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2024.09.27

特許技術×AIでFAQを次のステージへ|Helpfeel

株式会社Helpfeelは、特許も取得している独自の技術による検索SaaSによって注目されている、2007年に米国シリコンバレーで創業したSaaSスタートアップ企業です。

Helpfeelは「情報格差(ナレッジギャップ)」という社会問題に向き合い、FAQシステム「Helpfeel(ヘルプフィール)」、ドキュメントツール「Helpfeel Cosense(コセンス)」、スクリーンショットツール「Gyazo(ギャゾー)」の3つのクラウドサービスの開発・運用を行っています。

今回はHelpfeelの概要や事業内容を紹介しつつ、同社の特徴や動向について解説していきます。

Helpfeelとは

企業概要

社名 株式会社Helpfeel
設立 2007年12月21日
(2020年12月4日に日本法人を設立)
所在地 京都府京都市上京区御所八幡町110-16
かわもとビル 5F(本社)
代表 洛西一周(代表取締役CEO)
従業員数 185人 (2024年8月現在)
資本金 1億円

ビジョン

Human Empowerment Technology

テクノロジーの発明により、人の可能性を拡張する

人の好奇心は無限大であり、テクノロジーの可能性も無限に広がっています。私たちは人にとってスムーズで頼もしい両者の関係を設計することで⼈間の思考とコミュニケーションを加速します。

沿革

2007年 ・洛西一周がシリコンバレーでNota, Inc.
(株式会社Helpfeelの前身の会社)を設立・「Gyazo」をリリース
2014年 総額200万ドル(約2億円)の資金調達
2016年 「Scrapbox」をリリース
2017年 「Gyazo」の事業化で黒字化を達成
2019年 「Helpfeel」をリリース、本格的な事業拡大に成功
2020年 日本法人を設立
2021年 5億円の資金調達
2022年 株式会社Helpfeelに社名変更し、6億円の資金調達
2023年 ・ICCサミット FUKUOKA総合優勝
・シリーズDで20億円の資金調達
・Helpfeel導入実績が累計300サイト突破
2024年 ・Helpfeel導入実績が累計400サイト突破
・Scrapboxの名称を「Cosense」に変更
・「Helpfeel AI」を発表
・「意図予測検索2」を提供開始

Helpfeelの事業内容

Helpfeelの主な事業は、FAQシステム「Helpfeel(ヘルプフィール)」の開発・運用です。その他に、ドキュメントツール「Helpfeel Cosense(コセンス)」及びスクリーンショットツール「Gyazo(ギャゾー)」の開発・運用も行っていますが、主力事業はHelpfeelです。

Helpfeelは、企業の問い合わせ対応を効率化し、ユーザーの自己解決率を高めるための革新的なソリューションです。統計によると、問い合わせをする前に自分で情報を調べようとするユーザーは全体の85%に上ります。しかし、従来のFAQ(よくある質問)システムでは、70%もの方がFAQのみでは解決できずに人による対応を必要としていました。Helpfeelは、この「解決できなかった70%」に焦点を当て、オンラインでの自己解決率を大幅に向上させるために生まれたサービスとなっています。Helpfeelの特徴は以下の4点です。

1,導入効果

Helpfeelを導入することで、企業は以下のような効果を期待できます

  • 解決できなかった問題の2/3をオンラインで解決に導く
  • 人による対応を最大64%削減
  • 顧客企業は年間4,800万円のコスト削減を実現
  • 顧客ROIは20倍に向上(エンドユーザー満足度向上と定着率向上、ES向上を含む)

2,「意図予測検索」技術

Helpfeelの核心技術は「意図予測検索」と呼ばれる、検索ヒット率98%を実現する革新的な仕組みです。この技術は特許も取得しており、ユーザーの入力した曖昧な言葉や質問から、その背後にある意図を予測し、適切な回答を表示します。

従来の「階層型」FAQシステムとは異なり、意図予測検索は以下の特徴を持ちます

  • ユーザーが入力したテキストと単語が完全に一致しなくても、適切な回答を表示できる
  • ユーザー自身が多くのカテゴリから該当するものを選ぶ必要がない
  • 抽象的な表現や口語的な言い回し、さらにはスペルミスにも対応可能

3,導入と運用のサポート

導入企業が新しいシステムに切り替えるために負荷がかかることが多いですが、Helpfeelはもともと持っているFAQなどから拡張できる(AIが質問を増やしてくれる)ので導入負荷が軽いです。導入時には、テクニカルライターが顧客企業の社内にある既存のFAQテキストをもとに導入をサポートします。また、運用中のチューニングもカスタマーサクセス担当が伴走します。

