
「他社はAIエージェントでどんな成果を出しているのか」と経営層に聞かれ、企業名と数値を示せずに困っていませんか。
AIエージェントの導入事例は、顧客対応・営業・社内業務の3領域で、成果を数値で公表するものが増えています。ただし、紹介される数値には本番運用の実績もあれば、パイロット検証の結果や試算も混ざっています。数値の性質を見誤ったまま企画書に載せると、経営層の質問に答えられず差し戻されるでしょう。
本記事では、企業の公式発表や導入事例ページで確認した国内外のAIエージェント導入事例10選と、成功事例に共通するポイントを解説します。読み終える頃には、自社の業務に近い事例を選び、根拠のある数値つきで社内に提案できるようになります。
目次
AIエージェント導入事例10選を成果別に一覧で比較
本記事で紹介する10事例は、顧客対応・営業・社内業務と物流の3つの成果領域に分かれます。自社が改善したい業務の行から読むと、必要な事例を早く見つけられます。
ここで紹介するのは、AIが回答の生成にとどまらず、手続きや予約などのタスクを自律的に実行している事例です。Copilotの全社利用や文書要約のみの事例は、AIエージェントの導入事例と区別するため対象外としました。
| 企業 | 領域・規模 | AIエージェントの業務 | 主な成果 |
|---|---|---|---|
| 富士通 | 顧客対応・国内大企業 | サポートデスクの問い合わせ対応 | 平均応対時間をチャットボット比71.5%短縮(パイロット) |
| Wiley | 顧客対応・海外 | アカウント復旧や登録の問い合わせ対応 | 旧チャットボット比でケース解決率40%以上向上(実績) |
| Klarna | 顧客対応・海外 | 返金・返品などのチャット対応 | チャットの3分の2を処理、解決時間11分から2分未満(実績) |
| TAPP | 顧客対応・国内中小 | セミナーの日程変更・キャンセル対応 | 解決率約90.3%(実績) |
| スクールバス空間設計 | 営業・国内中小 | 見込み顧客との対話と面談予約 | 導入3カ月で2,650万円を成約(実績) |
| ベルフェイス | 営業・国内中小 | リードへの一次対応とメール送信 | 受注1件あたりの工数を50時間から28時間に短縮(実績) |
| 三菱UFJ銀行 | 営業・国内大企業 | 顧客情報の収集と面談準備 | 2026年3月に本稼働(数値は非公表) |
| INPEX | 社内業務・国内大企業 | 社内規程や法令の照会 | 業務時間44%削減(利用者の実感値) |
| Robinhood | 社内業務・海外 | 社員からのIT・人事の問い合わせ対応 | 問い合わせの70%を人手なしで解決(実績) |
| 富士通・ロート製薬 | 物流・国内大企業 | 企業間の輸送計画の調整 | 輸送コスト最大30%削減の可能性(仮想環境での実証) |
各社の公式発表・導入事例ページをもとに作成(2026年10月時点)
一覧で業務の近い事例を見つけたら、次の見出しで数値の読み方を確認してから詳細に進みましょう。
事例の成果数値を読むときの注意点
導入事例の数値は、「実績・パイロット・試算」のどれに当たるかと「何と比べた数値か」の2点を確認してから使いましょう。同じ「◯%削減」でも、意味が大きく異なるためです。
数値の性質は、以下の3種類に分けられます。
- 実績:本番運用で計測した数値
- パイロット:一部の業務や期間に限った検証の数値
- 試算・実感値:アンケートや金額換算による見込みの数値
比較対象にも注意が必要です。たとえば富士通は「チャットボット比」と「有人対応比」の両方を公表しています。比較対象を書かずに数値だけを引用すると、効果を過大に見せてしまいます。
数値の性質と比較対象を添えて引用すれば、経営層に「その数字は何と比べたのか」と聞かれても即答できます。
【顧客対応】AIエージェントの導入事例4選
顧客対応の領域では、以下の4事例を紹介します。
- 富士通:サポートデスクの応対時間をチャットボット比71.5%短縮
- Wiley:旧チャットボット比でケース解決率が40%以上向上
- Klarna:カスタマーサービスのチャットの3分の2をAIが処理
- TAPP:セミナー関連の問い合わせの約90%をAIエージェントが解決
