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2022.02.15

AIで革新するソフトウェアの未来 | ベリサーブ アカデミック イニシアティブ 2021

2016年から開始し、今年で6回目となる「ベリサーブ アカデミック イニシアティブ 2021」が、11月25日(木)、11月26日(金)に開催されました。

DXが加速する現代で、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受けてソフトウェアサービス、プロダクトの進化のスピードは加速しており、ベリサーブ アカデミック イニシアティブ 2021では、そんなソフトウェアの未来を洞察するアカデミストが集い、講演を行いました。

AINOW編集部は11月25日(木)に取材を行ったので、レポートします。

ソフトウェアが創る2030年の世界 | ベリサーブ アカデミック イニシアティブ 2021

ベリサーブ アカデミック イニシアティブ 2021は、「ソフトウェアが創る 2030年の世界」をテーマに全10講演が開かれ、開催企業のベリサーブに所属している方だけでなく、各分野のアカデミストが講演を行い、多視点でソフトウェアの未来について考察するイベントです。

Day1 講演内容

経産省 和泉氏
「デジタル化の本質と成長ビジネスへの変革 -日本企業のDX推進状況の現状とこれから-」
ベリサーブ 朱峰氏
「大規模アジャイル開発におけるソフトウェアテストの課題と、その解決へのアプローチ」
株式会社CRI・ミドルウェア 押見氏
「ゲームビジネスとリアルタイムコミュニケーションによる革新」
ベリサーブ 岡田氏
「セキュリティシステムの未来展望 ~AIで変わるセキュリティの概念~」
国立情報学研究所 石川氏
「AIの品質における難しさを理解し先端技術で挑む」

Day2 講演内容

富士通 松本氏
「デジタル先進国に学ぶデジタルトランスフォーメーション ~アフターデジタルの世界~」
ベリサーブ 伊藤氏
「テスト自動化の成功の先 ~自動化をした後の課題と、テスト自動化の今後の展望~」
イデソン 誉田氏
「品質重視のアジャイル開発 ~ウォーターフォールモデル開発との比較から~」
HACARUS 染田氏 ベリサーブ 須原氏
「QA4AIガイドラインの実プロジェクトへの適用の勘所」
日本サイバーディフェンス 名和氏
「急変したサイバー脅威が「さまざまな層」に与える影響と実施すべきプラクティス」

今回は、以下の3講演についてレポートしていきます!
経産省 和泉氏
「デジタル化の本質と成長ビジネスへの変革 -日本企業のDX推進状況の現状とこれから-」
ベリサーブ 岡田氏
「セキュリティシステムの未来展望 ~AIで変わるセキュリティの概念~」
国立情報学研究所 石川氏
「AIの品質における難しさを理解し先端技術で挑む」

DXの本質はデータにある | 経済産業省 和泉氏が語るDX推進の現状とこれから


経済産業省 商務情報政策局アーキテクチャ戦略企画室長の和泉 憲明氏はデジタル化の本質と成長ビジネスをテーマに、以下4つの観点で説明を行いました。

  • DX推進政策の意図と全体像 : DXレポート2.1
  • デジタル化の動向と変革への課題 : 製造分野の事例
  • デジタル化の本質とデータの重要性
  • アーキテクチャで考えるデジタル産業の創出
  1. DX推進政策の意図と全体像 : DXレポート2.1


    和泉氏は、自身も制作に携わった「DXレポート2.1」の内容を元に、DX推進において現代の経営トップがなにか先行事例はないのか、と多くの人が言っている現状について、脱却すべき企業文化であるとし、変革が起こる際に先行事例は本当に必要なのかという観点で説明しました。

    その中で和泉氏は、「一般的に経営の戦略は現状を良くしていく「Better」と、少し前のオンライン販売のように変革を起こしていく「Different」の大きく2通りに分かれており、経営者の方はDXについてどちらを目指していくのかを一考してほしい。」と話しました。

    また、「DXは”トランスフォーメーション”が中心にあるはずなのに、”デジタル”の部分が先行してしまっている。つまり目的ではなく、手段が注目されてしまっている現状は本質的ではないため、結果的に顧客価値を追求することが重要である。」といった考えを伝えることがDX推進政策の意図であるとしました。

  2. デジタル化の動向と変革への課題 : 製造分野の事例


    和泉氏は、デジタル化が社会の構造をどう変化させているのか、製造分野を例に紹介しました。
    製造業では、市場のニーズに応じて迅速に新製品を開発・製造できることが競争力の源泉にシフトしたとし、その原因については以下のように話しました。