4,ユニークなポジショニング

Helpfeelは、問い合わせ対応サービスの中でユニークなポジショニングを確立しています。一般的な問い合わせ対応サービスは次のような特徴があります。

  • BPOやコンタクトセンター:導入企業の負担が軽いが、自己解決率は低い
  • 一般的なFAQ(CMS)やChatbot(シナリオ型):導入企業の負担は軽いが、問い合わせへの回答能力が低い
  • Chatbot(AI):自己解決率は高いが、顧客側で重いチューニングが必要

これらに対し、Helpfeelは導入企業の負担が軽く、かつ高い自己解決率を実現しています。

このようにHelpfeelは、「意図予測検索」技術により、従来のFAQシステムでは解決できなかった問題に効果的に対応し、ユーザー満足度と企業の効率性を同時に向上させます。導入のしやすさと高い費用対効果により、多くの企業にとって魅力的な選択肢となります。

Helpfeelの強み

特許も取得している「意図予測検索」

Helpfeelが提供する「意図予測検索」は、従来のFAQ検索システムの限界を打破し、ユーザーの真の意図を理解して適切な回答を提示する特許技術です。この技術により、98%という高い検索ヒット率を実現しています。

この技術はAppleのiPhoneの予測入力やフリック入力を発明したHelpfeelのCTOで、慶應義塾大学教授の増井俊之の研究により開発されました。

従来のFAQシステムでは、ユーザーが入力したキーワードと完全に一致する回答のみを表示したり、ユーザーが多数のカテゴリから適切なものを選択する必要がありました。例えば、「返品」で検索すると「返品の⼿続き⽅法を知りたい」という質問が提⽰されますが、「返却」「返したい」「いらない」など他の⾔葉で検索すると適した質問⽂が出てこないということです。

しかし、「意図予測検索」はこれらの制約を解消し、ユーザーが入力する曖昧な言葉や質問未満の表現をヒントにして、その背後にある意図を予測し、最適な回答を提示します。

「意図予測検索」の特徴は、ユーザーが入力する多様な表現に対応できる点にあります。抽象的な表現や口語的な言い回し、さらにはスペルミスを含む入力であっても、システムはユーザーの真の意図を捉えることができます。これを実現するため、1つのFAQ記事に対して、ユーザーが入力するであろう単語をテクニカルライターとAIによって予想し、約50の「意図表現(質問表現)」を生成しています。この意図表現によって、「返品」「返却」「返したい」「いらない」といった様々な表現から、ユーザーが知りたいのは返品方法であるという意図を予測し、適切な回答を提供できます。

確かな導入実績

現在では400以上ものサイトに導入されていますが、300サイトから400サイトまでの増加は半年ほどの短期間で達成しています。

なお、FAQ市場でトップシェアの企業は10年で約800社に導⼊されているので、それと⽐較してもHelpfeeの伸び率の⾼さがわかります。

また、ただ導入数が増えているだけでなく、確かな結果を残しています。株式会社モバイル・プランニングの事例では、Wi-Fiレンタルの電話応対を半減し、フォーム経由の問い合わせは約85%削減に成功しています。⼀覧形式のFAQページやチャットボットを導⼊していましたが、それらではユーザーが答えを⾒つけられずに返ってユーザーの不満を⾼めてしまっていたため、Helpfeelを導⼊しています。

株式会社ジモティーの事例では、⽉間1万5,000件あった問い合わせが半数以下になり、電話窓⼝の廃⽌との相乗効果でカスタマーハラスメントも⼤きく減少したということです。ジモティーでは問い合わせの増加により業務が逼迫し、「業務が終わらない」という悲壮感が現場に漂っていた中、問い合わせ数の減少⾒込みが最も⾼かったHelpfeelの導⼊を決定。そして効率化に成功し、オペレーターが問い合わせ対応する総時間を、1⽇平均37時間から23時間にまで改善しています。

その他にも、以下のような事例があります。

導入企業 くらしのマーケット 伊予銀行 RAKSUL NEWTON
抱えていた課題 ユーザーがFAQを見ずに離脱 FAQ管理担当者の業務逼迫 FAQの検索がヒットせず離脱 問い合わせ増加に伴うCS業務増
導入による効果 FAQの訪問率が40%向上 FAQ管理工数を33%削減 検索ヒット率が50%向上 問い合わせ件数を60%削減

Helpfeelの最新の動向

新時代のAI検索アルゴリズム「意図予測検索2」を提供開始

Helpfeelは、2023年6月24日に新たなAI検索アルゴリズム「意図予測検索2」の提供を開始しました。この革新的な技術は、Helpfeelの独自検索技術と米OpenAI社のAI技術を組み合わせることで実現されました。

