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2019.12.03

インターンをしながらAIスキルを学ぶ、新たなキャリアの第一歩

ディープラーニングなどのAI技術に注目が集まってからしばらくが経ち、理想を掲げるAI活用から、実務的なAI活用へとトレンドが推移しているように感じられます。

と同時に、軌道に乗るAIプロジェクトの数が増え、それを支える人材が求められるようになっています。

数理的な知識だけでなくエンジニアリングの知識や、各業界特有の特徴を把握するコミュニケーション能力までが求められるAIエンジニアは特に求められる傾向にあり、政府が掲げるAI戦略においても人材育成はホットトピックとなっています。

日本ディープラーニング協会(JDLA)は「G検定」と「E資格」を運営し、ディープラーニングに関する知識を有し、事業活用するジェネラリストと、ディープラーニングを実装するエンジニアの育成を目指しています。

また、経済産業省は2019年10月に「AI Quest」プロジェクトを開始。まさに行政と民間が一体となって、人材育成に力を注いでいる状況といえます。

今回の記事では、AIエンジニアとしてのキャリアの新たな一歩として株式会社オトナルのインターンシップをご紹介します。

オトナルはインターンシップを通し、゙最先端のAI技術を学びながらJDLA「E資格」の取得、 実務での実践に挑戦できるインターンシップ・プログラム「Deep Learning Internship Program」を行っています。

約30万の費用を負担!Deep Learning Internship Programとは

「Deep Learning Internship Program」は、音声AIの開発を行う株式会社オトナルと、機械学習の人材育成を行う株式会社キカガクが共同で2019年3月から実施しました。

JDLAが展開する「E資格」の合格を目指し、通常では20万円ほどするハンズオンセミナーや、10万円ほどするE資格受験料を両社が負担するという取り組みです。

コンピュータ・サイエンスを専攻している学生や機械学習を研究で利用する学生を大賞として行われ、採用された学生は2019年4月~2020年3月までの1年間の就業が求められています。

なぜ、両社はこのインターンシップ・プログラムを開始したのでしょうか。このプロジェクトを推し進めたキーマンであるオトナルの代表取締役社長八木氏に伺いました。

八木太亮氏・・・

株式会社オトナル 代表取締役

2013年(現オトナルの前身となる)株式会社京橋ファクトリーを創業。2018年に社名を株式会社オトナルに変更し、音とアドテクを連携させたデジタルマーケティング事業を運営。

デジタル音声広告のサービスとして、『Spotify音声広告配信』『ニッポン放送 ポッドキャストオーディアド』『デジタル音声広告 for リターゲティング』などのデジタル音声広告ソリューションを展開中。

ーーおざけん:「Deep Learning Internship Program」を始めたきっかけはなんですか!?

八木氏:”オト” × ”テクノロジー”を活用したデジタル音声広告事業を展開する」というオトナルのミッションに通じるもので、音声広告をデータサイエンスできる人材は国内では希有な人材であるため、育成から行う必要があると考えたことがきっかけです。

ーーおざけん:しかし、総額約30万円に上る費用を学生に払うとなると、採算が合うようには思えません。実際にどんなメリットが合ったのでしょうか?

八木氏:現在、オトナルではディープラーニングを活用した音声広告のクリエイティブ最適化モデルの開発に着手しています。これがサービス化できれば費用対効果としては十分なリターンが得られると考えています。

八木太亮氏

ーー新規サービスの開発に実務として関わることになると学生としても実践を詰めますし、オトナル側としても開発力が増して嬉しいですね。実際にこの取り組みを進めてみて、どんな企業におすすめだと考えていますか?

八木氏:ディープラーニングなどの機械学習技術の価値を理解してビジネスに実装出来る知見を持ち、インターンの指導やメンタリングが出来るコアメンバーがいる企業がおすすめです。

ーー確かに、指導できる社員などコアメンバーがいなくてはいけませんね。そうなると既に機械学習のスペシャリストがいる企業には試してみる価値がある取り組みかもしれません。実際にこの取り組みをしてみて、インターンはどれくらい成長しましたか?

八木氏:JDLAの「E資格」レベルでディープラーニングを実装出来るスキルがつきました。また、実データを使ったアルゴリズム開発のノウハウも身につけられているのが特徴です。

ディープラーニングの知識が無に等しかった学生も

学生を受け入れ、実務経験を通した学習機会を提供するだけでなく、企業にとっても開発リソースを増やすことができるこの取り組み。

学生の方はどのように考え、「Deep Learning Internship Program」に参加したのでしょうか?

