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2022.01.13

【製造業でも進むDX】先端技術や新素材を活用した社会課題の解決へ -三井化学DXオンラインイベントレポート

製造業はこれまで日本の経済発展を支えてきてた重要な基幹産業です。しかし今、日本のものづくり産業は低コストで大量生産が可能な新興国の台頭や、国内の労働力人口の減少を背景として衰退の危機を迎えています。

さらに新型コロナウイルスの感染拡大により、製造業のサプライチェーンのリスクとなる不確実性は高まっており、原料の調達や物流などの供給にも影響を与えています。また、世界ではカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーへの取り組みも急速に発展しています。

このように岐路に立たたされている製造業では、外部環境の変化に対応するためにデジタル化が求められています。

製造業のDXに関して詳しくはこちら▼

総合化学メーカーである三井化学株式会社(代表取締役社長:橋本修)は2021年4月、DX推進室を発足し、営業やサプライチェーンなどにおけるDXの取り組みを全社横断で進めています。すでにR&Dや製造部門では、DXを活用した研究開発の高度化やプラントの予防保全、データのリアルタイム分析などを実現しています。

こうしてデジタル化への対応を進めている同社は2021年12月2日に、三井化学グループの社会課題解決に向けた取り組みを紹介する初めてのオンラインイベント 『三井化学フォーラム2021』を開催しました

「社会変革をデザインする、グレイトリセットの今だからこそ」をテーマに、「ライフ&ヘルスケア・ソリューション」「モビリティソリューション」「ICTソリューション」「ベーシック&グリーン・マテリアルズ」の4つの事業領域から社会課題の解決に向けた12の事業についてセッションを行いました。

さらに、三井化学代表取締役社長の橋本修氏の基調講演に加え、メディアアーティストの落合陽一氏が「祝祭性とサーキュラーエコノミー」をテーマに、コロナ禍でさまざまな変化が訪れる中での今後の社会の働き方や動向を語る特別講演も行われました。

今回の記事では、橋本氏の講演と、2つのセッションをレポートします。

※講演の内容を一部割愛、言い回しの変更をしております。ご了承ください。

基調講演 橋本 修氏|全社員のデジタルリテラシーの向上を図っていく

橋本氏は、DXの進展や環境問題への社会的意識の高まりを受けて三井化学は次なる成長の指針として長期経営計画「VISION2030」を策定したことを説明し、新たな事業モデルについて語りました。

橋本氏:当社はBtoBの会社として、得意とする「素材提供型ビジネス」から「課題解決型の素材提供」へと変わっていきます。ソリューション型ビジネスモデルあるいはサーキュラーエコノミー型ビジネスモデルといった新しい事業モデルへの転換を図っていきます。そのためにDXの技術を最大限活用しビジネスモデルへの変換を加速していきます。

DXを推進するためにまず、全社員・全メンバーを対象にデータとデジタル技術を活用する能力・デジタルリテラシーの向上に取り組みます。そして社会課題解決のため革新的な製品やサービスをアジャイルに創出していきます。

三井化学 長期経営計画「VISION2030」18ページより引用

橋本氏:社会の変革をリードするとともに当社自体のコーポレート・トランスフォーメーション(CX)を実現するためにまず、人材育成から始まり、組織を変え、そして経営を変えていきます。こうしたステップを踏みながら(CXを)推進していくために2021年4月、DX推進室という専任組織を創出し、ビジネスモデルと変革と組織能力の高度化を推進しています。現在NECやIBM、日立などの社外の皆様との様々な形での協働を行なっており、サプライチェーン全体でのDXを加速を目指しています。

ソリューションセッション|社会課題解決に向けた事業の紹介

ソリューションセッションでは全12の事業に関するセッションが行われました。

今回の記事では、

  • 井上 健一郎氏「「静かな材料」でロボット社会を支える」
  • 徳永 達哉氏「ブロックチェーン技術によるプラスチック資源循環プラットフォーム」

の講演内容をレポートします。AIやDXの技術は化学業界でどのように活用され、化学の力は未来のサステイナブル社会、スマートシティにどう貢献しているのか、その取り組みの一部を紹介します。

ロボット社会に求められる“静かな材料”