問い合わせ件数の増加に人員が追いつかない企業ほど、自社の状況に重ねて読める事例です。
富士通:サポートデスクの応対時間をチャットボット比71.5%短縮
富士通は、自社のSalesforceサポートデスクにSalesforceの「Agentforce」を導入しました。パイロット検証では、平均応対時間をチャットボット比で71.5%、有人対応比で67%短縮しています。
導入の背景には、問い合わせ数の増加とサポート対象の拡大がありました。限られた人員で品質を保つには、難易度の高い問い合わせにオペレーターを集中させる体制が必要でした。
従来のチャットボットでは8〜10回のやり取りが必要だった問い合わせが、AIエージェントでは1回で解決するケースが生まれています。質問の意図を汲み、必要な情報をまとめて提示できる点が短縮につながりました。富士通は、月間問い合わせ数の約15%をAIエージェントが担う体制を構築しています。
出典:富士通、Agentforceを導入(Salesforce)、AIエージェント活用事例(Salesforceブログ)
既存のチャットボットに不満がある企業なら、置き換えた場合の効果を説明する材料として使えます。
Wiley:旧チャットボット比でケース解決率が40%以上向上
米国の学術出版社Wiley(ワイリー)は、Agentforceの導入により、旧チャットボットと比べてケース解決率を40%以上高めました。
同社では、毎学期の始まりに問い合わせが急増し、数千件の対応に追われていました。繁忙期だけ増員する従来の方法では、対応品質を保つことが難しかったのです。
AIエージェントは、アカウントの復旧やパスワードの再設定を自動で完了させます。登録や支払いの問題は内容を振り分け、担当者には対応履歴の要約と回答案を渡します。担当者は「最初から最後までプロセスを実行できる」と評価しています。
出典:Wiley customer story(Salesforce)
季節によって問い合わせが急増する業種では、繁忙期の増員コストを抑える根拠として参考になります。
Klarna:カスタマーサービスのチャットの3分の2をAIが処理
スウェーデンの決済企業Klarna(クラーナ)は、OpenAIの技術を使ったAIアシスタントを導入しました。公開から1カ月で230万件の会話を担い、カスタマーサービスのチャットの3分の2を処理しています。
AIアシスタントは、返金・返品や支払いの問題、キャンセルなどの手続きを処理します。23の市場で24時間対応し、35以上の言語に対応しています。
同社の発表では、処理量はフルタイムの担当者700人分に相当します。解決までの時間は11分から2分未満に短縮し、再問い合わせは25%減りました。顧客満足度は人の担当者と同水準です。
出典:Klarna AI assistant handles two-thirds of customer service chats in its first month(Klarna)
ただし、Klarnaはその後、人が対応する体制を強化する方針を示しました。この経緯は、後述する成功事例の共通点で解説します。
TAPP:セミナー関連の問い合わせの約90%をAIエージェントが解決
資産運用セミナーを運営するTAPPは、Agentforceの導入で問い合わせ2,794件のうち2,522件、約90.3%を解決しました。
同社は投資初心者向けセミナー「キャピタルハック」を運営し、累計申込者数は15万人を超えています。事業の成長とともに問い合わせも増え、参加者の歩留まりや顧客体験の質を保つことが課題でした。
AIエージェントは、セミナーの日程変更、キャンセル手続き、特典に関する問い合わせを処理します。見込み顧客数が年間41%増えるなかで、月間約100件の問い合わせを削減しました。月間60件の来場者の確保にもつながっています。
出典:TAPP、Agentforceで成果(Salesforce)
問い合わせ対応を減らしながら来場者も増やした事例なので、コスト削減と売上の両面で効果を説明したい場合に使えます。
【営業】AIエージェントの導入事例3選
営業の領域では、以下の3事例を紹介します。
- スクールバス空間設計:導入3カ月で2,650万円を成約
- ベルフェイス:受注1件あたりの工数を50時間から28時間に短縮
- 三菱UFJ銀行:営業担当者の面談準備をAIエージェントが支援