    「日本は新幹線の技術を持っているため、外国に売り出そうとしますが、売り先では新幹線だけでは購入されません。

    そこで、線路や駅舎、ICカードや特急券などの販売技術なども含めたパッケージ化を考えますが、途中の駅がある街がどう綺麗になるかや、金融機関連携、ショッピングモールの設計など、スマートシティを目指せるパッケージを求められるため、すべてを提供しているヨーロッパに負けてしまいます。

    ヨーロッパはドイツのインダストリー4.0などを筆頭に、工業システムの連携のみでなく、企業間のアライアンスを組んでおり、国際的なインフラ提案力を強化しているため、日本のように良いシステムを開発しただけでは売れない時代になっています。」

    「このような現状はさまざまな分野で見られていますが、製造分野が顕著であり、将来的に日本企業のシステム・機械は、国際的な競争力を失う可能性があります。


    また、製造業のDXについて、本質を誤解しているパターンが多く存在しているとし、「人による作業を自動化する際に、作業プロセスをそのまま機械化したが、結局人の役割が変わらないケースがあるんです。そうではなく、改めて機械中心のプロセスを設計し、新たに人の役割を定義する必要がある。」と話しました。

  3. デジタル化の本質とデータの重要性


    DXの本質について和泉氏は、「これまで主にIT化と言われていた事例は、オフィスなどのフィジカル空間にITやサイバー空間を足す形でしたが、今後はデジタルの世界で最適化されたシステムをフィジカル空間に少しだけ作用させ、フィジカル空間での動きを最小にする形を考えられるかがポイントになっているんです。」と話しました。

     


    また、データの重要性については、「データを活用する企業の中には、保有しているデータから選んでいるケースがありますが、本当に必要なデータは一体何なのかを分析し、データを選定することが重要です。

    また、データの劣化について考えていない経営者が多く、そのデータがいつどこで使えるのかを正しく判定することが正しいデータ活用に繋がります。

    正しくデータ活用を行うことで、現在日本プロ野球でデータ活用による分析が一般的化されているように、大きくインパクトを与える事例が生まれるようになります。」
    と話しました。

  4. アーキテクチャで考えるデジタル産業の創出


    DXの現状について、「自身をトップランナーと考えている企業は4割ほどいるが、実際に企業を見てみるとDXできている企業は8%ほどという現状があります。

    その背景には、既存の製品の改修ばかりに注力してしまい上手く行かない現状があるので、まずはどういうアライアンスを組み、どういうインセンティブ構造を持つのか、トップダウンでもボトムアップでもないミドルから作り、それを上下に広げていく”ミドルアウト”でのアプローチが重要なのではと考えます。

    そして、経営トップは他者の巻き込みによるエコシステムを作り、そのインセンティブ構造に伴って新しい顧客体験を作る。といったミドルアウト戦略のミドルのことを我々はアーキテクチャと呼んでいます。」と話しました。


    また、デジタル産業の創出については、「同じプロダクトの提供でも、販売からサービス提供へ移行することで、マス化による最適化が可能になるんです。例えば、納品物を提供していたソフトウェアエンジニアが、すでに完成した機能を提供することによって、利用者側にかかっていた負担を軽減し、生産性を向上する。といったものです。

    このようなケースは、サービス提供側は知財の研究から新たな価値を誘引できたり、利用者側は競争領域に注力できたりと良いサイクルが生成されます。」

    ベンダー企業とユーザー企業がマルチサイドプラットフォームを共有して、エコシステムのメンバーになっていく状態が、デジタル産業の創出におけるDX成功パターンになると和泉氏は主張しました。

良いサービスを開発すれば売れる時代は終わった

「デジタルによる変化の本質は、良い製品、良いサービスを提供していれば売れる時代は終わってしまったんです。

その中で、既存の仕組みの延長を目標にする”フォアキャスティング”ではなく、ストレッチした未来像を具現化する”バックキャスティング”を行うことが重要なんです。

なので、ビジョンを反映したアーキテクチャに対応して、大量のデータを活用していくことが、DX推進に繋がるのではと考えます。」

セキュリティの未来展望 | AIがセキュリティにもたらす変革とは


株式会社ベリサーブ ソリューション事業部の岡田秀二氏は、自身の知見を元にセキュリティシステムの展望を説明しました。

項目は3つに分かれており、以下の観点でセキュリティシステムの未来について話しました。

  1. ITの進展がもたらす社会構造の変革
  2. 社会観念の変化に即応する新しいセキュリティ概念
  3. 新たな脅威に対抗するためのセキュリティシステムとは

 

