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2022.11.10

『Support DX Summit 2022』で5社が様々な目線での革新的なカスタマーサポートの取り組みを発表

最終更新日:

2022年10月11日に一般社団法人サポートデジタル協会(Support DX Initiative、以下SDI)が、革新的なカスタマーサポート体験を提供する企業や活動を表彰するオンラインイベント『Support DX Summit 2022』を開催しました。今回で2回目の開催となる本イベントですが、各社の発表内容や基調講演の内容について紹介していきます。

〜Web3.0時代の『ファンコミュニティ』が果たすカスタマーサポート〜

基調講演は株式会社Gaudiyより跡部三太(あとべさんた)氏が登壇。「Web3.0時代のカスタマーサポート」について語られました。

株式会社Gaudiy 跡部三太氏

GaudiyはWeb3とエンタメを掛け合わせグローバルに挑戦している、日本初のWeb3スタートアップ企業です。ファンの熱量を最大化する、Web3時代のファンプラットフォーム「Gaudiy Fanlink」を提供しており、「ユーザーとの関係を消費から共創へ」をビジョンとしています。具体的には、アイドルのLIVE NFT サイン会やアプリゲーム内のアイテムをDID(分散型ID)を活用してファンコミュニティ内に持ってこれるようにするなど、ユーザーの体験の一部としてのNFT、DIDなどのブロックチェーン技術を活用しています。

そして本題の「ファンコミュニティにおけるカスタマーサポート」の可能性を3つ解説しました。

 

  • ファンを作り、集める

PRやブランディング活動により獲得したユーザーの中から、熱量の高いユーザーをピックアップし、コミュニティに連れてくることによって「よりエンゲージメントの高いコアファン化」が可能に。

ユーザがコミュニティに参画することで、断続的、一方向のメッセージから、継続的で双方向なコミュニケーションがとれるようになり、企業とファン、ファンとファンのつながりを広げられます。

1(企業)対n(ファン)のコミュニティを運営する企業は多いですが、n対1やn対nのつながりを作れている企業は少なく、それをプラスαとしてやることによって、「消費者」だったユーザーがファン化されます。

  • ビジョンを示し、消費から“共創”へ

ナラティブ(物語)が重要な時代になり、アウトプットのクオリティが高くなっている現代において、どんな企業が何を目指しているのかのストーリー性に共感するものを消費者が選ぶようになっていきます。

ユーザーが期待する行動変容を言語化し、繰り返し伝えていくことが重要ですが、ユーザーだけでそのサービスにとって最高のアウトプットを出せるわけではありません。企業が主導し、ユーザーが共感し、一緒にサービスを作りあげていくことが大切です。

  • 適切な評価と還元の仕組み

世界での信用スコア活用事例として、Alibabaのセサミクレジットが挙げられ、信用スコアによって受けられるサービスや特典があります。しかし、ファンコミュニティでは直接的な報酬を与えてしまうと、ユーザのモチベーションが低下したりなど、ネガティブな効果が起きてしまう可能性があるので、コンテンツや役割などファンにとって価値のあるものをインセンティブとして与える必要があります。

ノミネート企業5社の取り組み

株式会社バニッシュ・スタンダード

ECの拡大やコロナ禍によって店舗の大量閉鎖とそれに伴うスタッフへの影響から、店舗スタッフのDXサービス「STAFF START(スタッフスタート)」のサービスを開始しました。

株式会社バニッシュ・スタンダード 薄井氏

「店舗スタッフがWebサイトに立つ」をコンセプトに、今まで商品とレジしかなかったWebサイトにスタッフが立ち、自社ECサイトやSNS上でのオンライン接客を可能としました。

SNSとの連携によってスタッフのキャラクターを発信し、親近感を持ってもらうことによって、スタッフにファンがつき、実店舗への来店にもつなげています。また、中国にも似ているサービスはありますが、STAFF STARTではオンライン接客に対しての評価において特許を取得しており、オンライン接客の売り上げや実績はすべて可視化されています。そのため、スタッフ個人や所属店舗の実績として評価に利用することで差別化をしています。

