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2021.03.30

変革事例あり−DXに必要なビジネスモデル・ビジネスプロセスを解説

最終更新日:

あらゆる産業や企業にデジタルトランスフォーメーション(DX)のトレンドが押し寄せています。それとともに、経済産業省が「DX銘柄2020」を定め、デジタル技術を用いたビジネスモデル・経営変革に取り組む上場会社を評価しています。

その背景の中で、ITとの親和性が高い商品やサービスを扱っている企業はもちろん、一方でITと関連性の低い商品やサービスを扱っていた企業も、自身のビジネスモデルのデジタル化を検討・試行錯誤するようになりました。

しかし、ビジネスをDX化にするには相当な労力と時間がかかるだけではなく、新規ビジネスの立ち上げ、さらにはそれらによる競争優位の確立など具体的な戦略も立てないといけません。

この記事では、「DX×ビジネス」を推進する際に、成功できるビジネスモデル、取り入れるテクノロジー、また直面する課題を解説します。

DXとは

定義

スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱したDX(デジタルトランスフォーメーション)の定義は下記の通りです。

“人間の生活に何らかの影響を与え、進化し続けるテクノロジーであり、その結果、人々の生活がよい方向に変化する”

ここでいうDXには、2つの意味があります。

①デジタル技術の浸透により、人々の生活をより快適へ
②既存の価値観や枠組みを根本的に覆すような革新的なイノベーションへ

しかし、この概念だけだと実際に企業やビジネス面において、DXをどのように生かすべきか、具体的にイメージできません。

ビジネスにおける意義

日本経済産業省は、2018年に発行した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」にて、以下の定義をまとめています。

“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。”

つまり、「データやデジタル技術の活用を軸に、企業がいち早く外部環境・内部環境の変化を捉え、デジタルの力を使って最適な経営戦略に導くことによって、新しい価値創出することが重要になる」ということです。

このように、経済産業省によるDXの定義はビジネス視点に限定したものになっています。

▼DXについて詳しくはこちら

DXビジネス検定

DXがビジネスにおいて活発に取り入れられるようになり、最近では、DXビジネス検定が注目を集めています。

DXビジネス検定とは、日本イノベーション融合学会が認定する「DX」の知識を得られる民間資格です。 DXの基礎用語に加え、ビジネスモデルと企業DX事例を学習します。

スコア800以上で「DXビジネスプロフェッショナル レベル」認定、スコア700以上で「DXビジネスエキスパート レベル」認定、スコア600以上で「DXビジネススタンダード レベル」が認定されます。この資格は2年間有効です。

従来のビジネスモデル

ビジネスモデルの定義

ウィキペディアによると、ビジネスモデルは以下のように定義されています。

“利益を生み出す製品やサービスに関する事業戦略と収益構造を示す用語である。”

あらゆる企業にとって、優れたビジネスモデルを構築することは持続的成長を実現するために必要になります。

ビジネスモデルの考え方

競争環境が激化する現在の市場環境では、「誰に」「何を」「どうやって」について、企業特有のコア・コンピタンスを構築する必要があります。以下は、プロセスの一例です。

①どの顧客にどんな価値提供するか
→ターゲットを絞る
②その価値をどのような方法で提供するか
→対価に見合う価値を具現化する
③必要となる経営資源が集まれているか
→経営資源を揃える
④どのような収益モデルで対価を得るか
→競争優位性、市場規模・成長性予測に基づく収益構造を明確にする

従来のビジネスモデル:大量生産

高度経済成長期から企業は、商品を大量生産するようになりました。大量生産が頻繁に行われていたとき、企業は製品がより売れるよう、モデルチェンジをたびたび行ったり、耐久性よりも利便性やデザイン性を重視した製品を作ったりしました。

企業が大量生産をするようになったのは、大量生産というビジネスモデルに以下のようなメリットがあるからです。

  1. 限界費用を削減できる(低価格で商品を提供)
  2. 商品によって品質のムラがでにくい
  3. 効率的に商品を生産できる
  4. 市場に流行の商品をすぐ提供できる