人を増やさずに商談数を伸ばしたい企業にとって、売上への影響を示せる事例です。
スクールバス空間設計:導入3カ月で2,650万円を成約
リノベーションの設計施工や不動産仲介を手がけるスクールバス空間設計は、AI営業「Frank」を導入し、導入3カ月で2,650万円の成約を達成しました。グループ全体の従業員は105名です。
同社は累計3,000件の資料請求を受けながら、年間約8.1億円規模の機会損失が生じていました。不動産・金融・建築にまたがる専門知識が必要なため、人員の増強では対応しきれなかったのです。
Frankは、Webサイト・メール・LINEで24時間対応します。顧客の悩みと条件を整理し、技術情報をかみ砕いて説明したうえで面談予約につなげます。成果は以下のとおりです。
- 資料請求が90件から190件に増加
- ステップメール経由の商談化が2件から12件に増加
- AI経由の商談化率は75%(通常は37.6%)
出典:スクールバス空間設計、Agentforceで成果(Salesforce)
専門知識が必要な商材を扱う中小企業でも、AIエージェントで商談を増やせることを示す事例です。
ベルフェイス:受注1件あたりの工数を50時間から28時間に短縮
営業支援SaaSを提供するベルフェイスは、Agentforceを営業の一次対応に導入し、受注1件あたりの工数を50時間から28時間に短縮しました。組織全体の生産性は約2倍になっています。
同社では、イベント後に流入したリードに対応しきれず、1週間もたたずに見込み度が下がる状態でした。Salesforceへの入力も週末にまとめて行われ、抜け漏れが常態化していました。
AIエージェントは、動画の視聴などの行動をきっかけに一次対応を始めます。外部データベースから業種を推定し、業界に合わせたメールを自動で送ります。日程調整や営業担当者に引き継ぐかの判断も担っています。
出典:ベルフェイスの導入事例(Salesforce)
リードの取りこぼしに悩むBtoB企業なら、「受注1件あたりの工数」を指標にした提案の参考になります。
三菱UFJ銀行:営業担当者の面談準備をAIエージェントが支援
三菱UFJ銀行は、金融機関向けの「Agentforce 360 for Financial Services」を2025年8月に日本で初めて選定しました。約6カ月の構築を経て、2026年3月に本稼働しています。
対象は、法人営業と個人営業の最前線の業務です。従来はSalesforce上に分散した顧客情報を、行員が手作業で確認して面談の準備をしていました。
AIエージェントは、顧客の属性や提案・取引の履歴を横断して確認します。行内のナレッジから、過去の効果的な提案手法や専門的なスキームを特定する役割も担います。今後はニュースや市場動向といった外部情報との統合も予定しています。
出典:三菱UFJ銀行、Agentforce 360を本稼働(Salesforce)
成果の数値は公表されていません。ただし、規制の厳しい金融業界でも、営業の現場にAIエージェントを展開できることを示す事例です。
【社内業務・物流】AIエージェントの導入事例3選
社内業務と物流の領域では、以下の3事例を紹介します。
- INPEX:1,000を超えるエージェントで社内照会業務を効率化
- Robinhood:社員からの問い合わせの70%をAIエージェントが自己解決
- 富士通・ロート製薬:マルチAIエージェントで輸送コスト最大30%削減を見込む
顧客の目に触れない業務から始めたい企業にとって、導入範囲を決めるヒントになる事例です。
INPEX:1,000を超えるエージェントで社内照会業務を効率化
エネルギー企業のINPEXは、Microsoft 365 CopilotとCopilot Studioを活用しています。社員が自ら作ったAIエージェントは1,000を超えました。
エージェントの例は以下のとおりです。
- 社内規程エージェント:社内規程に関する照会に回答する
- 国内法令検索エージェント:法令順守の確認に必要な情報を探す
- 産休育休問い合わせエージェント:規程や過去のQ&Aを確認する
- バーチャル経営会議:会議資料から論点や想定質問を作成する
利用者アンケートでは、業務時間44%削減という実感値が得られています。同社は効果を年間20億円以上と試算しました。どちらも実測値ではない点に注意しましょう。
