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2020.03.18

データの真の可能性を発見するための7つのステップ

最終更新日:

著者のSven Charleer氏はベルギーでUXデザイナー/アドバイザーとして活躍しており、2018年に公開したAINOW翻訳記事『ディープフェイク(deepfake)を家族で楽しむ。あるいはいかにして私の妻をトゥナイト・ショーに出演させたか』の著者でもあります(同氏の経歴と業績は個人サイトは参照)。

 

同氏が昨年9月にMediumに投稿した記事『データの真の可能性を発見するための7つのステップ』では、様々なプロジェクトとアプリのUXを改善する手法が軽妙な語り口で解説されています。

エンジニア経験もある同氏によると、多くの開発プロジェクトは「ユーザのニーズ」を理解することを後回しにして、開発者だけで考えた設計にもとづいてコーディングのみに注力するという状況に陥っています。こうした状況は、データサイエンティストにしか理解できないデータビジュアライゼーションやダッシュボードのような、ユーザフレンドリーとは言い難いものを生み出してしまいます。そんなUXに難のある成果物を渡されても、ユーザはその成果物に含まれたデータの真価を理解できるわけがありません。

以上のようなUXへの配慮を後回しにしてしまうアプローチを改善する方法として、同氏は以下のような7つのステップを提案します。

  1. 対話:顧客と対話して、データへの理解を深める。
  2. 顧客の巻き込み:顧客をプロジェクトに巻き込み、その行動やニーズを理解する。
  3. スケッチ:実装の前にアイデアを何かに描いて共有。
  4. フィードバックの取得:顧客からの反応を生かして、アイデアを改善する。
  5. プロトタイピング:アイデアが伝わるモックアップを作って、アイデアを具体的に共有する。
  6. 反復:顧客からの反応にもとづいてアイデアと設計を改善するプロセスを繰り返す。
  7. 実装:アイデアを(コーディング等を通して)実現する。顧客からの反応を得ることも忘れない。

こうしたデータサイエンスプロジェクトにおける「ユーザ中心のUX設計」の重要性は、以下のAINOW翻訳記事でも論じられています。

高度かつ精緻な技術を使って問題解決することに注力しがちなデータサイエンスプロジェクトにおいて、「ユーザ中心のUX設計」は忘れてはいけない観点と言えるでしょう。

なお、以下の記事本文はSven Charleer氏に直接コンタクトをとり、翻訳許可を頂いたうえで翻訳したものです。

データを見るのを止めよう。そしてユーザを見よう。

私を信じて、私は自分がやっていることが何であるか知っています

私はかつて開発者だった。しかも保守的な。問題を解決しなければならなかった時、まず頭から飛び込んだ。コード以外は何も見ない。コード、コード、コード。自分たちが何をしていたかを知っていた。人々が何を望んでいるかも知っていた。それで正しいのではないか?

今日では、昔のようなやり方などほとんど想像できない(もっともあちこちの企業は除いて。しかし、そんな企業はおそらく良いビジネスをしていないだろう)。UX(User Experience:ユーザエクスペリエンス)の設計により、(デジタル的な)問題の解決に対する見方が変わった。そんな新しい見方では、コードではなくユーザに関与するのだ。しかも最初に!

私は開発者として10年を過ごした(2003〜2013)。その間に開発チームがユーザに関与したのを見たのは、2回きりだった。私の最初の開発者経験は、イギリスのMonumental Gamesから始まった。そこでXboxとPlayStation向けにMotoGP 09/10を開発していた。現在ゲーム開発に関しては、物事はすぐに複雑になる。そして、未完成のゲームにおいて自然発生する数千のバグを見つけるためにQAチームが必要となる(こうしたゲーム開発事情を部分的に改善できないとは言わない)。2番目の開発者経験は、ベルギーのiChoosrで過ごした。そこでは、UXに取り組む部署をひとつ借りた:その部署には一方向からしか見えない鏡付きガラス、マイクとカメラ、スクリーンの録画、視線追跡、そして調査すべき製品があった!私たちの部署はユーザが実際にWebアプリケーションを理解し、使用できるかどうかを把握しなければならなかったのだ。