多くのメリットがある大量生産ですが、それと同時に大量消費によるゴミの増加や環境汚染などの問題にもつながります。

近年では「大量生産・大量消費・大量廃棄」でなく、「最適生産・最適消費・最小廃棄」の社会経済システムを構築し、持続可能な循環型社会を目指そうという思想が広がっています。

DX × ビジネスモデル

近年、グローバル化やIT技術の発展、顧客ニーズの多様化、大量消費からなる社会問題などにより、これまで企業の成長を支えてきた大量生産時代は終焉を迎えつつあります。今後、持続的に企業が成長・市場拡大するためには、ビジネスモデルの変革が求められるでしょう。

しかし、今後どのようにビジネスモデルを変革すればいいのかわからない方も多くいるはずです。そこで、ここからはDX時代に成功するビジネスモデルを5つ紹介していきします。

XaaS

ここ数年あらゆるものが「as a service化」(略称:XaaS)し始めています。XaaS化とは、商品やサービスをクラウド経由で提供し、オンラインでサービスを提供することを指します。後述するMaaS、SaaS、など、「as a service」の頭文字「X」の部分に、それぞれの仕組みを意味する単語の頭文字を置き換えて略して表現しているのが一般的です。

SaaS(サース)は、「Software as a Service」の略語です。直訳すると「サービスとしてのソフトウェア」です。

例えば、コミュケーションツールのSlack(スラック)、顧客管理(CRM)や営業支援システムとして米国のSalesforce(セールスフォース)などが挙げられます。

 

MaaS(マース)は、「Mobility as a Service」の略語です。直訳すると「サービスとしてのモビリティ」です。

ICT を活用して交通をクラウド化し、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)をひとつのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな「移動」の概念です。例えば、米国の自動車配車プラットフォームのUber(ウーバー)、中国の大手ライドシェア企業「滴滴出行(ディディチューシン)」などが挙げられます。

 

IaaS(イァース)は、「Infrastructure as a Service」の略語です。直訳すると「アプリケーションを開発・利用するためのインフラとしてのサービス」です。

仮想サーバーやハードディスク、OSはネットワークをクラウド上で提供するサービスです。例えば、Amazonが提供する「Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)」、マイクロソフトが提供する「Microsoft Azure」が挙げられます。

XaaSであるかを判断するための視点の一つは、お客様との接点を「定常的に」持っているかどうかです。また、場所に制限がないだけではなく、ネット環境が整っていれば複数人での利用が可能な点も、XaaSならではの特性です。

D2C

「BtoB」や「BtoC」といった、既存の取引形態を表す言葉には収まらない新しい取引の形として、「D2C」という新しいビジネスモデルが近年増えています。D2Cは、コト付きのモノ消費とも呼ばれ、世界観を構築するブランドが多く取り入れているビジネスモデルです。

「D2C」とは「Direct to Consumer」の略で、”消費者に対して商品を直接的に販売する仕組み”のことを指します。つまり、自社で企画・製造した商品を、ECサイトなどの自社チャネルで販売するモデルのことです。

ソーシャルメディア(SNS)やECサイト、直営店舗で消費者とコミュニケーションをとり、生産した商品を販売します。

D2Cのメリットは3つあります。

①売り手のビジョンを顧客に直接届く
ブランドの世界観やヴィジョンをそのまま製品化することが多いため、D2Cは自社の大切にする価値観(ヴィジョン)を、伝えたいターゲット消費者に誤解なく伝えられます。②顧客と良好な信頼関係が構築する
顧客とのコミュニケーションを図りやすいD2Cには、ブランドに対するコアなファンを獲得しやすいという長所があります。企画・製造に加え、販売も自ら行えるため、顧客との関係構築の機会を増やすことも可能です。③顧客データ・意見の元に商品開発できる
顧客データや商品フィードバックを元にした、密度の高いデータを分析することで、より精度の高いマーケティングメソッドを生み出すことができます。

