最終更新日:
皆さんはAI Questというプログラムを聞いたことはありますか?
近年では、AI技術が発展して企業でのAIの役割が重要視されるようになり、AI活用人材育成プログラムが行われるようになりました。
その中でも他のプログラムと一線を画しているのが「AI Quset」です。
一般的な人材育成プログラムは講師が生徒に授業するスタイルですが、AI Questでは「PBL(課題解決型学習)」を行うことで受講者が主体的に学習できます。
PBLとは、「受講者が自ら課題を見つけ、その課題を自ら解決する学びの手法」です。
※2022/12/12追記※
2021年度に「AI Quest」は終了し、2022年度から「マナビDX Quest」として生まれ変わって実施されています。
この記事では、AI QuestについてとマナビDX Questとの違いについても触れていくので、ぜひ最後まで参考にしてみてください。
▼そもそもAIとは何か詳しく知りたい方はこちら
【この記事でわかること】※クリックすると見出しにジャンプします |
目次
AI Questとは?
AI Questとは、経済産業省が「ビジネス/社会課題解決において、AI・データを用いて企業の課題を解決できる人材を育成する」という目的で実施したプログラムです。
AI技術が急速に発展している中、企業におけるAI活用のニーズは高まる一方で、人手不足が続いています。
こうした状況を解決するために、政府は2019年にAI戦略を制定しました。そのAI戦略の一環として始まった人材育成プロジェクトが「AI Quset」です。
マナビDX Questでは、AI Questの「学びの型」を土台にAIに特化した学習から、DX推進・変革を学習できるプログラムに進化しました。
関連記事|AI人材になるには?AI時代に生き残る人・生き残らない人>>
モデルとなったフランスのプログラミング大学「42」
AI Questでは、フランスの「42」という学費無料のエンジニア育成学校がモデルとなっています。
42は、フランスの実業家ザヴィエ・ニエルが個人資産を投じて設立されました。18歳から30歳までを対象として、学位は関係なく誰でも学生として入学できます。
42で学んでいる生徒には、大学での専門教育を受けていない人やプログラミング未経験者が多く含まれています。
しかし、入学試験は4週間にわたって行われ、倍率は数十倍にもなり、実際の入学は非常に難関です。
関連記事|AIやデータサイエンスについて学べる大学10選>>
AI (マナビDX) Questで政府が目指すもの
AI Questは、企業の実際の課題に基づくケーススタディを中心とした「実践的な学びの場」を軸としています。
そして、参加者同士がお互いにアイデアを試し、学び合いながら、一人一人がそれぞれの体験として、AIを活用した企業の課題解決方法を身に付けることが目的です。
このプログラムを受講することにより、技術・知識としてAIを学ぶだけでなく、実際のプロジェクトに関わられなければ身に付けることが難しい知恵を学ぶことができます。
AI(マナビDX)Questの概要
AI(マナビDX)Questの概要を次の4つに分けて解説していきます。
経済産業省が示す応募要件と倍率
AI Quest事務局が、応募時に提出する個人情報、AIに関する技術レベル、志望動機などの情報を基に、総合的に判断して入学が許可されます。
AI Questにおける「AIに関する技術レベル」は、「Python/R等のプログラミングを用いてデータ解析・モデル構築ができる人」が対象です。
マナビDX Questでは、プログラミング経験を問わず必要最低限のDXリテラシー(データの基礎理解を含む)を保有していることだけが応募資格になったため、AI Questよりも応募しやすく改善されました。
AI(マナビDX)Questの受講時間
AI Questでは、約5ヶ月間の受講期間中は課題取り組み時間も含めて週6時間程度の時間を費やさなければなりません。また、取り組みの度合いによっては、+αの時間投入が必要です。
マナビDX Questでは、約2ヶ月間の受講期間中は週6〜12時間程度の課題取り組みが想定されています。
AI Quest・マナビDX Questは、全てのPBLがオンラインで実施されます。
AI Qusetの報告書
AI Qusetは、毎年実施後に報告書が公開されていました。実施内容からどのような成果を得られたのか、参加者の評価が載せられています。
例えば、次のような内容になっています。
- AI Qusetの背景・目的を踏まえた実施領域
- 具体的な5つの領域の内容
- 実施スケジュール
- 参加者の結果や評価
AI Qusetについて詳しく知りたい方は、報告書に目を通してみてください。
AI Qusetデータ付き教材の提供