QAとUX調査の両方が、開発の大部分が行われた後に発生したことに注意してほしい。そして、ふたつの開発工程の焦点はユーザビリティであり、有用性(usefulness)ではなかった。これらの行程があることはユーザへの関与が全くないよりはましだが、この工程だけでは十分ではない。

2013年、私はベルギーにあるルーヴェン・カトリック大学(※訳註1)のHuman-Computer Interaction(人間中心のインタラクション)グループで博士課程を始めた。在学当時に取り組んでいた目標とは何であったか?それは学生がより自分たちの活動内容に気づいたり、活動課程や活動進捗にもとづいた洞察を反映させたり集めたりするのを助けるダッシュボードを作っていたのだ。そんな取り組みをどうやって実行していたかって?

はじめに頭からソースコードに飛び込むことによってだった…

学生たちが何を必要としているか知らずに、一体なぜ学生のための何かを作ろうとしたのだろうか?

・・・

(※訳註1)ルーヴェン・カトリック大学は1425年に設立されたベルギーの総合大学。TIME誌イギリス版が毎年秋に発行する高等教育情報誌『タイムズ・ハイアー・エデュケーション』によるTHE世界大学ランキング毎年TOP50位にランキングされる名門校である。

UX設計が追いつくまでの時間

データを有効活用するために、かつてはしばしば次のようにすればよかった。非常に賢い人をたくさん雇って、データを好きに弄ってもらう。そうして数日が経過すると(そんなことは起こらないだろうが、想像してほしいのだが)「Report Ninja(ニンジャ・レポート)」(※訳註2)なるものが提出され、その資料にはExcelでは見たこともなければ考えたこともないようなクレイジーでインタラクティブなスプレットシートがあるのだった。もっとも今日では、データサイエンティストがデータを掘り下げてパターンを見つけるか、機械学習の専門家が未来を予測するモデルを作成する。多くの場合、データのビジュアライゼーションとダッシュボードは後から考え直されるため、サポートチームやビジネスチームのオフィスにある大きなディスプレイに複雑すぎるダッシュボードが表示される始末となり、そんなものを見せられたほとんどのスタッフは見ようともしないのだ(この話は、確かに単純化し過ぎている)。

使えるだけのアプリを作ることが重要なのではない。重要なのは使えるうえに役に立ち、使う価値のあるアプリを作ることであり、そのためにはユーザを巻き込む必要がある。こうしたユーザを巻き込む傾向は、業界全体でますます広がっている。しかしながら、データビジュアライゼーションやダッシュボードを設計する時には、まだ遅れをとっている人がいるように見える。

・・・

(※訳註2)「Report Ninjas」(Ninja Reportと表現されることもある。)は、スラングの一種で長たらしいタイトルをクールに言い換える時に使われる表現。ゆえに特に意味はない(出典はオンライン俗語辞典’Urban Dictionary‘の”Ninja Report”より)。

データ自体に語らせない

私はユーザ観点からのデータビジュアライゼーション設計の研究に6年以上を費やした。ソリューションを考える前に、どんなデータを持っているかについて一般的な考えを持つことが重要だが、それよりも最初に自問すべき質問は「ユーザは何を必要としているか」である。なぜならば、もしユーザが必要としていないなら、そんなものについてなぜ思い悩むのか?ユーザにとって不要なものに関わらないことで、多くのトラブルから救われる。

もしデータソリューションを改善したければ、またはデータに関する新しい方針を探索したければ、小さな手順を実行すればよい。正しい順序を実行するだけで、お望みのものが手に入るだろう。そんな手順を始めるためのリストを以下に示す(このUXアプローチは、どのデジタルソリューションにも通用する)。

1.対話から始める:

(ビジネス、マーケティングなどの)他のチームと話し、ブレインストーミングセッションを整理してから会話を始めて、データが持つポテンシャルを探ろう!

