最終更新日:
DX投資促進税制とは、2021年度税制改正法案で可決・成立された中にある、企業のDX推進を促すための税制です。
DX投資促進税制を利用すれば、DXに関連する費用負担が軽減されやすくなりますが、そのためには認定要件をクリアする必要があります。
今回はDX投資促進税制の内容から対象企業・申請方法について解説します。
▼DXとは何か知らない方、DXについて詳しく知りたい方はこちら
目次
DX投資促進税制とは
DX投資促進税制とは、企業のデジタル改革への投資を促進する目的で、2021年度の税制改正により創設された税制です。
適用対象は、2023年3月31日までに事業適応計画が認定され、事業の用に供した資産です。
大臣が定める事業適応計画に基づいてDX推進を実施すれば、投資額に対して税額控除を受けるか、特別償却30%のどちらかを選択できます。
DX投資促進税制の施行日はいつから?いつまで?
DX投資促進税制の施行日は令和3年4月1日から令和5年(2023年)3月31日までです。
DX投資促進税制が創設された背景
ここ数年、新型コロナウイルス感染症の影響で様々な企業が業績の減少などの経営難に悩まされており、日本の経済は大打撃を受けています。
しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、企業が続々とリモートワークを取り入れると同時に企業のDX推進への意識が向上しています。
この状況を経営戦略変化のチャンスと捉え、経営戦略とデジタル戦略の一体化を進めていくべきだという傾向が強くなってきました。そのような背景から経済産業省によってDX投資促進税制が創設されました。
これからのウィズコロナの時代、より一層DX化が求められるとされています。そのため、ウィズコロナ・ポストコロナに備えてDX投資促進税制を活用しましょう。
DXが注目されるわけ
菅総理大臣がデジタル化を推めていますが、世間でもDXが注目されています。今やDXに取り組んでいる企業は溢れています。
この背景には、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」が挙げられます。
▶関連記事|経済産業省が進めるDX関連施策まとめはこちらで詳しく解説しています>>
2025年の壁
2025年の壁とは、日本企業の基盤となっていた既存システムが複雑化・老朽化・ブラックボックス化していき、既存システムが残存した場合に想定される国際競争への遅れや日本経済の停滞が起きてしまう現象です。
このまま日本がデジタル化を進めなければ、国際競争に負けてしまい最大で年間12兆円もの損失がでると予想されています。
しかし、このレポートには、もしDXが実現できれば2025~2030年に実質GDP130兆円超の押し上げができるとも述べられています。
▶「2025年の崖」の概要や企業単位の改善策は、こちらの記事で詳しく解説しています>>
DX投資促進税制の認定要件と認定方法
DX投資促進税制の対象となるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
DX投資促進要件は以下のとおりです。
このように満たすべき要件には、大きく分けてデジタル要件(D要件)と企業変革要件(X要件)の2つがあります。
ここでは、上記のDX投資促進税制の対象要件の一つであるDX認定制度の説明から、実際にどのような税制優遇措置が受けられるのかについて解説します。
それぞれ解説していきます。
DX認定制度とは
DX投資促進税制に関わる認定に、「DX認定制度」があります。
DX認定制度とは、2020年5月に施行された「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づく認定制度です。
DX認定制度では、デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応することが認定基準となります。
「デジタル・ガバナンスコード」とは、経済産業省が、企業のDXに関する自主的取り組みを促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応のことです。
中小企業でもDX投資促進税制の対象になるか?−対象企業について解説
中小企業でもDX投資促進税制は認定されます。
DX投資促進税制の対象事業者は「産業競争力強化法」の【事業適応計画(仮称)の認定】を受けた青色申告法人です。
産業競争力強化法とは、農林水産省が定めた、我が国経済を再興すべく、我が国の産業を中長期にわたる低迷の状態から脱却させ、持続的発展の起動に乗せるため、産業競争力の強化に関する施策を総合的かつ一体的に進めるための法律です。
青色申告は所得税、法人税の申告方法のひとつで、一定の帳簿書類を備付けることが要件となっている代わりに、節税に役立つさまざまな特典を受けられます。事前に税務署へ青色申請書を提出する必要があります。
DX投資促進税制の税制措置
