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2022.02.28

あなたのスタートアップが(破産しないで)今すぐAIを利用できるようになる4つの方法

最終更新日:

著者のGanes Kesari氏はMediumに多数のデータサイエンスに関する記事を投稿しているデータサイエンティストであり、それらのいくつかはAINOWの翻訳記事で紹介してきました(同氏の詳しい業績はこちらを参照)。同氏がMediumに投稿した記事『あなたのスタートアップが(破産しないで)今すぐAIを利用できるようになる4つの方法』では、おカネをかけずにAIを導入する方法が解説されています。

AI導入を決定した後、一般に問題になるのが「AI導入にどのくらいの費用がかかるのか」という疑問です。数年前までは大手企業が高給取りのAI人材を集めてAIを導入していたものですが、AI技術が社会に浸透した現在ではあまり費用をかけずにAIを導入する方法が多数存在します。そうした方法として、Kesari氏は以下のような4項目を提案しています。

おカネをかけずにAIを導入する4つの方法

  1. AI機能の有効化:既存ツールに実装済みのAI機能を有効化する。Excelの画像読み取り機能が該当。
  2. AI搭載のSaaSの購入:AI機能を搭載したSaaSツールを購入する。英文校正ツールGrammarlyが該当。
  3. AIモデルの接続:開発済みのAIモデルを社内システムに組み込む。Amazonが提供するML on AWSが該当。
  4. AIモデルの再訓練:開発済みのAIモデルを社内システム向けに再訓練して実装する。Kaggleなどで公開されているAIモデルの活用が該当。

以上のような方法を提示したうえで、AI導入はゴールではなく業務効率化を実現する旅の出発点に過ぎない、とKesari氏は述べます。AI導入後は定期的に固定費用を見直して、状況に合わせて解決策を変えていくべき、とも語っています。
AI導入のコストが低下している昨今、Kesari氏が提案する身の丈にあったAI導入はとくに中小企業にとって重要ではないでしょうか。

なお、以下の記事本文はGanes Kesari氏に直接コンタクトをとり、翻訳許可を頂いたうえで翻訳したものです。また、翻訳記事の内容は同氏の見解であり、特定の国や地域ならびに組織や団体を代表するものではなく、翻訳者およびAINOW編集部の主義主張を表明したものでもありません。

画像出典:UnsplashBill Jelen

大きな予算も、データサイエンティストも、数ヶ月の努力も必要ない – あなたのスタートアップが今すぐAIドリブンになるための4つの方法

人工知能(AI)は、コンピュータ科学者のアンドリュー・ングが「新しい電気」と呼ぶものだ。しかし、その能力と魅力にもかかわらず、AIはすべての状況に適しているわけではない。以前の記事では、AIへの投資を避けるべき5つのシナリオを紹介した(※訳註1)。自分のスタートアップにAIが必要かどうかを調べるには、まずビジネス上の問題に優先順位をつけることから始めよう。これらの課題を解決するための最適なアプローチをフレーム化し、テクノロジーがどのように役立つかを評価しよう。ほとんどの場合、基本的な分析、統計、または単純な機械学習で効果的に仕事ができるになる。

いくつかの状況では、AIの馬力が必要となる。そのようなシナリオでは、追加のインテリジェンスと自動化があなたのスタートアップに変革をもたらす。この記事は、そのようなケースのためのものだ。

AIの必要性を感じたとき、次によくあるのが 「AIを使うのに大きな予算が本当に必要なのか」という質問だ。この質問の答えはNoである。あなたのビジネスがAIドリブンになるために、何ヶ月もの労力やエリートデータサイエンティスト、あるいは高額な予算は必要ない。

以下では、あなたのスタートアップや中小企業が今日からAIを使い始められる4つの方法を紹介する。これらの提案は、簡単なものから難しいものへと順を追って説明されているので、一番上から始めて、どのオプションが自分のニーズに最も合っているかを調べよう。

(※訳註1)この記事の著者Kesari氏は、ビジネスメディア『Entrepreneur』アジア・パシフィック版に2021年1月9日、『AIに投資すべきでないのはいつなのか』と題した記事を公開した。
同氏が挙げているAIに投資すべきではない状況とは、以下のような5項目である。

