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2021.12.24

AIに関する国際標準が策定へ|研究開発やビジネスはどう変わる -第2回AI・人工知能EXPO【秋】

2021年10月27日(水)~29日(金)に、幕張メッセで第2回AI・人工知能 EXPO【秋】が開催されました。

AI・人工知能 EXPO【秋】では、ディープラーニング機械学習、エッジAI、自然言語処理、画像/音声認識、対話AIなど、多岐に渡るAIに関するサービスが出展され、来場者数は3日間で16,428名にのぼりました。

今回の記事では10月28日に会場で行われた産業技術総合研究所・杉村 領一氏によるセミナー『いよいよ発行が進むAI 標準 ~AI 関係者が知っておくべきポイント~』をレポートします。

※講演内容は一部割愛、言い回しの変更をしております。

AI標準が発行へ |AI開発においてAI標準化がもつ意味とは

AI技術開発と標準化の議論が並行して進んでいる異常な事態

さまざまな産業におけるAIの活用の進展に伴い、世界中でAI標準化の動きが活発化しています。信頼性の高いAIを推進するためにフレームワークが整備されることはビジネス的な観点でも社会生活の利便性向上という観点でも重要になってきます。

標準化の議論は分野別に世界各国の団体が連携しながら行われており、日本にも大きな役割が期待されています。

今回登壇した杉村氏は、国際標準化団体の「SC42」という委員会でAIの標準化に向けて取り組み、世界の議論を牽引している人物の1人です。

杉村氏は講演冒頭、「『AI標準』の現状をビジネスパーソンであるみなさんにも知っていただきたい。」と聴講者へ向けて語り、AIの標準化における議論の特徴や現在地、今後の展望について話しました。

杉村氏:AIの国際標準化の議論は3年前からスタートし、そろそろ最初のドキュメントの発行にたどり着こうとしています。

「標準が決まる」ことは、国際的にルールが決まったら国内で勝手に異なる標準を決められないことを指します。つまり、日本にとって都合が悪いルールに決まっても後からは変えられないため、国際標準を決めようとしている今、日本も積極的に関わっていかないといけません。

一般に、標準化に至るまでの過程は、技術が十分に発展してから(議論が)進められることが多かったのですが、AIに関しては技術開発と並行して標準化が進むという異常な事態になっています。なぜなら、技術としてまだ考えられていないにも関わらずいきなり標準を定めようとするからです。なのでAI標準化の制定に関わる人たちは暗中模索しながら取り組んでいます。

この標準化の取り組みは、2017年10月にJTC1(Joint Technical Committee 1)という国際標準化団体で決議をされて2018年の4月から本格始動し、年に2回、国際会議をしています。これまでの会議は全てバーチャル空間で行われています。

現在作っている標準の数は非常に膨大にありますが、日本が直接的に議論に関与できる標準分野は半分ほどあります。 これは SC42に参加してくださってる企業や大学、各研究機関の方々のおかげです。少なくともスタートしてからは日本は議論においていいポジションで参加できていると思います。

日本がAIの標準化における交渉や陣取りをうまくやらなくては、高性能なAI技術を開発した場合でも、認めてもらえないかもしれません。

世界中どこでも共通して使えるAI|ビジネスにAIの標準化の活用

杉村氏:ビジネスの観点でも標準化は大きな意味をもちます。標準化に関わる会議などで最近よく耳にするのが「アグノスティック(agnostic)」という言葉です。英語で”不可知論の”という意味ですが、(ソフトウェアの世界では)”特定のシステムなどの仕様に関係なく動く”という意味を持ちます。例えば「プラットフォーム アグノスティック(platform agnostic)」。別にAppleのOSでもMicrosoftのOSでも異なる機械であっても同じ仕様のものを動かすことができます。検索するときもブラウザは何を使っても構わない。

このようにあらゆる媒体、あらゆる世界で使えるものを作ることをアグノスティックアプローチと言います。医療でもウェブマーケティングでも建築でも関係なく、さまざまな業界で活用できるようなAIの標準化に向けて私たちは議論しています。

日本が関わっている標準化の分野には、例えば AI用語やAIガバナンスに関する標準化、AIの品質、機能安全に関する標準化などがあります。機能や性能がばらついたりAIだからこそ、AIにはどういうライフサイクルがあるのかという認識を共通で持つべきという考え方です。これらのことはインターナショナルスタンダードとして発信できるよう日本を中心に作成中です。

AI標準が定まれば、「AIというのは国際標準でもこういう風に見られてますよ」ということや「買って終わりではなく納入後についてもAIについて考える必要があります」ということをお客さんに説明する材料になると思います。

倫理的な観点を踏まえた議論も必要に

杉村氏:繰り返しますが、これから大きな市場を取りにいく動きになっていきます。産業育成と消費者保護の観点から標準を作っていかなくてはいけません。

私の講演の最後になりますが、配慮しなくてはいけない点として倫理の問題があります。AIはつまらない仕事や危険な仕事から人を解放するというメリットがありますが、 AIを使うことで考えざるを得ないことが増えたり差別の問題にも繋がることがありますので、慎重に考えていかなくてはいけません。(AIガバナンスに関して議論されている)東京大学の江間先生などのさまざまな研究者の方々との話を交えながらプロジェクトを進めているところですので、引き続きみなさまのご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします。

江間 有沙氏のインタビューはこちら▼

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今回のAI・人工知能 EXPO【秋】では、紹介した杉村氏のセミナーの他に、AI分野を代表する研究者の松尾豊氏や日本ディープラーニング協会の野口氏、理化学研究所の 革新知能総合研究センターセンター長の杉山氏など豪華な登壇者によって最新の研究開発状況、ビジネス活用事例が展開されました。

AI・人工知能 EXPO プレスリリースより引用

野口 竜司氏のインタビューはこちら▼

AI・人工知能 EXPO【秋】|会場の様子

AI・人工知能 EXPO【秋】では、DX推進を謳ったサービスが多く展示され、どのブースも人だかりができ、多くの商談が行われていました。DXを推進する上でコアなテクノロジーであるAIへの注目の高さが伺えました。

新型コロナウイルスの影響で需要が高まるツールも注目を集めていました。例えば、オンライン会議に対応した自動文字起こし、自動翻訳ツールなどのブースには来場者が多く集まっていました。

おわりに

AIの標準が発行されれば、例えばAIの品質特性が定義されるなどし、議論のベースが構築されていくことでAIガバナンスの全体像が示されるようになります。しかし、ガイドラインや標準が発行されても、現場でどう使えばいいのか分からない状態のままでは意味がありません。ビジネスや研究開発で活かされる「AI標準」が浸透することを期待します。

また、新型コロナウイルスをきっかけとしたDXの加速によって企業のデジタルシフトは今後も進んでいくと考えられます。AI・人工知能 EXPOを契機と捉え、さまざまな企業がAIのビジネス活用が発展するでしょう。AINOWでもAI利活用の事例やDXの最新情報などの発信を続けいくので、ぜひチェックしてください。

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