「D2C」アパレルブランドや美容化粧品ブランドの多くが採用している形態で、ここでは先駆者企業として「Glossier」の成功事例を紹介します。

創業者のワイス氏は「Glossierのポイントを、日々利用する製品に対する声を聞くという民主化された美しさ」と語っており、顧客とオープンな会話の機会を設けることでそれを実現しています。

Glossierは、コンテンツ性の高いSNSや人気のインフルエンサーを駆使したWEBマーケティングで自社のECサイトに多数の顧客を集客し、ブランド戦略や商品開発に役立てられるだけでなく、ユーザーを巻き込み共創することで、ブランドへのロイヤリティーを高めてきました。

そしてGlossier のSNSは、ブランドの良さを自主的に発信し広めてくれるコミュニティへと進化していき、大きな成功を収めました。Glossierがここまで成長できたのは、同社がD2Cビジネスモデルを用いて顧客と共に成長し、顧客と共にコミュニティを創りあげてきたきたからに他なりません。

サブスクリプション

今まではサービスや製品を一回ごとに売り切るビジネスモデルが中心でした。しかし近年では、売り切りではなく、サービスや製品を利用した期間や利用量に対して対価を支払う課金提供型の「サブスクリプションビジネス」に注目が集まっています。

サブスクリプションサービスは、利用できるコンテンツの内容に応じてプランや料金が決められており、料金を支払っている期間中なら、いくらでもサービスを受けられます。

また、料金プランやオプションなどを好みや目的に合わせて決められるため、単なる定額制サービスに比べ、より顧客満足度の高いサービスを提供できる点も、サブスクリプションの特徴です。

サブスクリプションには多くのメリットがありますが、ここではその中でも事業者にとって重要な3つのメリットを紹介します。

①新規顧客の獲得
通常の商品販売の場合、ユーザーは商品単価の満額を支払う必要があるため、商品によっては単価が高くなりすぎてユーザーが利用してくれないケースがあります。しかし、サブスクリプションを利用することで、初期の導入コストを引き下げられ、新規顧客を獲得しやすくなります。②顧客リストやデータの活用
ユーザーの属性や利用状況について、詳しいデータを獲得できます。また、データを分析することで、より正確にユーザーのニーズを把握し、サービス改善に生かすことが可能です。その結果、ユーザーの満足度を高めて解約率を下げることが期待できます。③継続的な売上が得られる
ビジネスの世界で売上の最大化は常に考えないといけません。サブスクリプションは継続型の課金ビジネスなので、「ユーザー数×定額料金」という計算式で売上が試算できます。つまり、サブスクリプション最大のメリットは、安定した利益が得られることだと言えます。

サブスクリプションは「XaaS」に取り入れられることが多く、さまざまな業界で展開されています。成功事例としては、世界最大手音楽配信サービス「Spotify」、クラウドベースのCRM「Salesforce」、流通、書籍、音楽、映画などパッケージ化された「Amazon」などが挙げられます。

マス・カスタマイゼーション

マスカスタマイゼーションとは、生産や販売のボリュームを活かしつつ(大量生産)、個々の顧客のニーズに合わせた製品・サービスを販売すること(カスタム化)です。

製造業をはじめ多くの業界がマスカスタマイゼーションの導入に乗り出しています。このビジネスモデルが求められる背景として、3つの理由が考えられます。

①顧客ニーズの多様化
情報が手に入れやすくなったとともに、顧客のニーズも多様性しました。しかし、企業が市場競争力を保つためには、さまざまな顧客のニーズに対する迅速な対応が必要です。②コモディティ化による市場製品価値の低下
コモディティ化が進む市場ではは、顧客が商品に付加価値を感じないため、製品価値の低下に至り、低価格競争になりがちです。市場で競争していくためには、価格以外の価値を顧客へと提供する必要があります。③受注生産のリードタイムを短縮する必要性
細かい要求に応える受注生産は、企業が顧客に提供できる価値の一つです。リードタイムによって販売機会を逃してしまうケースも考えられるため、効率的に受注生産に対応できるシステムの確立が求められています。

