HOME/ AINOW編集部 /唯一の差別化ポイントに?SDIの有識者が語るカスタマーサポートの未来
2022.10.03

唯一の差別化ポイントに?SDIの有識者が語るカスタマーサポートの未来

最終更新日:

多くの企業にとってお客様と接する窓口であるカスタマーサポートですが、DXが注目される中、カスタマーサポートのDXについて、そしてカスタマーサポートの重要性や可能性についてはなかなか語られていません。

この記事では、カスタマーサポートの最先端を行くSDIの有識者の方々にご参加いただき、カスタマーサポートの今後について伺いました。

右から、AI Shift米山氏、カラクリ小田氏、SDI向川氏、モビルス石井氏、プライムフォース澤田氏、りらいあデジタル清水氏

SDIとは?

一般社団法人サポートデジタル協会(Suppot DX Initiative)では、カスタマーサポート業界のDX推進をリードする企業、有志が集まり、先進的なDX事例の共有やディスカッションを行っています。

専門家による高度なナレッジをトレーニング教材とする他、Support DX Summitを通じて業界全体のデジタル人材の育成と市場の活性化を目指しています。

 カスタマーサポートの変化に合わせ移行しなければならない

ーーまずは各社の取り組みについてご説明をお願いします

モビルス石井氏:モビルスの事業は有人寄りで、テキストベースのコミュニケーションを行うオペレーターが、電話の代わりにチャットで対応するといった需要に対してサービスを展開しています。直近の取り組みでは、オペレーターが効率的に対応できるように、会話の傾向をとらえて、先に上の役職の人へアラートを出していくことや、対応中にお客様の個人情報が入力されてしまった際に検知し、マスキングするなどオリジナルの技術を入れて提供しています。


カラクリ小田氏:カラクリでは、「カスタマーサポートをエンパワーメントする」というパーパスのもと、AIチャットボットをはじめとした自動化ソリューションを開発しています。たとえばマーケティングオートメーションやセールステック系の要素をコンタクトセンターにも取り入れることで、カスタマーサポートの成果を可視化し、カスタマーサポートの経済価値を再認識していただきたいと考えています。


プライムフォース澤田氏:プライムフォースはテクノロジーの会社ではなく、コンサルティングの会社です。もともと私はコールセンターの品質評価を行う機関の監査役をしていました。しかし、5年ほど前から抜本的にデジタルの時代に入り、コンタクトセンターのコンサルティングも変化が必要だと感じ、4年前に会社を立ち上げました。SDIでは、デジタルチャネルのデザイナーのような資格制度の企画を進めており、カスタマーサポートを変えていくような人材育成を推進したいと考えています。


SDI向川氏:私たちは、カスタマーサポートのDXに特化したサミットを行おうと考え、その中心となる団体として去年の秋にSDIを立ち上げました。カスタマーサポート業界には100万人ほど働いている人がいますが、デジタル化を推進していく中で、なかなか電話中心の世界から脱却できずにいます。そういう人たちのキャリアアップというミッションもあり、幹事企業各社で一緒にやった方がより推進できると思ったのが設立背景です。活動としては、Support DX Summitのような啓発イベントの他にも、カスタマーサポートに関わるDX系の資格制度や、勉強会の開催、コミュニティなどを作っていきたいと考えております。


AI Shift 米山氏:AI Shiftは人とAIが共存する世界を目指して対話のAI化に取り組んでいる会社です。事業としては、チャットボットとボイスボットの2つをメインに行っています


りらいあデジタル清水氏:私自身はりらいあデジタルの代表に着任して一年ほどになります。当社ではチャットボットのプロダクト単品で売っていくというよりは、親会社のコンタクトセンターサービスの中にチャットボットやAIを組み合わせて、オムニチャネル全体でどのように価値を出していくか、といった部分に取り組んでいます。

SDI向川氏

ーーカスタマーサポートの現状と背景課題について教えてください

(図1 : コンタクトセンターに求められる要素の推移)