AIに投資すべきではない5つの状況

  1. より単純な方法で問題を解決できる時:AIを使わずとも問題を解決できるのであれば、より安価で単純な解決策を実行するべき。
  2. 十分な学習データがない時:AIを学習するためのデータがない場合、AIを導入しても役に立たない。
  3. AI導入の効果が実証されていない時:AI導入の効果が十分に実証されていないドメインの問題に対して、AIを導入するのは危険である。
  4. コストがメリットを上回る場合:AIを導入しても維持コストを要する。このコストがメリットを上回るならば、AIを導入すべきではない。
  5. 人間が関与するのは望ましい時:AIの問題解決能力が人間のそれを凌駕したとしても、人間が関与すべき状況がある。例えば、がん診断においてAIが人間の医師を凌駕したとしても、がんを告知するのは人間であるべき。

1.すでに使用しているツールのAI機能の有効化

AIは私たちの周りにあふれている。あなたのスマートフォンには、AIを使ったアプリが少なくとも1ダースは入っているだろう。このテクノロジーは、カメラでより良い写真を撮ることを可能にし、写真を整理し、ソーシャルフィードをキュレートするための力となっている。

ほとんどのエンタープライズツールは、AIを活用した機能を自社製品に追加している。Microsoftは、ExcelにいくつかのAI機能を搭載した。スクリーンショットからデータを挿入したり(※訳註2)、Excelの「アイデア」パネルが提案する洞察を活用したりする場合、AIを利用していることになる。Salesforceは、同社のAIエンジンであるEinsteinを、人気のCRM(顧客関係管理)プラットフォーム全体のインテリジェントアシスタントとして統合した。AI機能を自社のコア製品にバンドルしている企業もあれば、(AI機能を使うのに製品の)アップグレードが必要な企業もあるだろう。

購入したソフトウェアにAI機能が搭載されているかどうか、ベンダーに聞いてみよう。既存のツールセットがすでにAI駆動になっていたり、簡単なアップグレードで対応できたりする可能性もある。

このオプションにおける5つの人気ツール:MS OfficeGoogle for BusinessDropboxGithubMixmax

(※訳註2)Excelにおいてデータを挿入する方法は、こちらのヘルプページで解説されている。

画像出典:UnsplashHello I’m Nik

2.AIを搭載した既製品のSaaSツールの購入

今日、SaaS(Software as a Service)ツールが豊富にあり、手頃な月額料金で利用できるようになっている。マーケティングコピーに磨きをかけたいと思わないだろうか。Grammarlyの便利なコピー編集機能を使えば、良いところをカバーできる。顧客の声を収録したビデオを書き起こしたり、プロ級のメディア編集をしたりしたいだろうか。DescriptのAI機能を使えば、簡単にできる。

満たされていないビジネスニーズがある場合、インテリジェントな機能を備えた機能的なSaaSツールを探してみよう。ほとんどのSaaSツールには統合機能が搭載されており、既存のITエコシステムに簡単に組み込める。たとえ完璧にフィットしなくても、重要なのは問題の大部分を解決できるかどうかだ。そうであれば、同様のAI機能のために高価なエンタープライズライセンスに投資することを避けられる。

主要な要件に照らし合わせて、利用可能なツールを評価してみよう。一致する範囲と統合のしやすさを確認しよう。調べた結果が許容範囲を超えていれば、採用を見送り先を急ごう。

このオプションにおける5つの人気ツール:Zoho ZiaTrelloGrammarlyDescriptWaveApps

画像出典:UnsplashYogi Purnama

3.既製AIモデルのツールへの組み込み

知能を内蔵したツールが見つからない場合、次善の策として、ツールに接続可能なAIモデルをクラウドで探すことがある。例えば、製品の製造上の欠陥を見つけようとしている場合、AIを使って目視検査を自動化できる。Amazon Lookout for Visionは、ワークフローに直接差し込めるクラウド上の機械学習(ML)サービスだ。

先ほどのステップとは異なり、このステップでは(ソフトウェア開発とIT運用を含む)DevOps能力が求められる。また、データサイエンティストは必要ないが、ソフトウェアアプリケーションをオンラインのAIモデルにリンクさせるためのプログラミングの専門知識がチームに必要となる。使用量に応じて決まるサブスクリプション・コストにも注意が必要だ。

このオプションを検討するには、あなたのドメインの問題を解決するためのAIモデルがあらかじめ構築されているオンラインMLプラットフォームを特定しよう。この分野にはClarifai、Dialogflow、SightHoundなどの有望なスタートアップや、Microsoft、Google、Amazonなどの大企業が参入している。

このオプションにおける5つの人気ツール:ML on AWSAzure MLGoogle Cloud MLClarifaiSighthound

画像出典:UnsplashIryna Mykhaylova

4.公開されて利用可能なAIモデルの再訓練

上記のオプションを使い切ってしまったら、データサイエンティストを使って社内でAIモデルを訓練しよう。ゼロから始めるのではなく、一般に公開されているAIアルゴリズムや簡単にキュレートできるデータセットを再利用することで、労力を節約できる。これらのリソースは、あなたの問題の解決に適用できるのだ。