ここで例として挙げられるのは、ドイツBMW社のコンパクトカーブランド「MINI」です。自動車の内外装パーツを顧客が自由にカスタマイズして発注可能なサービス「MINI Yours Customized(ミニユアーズカスタマイズ)」を2018年に開始しました。

同サービスでは、顧客がウェブベースの「カスタマイザー」を通じて、インテリアトリムやLEDドアトリムといった定番ドレスアップアイテムのカラーやパターンを、独自にデザインできます。デザインデータはドイツにある施設に送られ、IoT、3Dプリンタやレーザー加工機によって正確に再現することが可能です。

シェアリングエコノミー

シェアリング・エコノミーは「インターネット上のプラットフォームを介して個人間でシェア(賃借や売買や提供)をしていく新しい経済の動き」だと定義されています。要するに、インターネットを通じて、モノや場所、スキルや時間などを共有する経済の形です。

一般社団法人シェアリングエコノミー協会調査によると、2030年にはシェアリングエコノミーの市場規模が14兆円を突破すると予測されています。

ネットとスマートフォンの普及により、ユーザーは時間や場所に縛られずに、サービスを利用することが可能になりました。また決済プラットフォームが進化し、オンラインなど料金の回収が可能になったことも、シェアリングエコノミーが普及した背景だと考えられます。

シェアリングエコノミーの根本的なビジネスモデル、実は遊休資産を持つ提供者とそれを利用したいユーザーのマッチングです。

また、事業者が個人にサービスを提供するBtoCの形態ではなく、個人間で取り引きを行うCtoCのやり取りや取引を前提としています。提供者とユーザーがマッチングするのは、Web上のプラットフォームで、事業者はこのマッチングプラットフォームを運営し、ユーザーの取り引きに直接的に関わることはありません。

シェアの対象となるものの中で、とりわけ大きな割合を占めるのが、「モノ」「スペース」「移動」この3つです。「モノ」には中古品を売買するフリマアプリ(メルカリ)やアパレルのシェアサービス、「スペース」には民泊、コアワーキングスペースのほか、店舗の一部や駐車場を貸すサービス、「移動」には自動車や自転車のシェアサービスなどが含まれます。

最近では、リアルに存在しているモノやコトを超えた、「スキル」のマッチングも現れています。

事業者側から見たシェアリングサービスのメリットは以下の3つです。

①遊休資産の有効活用
利用頻度の低い「モノ」や「コト」などの遊休資産を有効活用できる点です。遊休資産を活用することで、購入などの初期投資なしで収入を増やすことができます。

②新たな価値、ビジネス創出
シェアリングによって利用者の生活における利便性が高まるだけでなく、経済成長にも繋がります。例えばスキルや人材のシェアは、家事育児で外に出て働くことが難しい人や、柔軟性の高い働き方を求めている人の雇用機会を創ります。

③コスト削減
これまで所有することが当たり前だった車や家をシェアすれば、借りる側はモノを購入する必要や、購入したモノを維持・管理するためのコストの必要がなくなります。

現在、デジタルプラットフォームの構築により、「格安」「手軽」「好きなときに」といった付加価値が加えられることで、シェアリングエコノミーが広く普及しています。

DX時代のビジネスモデルの価値観

DXの普及に関連するビジネスモデルの価値観はどのような要素があるか見ていきましょう。

CX(UX):顧客体験重視

ビジネスの現場では「顧客体験」、「CX」や「UX」などの顧客体験を重視することで、顧客の総合的な満足度が高まり、売上の向上と市場拡大につなげられます。

顧客体験CX(Customer Experience)とは、顧客が商品やサービスに興味を持った段階から調査・検討を経て購入、使用、購入後のアフターサポートに至るまでの、顧客が商品に接する流れのなかのすべての体験です。

CXの概念は、アメリカの経営学者バーンド・H・シュミット氏によって提唱されました。シュミット氏は、顧客体験を感情的な価値を「Sense(感覚的価値)」「Feel(情緒的価値)」「Think(知的価値)」「Act(行動、ライフスタイルにかかわる価値)」「Relate(社会的経験価値)」の5つに分類しています。

