新たな課題が浮き彫りになってきました。

企業の意思決定者の中には、その課題を解決するべく、企業内でDX人材を育成しようと考えている方もいるのではないでしょうか。

とはいえ、どのようにDX人材を育成すれば良いのか分からない方も多いはずです。

そこで今回は、DX人材の育成方法をポイントと共に解説し、企業での取り組み事例も紹介します。

▼DXについて詳しく知りたい方はこちら

DX人材とは?

DX人材とは、「データの重要性を理解し、適切にデジタル技術と組み合わせ、企業を変革していく取り組みができるような人材」を表し、企業がDXを推進する上で必要な存在です。

経済産業が発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」では、DX推進のための体制整備としてDX人材の確保を挙げており、具体的に以下のような人材を定義しています。

  • DX 推進部門におけるデジタル技術やデータ活用に精通した人材の育成・確保
  • 各事業部門において、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DX の取組をリードする人材、その実行を担っていく人材の育成・確保

引用︰デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(経済産業省)

▼DX人材について詳しくはこちら!
DX人材とは ー6つの業種、4つのスキル、3つのマインドセット>>

DX人材に求められる6つの適性

IPA(情報処理推進機構)はDX人材の資質について、6つの適性を仮説として挙げています。

適性 概要
不確実な未来への創造力 新たな分野に取り組み、挑戦する姿勢や課題設定力
臨機応変/柔軟な対応力 計画にとらわれすぎずに、状況の変化に応じて方向転換できる力
社外や異種の巻き込み力 外部と積極的に関わり、自分の成長に繋げる受容力
失敗したときの姿勢/思考 失敗は成長の過程だと捉え、失敗を恐れずに前に進める姿勢
モチベーション/意味づけする力 自ら課題を明確にし、前向きに捉えるような主体性
いざというときの自身の突破力 困難な状況でも、方法を模索してリーダーシップを発揮する力

業種に関わらず、共通で求められているのは柔軟な対応力です。

その他の適性については、業種によって重要度に差があります。例えば、不確実な創造力はビジネスデザイナーに求められる適性ですが、エンジニアには重要視されていません。

参照︰デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査(独立行政法人情報処理推進機構)

▶︎DX人材に求められるマインドセットについてはこちらでも詳しく解説しています>>

DX人材の6つの役割

IPA(情報処理推進機構)は「DX推進人材像」として6つの業種とその役割について定義しています。

人材の呼称令 人材の役割
プロデューサー DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー
ビジネスデザイナー DXやデジタルビジネスを企画・立案・推進
アーキテクト DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計
データサイエンティスト/ITエンジニア DXに関するデジタル技術やデータ解析に精通
UXデザイナー DXやデジタルビジネスに関するシステムユーザー向けデザインを担当
エンジニア/プログラマ 上記以外のデジタルシステムの実装・インフラを担う

引用︰デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査(独立行政法人情報処理推進機構)

▶︎DXを担う6つの職種についてはこちらでも詳しく解説しています>>

企業でDX人材を育成する3つのメリット

企業でDX人材を育成するメリットには、以下の3つがあげられます。

  1. DX推進のための体制作りができる
  2. システムの一貫性が保てる
  3. 最適化されたシステムを構築できる

①DX推進のための体制作りができる

企業のDX推進にDX人材は欠かせません。

企業の業務内容や既存システムを理解している社員がDXを担うことで、継続してスムーズにDXの推進に取り組める体制が実現します。組織の変革や新たな事業への転換にも、迅速な対応が可能となります。

②システムの一貫性が保てる

DX推進の業務を外部のベンダー企業に一任した場合、エンジニアの技術力やコストといった事情で、システムの一貫性が損なわれる可能性も出てきます。その結果、不十分なシステムとなるリスクや連携が上手くいかないケースが生まれます。

これに対して、新システムの企画から開発、テストまで幅広い作業に携われる自社のDX人材は、社内システムの一貫性を保つ上でも非常に役立ちます。

一貫性の欠如や共有のしづらさによって生じるリスクを考えると、社内で育成したDX人材に企画からテストまでを任せるのが理想となるでしょう。

③最適化されたシステムを構築できる

企業は自社の既存業務の改善や、新事業の開発のためにDXを推進しています。

そのため、新システムにおける効果を最大限にするには、既存システムを理解し、その問題点を把握する自社の人材が企画立案から開発に携わることが重要です。これにより、現場の運用に合ったシステムができ上がりやすくなるはずです。

