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よく耳にするDXという言葉。
現在では、DXはビジネス用語として定着しつつあります。
ここでみなさんに質問です。
①DXを推進している日本企業をひとつあげてみましょう。 ②その企業は具体的にどのようにDXを推進していますか? |
答えはさまざまあるかと思います。
本記事では、経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX銘柄」における「DX注目企業2021」に選定された富士通株式会社に焦点を当てて、この問いに答えていこうと思います。
そこで今回は、富士通が提供するDXのソリューションから、富士通の社内改革に至るまで詳しく解説していきます。
本記事を読んだら、「富士通は具体的にどのようにDXを推進しているのか」
この問いに答えられるはずです。ぜひ最後までご一読ください!
目次
DX(デジタルトランスフォーメーション)のおさらい
本題に入る前に、まずDX(デジタルトランスフォーメーション)についておさらいしましょう。
DXとは、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した概念です。その理念は、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」というものでした。
より具体的に、経済産業省の定義を確認しましょう。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス,ビジネスモデルを変革するとともに,業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
富士通は、DXを「先進のデジタル技術とデータを駆使して、革新的なサービスや具体的なビジネスプロセスの変革をもたらすもの」と定義づけています。
▼DXについて詳しく知りたい方はこちら
富士通とは|3つの特徴
富士通は日本を代表する総合ITベンダーです。富士通はICTサービス市場で国内No.1、世界でもNo.7の売上高を誇っています。
事業の幅広さ
世界180カ国で事業を展開し、約400社のグループ会社と連携しながらグローバルに事業を展開していることが富士通の強みです。
約13万人の 富士通グループ社員が、日本と海外拠点でシームレスに連携し、世界中の顧客を強力にサポートしています。
▶DX事業のポイントとは?|推進手順や使われる技術、促進ツールも紹介!>>
国内での高いシェア率
富士通は、IDC Japanが発表した2020年の国内のベンダーシェアランキング(企業情報システム向けのサーバー/ストレージ製品)で1位に輝きました。
ベンダーシェアは、富士通、NEC、デル・テクノロジーズ、HPE、日立製作所、IBMの順となりました。2020年のサーバー/ストレージ市場は前年比5.4%減となり、COVID-19の流行に伴う経済活動の停滞によって低迷する中、上位6社で富士通とデルの2社のみが前年比成長率はプラスとなりました。
DX推進に注力
富士通は2020年10月、全社のDXプロジェクト「Fujitsu Transformation」(通称:フジトラ)を始動しました。
富士通はこのプロジェクトに2023年3月までの3年間に1000億円を投資します。新事業の創出、既存事業の収益性強化、業務プロセスの効率化、人事制度や働く環境などが変革の対象となります。
自社の変革を進める中で得たノウハウはサービスやソリューションに反映し、顧客に提供する見通しです。
▶「DX推進」の概要や必要性、成功事例についてはこちらで詳しく解説しています>>
富士通が提供する4つの分野別DXソリューション
製造DXソリューション
富士通が提供する製造業におけるDXソリューションのひとつとして、AIで音響や振動データを分析し、正常性を監視するCOLMINA音響分析診断があります。
これまで、製造業では熟練者が音や振動の違いを感じ取り、正常性を判断していました。しかし、個人差による結果のばらつきや、点検時の振り返りが困難などの課題がありました。
COLMINA 音響分析診断では、音響データや振動データを収集し、AIで解析・診断することで、作業者のスキルに依存しない正常性の監視が可能です。
製薬DXソリューション
富士通が提供する製薬業におけるDXソリューションのひとつとして実消化ソリューションがあります。実消化とは、医薬品メーカーにおける卸経由の製品販売実績のことです。
卸から医療機関、調剤薬局に納入された実績を意味する実消化データは、販売実績管理、分析、戦略策定等のマーケティング業務や人事業績評価等、医薬品メーカーにおける重要な指標の基礎データとなります。