現在、顧客はSNSを中心に購入商品や売り手の評価を容易に発信できるため、顧客接点の多様化・複雑化により、企業にとって顧客体験の再構築はますます重要となってきました。

以下、3つのステップを紹介します。

①多くの顧客接点持つ
特定の商品・サービスを提供する際、「EC」「リアル店舗」「アプリ」「SNS」など顧客がアクセスするチャネルや窓口を増やすDX施策が必要です。②得られた情報、データから深い洞察を導き出す
先進的AI技術の適用やデータの価値化を通じて、従来の顧客属性や購買行動だけでなく、アプリ、Webサイト、購入履歴、検索キーワードなどのデータを分析し、顧客が無意識で行動する指針となる知的興味や関心に着目し、「どんな生活をしたいか」「どんな関心があるか」まで顧客の深い洞察して、それに刺さるサービスの提供が重要です。③個客ごとにカスタマイズされた体験を提供する
データに基づいて、深い顧客理解ができ、さまざまな個客との接点において最適化された体験をデザインすることが必要です。

伝統の壁を打ち壊す

現在、技術は急激に発展し、社会環境もあわせて急激に発展しています。ビジネスモデルの取り組みを開始するにあたって、まず先進事例を調べようとする人も少なくないでしょう。

しかし、デジタル活用やDXを推進するための方法論や成功の形が定まっているわけではありません。自社や他社の過去の成功体験がそのまま通用するだけでは、市場のプレイヤーの競争が激しくなり、生き残るのは困難です。そのため、企業は新規ビジネスモデルへの研究や挑戦も欠かせません。

もちろん先行する取り組みを参考にすることは無駄ではありませんが、「前例や成功事例がなければ挑戦しない」という姿勢にならないように留意する必要があります。

ここでは、伝統の壁を打ち壊して、小売業界のオンラインとオフラインを融合した新しい販売アプローチを紹介したいと思います。

中国から誕生した「ライブコマース」は、ユーザーとインタラクティブに繋がることが可能な新たなECの形としてすでに中国で一般的な販売手法となっていますが、日本ではまだ普及していません。

「ライブコマース」とは、ライブ配信とECを組み合わせた新しい販売形態です。ライブ配信に参加したユーザーがすぐに商品を購入できるようになっており、専用のプラットフォームもしくは自社のECサイトやSNSアカウント上で配信しながら接客も行います。

ライブコマースの長所は、コメント機能を活用してリアルタイムで質問できるということです。消費者はコメントで質問することにより、商品の特徴を詳しく知れます。また、映像で使用感や雰囲気を確認できるため、直感的な購買意欲を逃さない点もライブコマースの魅力です。

生活者のデジタル浸透度が急速に深まったアフターデジタル時代において、伝統的なビジネスモデルに拘りすぎず、新しい事業形態にチャレンジしていきましょう。

DX×ビジネスに必要なテクノロジー

AI×データ

現在、データを扱う技術のなかで、特に注目されているのがAIです。中でも、大量のデータから自律的にパターンを学習する機械学習の技術が注目されています。

DXにおけるビジネスモデルを実現するには、デジタル技術だけでなく「データの利活用」が重要です。AIは過去の時系列データ(時間軸に沿って表されたデータ)を学習することで、未来の数値などを予測できます。現在、店舗の売上や、株価、在庫量など、さまざまな場面でAIによる予測が活用されています。

データを分析し予測することで、人的コストが大幅に削減される点もAI予測の魅力です。企業は、これまで使っていた人的コストを他の部分に費やすことが可能になるため、事業を拡大しやすくなります。

実際に、多くの企業では収集された膨大なデータを活用し、AIを用いることで、競争優位性を確立しています。

▼DXとAIの関係性について詳しくはこちら

5G

5Gはあらゆるデバイスがインターネットにつながり、高速でデータをやり取りするIoT時代の主役とも言える技術です。

超高速、大容量、多数同時接続、超低遅延通信などの特徴がある5Gは、自動車、工作機械や製造装置、医療機器、交通インフラ、監視カメラなど、さまざまな分野への活用が期待されています。