既存システムを効率よく動かし、その特長を効果的に引き出すためには、自社の中でDX人材の育成が必要でしょう。

DX人材を育成する4つのステップ

DX人材を育成は、以下の4ステップで構成できます。

  1. DXに向いている人材を見極める
  2. 座学で方法論とマインドセットを学ぶ
  3. OJTで実行力を身に付ける
  4. ネットワークを構築する

①DXに向いている人材を見極める

業務や役職には向き不向きがあるように、DXにも適性があります。そのため、成果を出せるDX人材を育てるには、DX人材に適した人材を見極めなければなりません。適性のある社員の育成に力を入れると、育成にかかるコストの削減に繋がります。

②座学で方法論とマインドセットを学ぶ

座学でおすすめされているのがハンズオン講座外部講師による講演です。ハンズオン講座とは体験学習を指し、技術スキルの向上に効果的です。

外部講師の講演では、必要なマインドセットの基礎が学べます。DX推進について、当事者目線の話を聞くことでリアリティーが感じられます。

DXに求められる重要なマインドセットとして「現状を変えようとする挑戦・変化に目を向け、他社より先に課題発見する力・周囲や外部の巻き込み」があります。

③OJTで実行力を身に付ける

必要に応じてすぐに良案を出せるDX人材を育てるには、書籍やオンライン学習などで知識を与えるだけでなく、現場で実践的な経験を積んでもらうことも大切です。

OJTとは、職場での実務を通じて、企業内で人材育成を行う手法であり、座学で学んだ知識を生かせます。

④ネットワークを構築する

変化が激しいデジタル業界では、常に新しい知識や技術を得続ける必要があります。社内外にネットワークを構築することで、効率的に最新情報が得られます。

DX人材を育成する3つのポイント

①DX人材育成のための環境作り

DX人材の育成のために、学習支援やリーダーの確保によるサポート体制の構築が大切です。資格取得の支援や学習ツールの提供など学習支援は欠かせません。

また、取り組みの推進役となるデジタルリーダーと呼ばれる人材も必要です。デジタルリーダーには、先進テクノロジーに広く深い知見を持っていて、自社にどのような技術が活かせるかを検討できる資質が求められます。

②アジャイル開発を実践する

アジャイル開発とは、ソフトウェアやシステムを開発する際に使われる開発手法で、4つの開発工程を機能単位の小さいサイクルに区切って繰り返します。
アジャイル開発画像
細かく区切ったサイクルによって、DX推進が成功しやすくなるでしょう。また、状況に応じて変更や修正に対応しやすいという利点もあります。

③社員のデジタルリテラシーを向上させる

DX人材育成の目的は、全社におけるDXの推進です。一部の部署のみでDXを推進するのではなく、社内全体でDXを実現するためには、社員一人ひとりのデジタルリテラシー向上が必要です。

DX人材育成のサービス3選

DX人材の育成をサポートしてくれるサービスを3つご紹介します。

  1. Aidemy BUSINESS
  2. ジッセン!DX
  3. ディジタルグロースアカデミア

ぜひ参考にしてみてください。

 Aidemy BUSINESS

Aidemy Business

(出典:Aidemy BUSINESS

Aidemy BUSINESSは、AIを中心としたDX人材育成・組織づくりを支援し、事業成功へ繋げるeラーニングプラットフォームです。

社内でDXプロジェクトを始めてみようとしている方におすすめで、DXについての学習コンテンツが豊富に取り揃えられています。

さらに専任のカスタマーサクセスが、それぞれで最適な学習カリキュラムの作成や他社交流会の案内など、DX人材を育成しやすい環境をサポートしてくれます。

 ジッセン!DX

すべての企業にDXを推進する力を!DX eラーニングサービス「ジッセン!DX」をリリース|ソウルドアウト株式会社のプレスリリース

(出典:ジッセン!DX

ジッセン! DXは、実践的な学びを提供するDX専門オンラインスクールです。

ITツールの基礎操作から業務に役立つスキルまで多種多様な講座を受講することができます。また、気になるテーマや学びたい課題をピンポイントで検索・学習できます。

体系的に学べるため、知識取得で終わらずに、その日から業務の場で「実践」できることが魅力です。

 ディジタルグロースアカデミア

ディジタルグロースアカデミアは、デジタルを作る人間とデジタルを使う人間の両方の育成を目指す人材育成サービスです。

どのように育成するかという内容の策定から、人材教育・DXを実現するための伴走コンサルティングまで、一貫したサポートを提供することで、DX人材の早期育成から迅速なDXでの効果創出を目指しています。