プライムフォース澤田氏:今カスタマーサポート業界にビッグウェーブが来ています。これまで3つの次元でかつてない変化が起きているんです。(図1)

1つ目は歴史的な変化です。1980-1995年まではコールセンターの草創期で「マナーの時代」と呼んでいます。そこから95年にWindows95が発売されるとヘルプデスク業界が勃興し、正しい対応を大量に効率よく行う「精度と効率の時代」になりました。そして2015年ぐらいから今に至るまでは、カスタマーサポートがお客様や企業にどんな効果や影響を与えたのかという「効果の時代」へと変化しています。例えば、サブスクリプションなどのサービスを継続しよう、新しいものを買ってみよう、といった顧客のアクションに効果があったのか?などです。お客様の要望以外のものも勧めるのではなく、お客様の要望がスムーズでエフォートレスに満たされるかが問われる時代になりました。

2つ目はサービスの時系列の変化です。今まではコールセンターに電話が入ってきたり、店舗にお客様が来てから対応、分析するという流れでした。しかし、今はデジタルの時代ですのでネット上でのよくある質問であったり、チャットボットなど、お客様に直接的に「対応する前」にどういったサポートを提供するのかが重要になってきました。

3つ目はサービスの担当者の変化です。昔はオペレーターが大量の電話に対して同じ対応をしていくのが正しいとされていましたが、今はコミュニティの重要性が上がってきて、ソーシャルな時代となっています。

このようにカスタマーサポートの定義がガラッと変わってきているんです。

カラクリ小田氏:効果の時代に移行するには、移行後すぐに結果はでにくいため、会社にもたらす恩恵や利益ばかりに目を向けるのではなく、「カスタマーサポートはこうあるべきだ」という理想を持って変革していかなければいけないと思います。変革後に収集したデータを見て、意味があることを実感するといった順序なので、移行はハードルが高いです。

そのため、顧客や社内から反対されても、社長をはじめとしたトップ層の人間が思い切った決断ができなければ厳しいと感じています。


モビルス石井氏:さらに、現在は効果の時代への移行というところに問題意識をもって取り組んでいる会社が少なく、海外から見ると相当遅いです。事例もテクノロジーも出てきているのに、改革するときの原動力がコンタクトセンターというレイヤーに任されていることが原因だと思います。コンタクトセンターが他の部門を巻き込んで、セキュリティポリシーなどを変えなければならないなど、ボトムアップしにくい話でもあります。

海外を見ると、役員レイヤーでCXを革新しようというポジションを作って、顧客接点=ブランディングという方向性をもって推進しています。日本ではこのような仕組みでやっている会社は3%もないというのが現状です。

プライムフォース澤田氏

 

ーー精度と効率の時代にはコストセンターであったコンタクトセンターが、効果の時代では売り上げを作っていくところへと変わったことに気づかない、または発想の転換ができないということが課題になると思うのですが、その辺りについてはどうお考えですか

りらいあデジタル清水氏:理想としてはカスタマーサポートをきっかけとしたLTV(顧客生涯価値)の向上を目指していきたいところではありますが、そこに行きつくためのにスコアしていくものがまだ明確に存在していないことが移行が進まない原因だと思っています。カスタマーサポートとCRM(LTV向上に繋がる取り組み)を連動させて推進していくのは非常に難易度が高いのも事実です。一方、最近ではカスタマーサポート用のCDP(顧客一人ひとりの属性データや行動データを収集・統合・分析するデータプラットフォーム)も作られているので、まさにこれから動き出すのではないかなと感じています。


AI Shift 米山氏:コンタクトセンターがコストセンターから利益を生んでいく部門へ変わっているというのは、その通りだと思います。変革が困難な状況で、我々が目指しているのは、いかに効率的にユーザーをさばいていくかという考え方から、「顧客体験を向上させていくかという考え方に展開していくか」ということです。それを人だけでやるのはコストも時間もかかってしまうので、AIなどを使ってやっていこうとしているのが現段階だと感じています。

りらいあデジタル清水氏

 