これまで、医薬品メーカーでは、医薬品卸より入手した販売実績データを、自社で活用できる形に変換処理する仕組みを、各社ごとに構築、運用していました。
実消化ソリューションとは卸の納入情報を製薬会社の実績評価や生産計画、拡販活動のために収集し、製薬会社で扱うデータとして加工する仕組みです。
加工したデータによって、経営判断や営業戦略に有効な情報の「見える化」が可能となりました。
建設DXソリューション
富士通が提供する建設業におけるDXソリューションのひとつには、COLMINA 工事・メンテナンスがあります。
COLMINA 工事・メンテナンスは、施設台帳、設備情報、点検計画、保守・工事履歴などを「構造物カルテ」として統合管理することにより、維持メンテナンス業務の効率化、精度向上を実現します。
「構造物カルテ」は、構造物に対し様々な情報を関連付けたものです。構造物を基準として、構造物に関連する施設台帳、メンテナンス計画・履歴、コスト情報、関連資料など一連の情報を一元管理します。
また、自社だけでなくビジネスパートナーを含めた作業報告や申し送りなど、現場からの情報を直接収集することにより、情報が集約できます。
従来、大量の紙で出力していた作業指示、実績報告などについて、図面の添付、修繕履歴の確認をデータ上で管理できます。これにより、業務のペーパーレス化が実現できます。
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流通DXソリューション
富士通が提供する流通業におけるDXソリューションのひとつとしてBrainforce AIレジレスストアがあります。このサービスは、株式会社リクルートの社員向けコンビニエンスストア「BeeThere Go」に導入されました。
このシステムでは、カメラや棚に設置されているセンサーなどのIoT機器を駆使して、来店客の動きや購入商品を判別し、自動で決済を行います。
来店客は、アプリを事前にダウンロードし、クレジットカード情報を登録した後、アプリで表示されたQRコードを入口ゲートのセンサーにかざして入店します。
入店後の来店客の動きや購入商品は、店内に設置されたカメラや棚センサーなどを通じて収集されたデータをクラウド上のAIで処理することによって判別します。
これにより、来店客は購入したい商品を手に取り、そのまま退店するだけで自動的に決済が完了します。退店後に電子レシートがスマートフォンに送られるため、購入履歴を確認できます。
このシステムにより、レジ待ちストレスが無い、スピーディーな購買を実現するとともに、来店客と店舗の従業員との接触機会を減らし、安心で安全な購買空間を実現します。
これらの来店客向け機能に加え、月週日別の売上確認や日常的な商品の価格変更を簡単に管理Web画面から行える新機能を提供します。
これらの新機能により、来店客のニーズへの素早い対応や、売れ筋商品分析が容易になります。
また、店舗の従業員の作業をより省力化しながら、日々の売り上げに応じた柔軟な販売施策の実施が可能です。
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富士通のDXプロジェクト「フジトラ」とは
次に、3つの特徴で取り上げたフジトラについて、4点の具体的な施策を通して掘り下げていきましょう。
One Fujitsuプログラム|データドリブン経営
富士通は、「One Fujitsuプログラム」の計画を進めています。
ITを活用し、富士通グループ全体で「戦略」「組織」「制度ルール」「データ」「業務プロセス」「アプリケーション」「インフラ」の7点を標準化するという計画です。
これにより、1機能1システムを実現するとともに、標準化されたデータで「富士通のデジタルツイン」を作成することで、データドリブン型経営への全社的なシフトを目指します。
「Ridgelinez」(リッジラインズ)株式会社|DXを推進する富士通の新会社
富士通は、「Ridgelinez株式会社(リッジラインズ)」を設立しました。リッジラインズは、顧客視点に立ち、経営課題や事業課題など、本質的・根源的な課題解決に取り組んでいます。
また、国内外の幅広い企業とのパートナーアライアンスにより、富士通グループの製品や最適なテクノロジーによるDXを支援します。
リッジラインズは、オルビス株式会社とスマートエイジングを実現するパーソナライズスキンケアプロジェクトを発足し、肌測定を行うIoTデジタルデバイスによるパーソナライズスキンケアサービス『cocktail graphy (カクテルグラフィー)』を発表しました。
自宅にいながら、肌の状態を知ることができる『スキンミラー』