出典:INPEXの導入事例(Microsoft)
推進役のタスクフォースが現場の作成を後押ししており、全社に広げる進め方の参考になります。
Robinhood:社員からの問い合わせの70%をAIエージェントが自己解決
米国の証券アプリ企業Robinhood(ロビンフッド)は、ServiceNowの「Moveworks」を社内サポートの窓口にしました。社員からの問い合わせの70%を、人の手を介さずに解決しています。
パスワードの再設定やソフトウェアの利用申請、人事規程の確認まで、Slack上の同じ窓口で受け付けます。社員の満足度は94%に達しました。
注目すべきは、本番稼働の前に準備を済ませていた点です。ナレッジベースを標準化し、ITと人事の手順を文書化して、すべてのワークフローの担当者を決めました。中心となったのは8人のチームで、対象はITから法務や購買などにも広がっています。
出典:Robinhood customer story(ServiceNow)
少人数の情報システム部門でも、準備の順序を守れば成果を出せることを示す事例です。
富士通・ロート製薬:マルチAIエージェントで輸送コスト最大30%削減を見込む
富士通は、複数のAIエージェントが企業の垣根を越えて連携する技術を開発しました。ロート製薬との仮想サプライチェーンでの実証で、輸送コストを最大30%削減できる可能性を確認しています。
サプライチェーンの最適化では、各社が機密情報を出し合えないことが壁になります。この技術では、各社のAIエージェントが交渉を通じて相手の特性を推定し、機密情報を共有せずに全体の最適解を探します。
30%という数値は仮想環境での実証によるもので、本番運用の実績ではありません。2026年1月から2027年3月にかけて、ロート製薬の実データを使った大規模な検証が進められています。
出典:マルチAIエージェント連携技術を開発(富士通)
自社だけでなく取引先との調整業務にもAIエージェントが広がる流れを、中長期の構想に組み込む材料になります。
AIエージェントの成功事例に共通する4つのポイント
10事例を比べると、成果を出した企業には以下の4つの共通点があります。
- 手順が決まった反復業務から始めている
- 導入前と比べられる成果指標を置いている
- 人へ引き継ぐ経路を残している
- CRMや社内データとつないでいる
どれか1つでも欠けると、事例と同じツールを入れても成果が再現しにくくなります。
手順が決まった反復業務から始めている
成果を出した企業の多くは、件数が多く、手順が決まっている業務からAIエージェントを導入しています。判断の基準がはっきりした業務ほど、AIに任せても品質がぶれにくいからです。
TAPPのセミナー日程変更やWileyのパスワード再設定は、その典型です。Robinhoodも、パスワード再設定やソフトウェアの利用申請といった定型の問い合わせから始めています。
最初の対象業務を選ぶときは、月間の処理件数と手順の決まり具合で候補を並べてみましょう。成果が早く出る業務から始めれば、次の展開に必要な予算も確保しやすくなります。
導入前と比べられる成果指標を置いている
成功事例では、導入前の状態と比べられる指標で成果を示しています。比較の基準がなければ、効果を社内に説明できないためです。
富士通は旧チャットボットと有人対応の応対時間、ベルフェイスは受注1件あたりの工数を比べました。スクールバス空間設計は、通常37.6%だった商談化率と比較しています。
指標は、業務の種類に合わせて選びましょう。
- 顧客対応:解決率、平均応対時間、再問い合わせ率
- 営業:商談化率、受注1件あたりの工数、リードへの初回対応時間
- 社内業務:人手なしで解決した割合、問い合わせ1件あたりの処理時間
導入前に1カ月分の数値を記録しておくだけで、PoCの結果をそのまま稟議の根拠にできます。
人へ引き継ぐ経路を残している
AIエージェントにすべてを任せるのではなく、難しい案件を人に引き継ぐ経路を設計しておくことが欠かせません。
その重要性を示すのがKlarnaです。チャットの3分の2をAIで処理した同社ですが、2025年5月、CEOはBloombergの取材に対して人が対応する体制を強化すると語ったと報じられています。CEOは、コスト削減を優先しすぎた結果、対応の質が下がったと認めました。