インタビューに応じてくれたのは「Deep Learning Internship Program」を通してオトナルのインターンとなった岡本さんと栗木さんです。

岡本将樹さん・・・
早稲田大学院先進理工学研究科物理応用物理学専攻修士1年。
学部4年次に将来のために目に見えるスキルを身につけたいという想いからプログラミングの学習を開始。

文部科学省アントレプレナーシップ教育EDGE-NEXTプログラムに参加、投資家へビジネスアイディアを売却する。同プログラムにて起業についての知見を深めるべくベンチャー2社のインターン経験を経て、現在オトナルには2019年6月からデータサイエンティストインターンとして参画。

栗木亮輔さん・・・
東京理科大学大学院理学研究科応用物理学専攻修士1年。‬
プログラミングと機械学習の学習を通じて、そのデータサイエンスに魅力を感じデータサイエンティストや機械学習エンジニアを志す。‬

企業主催のデータコンペやKaggle、signateを通してデータ分析の経験を積み、株式会社オトナルには2019年6月からデータサイエンティストインターンとして参画。‬

ーーおざけん:なぜ、このプログラムに参加したんですか?

岡本さん:私自身、広告などのリコメンドに意思決定を左右される経験が多く、流行りの音声広告に興味を持っていたことからオトナルに興味を持ちました。

ディープラーニング領域は、大学の専攻と異なるため、インプットに加えてアウトプットする環境が必要でした。しかし、学生では資金的にも環境的にも準備することが難しい状況でした。

この「Deep Learning Internship Program」では、「E資格」の受験機会を提供していただけるということで、興味を持ち、応募に至りました。

岡本将樹さん

栗木さん:私は昨年(2018年)から研究で機械学習を利用していました。学習を進めていくと共にデータ分析や機械学習の可能性を知り、将来はこの技術を用いた職に就きたいと徐々に考えるようになりました。

そのためには、さらに機械学習に関する知見を深め、実際のデータの解析の経験を積むことが必要だと思いましたが、私の専攻は物理学なので独学で進めていたた機械学習の学習は外部から情報を積極的に得なければ成長率が低いと感じ、インターンに参加するという選択を決心しました。

そんな時にTwiiterで目に止まったのが今回のプログラムです。今回のプログラムでは、実務で機械学習を用いたデータ分析を行うのと同時に「E資格」の費用を負担していただけるという魅力的な内容でした。

「E資格」の存在はその時に知りましたが、学部4年の頃にディープラーニングの基本的な理論は学習していたため、さらなる知識の習得には最適だと感じました。また、「E資格」は費用が高く、学生である私たちにはなかなか手が出せず、これ以上ないチャンスだと思い応募させていただきました。その後ありがたい事に採用していただき現在に至ります。

ーーおざけん:お二人とも大学の専攻とは違う機械学習の領域にチャレンジされていたんですね。実際、インターン前のスキルはどれくらいだったんですか?

岡本さん:Python入門の参考書を何冊か学習していました。

機械学習の実装経験は趣味程度にありましたが、機械学習の中でもディープラーニングの経験は無に等しかったですね。また独学が中心であったため、理論面の理解は追い付いていませんでした。

栗木さん:機械学習に関する知識とプログラミングのスキルは全て学部4年になってから学び始めたものです。スキルとしては以下のものがあったと思います。

・Pythonの基本的な文法
・機械学習を使うためのライブラリの知識(numpy、matplotlib、sklearn等)
・基本的な機械学習アルゴリズムの理論の大まかな理解(決定木、DNN、SVM、アンサンブル学習等)
・交差検証などのモデルの評価法の大まかな理解

栗木亮輔さん

ーーおざけん:ある程度プログラミングや機械学習には触れていたものの、実務で活用できるほどの知識や経験はなかったんですね。そんな中でのインターンの挑戦でしたが、どんな内容でしたか?

岡本さん:音声広告で認知率を上げるためのデータ分析に取り組んでいます。参考書に掲載されている綺麗なデータセットではなく、自分でデータを作る必要があったり、解法を自分で試行錯誤していく過程にやりがいを感じました。

栗木さん: 試験が8月にあったため、それまでは試験勉強が中心でした。資格を受験する条件であるプログラムでディープラーニングの理論や実装方法などを学び、補助教材である動画でその他のアルゴリズムやこれまでのモデルについて学びました。

また、資格に必要なプログラムの他にもPyTorch(Facebookが提供するフレームワーク)に関するプログラムを受講させていただき、非常にありがたかったです。

受験後は実務が中心です。私たちの目標は音声広告におけるCVR(顧客転換率)やCTR(クリック率)を上げるために、それぞれの商材に対してどのようなクリエイティブが必要となるのかを予測するモデルを構築する事です。

そのために現在、実際の音声広告のデータからCVRやCTRを予測出来るかの検証を行っています。これまでに学んできた知識をもとにモデル構築を行っていますが、まだデータ量が少ないこともあり、試行錯誤しています。

今後、データが溜まって十分な精度での推定が可能になり、実際の広告にその知見が利用できることが楽しみで、私たちに投資してくださったオトナルのためにも一生懸命取り組んでいきたいと考えています。

AI人材育成のプロはこの取り組みをどう見るか?