約5秒間肌に当てるだけで肌測定を完了させる小型のIoTデジタルデバイス『skin mirror(スキンミラー)』を開発し、自宅に居ながら肌の変化をいつでも正しく知ることができる体験を実現しました。
肌画像のAI解析技術とオルビス独自の肌解析理論によって肌の状態を解析し、撮影した肌画像や解析結果を専用アプリに自動連携することで、いつでも正しく肌の状況を確認することができます。
肌の状態に合わせて届く『3本のパーソナライズスキンケア』
肌状態を測定したデータを基に、ユーザーが居住する地域の天候データ、肌の悩み、生活習慣データなどを総合的に解析します。
数多くの組み合わせから選定された2本の美容液と1本の保湿液の計3本を月ごとに提供します。なお、肌の変化に合わせて3本の組み合わせがアップデートされるという仕様です。
専用アプリによる『自分の肌だけのお手入れ情報』
毎日届くおすすめのお手入れ情報、肌測定結果からのケア提案、季節ごとの肌の傾向を解析したレポートなど、継続性を高め習慣化へ導くストーリーを設計し、サービス開始後も改良し続けています。
こうした仕組みを通じて、従来の月額制サービスとは異なる「進化し続けるサービス」を実現しました。
株式会社DUCNET|富士通が出資する工作機械業界のDXを加速させる新会社
富士通、ファナック株式会社、NTTコミュニケ―ションズ株式会社の3社は、製造業のDXを支援する場をクラウドサービスとして提供する新会社「株式会社DUCNET(ディーユーシーネット)」を2020年11月に設立しました。
今後、ディーユーシーネットは「デジタルユーティリティクラウド」を利用する各企業のさらなるものづくり力の強化に貢献すること、並びに機械メーカーや機械ユーザー、商社、ITベンダーなどの参加各社が、サービス提供者でありサービス利用者になれるようなエコシステムの実現を目指します。
VOICEプログラム|お客様・従業員の声にもとづくDX推進
富士通は、フジトラの具体的な施策としてVOICEプログラム(VOICE)を始めました。このプログラムは従業員や顧客の意見を収集するための、全社員参加型プログラムです。
特定テーマに関する意見を収集して、業務データなどと組み合わせることで、課題発見などのインサイトを獲得するために用います。
回答時に従業員の所属や属性なども併せて収集されるため、データ集計の手間も省力化が可能です。既にVOICEは、新型コロナ感染症によるリモートワークの業務への影響や働き方、生産性についての従業員の意見を収集し、その回答を分析する試みを行なっています。
「富士通=DX企業」富士通の将来像
DX企業への転身を宣言した現在の富士通は、これまで見てきたようにDX事業の拡大を図っています。コンサルタントからDXシステム構築、運用までを一気通貫で提供するビジネスモデルを目指す富士通から目が離せません。
2021年7月、次世代のテクノロジーを統括する最高技術責任者として、古田副社長に代わって、IBM出身のVivek Mahajan氏が就任しました。日本IBMでインフラサービスなどを担当した経験もある彼がどのようなテクノロジーに注力するのかが注目されています。
また、Society5.0を目指す日本において、富士通がDX企業であるという認識はますます浸透するでしょう。
Society 5.0とは、仮想空間と現実空間を融合させた「超スマート社会」を実現させるための一連の取り組みのことを指します。これは、内閣府が『第5期科学技術基本計画』で提唱したことです。
このようなSociety 5.0を実現するには、富士通が理化学研究所と共同開発した、世界最高水準のスーパーコンピュータ「富岳」のようなスーパーコンピュータの力が不可欠です。
「富岳」はハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)インフラとして、ビッグデータの解析やAIとの融合で、仮想空間上で多様な分野における実現可能性を実証します。
富士通は、富岳単体ではなく、一連のソリューションをサービスとして提供していくことでしょう。このことは、同業他社との大きな差別化につながります。
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まとめ
今回は、富士通が提供するDXのソリューションから、富士通の社内改革「フジトラ」に沿って富士通が取り組むDX事業をいくつか紹介しました。
富士通に対してIT企業としてのイメージを抱えていたひとにとっては、そのイメージが覆るような取り組みだったのではないでしょうか。
今後、DXを活用した事業がさらに広がっていくことで、私たちの生活がSociety 5.0で述べられている「超スマート社会」により近づくことでしょう。