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2022.11.25

AIが感情を持つには|論理的で明確なアプローチで挑むバズグラフ

最終更新日:

近年AIの技術が発達し、様々なところにAIが使われるようになりましたが、「感情を持ったAI」は未だ出来ていません。

感情を持ったAIとは「汎用型AI」のことを指し、状況を自ら判断し、様々な役割をこなせるいわばドラえもんや鉄腕アトムなどの多くの人が想像するAIとなりますが、現在実用化されているAIはすべて「特化型AI」といって個別の分野や領域に特化したものになります。

その中で、今回はマシンチャットエンジンやテキストマイニング、言語解析、クチコミ解析で多数の実績を残し、論理的なアプローチで「感情を持ったAI」の実現に向け奔走する株式会社バズグラフの代表取締役、西本光治氏にお話を伺いました。

バズグラフ代表取締役の西本氏

株式会社バズグラフについて

限られた時間の中でより多くの情報に目を通し、必要なテキストデータを有効化することが今求められています。

バズグラフでは、独自の自然言語処理エンジンを駆使し、膨大なテキストデータの分析や、取捨選択に活用できる「文章要約AI タンテキ」を開発しました。

タンテキは文章の解析手法も独自のシステムを使用しており、大量の辞書を頼りに要約するのではなく、自分で辞書を作り、自ら学習することができるエコなAIです。

自然言語処理」や「AI」といった難しい分野でも、子供から大人までわかりやすく親しみやすく、全ての人に愛され、必要とされる「人間のように考えることができるAI」を目指しています。

要約とタンテキシリーズについて

ーータンテキシリーズについてのご説明をお願いします

タンテキシリーズはニュース記事を中心に独自の自然言語処理AI『HAKASE』を駆使して作られたサービスです。基本的に今弊社が使っているデータは、ニュース記事です。これまでに使用したニュース記事は2年分で、数として400万記事ぐらいになります。その中で140万記事を再学習させ、3時間ごとに記事を構成している全単語にポイントを振るんです。そうして単語の重要度を出しているのが特徴語リストで、これをもとに要約しています。

タンテキの記事についてはこちらから

 

ーービジネスモデル的にはどうなっているのでしょうか

現段階だと、APIの提供をやっていまして、そこでマネタイズできたらなと考えているのですが、要約というのがビジネスモデル的に非常に難しいんです。

そもそもうちが基本的に要約で使ってるのは、BERTモデルではなく独自のもので、教師なし学習を応用していて、人間が要約した文章は一切使ってないんです。なので、人間と同じように要約できるかっていうと、実際できません。ではどこに重点を置いてるのかというと、 人間にとってインパクトがあるところや重要なところがどこなのかを判定する、思考するというシステムの開発に重きを置いているんです。

例えば大量に要約を必要とするようなビジネスがありますよね、人間が要約をしていますが、あれをじゃあ、機械に置き換えられるかっていうと、 やはりどこかに不具合が出てくるので、そこのところはなかなかビジネスにしにくいんです。

今のレベルで目指しているところは、コールセンターのログなどをマイニングする際に、他社さんのマイニングでは追いつかないところ、例えば人間が判断しなきゃいけないような部分を要約、圧縮することによって、重要なところが抜き出されているので、非常に分かりやすくなります。そのようなところで、今マネタイズするという方向で考えています。

文章だけでも感情を表現できるのか?