井上 健一郎氏はまず、人とロボットが共生する未来の可能性について語り、ロボットに活用できる素材の特徴を説明しました。

井上氏:今後産業の高度化や住みやすい社会の追求、少子高齢化の進展の中でロボットが我々の生活に浸透すると言われています。 当社の超高分子量ポリエチレン製品群「ハイゼックスミリオン®」「ミペロン®」「リュブマー®」(※)は、摺動性(滑りやすさ)、耐摩耗性、機械強度に加えて加工性、小粒径といった特徴を活かし、静かで、丈夫、軽いロボットを実現します。
(※)各素材の特徴の詳細は各リンクを参照してください。

井上氏:現在これらの素材は医療部材やヘルメット、自動車修理部品などの用途で使われていますが、今後、新しい用途として期待できるロボット分野での展開を紹介します。
高い強度や耐摩耗性、静音性等の特徴を生かして生産用ロボットでの活用や、精密機器の搬送レール・ローラーなど産業用ロボット、また、サービス用ロボット、人型ロボットなど幅広い領域での活用を想定しています。
現在人型ロボットの導入に向け、素材をベースとしたブランディングや適用開発のコンサルティングを行っているHide Kasuga1896社と人型ロボット研究の第一任者・高西淳夫教授が率いる早稲田大学・高西淳夫研究室と三者協同しています。

現在、早稲田大学にて行われている人型ロボットの摺動部品(部品同士の接触部分)の実験で「ハイゼックスミリオン®」と「リュブマー®」が使用されており、その担当である高西研究室の大谷拓也氏のインタビューが紹介されました。

早稲田大学 高西研究室 大谷氏:高西研究室では現在、人間に近いスポーツができるようなロボットの開発を新たに始めています。現在、三井化学の素材を使った樹脂歯車の実験を進めているところです。所感としては、金属歯車の時と比べて、動きが滑らかで静かになってるような感触を得ています。
一般的にロボットは重量感を増すほどエネルギー利用効率が下がるということが問題になります。それは多くの部品が金属材料できていることが問題だと思ってましてそこに対して樹脂材料が使えると軽量化が狙えます。
また駆動系歯車などの伝達部品に樹脂材料は使っていけるとエネルギー効率の向上、摩擦の低減、音の静音化などによって社会への実装を進めていけると思っています。

井上氏は講演のまとめとして、「今後の人とロボットが共生するロボット社会が到来する際に、あらゆる場面でロボットが人々のパートナーとなる社会の実現に貢献します。」と話しました。

プラスチック資源循環プラットフォームの構築で循環型社会の実現へ

講演冒頭、徳永 達哉氏自身が所属するDX推進室の概要や取り組みについて説明しました。

徳永氏:DX推進室は2021年4月に部門横断型組織として立ち上がりました。これまではあまり手がつけられてこなかったで営業、マーケティング、サプライチェーン領域にフォーカスして全社のDX戦略を実行しています。また、モノ売りからコト売りへソリューションサービス事業の開発、DX人材の育成の計画・実行です。
人員は、専任メンバー・兼務メンバーに加え、各事業本部から選出され DXチャンピオンで構成されています。DXチャンピオンが各部門におけるDXを展開しています。

また、DX推進室は全社DX活動として“3 Initiatives”掲げています。

  1. ブロックチェーン技術によるプラスチック資源循環プラットフォーム
  2. オンラインイベントの開催
  3. AIを用いた新規用途探索

1つ目は本セミナーのテーマとしてこのあとお話しします。2つ目はまさに今回のオンラインイベントです。コロナ禍でお客様との商談の場が制約され我々の製品にアクセスすることが難しくなっています。この状況に対してデジタルを活用し情報発信力を強化することでお客様の利便性を向上するという狙いでこのイベントを開催しています。

このセミナーで取り上げる社会課題はGHG(温室効果ガス)削減とCO2削減、廃棄プラスチックの削減であると徳永氏は説明し、プラスチックの観点からこれらの課題について語りました。

徳永氏:三井化学はプラスチック素材を製造・販売している総合化学メーカーです。ペットボトルや食品パッケージ、おむつ、メガネレンズ、自動車のバンパー、電線など様々な用途でプラスチックを使われています。

そもそもプラスチックは分別して回収されたあと、どれくらいが有効利用されているのでしょうか。実は約60%は燃やされ、約15%はリサイクルされず廃棄プラスチックとなっています。つまり日本の現状として、プラスチックは約75%が燃やされている、もしくは廃棄されています。

