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2021年11月1日より、マンガに特化した多言語翻訳システム『Mantra Engine』の研究会開発を行うMantra株式会社は、株式会社⼩学館が提供するマンガ雑誌アプリ『マンガワン』に、Mantra Engineを使った翻訳⽀援を開始しました。
翻訳支援の第1弾として、マンガワンに掲載されている『ケンガンオメガ』などの英語版を制作し、⼀部の海賊版サイトの更新停⽌・作品取り下げに寄与しました。
マンガの高速な多言語展開を可能にする『Mantra Engine』
Mantra Engineは、マンガの高速な多言語展開を可能にする、出版社およびマンガの制作・配信事業者を対象にした法人向けクラウドサービスです。
2020年7月に正式リリースされたMantra Engineは、国内外のマンガ配信業者や翻訳事業者、出版社に導入されていて、月間約10000ページ(単行本換算で50冊分)もの多言語化に利用されています。
▼『Mantra Engine』の機能性について知りたい方はこちら。
海賊版による被害は1億PV以上
「海外海賊版」と呼ばれる、世界中のマンガファンが非公式に制作する翻訳版マンガは、正規版マンガの販売機会の損出につながっていて、日本マンガが海外展開する上で大きな課題となっています。
2021年に同社が独自に調査したところ、小学館が出版したマンガのうち、著作権者が許可して翻訳・出版した正規版の約5倍の海外海賊版が流通されていることが判明しました。特に、マンガワンの『ケンガンアシュラ』や『ケンガンオメガ』シリーズは、海外海賊版のサイトで1億回以上のPVが確認されるなど、大きな被害を受けています。
同社が海外海賊版の製作者に対し行った調査によると、「⾃分が他者に勧めたいマンガが公式に翻訳されないこと」が海賊版を制作する最大の動機だと分かりました。
海外漫画ファンによる翻訳を正規版に転換
マンガワンは、海外海賊版の公開により大きな被害を受けていますが、Mantraと協働して熱狂的な漫画ファンの力を活かし、『ケンガンオメガ』をはじめとする作品の正規翻訳版を制作を開始しました。
Mantra Engineの以下の特徴を活用し、⾼速な翻訳および⽇英版の同時配信を実施しました。
- 安全なデータのやり取り:マンガファンが出版社と直接原稿データを送受することなく、ブラウザ上で翻訳・組版作業に従事可能
- ⾼い作業効率:AI技術による翻訳・組版作業の⽀援機能や、作業者同⼠のやり取りを効率化する仕組みにより、制作 時間を約50%短縮可能
この取り組みでは、Mantraが個別に⾯談を⾏い、協⼒依頼した⽅のみがMantra Enginを使い、⾃動で翻訳・写植された画像をベースに、翻訳版を製作します。製作された英語版は、英語圏向けマンガ配信サービス『Comikey』で⽇本語版と同時に公開されます。
『ケンガンオメガ』海外海賊版の配信停⽌に成功
『ケンガンアシュラ』と『ケンガンオメガ』の正規版翻訳がリリースされたため、海外海賊版(英語)の製作者グループが、海賊版制作の停⽌および公開済エピソードの取り下げを発表しました。
今回の取り組みは、多言語同時配信により海外海賊版の被害を軽減できたため、今後も海外海賊版への有効な対策になることが期待されています。
駒澤大学仏教学部に所属。YouTubeとK-POPにハマっています。
AIがこれから宗教とどのように関わり、仏教徒の生活に影響するのかについて興味があります。