  1. ITの進展がもたらす社会構造の変革


    これからの社会構造について岡田氏は、「ITの多様化と共にDXが進んでいき、今後はRPAや自動運転などさまざまな領域でAIによる自動化が普及していくことで、社会構造そのものが変革する可能性があります。

    また、これまでは個人で所有していた車などをシェアするサービスの普及や、サービス同士の結合などを経てスマートシティの実現が近づいています。」
    と話しました。

  2. 社会観念の変化に即応する新しいセキュリティ概念


    1で取り上げた社会構造の変革に伴って、社会観念も変化していくとし、その際に起きるセキュリティの課題に関して岡田氏は、
    「DX推進によってフィジカル空間とサイバー空間の二面的にプライバシーを考慮することが必要になったり、それぞれの空間に伴った新しい倫理観が生まれる可能性もあると考えています。」
    と話しました。また、セキュリティ概念については、
    「これまでは重要視されるのが”Confidenriality(機密性)”、”Integrity(完全性)”、”Availabillity(可用性)”の三要素C・I・Aであったのに対し、将来では”Safety(安全性)”、”Health(健康)”、”Information(情報),Intellectual property right(知的財産権)”、”Ethics(倫理性)”、”Legality(合法性)”、”Defense(企業・国家防衛)”の6要素S・H・I・E・L・Dに変化していくと考えています。」
    と話しました。

  3. 新たな脅威に対抗するためのセキュリティシステムとは


    岡田氏は、AIの実装の際に必ず考慮すべき点は、マルウェアやDoSなどのサイバー攻撃ですが、将来的にはAI対AIの構図になるとして、これからのセキュリティシステムについて、次のように話しました。

    「サイバー攻撃が高度化・巧妙化した未来においては、いかに先手を打つかがカギになります。一方で、攻撃を防御できないケースも想定した上で、被害の極小化、情報の即時共有なども重要になると考えています。」

    また、将来求められるセキュリティシステムの機能として、
    「現代でも顔認証による個人の特定や、クレジットカードの利用パターンを機械学習する不正利用検知システムなど、さまざまな領域でAIが活用されていますが、これらは特定の領域に特化したAIであり、機能領域と学習レベルの深さが限定された”弱いAI”であるため、将来的にはAI自身が機械学習によって驚異の予測を行ったり、対策の導出及び実行を行う”強いAI”が求められます。」
    と話しました。


    強いAI”を作るためには、
    「AIは万能ではなく、長所と短所があるので、それを正しく理解しないといけません。例えば、特定領域に強く、膨大なデータ処理や推論へのスピードが速いのは言うまでもありません。しかし、短所として、責任の所在の曖昧さや、100%正しい値を導き出すわけではない。といった点が挙げられるため、長所を活かしつつ、短所を補完するための仕組みを整備する必要があります。」
    と話しました。

今後のセキュリティシステムの実現に向けて


将来のセキュリティシステムの実現に向けた課題について岡田氏は、政策面、人材面、技術面の3点についてそれぞれ、
「政策面では、スマート化が優先されて、セキュリティの対応が後手になってしまっている。」
「人材面では、セキュリティに関して将来のビジョンやストラテジーを描ける人が少ない。」
「技術面では、ディープラーニング精度の向上、また、AIのロジックを鮮明化し、導出した結果を人間が適切にジャッジできる状況を作る必要がある。」
と話しました。

国立情報学研究所 石川氏「AIの品質における難しさを理解し先端技術で挑む」について


国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系 准教授の石川 冬樹氏はAIの品質を確保することの難しさをテーマに、国内における2つのガイドラインを中心として「AI品質」に対する考え方について説明しました。

講演冒頭、石川氏はグーグルフォトやアマゾンの事例からAIの性能限界について触れました。

「グーグルフォトでは黒人の方にゴリラとタグ付けをしてしまった事件が過去にありました。その後2年経って追跡調査をしたところ、AIは本質的に改善されていないことがわかったため「ゴリラ」という単語を使わないことにして問題を収めたということがありました。このことから、グーグルのような(技術に強みをもつテックジャイアント)企業でもAIの性能限界は避けられません。」

「また、AIは学び続けるもので、やってはいけないことの認識はできません。アマゾンのAI採用が女性に不利な判別をしてしまうため、利用をやめることもありました。このことはAIが昔のデータから学んだ結果、昔では許されていた差別を学んでしまったことも考えられます。アマゾンはエンジニアが多いため男性の割合も高い会社です。女性が少ないためにAIは傾向を学習できず差別しようとしたわけではないのに差別のようになってしまった可能性もあるでしょう。」