AI Questデータ付き教材とは、実践的なスキルを持つ人材を育成するために、実際の企業のAI実装をオンラインで疑似経験できる内容の学習教材です。
「小売業における需要予測・在庫最適化」や「製造業における不良個所自動検出」などのテーマに沿って、学習していきます。
要求定義からモデル開発、実装まですべて行う構成なので、独学では学ぶのが難しいスキルや実務の全体の流れを学習することができます。
AI Questデータ付き教材のプログラムに、2020年度に732名、2021年度に899名もの人が、オンラインで全国各地から参加しました。
AI Questで実際に取り組んでいたこと
次に、AI Qusetで実際に取り組んでいたことを紹介していきます。
このプログラムでは個人またはチームを組んで、考察・データ分析・チーム内外とのディスカッションなどを行っています。
そして、アウトプットを仕上げる経験を積み、プレゼンやフィードバックを通してAIの活用によるビジネス課題の解決を経験できます。
AI Qusetの主なカリキュラムは次の3つです。
それぞれ紹介していきます。
①ビジネス課題
AI Questでの取り組みは、実践形式でさまざまなことを学べるカリキュラムです。
最初に、実企業のイシューと現場からの要望や業界特有のハードルが記されている課題文・図表を読み解いたうえ、AI開発に向けた要件定義や、AI導入を円滑にするためのプロジェクト設計を行います。
ビジネス課題ではAIを利用して何をするのか、その際の目標はどうするか、必要なデータはなにか、など詳細に手順を検討していきます。
②AI課題
そして、設定した開発案件・プロジェクト設計を踏まえ、AIモデルの構築および、実業務への実装を見据えた検証設計・仕組み構築を行います。
PythonやRといったプログラミング言語を用いて、課題解決するためのサービスを実際に形にしていきます。
この期間は精度を競うコンペティション形式になっており、上位成績者には「AI課題優秀賞」が贈られていました。
③プレゼン課題
最後に、これまでの検証結果について、実企業での意思決定の場を想定し、本実装に向けたプレゼンテーションを行います。
作成したプレゼン資料は運営の用意した採点基準をもとに複数人の参加者同士で相互採点を行い、上位成績者には「プレゼン課題優秀賞」が贈られていました。
AI Qusetで学ぶメリット・デメリット
AI Qusetで学ぶメリット・デメリットは次の4つです。
基本的にマナビDX Questも同様のメリットになっています。
それぞれ解説していきます。
【メリット①】課題解決型学習ができる
1つ目のメリットは「課題解決型学習ができること」です。
実際に取り組むことでも紹介しましたが、ディスカッションやプレゼンを通して、AI活用によるビジネス課題解決の経験を積み、現場でそのまま活かすことができます。
【メリット②】他の参加者と知識や情報を共有できる
2つ目のメリットは「他の参加者と知識や情報を共有できること」です。
参加者同士での交流を通じて、独学では気づかない自分の足りてない知識を補えます。
報告書によると、参加者の中でAIの技術だけでなく、受講生同士のネットワークができたことやSlackでの活発なコミュニケーション、スキルや年代の異なるメンバーとの協働による多様性の受け入れを学べたとの意見が多数あります。
【メリット③】スキルの証明になる
3つ目のメリットは「スキルの証明になること」です。
プログラムを修了すると、修了証がもらえます。さらに、プログラムでの課題やプレゼンでの上位優秀者はこの修了証に記載されます。
そのため、AI Questに参加して修了証を所持しているということは、より実務的な開発をしたことがあるスキルの証明にもなります。
【デメリット】課題に対して最先端技術が合わない
デメリットは「課題に対して最先端技術が合わないこと」です。
プログラムの趣旨は、ビジネス視点でも考慮し企業の抱える課題を解決できる人材の育成のため、AIの最先端技術を開発したいという方には向いてないかもしれません。
しかし、チームでコミュニケーションをとり開発していくことは独学で学ぶことは難しく、参加することによって無駄になるということはありません。
まとめ
この記事では、AI Questについて紹介していきました。いかがだったでしょうか。
AI Questについての概要、実際に取り組む内容、参加するメリットなど網羅的に理解できたのではないでしょうか。
経済産業省によるAI Questの報告書なども参考にして、マナビDX Questの参加を検討してみてください。
▼関連記事
・【初心者向け】AIプログラミング入門 – 学習の流れとおすすめの勉強方法5選>> |
AINOW編集部
CS専攻大学2年生・42Tokyo所属
情報発信を通して自分自身の知見も深めていきたいと思います