ソフトウェア・繰延資産・有形固定資産について、税制措置は以下の通りです。
DX推進のためのソフトウェア・繰延資産・器具備品・機械装置といった設備投資の費用にかかる税額を、税額控除もしくは特別償却という形で減額することで、企業のDX投資を促進しようという政府の狙いがうかがえます。
DX投資促進税制の対象資産
DX投資促進税制の対象となる資産は情報技術事業適応設備・事業適応繰延資産の2つです。
- 情報技術事業適応設備
新設または増設された特定のソフトウェア
特定ソフトウェアとともに活用する機械・装置・器具・備品 - 事業適応繰延資産
ソフトウェアにソフトウェアに係る費用を支出した場合に掛かる繰延資産
DX投資促進税制の適用となる設備については、特定ソフトウェアと連携されているものに限られます。
また先述の通り、情報技術事業適応設備の取得額および、事業適応繰延資産の額の合計額のうちDX投資促進税制の対象となる金額は300億円が上限とされているので注意が必要です。
出典:令和3年度(2021年度)経済産業関係 税制改正について
DX投資促進税制の申請方法
まずはDX投資促進税制の対象となるDX認定を受ける必要があります。
認定審査事務は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が行います。IPAの審査後、経済産業省が認定してDX投資促進税制の対象となるのです。
DX認定制度をクリアし、大臣が定める事業適応計画に基づいてDX推進を実施すれば、投資額に対して税額控除が受けられるか、特別償却30%のどちらかを選択できます。
DX認定を受けるには
「DX認定制度」とは、2020年5月に施行された「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づく認定制度です。
DX認定制度では、デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応することが認定基準となります。
ここでは、申請からDX認定までの期間について解説します。
- 審査期間(標準処理期間)について
申請受理後、認定は月ごとに決裁が行われ、60日の期間を経て翌月の初旬に発表されます。毎月15日に審査を締め、認定結果は翌月の初旬にIPAからメールで通知されます。
なお、この60日とは2か月間という意味ではなく、IPAまたは、経済産業省の執務が行われない休日(土曜日・日曜日・国民の祝日に関する法律の休日・12月29日から1月3日)は審査期間には含まれないため、カレンダー上では約3か月の審査期間があります。
さらに、内容や混雑具合によっては60日を超える場合もあります。そのため、申請から認定取得までは4か月で計画しておくと安心でしょう。
- 日付例
- 審査合格日:2021年12月10日
締め日:2021年12月10日
認定:2022年1月1日付 - 審査合格日:2021年12月13日
認定:2022年2月1日付
このように、②の場合、通常の申請でも審査の締め日との兼ね合いで審査に約4か月かかる場合もあります。
出典:令和3年度(2021年度)経済産業関係 税制改正について
DX投資促進税制による投資額の下限・上限
DX投資促進税制には投資額に制限があります。
投資額下限は売上高比0.1%以上、投資額上限は300億円と定められています。
出典:令和3年度(2021年度)経済産業関係 税制改正について
企業のDXを支援する法改正
企業のDXを推進するために法改正が進んでいます。繰越欠損金控除上限引き上げと研究開発税制にも、DXを推進する背景があります。
繰越欠損金の控除上限の特例
DXを含めた経営改革に取り組む企業向けに、繰越欠損金の控除上限の特例が新たに設けられます。
中小企業が100%、大企業は50%を上限としていますが、特例の対象となれば、大企業のみ一定の欠損金について最大100%まで引き上げられます。
事業適応計画の認定を受け、ポストコロナに向けた取り組みや、必要となる投資内容を含めた計画書を事業所管大臣に提出し、認定を受ければ特例が適用されます。
研究開発税制のDX追加で推進を後押し
研究開発税制は、研究や開発にかかった費用を法人税から控除する制度です。
税制改正によって、クラウド関連のソフトウェア研究開発費が研究開発税制の対象に含まれました。
DX投資促進税制を利用してDXを推進させましょう
今回はDX投資促進税制について説明しました。
DX投資促進税制とは、企業がDXを推進するために投資した費用の負担を軽減するための税制です。
デジタル要件や企業変革要件などさまざまな認定要件をクリアする必要がありますが、認定されればDXに関する費用負担が軽減されます。DX投資促進税制を利用してDXを推進させましょう。
▶DXの進め方|参考にしたい3つの成功事例や推進のポイントも合わせて紹介>>
◇AINOWインターン生
◇Twitterでも発信しています。
◇AINOWでインターンをしながら、自分のブログも書いてライティングの勉強をしています。