この「STAFF START」は、サポートという人の力とデジタルが上手く合致し、スタッフにファンが生まれ、効果的なコミュニケーションがとれていることに加え、「実店舗とECの両立」「個人と組織の評価の在り方」「コロナ禍」の社会課題に対してアプローチをした点が高く評価され、大賞を受賞しました。

ビッグローブ株式会社

「既成概念打破への挑戦」として、電話以外では難しいとされていた「リテンション」にあえてチャットで対応することに挑戦しました。

ビッグローブ株式会社 土生氏(右)と伊藤氏(左)

リテンションにはサポート対応に加え、営業スキルも必要となるため、マインドの醸成やスクリプトの設計に苦労していましたが、恋人の心理を利用し、すぐにリテンションをかけるのではなく、一度受け止め解約手順を説明し最後にリテンションをすることによって成功率は約2倍となりました。DXではシステムに着目しがちですが、チャットのオペレーターの人間味がある対応によってポジティブで理想的な顧客体験の提供をしていきたいとしています。

株式会社マネーフォワード

「経費精算が自走する世界へ」をテーマに、面倒な経費に関する作業を大幅に削減可能なクラウド型経費精算システムを提供しています。

株式会社マネーフォワード 辻氏

経費精算システムは、多くの従業員が利用するため影響範囲が広く、DX推進に当たっては「業務整理が難しい、設定作業だけに集中できない、従業員教育の準備が大変」という3つの壁が立ちはだかりました。

しかし、「業務フロー定義書、Eラーニング、マニュアル・動画」によって解決。業務フロー定着書により、システム導入だけでなく「業務の標準化」も同時に実現し、Eラーニングプログラムで経理担当者が好きなタイミング、場所で、何度でも学習可能というところが特徴です。

三菱地所レジデンス株式会社

CMや動画配信など、今までは一方通行になりがちだったブランドプロモーションを双方向のファンコミュニケーションとして顧客体験化するために、デジタルツインの冨永愛さんがモデルルームを案内するという「体験型コンテンツ」を打ち出しました。

三菱地所レジデンス株式会社 中村氏

ルームツアー中には案内人にチャットボットを通じて質問やコメント投稿ができます。冨永愛さん本人が撮影したかのような手ブレまで再現するカメラワーク、サイバーエージェントグループが協力し、表情や声など細部まで再現されたデジタルツイン技術、チャットボットでの質問に対してリップシンクにより唇の動きまで再現しているなど、リアルな表現を追及しており、不動産業界で新たな体験価値を生み出しています。

株式会社みんなの銀行

デジタルネイティブ世代に向け作られた、国内初のデジタルバンクであるみんなの銀行は、モバイル完結で銀行サービスが受けられます。ビデオチャットで24時間365日対応していて、口座開設ができ、その場で使い始めることができます。

株式会社みんなの銀行 永吉氏

「煩雑で面倒くさい」という従来の銀行のイメージを排除すべく、「徹底したフリクションレス、ハイパーパーソナライズ、コミュニティ重視、成果主義へシフト」をキーワードに改革を進めてきました。

また、デザイナーと協力してサービス実装に取り組んでおり、世界三大デザイン賞のうち2つのアワードを受賞しているなど世界でも注目されています。「みんなに価値ある『つながり』を」をミッションに掲げ、これまでのお金のマッチングするというサービスから、価値をデジタルでつないでいくことへの転換を目指すみんなの銀行は、今後も要注目です。

さいごに

第2回目として開催されたSupport DX Summit 2022でしたが、第1回と同様に、どの企業も業界ならではの課題や背景から、デジタル技術を活用した革新的で斬新な取り組みを行っていて、見ていてカスタマーサポートの未来が楽しみになる内容でした。

新型コロナウイルスの大流行によって、見直されたところが多くあるカスタマーサポート業界ですが、これをきっかけにコロナ以前よりも、企業にとって負担が少なく、消費者にとってもよりよい顧客体験となるサービスが増えればなと感じました。

AINOWでは今後もSupport DX Summit を通じてカスタマーサポート業界とDXについて取り上げていきたいと思います!

 

 

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