この活用領域の多様さと、そこから膨大なデータを収集しリアルタイムで利活用できることが、ビジネスにおける5Gの最大の特徴です。5Gは、企業にとってDXビジネス推進のドライバーとも言えます。

クラウドサービス

クラウドサービスは、従来は利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由で、サービスとして利用者に提供するものです。代表的なものとしては、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureなどが挙げられます。

近年、多くの企業がクラウドサービスを利用しており、世間からも注目を浴びるようになりました。

企業がクラウドサービスを利用するのは、以下のメリットがあるからです。

1,コストを抑えられる
クラウドと対になるオンプレミスの場合、自社でサーバーや通信回線などを揃える必要があるため非常に多くのコストがかかります。しかし、クラウドはネットワークを経由して情報を管理できるため、サーバーの購入やシステム運用の必要がありません。

そのためクラウドは、オンプレミスに比べて初期費用を大幅に削減できます。

2,運用負荷を軽減できる
クラウドは、自社でサーバーや通信回線、それに付随した機材をメンテナンスする必要がないため、インフラの運用負荷を軽減できます。

オンプレミスの場合、システムに問題が発生すると早急に対応しなければならないのはもちろん、改善の際にコストがかかります。そういったリスクがない点もクラウドの魅力です。

3,短期間ではじめられる
オンプレミスの場合、新たにサーバー環境を導入しようと思ったら、ゼロの状態から設計・開発・テストなど、利用開始までに多くの段階を踏む必要があり、期間も数ヶ月かかるのが当然です。

しかし、クラウドの場合、すでにサーバー環境があるためすぐに導入できます。特にDX化したビジネスはスピードが重要であるため、素早くサービスを利用できるのはクラウドの大きなメリットだと言えます。

DXによる3つの先端ビジネスモデル・DXビジネスモデル変革事例

飲食:スターバックス

飲食業界ではブームに乗る気風が強く、食材やメニューが流行ると、こぞって後追いが出てくるという姿が今までは見られました。しかし、SNSの広まりとともにブームの拡散・収束がこれまで以上にサイクルが早くなり、ブームの後追いをしていては波に乗れず、かえって損失が出てしまうようになっています。

そのため、「その店でしか食べられない」「よそとは一味違う」独自性の強いメニューを持つお店は、新規・リピーターを獲得し顧客を強く囲い込むことに成功しています。。

ここで成功ケースとして挙げられるのはスターバックスです。

独自のコンセプト”Third Place”「家庭でもなく職場でもない第3の空間」、落ち着いたおしゃれな店舗の内装、常に季節ごとに新しいメニュー、ドリンクのカスタマイズ化などの戦略で、スターバックスは独自のブランド力を作り上げ、差別化戦略に成功しています。

また、同社は顧客体験にも力を入れており、2019年にモバイルオーダーサービス「Mobile Order & Pay(モバイルオーダー&ペイ)」を立ち上げました。顧客は専用アプリで事前に注文と決済を済ませておけば、指定した店舗で出来上がったドリンクを即座に受け取れます。サービス開始後、月間の利用者数は3倍に拡大しました。

▼飲食DXレポートはこちら

小売:Zoff

大手メガネブランド「Zoff」を運営する株式会社インターメスティックは、メガネに新たな価値を生み出そうとしています。これまでメガネは、単なる視力矯正器具にすぎませんでした。

しかし同社は、メガネを人間のパフォーマンスを向上させるためのアイテムにするべくZoff Eye Performance Studio(以下、ZEPS)」を設立し、メガネの新しい価値創出に取り組んでいます。

Zoffは、まず自社のECサイトを立ち上げてオムニチャンネルを始め、今はOMOモデルも実行しています。自分の視力は覚えていても、今持っているメガネの度数やレンズの種類まで覚えている人は少ないことから、それらの情報をECサイトと紐付けるシステムを取り入れました。