DX実行の現場から抽出した知識・知恵をシェアする6つのサービス領域と検定対策講座があることが魅力です。

DX人材育成の取り組み事例5選

企業内大学でDX人材を育成-ダイキン工業株式会社

ダイキン工業株式会社は「専門性を有し、考え実行し、関係者を巻き込んで、AI・Io T技術を駆使できるイノベータ人材」というDX人材像を目指し、DX人材の育成に取り組んでいます。そこで、社内講座として「ダイキン情報技術大学」を開講しました。

これにより、企業の戦略と連動した教育プログラムの提供が可能となります。また、高いスキルを得たDX人材を生かせる受け入れ体制の構築を図り、企業全体の変革を目指しています。

専門組織を立ち上げDX人材を育成-ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社が掲げるDX人材像は、「新しいビジネススキームを作り上げ事業化するスキル」を重視しています。

最先端技術を活用して通信事業の枠を超えた新領域へと事業を拡大する成長戦略を打ち出し、2017年には社会課題解決に向けた専門組織として「DX本部」を開設しました。

新事業を立ち上げで重要となる売上やコストへの意識が高い・状況の変化に応じて速やかに計画を見直せる柔軟な思考力を持つという点から、営業で活躍していた社員が中心の組織構成が特徴です。

組織では、新事業の創造に必要な能力を強化する人材育成にも力を入れています。2017年に行った社内研修では、93%の満足度を得ています。

高い満足度には、DXの育成と同時にDX本部が行った「DXに必要な知識は何か」を検討し続けた背景があります。また、同社では「失敗を恐れずに挑戦を続ける姿勢」が重要視されています。

社員のデジタルリテラシー向上に取り組む-みずほフィナンシャルグループ

みずほフィナンシャルグループでは、「次世代金融への転換」を目指し、デジタル技術を活用してビジネスと社会にイノベーションを起こすための取り組みを行っています。

そのため、専門的な役職を担うDX人材の育成だけでなく、社員全体のデジタルリテラシー向上に力を入れてきました。座学と実践を組み合わせたプログラムが提供されています。

また、「DXの現場を体感して得た知見を職場に持ち帰り、DX推進の担い手として成長してほしい」という考えのもと、外部企業との連携も進めています。

参照︰DX推進人材を育成し活躍を促す企業の取り組み(みずほリサーチ&テクノロジーズ)

ビジネススキルも併せて育成 − 大林組

大林組では社員のデジタルリテラシー向上を目的に人材育成プログラムが行われました。建設業では労働時間、働き手の減少、属人性の課題を抱えているため、デジタル化に取り組んでいます。

幅広い世代の従業員がいるため、世代ごと、役割ごとで、どのような人材になってほしいのかを定義した上で、育成を実施しました。ツールの使い方だけでなく、従業員に「どうしたら効率的に終わるのか」と言った意識を持たせるマインドセットも行います。

デジタルを理解し生産性を向上させ、ビジネスモデルの変革や新規事業の創出を狙っています。

参考:ツールの使い方だけでなく、マインド・ビジネススキルも併せた育成が生産性向上のカギ。大林組のデジタル人材育成からデジタル変革を学ぶ。

デジタル技術を内製化 − 日清食品ホールディングス

日清食品ホールディングスは、全従業員のデジタルスキル向上に取り組んでいます。システム開発において、外部ベンダーに頼ることなく開発できるように、「ローコード開発ツール」を導入しました。

「ローコード開発ツール」とはプログラミングをせずともアプリ開発を可能にするものです。事業部内で開発する環境を構築できたため、開発から実装までを自社で完結できるようになりました。

参考:DX人材の育成事例5選

まとめ

DX人材は、企業がDXを推進する上で欠かせない存在です。

DX人材の不足が大きな課題となっている今、自社でDX人材を育成する企業が増えています。

「DX人材の育成に何が必要なのか」を考えながら、本記事で紹介したポイントを押さえてDX人材の育成に取り組んでみましょう。

企業としてDX人材を育成し、DXを進めれば、新しい価値の創造が期待できます。

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