機械学習の難しさ

石川氏は、「第3次AIブームである現在、AIの難しさに直面しているエンジニアは多くいる」と話し、2018年に大手企業を対象に『ソフトウェア開発において機械学習を取り入れるとき、(各項目が)どれくらい難しくなるか』と訊ねたアンケートを紹介しました。回答によると(上記スライド参照)、技術者の2〜4割が「根本的に異なる新たな考え方が必要になる」と答えていることを踏まえて石川氏は、

「お客さんが求めるものや品質の評価、その修正や更新は考え方を変えなくてはいけないと受け止めてる方が多いようです。開発者にとってこのような課題は、AIの性能などについてお客さんに事前の約束ができないということです。 品質保証という点で考えても、テストをしたいけれど正解を用意することがそもそもできなかったり、用意するコストが大きかったりします。また、場合分けや規則性では挙動を捉えきれないこともあるので、機械学習にはどうしても難しさがついてきます。」

と機械学習の難しさについて語り、AIの品質の考え方の話に移りました。

ガイドラインから見るAI品質の捉え方|ニーズを満たすAI品質とは

「顧客のニーズを満たすというエンジニアのミッションを考えると、ただ数字を出せばいいという訳ではありません。例えば、不良品の検査の正解率が96%だとしてもただ不良品が少ないだけという可能性もあるのでメトリクス※の基準も議論が必要です。また、AIの品質を考えるとき、ニーズに合うという観点から「こういう不良品パターンを当てて欲しい」とか「〇〇というデータは入ってるか」というような(数字だけではなく)言葉での投げかけが求められています。」

※メトリクス・・何かしらデータを収集して、そのままの形ではなくて、計算や分析を加えてわかりやすいデータ(数値)に変換したもの。

(引用: MetricsManagement for making a right decision

「こうした話が含まれる、品質に関するガイドラインが日本では2つあります。1つはQA4AIガイドライン(AIプロダクト品質保証ガイドライン)というガイドラインで、データや予測モデル、システム全体を評価するためのチェックリストを提供しています。評価の対象には、成果物だけでなくプロセスとしての整合性があるかも重視されています。なぜなら、機械学習はやってみないと分からないことがあまりにも多いので、試行錯誤して改善を継続反復するということが大事になってくるからです。」

「もう1つのガイドラインはAIQM(機械学習品質マネジメントガイドライン)です。本来認識しなくてはいけない対象はモヤモヤしています(下記スライド参照)。それを言葉や数学を使うことで具体的な形で記述し、場合分けをしていくことで評価軸を検討するものです。また、そもそもどういうデータがいいのかというデータ設計について考えたり、集めたデータが足りるのかどうかという検討も行います。データ全体のバランスが自然であることが必要になります。このガイドラインでは、見落とし率を計ったりプログラム自体の信頼性の話にも及んでいます。」

石川氏は講演の最後に、AIを使って品質をテストするという技術側からのアプローチについて紹介しました。

「Search-Based Testingという技術は、テストを設計してその正解スコアを高めるために試行錯誤しながらどんどんいいものに辿り着くタイプの機械学習になります。進化計算とも言います。最近ニュースになったのは、この技術をクラッシュ発見に使ったMeta(旧称:Facebook)です。より少ないテスト数でクラッシュを発見しエンジニアに送るという用途で使っています。また、DeepXploreという技術ではいろんな画像を自動的に探してきてAIのテストを行うことができます。」

機械学習の不完全さを理解し議論する

「機械学習というのはなにかというと、“不完全さ” “不確実性”ということがキーポイントだと思ってます。紹介したようなガイドラインもありますが、やはりモヤモヤしています。」

「(AIは)使うシーンによっては社会のインパクトが大きいし、初めてやってみる・作ってみないと分からないことばかりです。不完全・不確かであることを前提として、ステークホルダーとして議論し、また自動化できるところはして早く試行錯誤を回していくということが重要となります。

おわりに

今回は「ベリサーブ アカデミック イニシアティブ 2021」をレポート致しました!
DX推進に伴って沢山の課題が生まれており、中でもAIの品質、セキュリティについて求められている要件レベルが高くなっている現状がよく分かる内容でした。

また、DXの政策を作る方から、実際に開発を行う方、さらにそのサービスの品質テストをする方など、DXに関する上流から下流までの視点で課題や現状をお話しいただき、DX、AIについて深く知る機会となりました。

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