「意図予測検索2」の最大の特徴は、AIによる誤った情報生成(ハルシネーション)を防ぎつつ、文章の意味に基づいたFAQ検索を可能にした点です。「意図予測検索2」は、単なる検索精度の向上だけでなく、情報の信頼性と安全性にも重点を置いています。FAQの回答記事や意図表現は人間が事前に確認・訂正可能であるため、常に正確な情報を提供できます。これにより、金融、医療、行政など、情報の正確性が厳しく求められる業界でも安心して利用できるシステムとなっています。

また、プライバシー保護の観点から、入力された検索内容がAIの学習に利用されない仕組みを採用しており、企業の社内FAQとしても安全に利用できる点も大きな特徴です。

Helpfeelは、この新技術の導入に際して、既存ユーザーの利便性も考慮しています。現在Helpfeelを利用中の企業は、FAQ記事の管理方法やユーザーインターフェースを変更することなく、「意図予測検索2」を導入できます。また、AIを活用しても検索スピードは維持され、大量のページの検索にも対応可能です。

この新技術の導入効果は顕著で、2024年5月に実施された実証実験では、問い合わせ件数が約3割減少しました。これは、Helpfeel導入前と比較すると合計で約5割の問い合わせ削減効果があったことになります。

「Helpfeel AI」の発表

Helpfeelは、FAQの検索システム「Helpfeel」上で使用できる生成AI機能群「Helpfeel AI」を発表しました。この新機能は、AIの利点を活かしつつ、その潜在的なリスクを最小限に抑える「制御可能なAI」というコンセプトに基づいています。

「Helpfeel AI」の特徴は、生成AIのハルシネーション(偽情報の生成)や情報漏洩のリスクを回避しつつ、AIの能力を最大限に活用できる点です。人間がAIをコントロールし、必要に応じて訂正を加えられる仕組みを導入することで、「説明可能なAI」から一歩進んだ「制御可能なAI」を実現しています。

Helpfeelは、この新機能によって行政機関やエンタープライズ企業、金融機関、EC事業者などの問い合わせ対応を効率化し、カスタマーサポート業務のDXを推進することを目指しています。

現在、5つのAIソリューションがすでに提供されており、今後1年間でさらに3つの新機能やサービスがリリースされる予定です。これらの開発は、慶應義塾大学の教授や「未踏スーパークリエータ」のエンジニアを含む専門のワーキンググループが中心となって進めています。

Helpfeelの「制御可能なAI」アプローチは、AI技術の進化と企業の信頼性維持の両立を図る新たな方向性を示すものとして注目されています。

PDFからFAQの生成機能の提供を開始

Helpfeelは、2023年7月3日より、生成AIと高精度OCR技術を活用した「PDFからFAQの生成機能」の提供を開始しました。この新機能は、企業のFAQ初期構築を劇的に効率化することを目的としています。

本機能の特徴は、PDFファイルを読み込ませるだけで、高精度のOCR技術と独自の生成AIプロンプトにより、正確性の高いFAQ記事を自動生成できる点です。これにより、規約、マニュアル、営業資料、IR資料などの既存PDFコンテンツから、効率的にFAQを構築することが可能になりました。

Helpfeelが実施した自社テストでは、18ページのPDFから145個のFAQ記事が自動生成され、そのうち誤った情報を含む記事はわずか1個のみという高い正確性を示しました。また、生成された記事の7割以上が微調整のみで一般公開可能なレベルであることも確認されています。

この新機能は、「PDFマニュアルは大量にあるが、FAQ作成の手が回らない」「更新頻度の高いマニュアルをFAQ化したいが、人員に余裕がない」といったカスタマーサポート現場の課題解決を目指して開発されました。PDFをFAQ化することで、ユーザーは必要な情報を容易に検索・発見できるようになり、企業や行政におけるナレッジの共有や積極的活用に寄与することが期待されています。

さいごに

Helpfeelは、独自の「意図予測検索」技術を核に、企業の問い合わせ対応を革新的に効率化するサービスを提供しています。その高い導入効果と実績は、カスタマーサポート業界に新たな基準を示すものとなっています。

特に、AIを活用しながらも人間の管理・監督を重視する姿勢は、AI技術に対する企業の信頼構築に大きく貢献しています。また、PDFからのFAQ自動生成機能など、ユーザーのニーズに応える継続的な機能改善は、顧客満足度の向上と業務効率化の両立を実現しています。今後、企業のデジタル化がさらに進む中で、Helpfeelのような革新的なソリューションの重要性は一層高まるでしょう。

The Playersシリーズでは、AI関連の企業にフォーカスした記事を書いています。さまざまなAI企業を比較することで、成功するAI関連企業の法則が見えてくるかもしれません。引き続き、注目の企業を紹介していきますので、ご期待ください。

 

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