つまり、プラスチックという素材の循環を促進することでサーキュラーエコノミーが実現すれば、先ほど説明した社会課題であるGHG削減とCO2削減、廃棄プラスチックの削減につながります。

では、どのようにすれば循環を増やすことができるのか。プラスチックを購入する消費者の社会や環境に対する関心は高まっている一方で、リサイクルされたプラスチックというのは本当に安心、安全なのかを疑問に思っている人も多いようです。

ブロックチェーンを活用したプラットフォームで「情報の見える化」

徳永氏は最後に、上記のようなプラスチックの再生利用の課題に対して、三井化学が日本IBMと協働して行なっているブロックチェーン技術を用いた「資源循環プラットフォーム」の構築というアプローチを紹介しました。

徳永氏:プラスチックのリサイクルの流れを説明します。プラスチックは石油からナフサになり、モノマー・ポリマー・コンパウンドに混ぜられて、部品メーカに渡されます。そして製造メーカーから消費者へ販売され、(使い終わった製品を)回収業者が回収し、解体され、リサイクル業者で再生プラスチックとなります。

しかし、どこで作られた製品がどのようにリサイクルされ、実際にどのような用途で使われているのかが分かりません。

そこで全てのリサイクル工程において、「情報の見える化」を実現し、資源循環プラットフォームを構築します。例えば製造工程や検査工程、物質情報など、リサイクル情報が分かるリサイクル情報を見える化することで再生プラスチックの安心安全を実現します。

そこで使われるのがブロックチェーン技術です。ブロックチェーン技術を使うことで、バリューチェーンを通したリサイクル情報が繋がります。もし、一部のリサイクル情報が改ざんされたとしても改ざん情報は伝播され気づくことができるので、情報の信頼性が保障されます。

製品メーカーのメリットとしては、安心して再生プラスチックを利用できますし、個々に独自のシステム構築することなく共通のプラットフォームを活用することでコストを削減できます。また、今後再生プラスチックを積極的に利用している企業は税制優遇を受けることができる可能性もあり、そのための証明書を利用できます。プラスチックリサイクル業者は再生プラスチックの安定供給が可能になり、安全性を示すメリットもあります。

そして私たちは今、このプラスチック資源循環プラットフォームの実証実験を開始しています。2021年の6月から現場でのトレース作業や作業負荷の検証、アプリケーションの検証・更新などを進めています。

当面はいくつかの実証実験を行っていくことでアプリケーションを作り込んでいき、その後フェーズ2として国内でコンソーシアムを設立することでリサイクルノウハウを共有し、資源の循環を拡大します。フェーズ3では日本初のこのプラットフォームを海外にも展開していく予定です。

2021年8月には日本IBM、野村総合研究所とプラスチック資源循環型社会へ向けたコンソーシアムの設立を発表しました。このプラットフォームのステークホルダーとして、より多くの消費者の方々やあらゆる産学官の皆さまと協調してプラスチックチックが資源循環する社会全体を作り上げ、カルチャーを変革していきたいと考えています。今後協力していただけるパートナーを募集していきますので是非ご参画ください。

おわりに

今回の記事では、三井化学のオンラインイベント「三井化学フォーラム2021」の一部をレポートしました。

世の中のデジタル化が進む中、三井化学をはじめとした化学業界ではDXや、今後AIやIoTの発展で迎えるSocity5.0に貢献し得る素材の開発など、さまざまな取り組みが始まりつつあります。

その背景には、人手不足や世の中の不確実性を補うためのデジタル化の必要性だけではなく、カーボンニュートラル・脱炭素化への取り組みに迫られているということが挙げられます。

日本におけるCO2排出量は産業部門が占める割合が最も高く、34.7%を占めています(※)。日本が掲げるカーボンニュートラル目標の2050年に向けて今後産業構造は大きく変わっていくでしょう。

(※)国立研究開発法人国立環境研究所「日本の温室効果ガス排出量データ」(2019年度確報値)を参照

このような経済社会の変革期にある今、AI/DXはキーとなる技術です。社会ではSDGsへの注目が高まっており企業の持続可能性が評価されるようになっているため、DX・GX人材の育成もさまざまな企業で求められます。

今後の製造業のDXやGXへの取り組みに注目が集まります。

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