ここまで、企業側、学生側の生の声を伺いました。社内でインターンの教育を進めるコアメンバーがいることが必要ではあるものの、そこをクリアできれば双方にメリットがあるインターンシッププログラムと言えそうです。

このインターンシッププログラムに実際に参画したキカガクの吉崎氏に、教育の視点から、「Deep Learning Internship Program」への意見を伺いました。

吉崎 亮介氏・・・
株式会社キカガク代表取締役社長

京都大学大学院にて製造業向けの機械学習を用いた製造工程最適化の研究に従事。株式会社SHIFTでソフトウェアテストの研究開発を経て、株式会社Caratを共同創業。2017年1月より株式会社キカガクとして独立。

日本マイクロソフトと共同でビジネス目線の教育事業や、東京大学で非常勤講師としてアカデミック向けの教育事業まで幅広く取り組む。2017年の会社設立後から受講生は20,000名を超える。

ーーおざけん:今回「Deep Learning Internship Program」で活用された「E資格」ですが、AIエンジニアとしてスタートして知識をつけるためには有用な資格試験なのでしょうか?

吉崎氏:「E資格」人材のスクリーニングという観点で有用だと考えています。

AIベンチャーが行うインターンシップの狙いは優秀な人材の獲得であることが多いです。

特定の大学で情報系専攻であれば、その学生のおおまかな知識量を把握することができますが、それ以外となると、その学生がどの程度の知識を有しているのかを把握することが難しい状況です。

もし、現時点で「E資格」を持っているとなると、知識量と新しいことに積極的に取り組む姿勢を証明することができるため、企業側として採用しやすくなるはずです。

今後、ディープラーニングは情報系出身者以外に、各業界特有の知識を持った方の強力なツールになるため、その能力を情報系出身者以外が有していることを証明できる資格があることは、ディープラーニング技術の今後の進展にも大きく寄与するものだと感じています。

ーーおざけん:今、重要なディープラーニングの知識を標準化しているという点でも「E資格」にチャレンジする価値はありそうですね。一方で、学生の意見を聞くと「費用面」が課題とも感じられます。費用負担までカバーするこの「Deep Learning Internship Program」についてどう考えていますか?

吉崎氏:費用対効果が高く、採用する企業と採用される学生の両者にとってWin-Winな取り組みだと感じています。

インターンを含め、現在は企業側の課題として人材の確保とその教育が挙げられます。「E資格」の費用負担を行うことで、他社よりもメリットを大きく打ち出すことができて採用が圧倒的に有利なことに加え、技術者として一緒に取り組めるレベルまではキカガクが育成するため、社内での教育の工数も大幅に下げることができます。

岡本さんと栗木さんのインタビュー内容からわかるように、優秀なインターン生の採用ができて、実務レベルで一緒に取り組めている企業は、かなり少ないと思います。

採用された学生にとっても、教育から実践機会まで手厚く用意されており、充実した時間を過ごせたのではないかと思っています。

吉崎 亮介氏

ーーおざけん:同様の取り組みを行うにあたって注意点はありますか?

吉崎氏:知識が不十分な学生を採用すると、教育から始めることになり、企業側の負担が大きくなってしまうため、今回のような座組で企業と学生の両者に大きなメリットがあるように設計することが重要だと思います。

ーーおざけん:ありがとうございます。最後にAIエンジニアになりたいという学生の方に一言お願いします。

吉崎氏:AIエンジニアになるための学習としては、参考書を読んだり、Kaggleに参加したりといった意見が一般的でしょうか。

ただし、私が感じるデータ解析の仕事は、「課題」と「データ」があって初めて動き始め、その課題の解決を考える中に学びが詰まっています。実務では多くの制約条件があります。

データが足りない、お金が足りない、人が足りないなど、その制約条件のもとで成果を出すことができてプロフェッショナルといえます。これを学ぶには実務しかありません。

そういった観点では、ぜひ多くの企業には実務型のインターンを積極的に行ってほしいと思います。

さいごに

国内ではAIを学ぶ機会が多く創出されています。冒頭で紹介した「AI Quest」のような取り組みだけでなく、Qiitaなどで展開されるWeb上の情報も増えてきました。ディープラーニングなどに関する実践的な書籍も増加しています。

一方で、課題となるのは「実務での経験」です。現場ではさまざまな制約があります。思うようなデータが揃わないこともあれば、人が足りないため通常よりも広い業務をカバーする必要があることもしばしばです。

そんな中、2019年を通して耳にすることが多くなったのが「PBL(Project Based Learning):問題解決学習」です。

整った環境だけでなく、さまざまな問題が発生する現場で学ぶ機会づくりに注目が集まっています。

今回の「Deep Learning Internship Program」も、PBLの一つのあり方として、多くの企業の方に参考にしていただければ幸いです。

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