出典:Klarna Is Hiring Customer Service Agents After AI Couldn’t Cut It on Calls(Entrepreneur)
一方、富士通はAIエージェントに定型の問い合わせを任せ、オペレーターを難易度の高い案件に集中させています。ベルフェイスでも、営業担当者に引き継ぐかの判断をAIエージェントの役割に組み込みました。
企画の段階で「AIが対応しない案件」を定義しておけば、顧客満足度の低下を理由に導入が止まる事態を防げます。
CRMや社内データとつないでいる
成果を出したAIエージェントは、CRMや社内のナレッジとつながった状態で動いています。参照できるデータがなければ、AIエージェントは一般的な回答しか返せないためです。
三菱UFJ銀行は、Salesforce上の顧客属性や取引履歴を横断して面談準備に使っています。INPEXの社内規程エージェントも、社内規程というデータがあって初めて機能します。
Robinhoodが本番稼働の前にナレッジベースを標準化したのも、同じ理由です。古い規程や重複したマニュアルが残っていると、AIエージェントは誤った回答を返します。
ツールを選ぶ前に、AIエージェントに読ませるデータが整っているかを確認しましょう。データの準備状況がわかれば、導入までの現実的なスケジュールも立てられます。
AIエージェントの導入事例を自社に当てはめる3つの判断軸
事例を企画に生かすときは、以下の3つの軸で自社との近さを確かめます。
- 業務の型が事例と近いか
- 既存システムと連携できるか
- 成果を同じ指標で測れるか
3つの軸がそろう事例ほど、経営層に「自社でも再現できる」と説明しやすくなります。
業務の型が事例と近いか
事例を選ぶときは、業界よりも業務の型が近いかどうかを優先しましょう。業界が違っても、業務の流れが同じなら成果を再現しやすいためです。
たとえば、イベントやセミナーの予約変更が多い企業なら、業界が違ってもTAPPの事例が参考になります。専門的な商材の問い合わせから商談につなげたい企業なら、スクールバス空間設計の事例が近いでしょう。
自社の業務を「受付・判断・実行・引き継ぎ」の流れで書き出し、事例と比べてみてください。流れが近い事例を選べば、経営層の「うちの業界でも使えるのか」という疑問に答えられます。
既存システムと連携できるか
事例で使われたツールが、自社のCRMやグループウェアと連携できるかを確認しましょう。連携できなければ、同じツールを入れても事例と同じ動きは再現できません。
本記事の事例で使われているツールは、主に以下の3系統です。
- Salesforceを使っている企業:Agentforceの事例(富士通、TAPP、ベルフェイスなど)
- Microsoft 365を使っている企業:Copilot Studioの事例(INPEX)
- ServiceNowやSlackで社内対応をしている企業:Moveworksの事例(Robinhood)
自社の基幹システムと同じ系統の事例を選べば、導入にかかる期間や体制も具体的に見積もれます。
成果を同じ指標で測れるか
事例の数値を目標に使うなら、自社でも同じ指標を測れるかを確認しましょう。測れない指標を目標にすると、導入後に効果を証明できなくなるためです。
たとえば、Wileyの「ケース解決率」を目標にするなら、現在の問い合わせ管理で解決の有無を記録している必要があります。ベルフェイスの「受注1件あたりの工数」も、営業活動の時間を記録していなければ比べられません。
測れない場合は、PoCの前に記録の仕組みを整えることから始めましょう。同じ指標で比べられれば、事例の数値を自社の目標値として提示できます。
AIエージェントの導入事例に関するよくある質問
AIエージェントの導入事例に関する質問は以下の4つです。
- 中小企業でもAIエージェントの導入で成果は出ますか
- AIエージェントの導入にはどれくらいの期間がかかりますか
- Copilotの全社導入はAIエージェントの導入事例に入りますか
- AIエージェントとチャットボットは何が違いますか
質問に対する回答を確認して、社内で事例を説明する際の参考にしてみてください。
中小企業でもAIエージェントの導入で成果は出ますか
