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AIが発達した今、保険業界におけるAI活用「Isur Tech」が進んでいます。
保険会社ではビジネスの中で顧客に関する情報を蓄積していますが、それらの蓄積されたデータを効果的に活用することで会社にとっても被保険者にとってもより良いサービスの提供に繋がるでしょう。
この記事では、保険業界におけるAI活用のメリット・デメリットから活用事例といった最新動向に関しても説明していきます。
【この記事でわかること】※クリックすると見出しにジャンプします |
保険業界の現状
AIについて触れる前に、保険業界の現状について知っておいてほしい事が次の3つです。
それぞれ解説していきます。
医療の発達による影響
医療の現場では、従来のように病気になってから治療するのではなく、AIによって事前に病気を予防する病気のない世界が実現しつつあります。
例えば、アメリカではApple Watchに機械学習アルゴリズムを搭載することで、高血圧や睡眠時無呼吸症候群を高い精度で予測できることが発表されました。
つまり、AIの発達により病気を未然に防げるようになったことで、実際に病気になる可能性は減少しているということです。
そのため、保険の世界でも病気になった時の保険よりも病気のない世界の保険へのニーズがシフトしていると言えます。
医療へのAI活用に関して詳しくはこちら
▶AIを医療に活用-メリット・デメリットや最新の事例を詳しく解説
交通事故の減少による影響
近年、自動車業界における取り組みの一つに自動運転があります。AIやセンサーの発達により、人間以上に正確な判断に基づいた運転が可能になれば交通事故自体も減少していくと予想されます。
しかし、高度な自動運転技術が確立すれば、交通事故が完全になくなるのではなく、一定の確率で発生するようになるでしょう。また、その場合乗車している人、AIのアルゴリズムプログラムを考えた人、企業など責任の所在がまだ明確になっていません。
今後は、AIによって自律的な振る舞いをするようになったロボットなどのシステムが起こした事故に関して、コミュニティ全体で保障していくような保険の新たな形も求められていると言えます。
ビジネスモデルの変革
AIなどの最新技術によって、既存の製品やサービスがより利便性の高いものに置き換わりつつありますが、保険業界も例外ではありません。
保険会社は被保険者の年齢・性別・年収・資産状況・病歴など膨大なデータが蓄積されています。こういったデータは、AIが学習するために適しており保険のビジネスモデル自体がゆらぎつつあり、時代の流れに適応していなければ淘汰されてしまうのではないでしょうか。
そのため、今後は従来のような保険ビジネスではなく、AIが発達した時代に保険でどのように社会に貢献できるか模索していく必要があります。
AI保険とは
AI保険とは、AIが個人や企業に適した保険を提案したり、保険会社のデータ入力やコールセンターなどの業務を効率化したり自動化することです。
保険業界では、他の業界に比べてデジタル化が遅れていますがAIの発達によってさまざま面での活用が可能となり、これから保険会社ではAIが必要不可欠になっていくでしょう。
AIについて詳しくはこちら
▶人工知能(AI)とは?定義や歴史など徹底解説!最新のAIがヤバすぎる。
AIを保険に導入するメリット・デメリット
AIを保険業界に導入するメリット・デメリットは次の3つです。
それぞれ解説していきます。
【メリット①】迅速な保険提案・保険金査定・リスク算出
AIを保険業界に導入するメリット1つ目は「迅速な保険提案・保険金査定・リスク算出ができること」です。
保険は個人や企業によって最適なものは異なるため、保険金の査定に長時間を必要としていました。AIを導入することによって、査定にかかる時間を短縮できました。
また、保険会社は顧客の年齢や職業といった大量のデータを蓄積しています。そのビッグデータをAIに学習させることで、適切な保険サービスの提案が可能になりました。
近年では、自然災害や感染症などリスクが高まるにつれ自然災害被害額の負担も高まっており、保険のリスクをより精密に算出することが求められています。AIの高度な分析が精密な算出を可能とし、迅速な対応にもつながっています。
【メリット②】業務の効率化・自動化
AIを保険業界に導入するメリット2つ目は「業務の効率化・自動化ができること」です。
保険会社ではコールセンターの業務も行います。AIの音声認識によって、どのような質問でどう対応していたかを自動でデータ入力ができ、入力作業を省いたりオペレーターの品質向上にもなります。
また、チャットボットを搭載することでよくある質問はAIのみの対応で解決することでコールセンター業務の負担も減らせたり、24時間の対応も可能です。
【デメリット】提案された保険が必ず適切とは言えない
AIを保険業界に導入するデメリットは「提案された保険が必ず適切とは言えないこと」です。
保険は、なにか被害を受けたりしたときに適用されるものです。そのため、AIは個人に合わせた保険を精度よく提案できるかもしれませんが、提案結果の思考の過程は見ることができません。
保険業務におけるAIの活用事例5選
保険業務におけるAIの活用事例は次の5つです。
- 減少調査でAI搭載ドローンで自動化(東京海上日動)
- 音声認識でコールセンター業務を自動化
- 書類のデータ化をAIで自動化(アイリックコーポレーション)
- 保険金の支払いをAIで自動審査(かんぽ保険)
- 複雑な保険の内容を画像認識で分析(ドコモ)
それぞれの事例を紹介していきます。
①減少調査でAI搭載ドローンで自動化(東京海上日動)