効率化から顧客体験の向上へ

ーー今までは背景課題と現状を伺ってきましたが、ここ数年でカスタマーサポートはどう変化したのかをお聞かせください

AI Shift 米山氏:大きく分けてデータ、チャネル、オペレーションの3つの切り口から変わっているなと感じています。

データに関しては、今までアナログで管理されていたものがデジタルで管理され、予測や予期に使われているということです。

チャネルは、メールや電話よりもチャットを使う人が増えているので、カスタマーサポートもチャットにしていくという流れになっています。

オペレーションについては、今まで人が目で確認していたものである画像確認や本人確認がAIに変わってきていることです。

今までは、いかに効率的に処理していくかに目が向けられていましたが、顧客体験を向上させる部分でAIなどのテクノロジーを使わなければいけないという流れが加速してきたように感じています。

カラクリ小田氏:また、データの活用例として、チャットボットのデータをリアルタイムで解析して、今までにない傾向の問い合わせが急激に増えたときにアラートを出してくれるなど、人が異変に気付けるといったリアルタイム性はAIの強みだと思います。

りらいあデジタル清水氏:従来はオペレーターが入力した応対履歴を使って顧客の分析をしていました。この方法ではオペレーターの主観が入ってしまうのですが、音声認識の技術が発展してきたことで、音声ログをダイレクトにテキスト化したものでテキストマイニングをしていくと、本質的なユーザーのニーズや課題が発見でき、AIを活用する利点に繋がっています。

AI Shift 米山氏

今後起こりえる変化と未来予測

ーーAIの精度は年々上がってきていると思いますが、それによる今後の変化についてはどうお考えですか

カラクリ小田氏:例えばAIの文字を解析する精度が今の100倍になったとして、それがカスタマーサポートに与える影響は恐らく2〜3割ほどだと推測します。自然言語処理分類のAIが賢くなったところで、結局はよくある質問を返せるだけになってしまいます。バックヤードのデータなどAIとは別のシステムとの連携が完成していないといけません。例えば宅急便が届く日程を明日から明後日に変更してくださいと言われてもAIだけではどうすることもできないので、お客様の問題解決には至らないんです。なので、AI以外の技術の発展に加えて、AIとCRMなどのデータの連携を深めていく必要があると思っています。


AI Shift 米山氏:自然言語処理に限った話でいうと、すべてAIで対応していくというのはなかなかハードルが高いと割り切っています。なので、人がやるべき対話とAIがやるべき対話を分けて、最適な方が対応していくといった役割分担の世界になっていくと思っています。

顧客体験における究極のカスタマーサポートはパーソナライズだと考えており、その人に合わせた対応は人であれば可能だと思いますが、例えば声のトーンや話し方、タイミング、チャネルなどをAIでサポート出来ることを目指すべきだと思います。

カラクリ小田氏

ーーチャットボットに限ると、今後どのような変化が起こるとお考えですか

りらいあデジタル清水氏:今はテキストベースでの会話が中心で、ケースによっては企業側がチャットボットUIを通して画像や動画でサポートを行うレベルだと思いますが、今後はユーザー側がテキストの代わりに画像や動画で今起きている状態を伝え、それをチャットボットが判断して適切なサポートを行うような、自然言語処理技術以外のAI、例えば画像認識や感情認識などがチャットボットに組み込まれる世界がくると、面白いなと感じます。


AI Shift 米山氏:チャットボットを利用している企業の導入理由として、電話の数を減らしたいというのがありますが、実際はなかなか減らないという状況です。それを減らすためには、ユーザーが求めていたり、使いやすいチャネルに合わせていかなければならないので、徐々にその流れができると思っています。

ーー最後に業界全体の未来についてお聞かせください

SDI向川氏:今までAIやテクノロジーを使うことによって、仕事の効率を上げてきましたが、だんだん人口も減っています。そうなると「問い合わせを減らそう」ではなく、むしろ「人と話したい」という需要が業界に寄せられ、10年くらい先には接点を作る方へ変わっていくと思います。その変化が訪れたときに、AIは人間がこなせる情報量を超えた域には達するとは思いますが、お客様が言っていることをただ解釈するだけではなく、感情解析などが本格的に使えるようにならないと代替はできないと思います。