中小企業でも成果は出ています。本記事で紹介したスクールバス空間設計は、グループ全体で従業員105名の企業です。
中小企業では、人員を増やさずに問い合わせや商談に対応できる点が大きな効果になります。TAPPやベルフェイスも、限られた人員でリードや問い合わせの増加に対応した事例です。
まずは、件数が多く人手が足りていない業務を1つ選んで試すとよいでしょう。
AIエージェントの導入にはどれくらいの期間がかかりますか
導入期間は、対象業務の範囲と連携するシステムの数によって変わります。たとえば三菱UFJ銀行は、ツールの選定から本稼働まで約6カ月の構築期間をかけました。
期間を左右するのは、ツールの設定よりもデータの準備です。Robinhoodのように、ナレッジベースや業務手順の整備を先に進めておくと、本番稼働後の手戻りを減らせます。
まずは対象を1業務に絞ったPoCで、自社に必要な期間を見積もりましょう。
Copilotの全社導入はAIエージェントの導入事例に入りますか
Microsoft 365 Copilotで文書作成や要約を支援しているだけなら、AIエージェントの導入事例とは区別するのが適切です。AIエージェントは、目標に向けてタスクを自律的に実行する点に特徴があるためです。
一方、INPEXのようにCopilot Studioで業務別のエージェントを作り、照会業務を任せている場合はAIエージェントの導入事例といえます。
社内で事例を紹介するときは、AIが「支援」しているのか「実行」しているのかを確認してから引用しましょう。
AIエージェントとチャットボットは何が違いますか
チャットボットは、あらかじめ用意したシナリオや回答に沿って応答します。AIエージェントは、質問の意図を理解したうえで、手続きの実行や担当者への引き継ぎまで自律的に進めます。
この違いは成果にも表れています。富士通では、チャットボットで8〜10回のやり取りが必要だった問い合わせが1回で解決するケースが生まれました。Wileyも、旧チャットボットよりケース解決率が40%以上高くなっています。
既存のチャットボットの解決率に課題がある場合は、AIエージェントへの置き換えを検討する価値があります。
出典・参考リンク
- 富士通、Agentforceを導入(Salesforce)
- AIエージェント活用事例(Salesforceブログ)
- Wiley customer story(Salesforce)
- Klarna AI assistant handles two-thirds of customer service chats in its first month(Klarna)
- Klarna Is Hiring Customer Service Agents After AI Couldn’t Cut It on Calls(Entrepreneur)
- TAPP、Agentforceで成果(Salesforce)
- スクールバス空間設計、Agentforceで成果(Salesforce)
- ベルフェイスの導入事例(Salesforce)
- 三菱UFJ銀行、Agentforce 360を本稼働(Salesforce)
- INPEXの導入事例(Microsoft)
- Robinhood customer story(ServiceNow)
- マルチAIエージェント連携技術を開発(富士通)
成果が出たAIエージェント導入事例は「業務を絞り人とつなぐ」設計が共通
AIエージェントの導入事例は、顧客対応・営業・社内業務の3領域で成果が出ています。富士通やTAPPは問い合わせ対応を、スクールバス空間設計やベルフェイスは商談の創出を効率化しました。成果を出した企業は、反復業務に絞って導入前と比べられる指標を置き、人への引き継ぎ経路を残しています。
まずは、自社の業務と型が近い事例を2〜3件選び、数値の性質と比較対象を添えて企画書にまとめてみましょう。あわせて、対象業務の現在の処理件数と所要時間を記録しておくと、PoCの効果をそのまま示せます。
ただし、事例を集めて企画が通っても、社内にAIエージェントを設計・運用できる人材がいなければ成果は再現できません。導入計画とあわせて、推進役となる人材をどう育てるかも検討しておきましょう。


