2.顧客を巻き込む:

データにパブリックな/あるいは顧客だけに価値がある場合には、Webサイトで調査を実施し、顧客の行動を分析しよう。そして、顧客に必要なものを尋ねよう。そうすれば、調査で発見したことに驚かれることだろう。

3.スケッチ:

実装からは始めない!ホワイトボードや紙など、最も手っ取り早く使えるものを用いてアイデアを探ろう。

4.フィードバックを得る:

アイデアを潜在的なユーザに渡してみよう。ユーザにフィードバックを求め、スケッチにもとづいてユーザのニーズをさらに調べよう。うまくいったところ、改善できるところ、そして捨てるべき方向性が何であるかについて理解してみよう。

5.プロトタイプ:

アイデアに関する視覚的なプレゼン資料を作成しよう。開発するのではなく、現実的なモックアップを作成することにより、ユーザが視覚化の可能性を「視覚化」できるようにしよう(意図的な言葉遊び)。プロジェクトに必要な予算をまだ獲得していないならば、予想される結果を視覚化することは経営陣にアイデアを伝えるのに(そして予算を確保するのに)最適な方法だ。伝えるアイデアに追求する価値があることを納得させよう(ステップ1〜4の結果を含めることを忘れないように)。

6.反復:

設計プロセスに顧客を巻き込こう。設計と評価のあいだを行き来しよう。そして、ソリューションを徐々に改善するのだ。顧客にアクセスしにくい場合は、同僚に頼ってみよう。自分以外から得られるフィードバックは、どんなものであれ役に立つ。

7.実装:

アイデアを現実にしよう。まずはアイデアを開発チームに引き渡そう。しかし、ここで終わらない。アイデアをユーザの近くに置くようにしよう。そして、(追跡調査やインタビューなどをして)彼らから学ぶのだ。

以上のプロセス全体を実行するには時間がかかる。しかし、すべてのステップには価値があり、具体的で実行可能な結果が得られる。私はデータのポテンシャルを見つけ、そのポテンシャルから得られる結果を数日以内に達成するために企業に雇われたことがある!そんな時には企業が考えもしなかった新しいソリューションを考えると、それを実現するための新しいプロジェクトがすぐに立ち上がったものだった。

今や、読者諸氏と一緒にこれらのステップを経験する私のような人材を雇うことができる(私が住んでいるヨーロッパ大陸とは違う大陸在住のすべての人に:もちろん、以上に解説したステップはリモートワークで完全に実行可能だ)。こうした問題に関する私の経験を持ってすれば、解説したプロセスをスピードアップして実行できる。データビジュアライゼーションのプロトタイプの設計はかなり得意であり、企業が保持するデータの可能性を企業自身が発見するように支援することに常日頃から興奮しているのだ!

しかしながら!もし読者諸氏が自力で問題に取り組みたいのならば、私が作成したこのオンライン講座を確認することをおすすめする。この講座は、以上に述べた全ステップを手取り足取り説明している。プロジェクトベースの講座であるため、すでに何らかのプロジェクトを思いついているならば、講座は実際に素晴らしいガイドとなるだろう(以下のブログカードも参照)。

モックアップのビジュアライゼーションの作成法:グラフィックデザイナーのためのデータビジュアライゼーションとUXの基礎 | Sven Charleer

また、2週間以内にブリュッセルの近くにいる場合は、以上のアプローチによって教育と失業の両方の分野で成功したダッシュボードを作ったことに関して、トークセッションを開催するので来て頂きたい(※訳註3)。

データビジュアライゼーションにおいてユーザに焦点を合わせた成功事例を学ぶことに、私は興味をもっている。そんな事例について、コメント欄でシェアしてください!

私はフリーランスのデータビジュアライゼーショとUXに関するリサーチャー/アドバイザー/デザイナーです。私とチャットをしたい、あるいは雇いたい場合は、svencharleer.comに連絡ください。

(※訳註3)本記事が公開されたのは2019年9月12日だったのだが、2019年9月24日、ベルギーの首都ブリュッセルで本記事の著者Sven Charleer氏が参加したUXトークセッション「UX Beers」が開催された。
同セッションにおいて、同氏は本記事で論じているユーザを巻き込むUXデザインについて、事例を挙げながらプレゼンした。

原文
『7 Steps to Help You Discover your Data’s True Potential』

著者
Sven Charleer

翻訳
吉本幸記(フリーライター、JDLA Deep Learning for GENERAL 2019 #1取得)

編集
おざけん

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