リアル店舗で購入した眼鏡の度数やレンズの種類、以前はどこでどの眼鏡を買ったかといった情報がECサイトと紐づけられています。そのため、ログインすれば新たに情報を入れ直さなくても、自分が使っているメガネの度数が分からなくても、サイトに自動で情報が反映されるシステムになっています。

▼Zoffの事例について詳しくはこちら

▼小売DXレポートについて詳しくはこちら

不動産:「ADDress」

全国住み放題サービス「ADDress」は、月額料金を支払えば全国の古民家や空き家に住める、住まいのサブスクリプションサービスです。

ADDressが提供する各拠点は、地方の空き家や遊休別荘を募って購入またはサブリースで確保し、リノベーションしています。住まいには、共有のリビング・キッチン、家具、Wi-Fi、光熱費、アメニティーなどが完備されており、料金内で清掃まで提供しています。

ユーザーは手頃な価格で拠点を利用でき、拠点のサプライヤーは空き家から収入が得られる点がADDressの魅力です。

ADDressには多くの企業がパートナーとして協力し、2019年よりサービスを開始しました。ADDressは、現在でもなお根強い新築信仰社会へのチャレンジという意思が込められており、ひいては現在問題視されている「空き家問題」の解決法としても期待されています。

他にも遠隔地の空き家に対し、VR・3Dカメラ・オンライン技術等を活用した物件情報の提供・内覧サービスの効果実証などの対策案があります。

▼不動産DXレポートはこちら

DX化にいてビジネスプロセスを改革するには

DXにおいてビジネスプロセスを改革する3つのステップを紹介します。

業務改善を設計

まずは、業務改善を設計します。業務において効率化できていない部分や従業員への負担が大きい業務を洗い出しましょう。洗い出した業務の中で取り組む優先順位を決めます。

DXに必要とされる人材を確保

業務改善が設計できたら、DXに必要とされる人材を確保します。
ここではDXに必要とされる主な人材5つを紹介します。

プロデューサー

プロデューサーは、DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー人材(CDO含む)です。

ビジネスデザイナー

ビジネスデザイナーは、DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担います。

アーキテクト

アーキテクトは、 DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計します。

データサイエンティスト/AIエンジニア

データサイエンティスト/AIエンジニアは、DXに関するデジタル技術(AI・IoT等)やデータ解析に精通した人材です。

UXデザイナー

UXデザイナーは、DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当します。

エンジニア/プログラマ

エンジニア/プログラマは、上記以外にデジタルシステムの実装やインフラ構築等を担います。

参考:独立行政法人情報処理推進機構「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」

業務改善実行

業務改善が計画でき、DXに必要とされる人材が揃ったら、業務改善を実行しましょう。

改善計画を実施し、終了したら評価します。

日本企業がDXビジネスモデル構築する際の課題

これまでの日本企業において、ITやデジタル活用はあくまで業務の効率化とコスト削減を目的に進められてきました。その結果、顧客体験重視や新規ビジネスモデルの創出でのDX推進には他国と比べて一歩で遅れていると言われます。

また、DXビジネスモデルを進めるにあたってDXに特化したIT人材の不足も課題となっています。デジタル技術の進展とビッグデータの活用、そしてグローバル市場の競争激化という背景から、今後はより一層顧客のニーズや満足度のためにDXの推進をしていくために、DX人材の育ちもいち早く意識すべきです。

以上のように、表面上のデジタル化ではなく、ビジネスモデルから組織まで、より本質的なデジタルトランスフォーメーションが日本企業には求められています。

▼DX人材について詳しくはこちら

まとめ

アフターデジタル時代を生き抜くためには、現代に即したシステムやビジネスモデルを展開し、価値を新たに生み出すと同時に、競争上の優位性を得ることが重要になります。

デジタルを使ってトランスフォーメーションを仕掛け、新しい戦い方を繰り広げていき、根底にあるビジネスモデルの変革が必要です。

それは、データ分析やデジタルツールの導入にとどまらず、経営戦略として、いかにビジネスモデルの変革を目指していくかを常に挑戦して実行していきましょう。それが実現できれば、はじめて「ビジネスモデル×DX」が実現できると思います。

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