プライムフォース澤田氏:現在コールセンターは新型コロナウイルスの影響で営業時間短縮や人数の削減もあり、規模が縮小されているところが増えています。しかし、本当に困って電話をしたい人はやはり一定数存在しているので、そのような方が通常時よりアクセスしにくい問題が起きているんです。そこで、AIがお客様の早急度や重要度を判断して優先的につなげたり、人間同士のコミュニケーションに至るまでの対応からお客様を分析してオペレーターのナビゲーションができたりするとコールセンターが変わっていくと思います。

カラクリ小田氏:10年ほどの時間軸で見ると、コールセンターやカスタマーサポートが企業の差別化要素のかなり上位を占めると考えています。現状、どの分野も技術力が拮抗しており製品のみで差別化することが難しくなってきているので、カスタマーサポートが唯一の差別化で、なおかつ競合他社にすぐには真似されないというようなポジションを得るのではないかと思います。例えば、電話をかけないと問題が解決できないようなサービスは選ばれなくなるはずなので、今の若いデジタル世代がメインとなったときに、電話でもデジタルでも当たり前に問題解決できないと業界の中で生き残れないだろうなと感じています。

モビルス石井氏:10年単位で考えると、テキストに書いてあることやそこに答えがあることに関してはAIのほうが得意になると考えています。なので、聞いて答えるという業務はAIに任されることが増えていくと思います。実際に、現時点で先を行っている企業は元々電話9割とメール1割だったのが、今は電話が25%を切っていて、すべてテキストベースのコミュニケーションへシフトしています。そしてその半分は自動化されています。そうなると顧客接点のCXが、広告や営業よりも効率のいい投資だと認識されるようになると思います。

では、その時に人間は何をするのかというと、答えのないものに対しての対応です。「あなたにはこれが似合います」とAIに言われるのと人に言われるのとでは与える印象は違います。人間はそのような答えのないものやプラスアルファの部分に対応していくようになると考えています。

モビルス石井氏

 

さいごに

今回はカスタマーサポートのDXに焦点を当ててお話を伺いましたが、私たちの想像以上にカスタマーサポートの重要性やそもそもの役割が変わってきているということを実感し、この流れに乗れるか乗れないかが企業の命運を分けるといっても過言ではないなと感じました。

SDIでは、AIの言語の部分にルールベースでしっかりと向き合っていることが印象的で、そんなSDIの方々が船頭を引いて変えていくカスタマーサポート業界のこれからが楽しみです。

皆さんもこれを機にカスタマーサポートに対する考え方を見直してみてはいかがでしょうか。

無料メールマガジン登録

週1回、注目のAIニュースやイベント情報を
編集部がピックアップしてお届けしています。

こちらの規約にご同意のうえチェックしてください。

規約に同意する

あなたにおすすめの記事

ノーコードでAIに挑戦!AIプラットフォーム「AIMINA」を活用し農業の課題解決に向けたAI利活用授業レポート|SB C&S株式会社

Google、AIが生成したコンテンツのランキングを破壊

曖昧なファッションの表現をAIが自動で解釈する技術を開発|早稲田大学・株式会社ZOZO 共同研究

世界トップクラスのAI防犯技術を体験|株式会社アジラがデモ体験エリアを完備した新オフィスを開設

あなたにおすすめの記事

ノーコードでAIに挑戦!AIプラットフォーム「AIMINA」を活用し農業の課題解決に向けたAI利活用授業レポート|SB C&S株式会社

Google、AIが生成したコンテンツのランキングを破壊

曖昧なファッションの表現をAIが自動で解釈する技術を開発|早稲田大学・株式会社ZOZO 共同研究

世界トップクラスのAI防犯技術を体験|株式会社アジラがデモ体験エリアを完備した新オフィスを開設