HOME/ AINOW編集部 /賞金総額350万円|優勝は株式会社ウサギィによる視線可視化ツール|AI EDGE CONFERENCE&SOLUTION CONTEST 2021
2021.12.28

賞金総額350万円|優勝は株式会社ウサギィによる視線可視化ツール|AI EDGE CONFERENCE&SOLUTION CONTEST 2021

最終更新日:

2021年12月15日(水)、東京ポートシティ竹芝で、沖電気工業株式会社(以下、OKI)のAIエッジコンピューター「AE2100」を利用し、社会課題解決のためのアイデアや技術を競うコンテスト「AIEDGE CONFERENCE&SOLUTION CONTEST2021」が開催されました。

優勝したのは、人の視線を可視化するツール「視線シミュレーションAI」を発表した株式会社ウサギィです。

この記事では、AIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテスト2021の様子と結果をお伝えします。

第1部 AIエッジ・カンファレンス

第1部 AIエッジ・カンファレンスでは、「開会の挨拶」「基調講演」「パネルディスカッション」が行われ、インテル株式会社 代表取締役社長 鈴木氏やグーグル・クラウド・ジャパン合同会社 上級執行役員 小池氏などの世界で活躍するテック企業の方々が登壇しました。

OKI坪井氏・開会の挨拶|パートナーとの共創で社会課題の解決を

コンテスト開会に際して挨拶を行ったOKIの坪井 正志氏はAIエッジコンピューター「AE2100」の紹介に加えて、今回のコンテストに込める思いについて語りました。

沖電気工業株式会社 取締役専務執行役員 ソユーションシステム事業本部長 坪井氏

OKIは、2019年に市場展開を始めた「AE2100」というAIエッジコンピューターを使って社会課題の解決を目指しています。AE2100は、高速なディープラーニング推論処理を行うエッジデバイスで、多量のセンサーデータや映像をリアルタイムかつ高い信頼性でAI解析することができます。

現在では、交通や金融、製造、海洋など幅広い市場や環境に実装を始めています。

坪井氏は「OKI1社で(AE2100を使った社会課題解決を)できるわけではない」とし、パートナーとの共創の重要性を語りました。

坪井氏:AIエッジという考え方や技術がでてきたとき、本当に皆様のお役に立つのかという疑問もありました。そこで、我々OKIにとってのエンドユーザー(企業)とパートナーとして実証実験を行いながら新しいものを生み出してきました。現在では、AIエッジパートナーシップにご賛同いただいている102社の企業の方々や産学との連携をなどを含めた全体をDXエコシステムとして我々は見ています。様々な分野の方々とご一緒できていることを非常にありがたいことだと思っています。
OKIの提供するAIエッジコンピューター「AE2100」(画像引用:OKIホームページ

今回のコンテストに出場する9社の企業のアイデアには全てAE2100が活用されています。挨拶の最後に坪井氏は、「さまざまな分野で活用されるAIを体験できる非常に面白いコンテストになると期待しています。」と話しました。

インテル鈴木氏・基調講演|4つのSuperpowersとインテルの戦略

インテル株式会社 代表取締役 鈴木氏

2021年、世界半導体市場は前年比で20%増と予測されていましたが、長引く新型コロナウイルスの感染拡大の影響でパソコンやクラウドの需要が高まり、実際は35~40%程度、成長していると言われています。現在では半導体の供給が追いつかないことが課題視もされています。

そんな業界の動きをインテルでは「4つのSuperpowersとして見ている」と鈴木氏は説明しました。

鈴木氏:「ユビキタスコンピューティング」「常時接続できるコネクティビティー」「クラウドからエッジまでのインフラストラクチャー」「人工知能」の4分野がそれぞれ強くなり、組み合わさることでイノベーションが引き起こされると考えています。
今までのコンピューティングの世界では「集中型」と「分散型」(※)の間を振り子が振れてきました。今現在は「集中型」に振れていると考えられます。
2025年までにデータセンターの外でデータ全体の75%が生成されると言われています。インテルは2026年の2月には「分散型」に振り子が振れると予測しており、AIとエッジの組み合わせの伸び代は大きくなると予測しています。

集中型:1対多の形態でほとんどの処理が中央サーバーで実行される処理形態
分散型:ネットワークを介して同時並行的に複数のコンピュータで実行される処理形態。

4つのSuperpowersを踏まえたインテルの3つの戦略が紹介されました。

製品のリーダーシップ GPUのみならず、XPU(※)を提供し、コンピューティングの民主化をリード
(※)PCから車、ロボットなど、さまざまなアプリケーションで利用できるコンピューティング・アーキテクチャ
オープンなプラットフォーム 継続的にオープンなプラットフォームへの投資をしていく、特にソフトウェアのレイヤーへの大きな投資をしていく予定
大規模な製造力 自社の半導体のみならず自社の製造力にも大きな投資をしていく

これらを踏まえて鈴木氏は、「インテルは産業界の中立的なハブの役割を担っていく」と語りました。

第2部 AIエッジ・ソリューションコンテスト

「AIエッジ・ソリューションコンテスト」では、予選を勝ち抜いた9社(予選通過10社、辞退1社)がAIを利用したソリューションを競い合います。

ソリューションは「Smart City」「Manufacturing」「Tevhnology」の3種類の分野に分かれており、それぞれデモンストレーションを含めたプレゼンテーションの審査が行われました。