大手損害保険会社の東京海上日動は、イスラエルのAirobotics co. Ltdと連携して、AI搭載ドローンを活かした損害調査を実施しています。
近年、自然災害の多発化の影響で被災を受ける家屋や施設の数が増加しています。保険会社は保険金の金額を算定するために、損害鑑定人が現場まで行き、立ち合い検査を実施しますが危険が伴うことも事実です。
そこで、AI搭載ドローンで被害状況を分析し損害鑑定人の仕事を自動化することで危険が伴うことなく損害調査を実施することができます。
実際に、1ヶ月ほどかかる保険金の支払い期間を大幅に短縮化できたことで、より被保険者満足度を向上させる結果となりました。
②音声認識でコールセンター業務を自動化
複数の保険会社はコールセンターにおける、お問い合わせ業務を音声認識技術を生かしてAIで自動化しています。
被保険者からの問い合わせに対して、適切な回答をデータベースの中から選び答えるため、すべての問い合わせに対して平等に高品質な対応が可能になりました。
また、コールセンターは近年人手不足という問題を抱えていることもあり、AIが新たな労働力として活躍ができるのは近い将来のことです。
③書類のデータ化をAIで自動化(アイリックコーポレーション)
アイリックコーポレーションは、OCR(Optical Character Reader/画像データから文字を認識して機械が読み取れる形に変換する技術)を使って、保険の発注書や請求書の内容を自動でデータ化しています。書類の画像データから請求金額や請求日など必要な項目を抜き取ってデータとして取り込みます。
AIを使えば幅広い書類の形式にも対応できるため、大幅な業務効率化につながります。
④保険金の支払いをAIで自動審査(かんぽ生命)
かんぽ生命では、保険金支払い業務における審査をAIで自動化しています。
従来では、保険金の支払い審査は高度な知識と経験が必要で、習得するのに10年以上という長い時間がかかっていました。
そこで、AIによって過去の事例と判断材料を学習し、審査を人間の手を介さずに自動化できたことにより業務の効率化、保険金支払いに要する時間の短縮化ができました。
⑤複雑な保険の内容を画像認識で分析(三重銀行)
三重銀行は、保険の内容をカメラで撮影するだけで内容をわかりやすくまとめてくれるAIを導入しました。
保険商品は一般の人には内容が複雑でかなり時間をかけて細部まで読み込まないとしっかりと理解できません。
そこで、保険商品の内容をAIで読み込みわかりやすい形に分析シートとしてまとめることで、被保険者の待ち時間を90%短縮できました。
AIによる保険提案サービス3選
AIによって保険を提案してくれるサービスは次の3つがあります。
それぞれ紹介していきます。
①AIほけん(ドコモ)
AIほけんは、株式会社NTTドコモが提供しているスマホ一つで保険を申し込めるサービスです。
スマホで簡単な質問に答えていくだけで、利用者にあった10種類の保険からおすすめの組み合わせを無料で提案してくれます。
保険に加入後も、月額料金に対応した補償の範囲の変化をグラフでわかりやすくプランを視覚化できたり、定期的な保険の見直しによってその時の生活に合わせた保険を組めます。
AIほけんが提案している保険の種類は次の10種類です。
ケガの保険 | ケガをした場合の入院・通院費などの補償 |
損害賠償保険 | 他人にケガをさせたり、他人のものを壊した時などの補償 |
持ち物保険 | 所有物が外出先で破損・盗難された場合の補償 |
ゴルフ(ホールインワン)保険 | ホールインワンを達成した際のお祝い費用を補償 |
レスキュー保険 | 緊急の捜索・救助活動を要する状態になった際補償 |
医療保険 | 病院で入院・手術された場合の費用を補償 |
がん保険 | がんと診断された時の一時金や入院・通院・手術費用などを補償 |
介護保険 | 要介護状態となった時の一時金を補償 |
所得補償保険 | 働けなくなった場合の所得を補償 |
介護士保険 | トラブルに巻き込まれた場合の弁護士費用を補償 |
②無料でAIが保険の見積もり(フィナンシャル・エージェンシー)
保デジは、株式会社フィナンシャル・エージェンシーが提供しているAI保険見積りサービスです。
200万人以上の人の保険選びのデータを、AIに学習させることで、3,500を超える保険プランから適切に組めることが可能になりました。
保険に加入することなく無料で、見積りサービスを利用することもでき、利用回数に制限もありません。
また、問い合わせのプラットフォームもLINE、Twitter、Instagram、FacebookなどのSNSにも対応しており、自分の使いやすいツールでサービスを受けられます。
③AIぴったり保険診断(住友生命)
AIぴったり保険診断は、2022年4月に実証実験第2弾を行った住友生命が提供するAIが保険を提案するサービスです。
一般的な生命保険では個人の年齢・家族構成・職業などの事実に基づいて提案されていますが、保険に加入することで期待することや備えたいリスクは人それぞれ違います。
そこで、AIによって客観的に個人の価値観を提案内容に反映できれば、より最適なプランを提案できると住友生命は考え、株式会社エクサウィザーズとともにAIぴったり保険診断を開発しました。
まとめ
デジタルトランスフォーメーション(DX)の進行を見越して、保険業界でも時代に取り残されないようにあらゆる方法でAIの活用が進んでいます。
近年では、伝統的な保険会社に加えてネット系保険会社の登場によって、その傾向はさらに進みつつあります。それに伴い、私たち被保険者の利便性や保険料削減にも繋がります。
今後は、保険業界は今までよりもさらに個人のニーズに寄り添ったサービスへと変革していくのではないでしょうか。
AINOW編集部
CS専攻大学2年生・42Tokyo所属
情報発信を通して自分自身の知見も深めていきたいと思います