例えばあなたのスタートアップが、顧客アンケートのテキストフィードバックを分析して、顧客満足度を把握する必要があるとしよう。そのためには、自然言語処理(NLP)機能を備えたアルゴリズムが必要だ。新しいAIモデルを苦労してトレーニングするのではなく、KaggleDrivenDataAICrowd(※訳註3)などの公開コンテストで受賞したモデルをベースにして、チームはAIモデルを構築できる。

インターネットにあるもっとも優れたものは無料であることが多いのだが、それを見つけるには時間がかかる。訓練済みの重みといっしょにモデルを公開しているHuggingFaceのようなオープンリポジトリや、PapersWithCodeのようなMLモデルを公開しているコミュニティを探してみよう。これらのサイトの多くは、モデル構築のプロセスを加速させられる豊富で精選されたデータを共有している。公開されているモデルを(解決したい問題に)適応させるために必要な労力をチームで評価し、それらを製品として維持するためのコストを決定しよう。

このオプションにおける5つの人気ツール:HuggingFaceAllenAIRasaHQKaggleDrivenData

(※訳註3)DrivenDataとは、社会問題を解決するためにデータサイエンスを活用したコンペを企画する組織。企画されたコンペにはアメリカ西部の山岳地帯から溶け出す雪解け水の水量予測(賞金50万ドル)や、NASAが主催するロサンゼルスを含む世界3都市の大気汚染物質量の予測(賞金5万ドル)などがある。
AIcrowdとは、企業や研究機関が抱えるAIやデータサイエンスに関わる問題をコンペとして企画化して、ソリューションを提供する企業や団体を紹介するプラットフォームを運営する組織。企画化されたコンペには旧Facebookが主催したローグライクゲーム『NetHack』を攻略するAIの開発(賞金2万ドル)や、Amazonが主催したドローンの障害物回避能力を競うもの(賞金5万ドル)などがある。

画像出典:UnsplashKelly Sikkema

AIドリブンであることは目的地ではなく旅である

この記事ではAIを使い始めて、リソースを最大限に活用するための4つの方法を見てきた。AIの旅を始めるのは簡単なことが多い一方で、一貫したビジネス価値を得るには継続的な注意と投資が必要だ。

企業内のユーザをトレーニングし、組織のワークフローを再構築し、AI導入に伴う文化的変化を管理する必要がある。また、AIへの投資の総所有コスト(TCO)を定期的に見直すことも重要だ。今の時点で有効なオプションが、1年後には高額になっているかも知れない。

例えば、(2つめのオプションとして紹介した)AIを搭載したSaaSツールのサブスクリプションは、初期の顧客をベースにしてサービスを提供する小規模なチームには適しているかも知れない。チームの規模が大きくなり利用量が増えてくると、サブスクリプション・コストが法外な額になってしまうことがある。そのような段階では、データサイエンティストの小規模なチームを雇用し、一般に公開されているAIモデルを再訓練する方が経済的だと気づくかも知れない(4つめのオプション)。

以上、AI導入に関する意思決定を効率化するために、どのような選択肢があるのかをまとめてきた。

あなたのスタートアップが今すぐAIを使える4つの方法(画像出典:Gramener

(※訳註4)以上の表を日本語で再構成すると、以下のようになる。オプション1がもっとも実行が容易で、オプション4がもっとも実行困難となる。

おカネのかけずにAIを導入する4つの方法

オプション1

オプション2

オプション3

オプション4

アプローチ概要 すでに使用しているツールのAI機能の有効化 AIを搭載した既製品のSaaSツールの購入 既製AIモデルのツールへの組み込み 公開されて利用可能なAIモデルの再訓練
実行の所要時間 即座 数日 数週間 数ヶ月
コスト 最安 安い 高い もっとも高い
求められるスキル ユーザのトレーニング ユーザのトレーニング
+技術の統合技術
ユーザのトレーニング
+技術の統合技術
+ソフトウェア開発技術
ユーザのトレーニング
+技術の統合技術
+ソフトウェア開発技術
+機械学習モデル

・・・

この記事の初出はEntrepreneurに掲載されたものである。初出の記事にイラストを追加した。


原文
『4 Ways Your Startup Can Use AI Right Now (Without Breaking The Bank)』

著者
Ganes Kesari

翻訳
吉本幸記(フリーライター、JDLA Deep Learning for GENERAL 2019 #1取得)

編集
おざけん

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