Smart City

Intelligence Design 株式会社 【人物特徴量マッチングを用いた動線分析ソリューション】
従来難易度が高かった実態調査を自動化。エッジとクラウドを連携することで性別や年齢など人物の特徴量を分析する。
バスのOD(交通量)調査、実来店客数の調査で活用が検討されており、スマートシティをサポートするサービス。
株式会社ウォンツ 【ユーティリティ供給設備の予知保全】
サーモグラフィーを活用し、発電機や配管など重要設備の温度をモニタリングすることで異常予兆を検出実現。
エッジでAI解析を行うことで検出した異常状態をリアルタイムで確認でき、保全担当者の作業コスト削減へ。
予知保全、品質管理で活用。
株式会社コンピュータマインド 【AIによる屋内人物の服装解析】
屋内にネットワークカメラを設置し、人物を検出し、リアルタイムで服装を推定。屋内にいる人数、着衣料から快適な室温を計算し、自動的に空調を制御する。
SDGs 目標7、目標13、13番への取り組みとしての技術。
東亜無線電機株式会社 【非喫煙エリアでの喫煙者・ポイ捨て監視】
非喫煙エリアでの喫煙者を検出時、スピーカーなどで注意喚起を行うサービス。
喫煙者監視映像をAIエッジコンピューターでリアルタイム解析し、非喫煙エリアでの喫煙者を検出時、スピーカーなどで注意喚起を行う。
喫煙者、喫煙される時間帯などのレポートやリアルタイム画像は登録者のみLINE WORKSで通知を行うことも可能。
SDGs 目標3、目標11、目標12、目標14への取り組みしての技術。

Manufacturing

株式会社ソルティスター 【アプリケーションプラットフォーム&組込み用ハイブリッドデータベース】

製造現場における課題解決に貢献するためのサービス「SpeeDBee Hive」。
多種多様なデータを分析可能。データ収集から分析、送信まで可能。サーバ機能により、周辺システムやグラフツールを介してデータを連携することでノンプログラミングでデータの遠隔監視を行うこともできる。
AWS、Azureなど外部開発AIツールとの連携も可能。

株式会社メトロ 【複数アナログメーター一括データ化によるAI異常予測】
カメラ一台で複数のメーターの測定値をリアルタイムで解析し、結果を通知する。
人間の定期点検から機械の常時点検へシフトさせることで人件費、測定ミスなどを減らすことが可能。

Tevhnology

株式会社ウサギィ 【人の視線を可視化する『視線シミュレーションAI』】

人の視線を可視化できる視線シミュレーションサービス
アイトラッキングデバイスの視線データを学習したアルゴリズムにより、

画像をアップロードするだけでAIが注視されやすい箇所をシミュレーションして表示する。
従来、アイトラッキングデバイスは費用や時間がかかるが、視線シミュレーションAIにより画像をアップロードするだけで解析できるため、コストを大幅にカットできる。

東海エレクトロニクス株式会社 【“におい”の見える化による見守り・予防保全】
匂いセンサーによる非接触で匂い・湿度を検知し解析を行うサービス。
においの残存時間、湿度から、オムツでの排泄時の尿便区別が可能になる。介護において、おむつの早期取り替えが可能になるため、肌荒れやベッドからの転倒事故防止などにつながる。
株式会社BFビジネス・コンサルティング 【スイングセンサーと姿勢推定技術を活用したAIコーチング】
自分の体型に合った超打者としての打撃フォームを身につけることを目的とした技術。
選手の打撃フォームのメカニズムを解明し、AIコーチングとしてコンピュータ上でリアルタイムで提供することで選手のレベルアップを図る。
今後、自動車メーカーのガラス組み付けなど他業界にも進出予定。

結果発表

会場の参加者と審査員たちの投票によってコンテストの順位が決まりました。

第1位〜第3位の発表、および協賛であるLedge.ai(株式会社レッジ)による特別賞の発表が行われました。

第3位 株式会社メトロ 賞金50万円

応募ソリューション:「複数アナログメーター一括データ化によるAI異常予測」
坪井氏講評:ITモダナイゼーション(古くなったITシステムを最新技術に対応させ、近代化を図ること)を体現した技術であり、非常に効果も見込める点を評価しました。

第2位 東海エレクトロニクス株式会社 賞金100万円

応募ソリューション:「“におい”の見える化による見守り・予防保全」
坪井氏講評:「におい」という着目点と介護というリアリティある課題に取り組む点を評価しました。実用化に向けて今後も取り組んでほしいと思います。

第1位 株式会社ウサギィ 賞金200万円

応募ソリューション:「人の視線を可視化する『視線シミュレーションAI』」
坪井氏講評:(視線を活用した技術に)こうした使い方があったのかという独自性と、エッジでその場で推論させる意外性を評価しました。また、実用性も高い技術だと思いますので今後も頑張ってください。

Ledge.ai賞(特別賞) 株式会社ソルティスター

応募ソリューション:「アプリケーションプラットフォーム&組込み用ハイブリッドデータベース」

株式会社レッジ 代表取締役社長 小瀧氏講評:「誰もが触れるAI技術であるか」という観点で今回の審査に参加させていただきました。ソルティスターさんの技術のいろんなインターフェイスに使えるという汎用性の高さを評価しました。今後も期待しております。

おわりに

AI EDGE CONFERENCE&SOLUTION CONTESTでは、エッジコンピューターを活用されたおもしろい技術が見られました。特に、昨今のトレンドである「SDGs」の取り組みを意識したアイデアを提案する企業が多く見られました。

今後、エッジコンピューターの進化によってどのように社会課題が解決されていくのか非常に楽しみです。

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