ーー最近グーグルの研究員が「大規模言語モデルLaMDAは感情を持っている」と主張し話題となりましたが、そのあたりについてはどうお考えですか

基本的に言うと、ありえないと思っています。感情を持つためには何が必要かと言うと、やっぱり根底にあるのは論理判断です。状況判断などができて、それの度合いがわかることを人間は感情と捉えています。

例えば、単純にニューラル構造を作って、BSRTモデルのようなものを構築したからといって、そこに感情を創出するためには、今自分が置かれてる状況がどれだけのリスクがあって、あるいは目的達成にどれだけ近いかというのをコンピューターで基本的には数値化するしかないんです。ただ、それは文章だけで一定部分はできると考えています。

ーー文章だけでできるとは具体的に言うとどういうことでしょうか

いずれの場合も状況の論理的な理解と度合いが必要です。文章は状況を人に伝えるためにあるため、基本的に文章の中に論理はあります。状況を表現しているのが文章である以上は、そこに論理判断が必ず含まれており、 文章というのは論理判断の組み合わせで構成されているということです。

では論理とは何かというと、物事の起こる順番、つまり時系列です。文章はその中に時系列が含まれているので、論理構成を文章から取り出すことができます。

では自然言語処理で、できる部分があるのかという話ですが、弊社が今要約処理に使っている文章構造化のシステムを使って再構築しようとしています。

簡単に説明すると「内臓破裂は大怪我」「内臓破裂という大怪我をした」「彼は大怪我で死んだ」という3つの文章をばらして集約すると、「内臓破裂→大怪我→死」という論理が抽出でき、これを大量の文章でやっていこうということです。

ここでなぜうちがニュース記事を扱っているかという話になるんですけど、AIの研究者やAIの会社はよくウィキペディアを対象に解析をやりますよね。ただ、ウィキペディアとニュース記事の決定的な違いが何かというと、ニュース記事は人間が経験することのシミュレーションができるんです。ニュース記事には「5W1H」があり、それは経験値と言えます。そして大きなニュースは多くの記者がそれぞれ人間にとって重要なところを判断して書いています。ニュース記事が持つ経験値と人間にとっての重要度という特徴を、分析し抽出していくことを大量にやることによって論理が形成されていくのです。

さらに、感情のところに踏み込んでいくと、あることへのリスクと、ある目的を両端においてグラフ構造を自動的に作っていくと、例えば感染症にかかったとなったときに、感染症が死のリスクに対してどのくらいの距離にあるのかを、それに関する記事の本数や記事の内容の厚さによって計算することができます。

そしてこのグラフ構造の両端にさまざまなものを入れていくことによって、ある事象が人間にとってどれほどインパクトがあるのかがわかり、それが感情のもとになると思っています。

 

ーーディープラーニングにデータを大量に読み込ませるというやり方は西本さん的にはどう映っていますか

それも一つの方法ではあると思いますが、それで全てが解決されるとは思えないというのが今の考えです。ディープラーニングをいくら追及しても人間は作れないなと感じています。

もちろんディープラーニングは行うのですが、論理学をベースに出来上がったものをディープラーニングにかければ、さらに無駄が省けてスッキリとした高速のフィルターが作れます。

私の発想は元々、植物が光のさす方に枝を勝手に伸ばして葉をつけて効率よく育とうとしたり、粘菌がだんだん最短距離を目指すようになるといったことで、それを自然言語処理で出来ないかなと感じたところです。

なので、バズグラフがやろうとしていることを一言で表すと、自律成長型の人工知能とデータベースを加えたものをまず構築し、そのような仕組みを作るといったところになります。

ーー最後に今後の展望についてお話いただけますか

まず、最終的に目指してるのは、人間のために自然言語や思考を駆使して、コンピューター同士で何か問題を解決していけるような社会というのが1つです。

直近でいうと、マイニングツールの開発に注力しており、過去がわかるだけではなくて、過去のデータを参考に未来がわかるマイニングツールを作ろうとしてます。

さいごに

今回は株式会社バズグラフの西本光治氏にお話を伺いましたが、西本氏の「AIに感情を持たせるにはどうすればいいのか」という問いに対する考え方や、ディープラーニングに対する意見というのは、現在のAI業界の主流ではないものかもしれませんが、説得力があり、ぶれない信念を感じました。

文章解析によるタンテキの人間に近い思考や判断ができる要約システムや、問題解決や予測など未来がわかるマイニングツールの開発など、これからのバズグラフの動向に注目です。

 

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