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パナソニック(Panasonic)は言わずと知れた日本の大手家電メーカーで、設立から100年以上の歴史を持つ企業です。
海外にも広く家電やサービスを展開し、地域別売上における海外の割合が57%(2021年度実績)にのぼるなど、グローバル企業としても知られています。
そして、パナソニックは現在AI(人工知能)の開発に力を入れており、家電やサービスにその技術を応用し、「より良い暮らし」を追求しています。
本記事では、パナソニックが行うAI開発の分野や活用事例の紹介、企業の将来性について解説しますのでぜひ最後までご覧ください。
目次
パナソニックとは
まず、パナソニックの
- 企業概要
- 経営基本方針
- 沿革
をご紹介します。
企業 | パナソニックグループ |
創業 | 1935年(昭和10年)12月15日(松下電器産業株式会社) |
設立 | 1918年(大正7年)3月7日 |
所在地 | 大阪府門真市大字門真1006番地 |
代表 | 代表取締役社長執行役員CEO :楠見雄規 (パナソニックホールディングス株式会社) |
社員数 | 連結:24万3540人(2021年3月末時点) |
売上高 | 連結:6兆6987億9000万円(2021年3月期) |
資本金 | 2587億4000万円(2019年度時点) |
経営基本方針(バリュー)
パナソニックは、経営理念に基づいて事業を進めています。経営理念とは、事業の目的と事業活動の基本的な考え方であり、パナソニックが掲げる「綱領」「信条」「私たちの遵奉すべき精神」に力強く表現されています。
パナソニック株式会社のHPには、その「綱領」「信条」「私たちの遵奉すべき精神」が記述されているページがあるので、気になった方はそちらも読んでみてください。
▼パナソニックグループの経営基本方針は以下の公式HPから
綱領 – パナソニックグループの経営基本方針 – パナソニックグループの経営基本方針 – パナソニック ホールディングス (holdings.panasonic)
またPanasonicという社名は、1955 年に輸出用スピーカーの名称として、Pan(汎、あまねく)とSonic(音)という言葉を 組み合わせ、「当社が創りだす 音をあまねく世界中へ」 という思いを込めて産まれました。
その後Panasonicは、グローバルブランドとして、幅広い地域・商品で使用されていましたが、2008年よりコーポレートブランドとして、2022年からはグループブランドとして位置づけられています。
沿革
1917年6月 | 松下幸之助が大阪府東成郡鶴橋町大字猪飼野(現・大阪市東成区玉津二丁目)の借家で電球用ソケットの製造販売を始める。 |
1918年3月7日 | 大阪市北区西野田大開町(現・大阪市福島区大開二丁目)に移転。松下電気器具製作所を創立する。 |
1927年 | 自転車用角型ランプを販売。この商品から、「ナショナル(NATIONAL)」の商標を使用しはじめる。 |
1935年12月 | 松下電器産業株式会社(まつしたでんきさんぎょう、Matsushita Electric Industrial Co., Ltd.)に改組、松下電器(後の松下航空工業、パナソニック電工)、松下無線、松下乾電池、松下電熱、松下金属、松下電器直売など9分社を設立 |
1952年 | オランダのフィリップス社と提携し、松下電子工業が誕生。 |
1964年 | 『熱海会談』が行われる。系列店への熾烈な販売ノルマやテレビの不良品などが問題化し、3日間に渡って紛糾。幸之助が会長兼営業本部長代行としてトップセールスに復帰する契機になる。 |
1965年 | 熱海会談の後、社運を賭けた大改革として、「新販売制度」を導入した。新販売制度の骨子は、(1)全国的な販売会社網の整備と充実(2)営業所を経由しない「事業部直販制」(3)新月販制度である |
1971年 | 「PANASONIC」ロゴを、「Panasonic」へ変更。同年には、ニューヨーク証券取引所に株式を上場。 |
2003年5月 | グローバルマーケティング力とブランド価値の向上を目指し、グローバルブランドを「Panasonic」に統一するとともに、グローバルブランドスローガンを「Panasonic ideas for life」とすることに決定した。 |
2008年10月1日 | パナソニック株式会社に商号変更。企業グループ名もパナソニックグループとなった。併せて、ブランドを全世界でPanasonicに統一 |
2011年4月 | パナソニック電工と三洋電機を完全子会社化。この再編に基づく新体制は、両社完全子会社化の翌年2012年1月にスタートした。 |
2013年9月4日 | 新たなブランドスローガン「A Better Life, A Better World」を掲げ、事業部基軸の4カンパニー制(「アプライアンス社」「エコソリューションズ社」「AVCネットワークス社」「オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社」)がスタート |
2017年10月2日 | パナホーム(現・パナソニック ホームズ)を株式併合により完全子会社化。 |
2020年11月13日 | 2022年4月を予定として持株会社体制へ移行し、パナソニックホールディングス株式会社へ商号変更すること、これに先駆け2021年10月を予定として、現行の社内カンパニー制を廃止し事業再編を行うことを発表。 |
2022年4月1日 | 持株会社体制へ移行し、パナソニックホールディングス株式会社へ商号変更。 |
株価
パナソニックの株価
パナソニックの株価は3月のウクライナ侵攻により、一時1000円ほどに落ち込みました。
しかしそこから持ち直し、一時1200円ほどまで回復しました。
2022年7月13日現在は、配線機器の値上げを発表した影響により、株価1110円ほどで推移しています。
Panasonic×AI – パナソニックのAI開発分野・活用事例
パナソニックのAI開発分野・活用事例は多岐に渡りますが、この章では3つご紹介します。
それぞれ解説していきます。
①データ分析
パナソニックのデータ分析技術は、主にエアコンの「エオリア」シリーズに採用されています。
例えば、搭載された「AIおまかせ快適」運転を作動させると、季節や屋外・屋内・設定の各温度に応じて、運転モードを自動的にエアコンが選択し、温度と湿度を調節します。
さらに、「お部屋学習機能」は運転するごとにその部屋のエアコンの効きを解析、蓄積し、部屋の特徴に合わせて運転を調節します。
そのほかにも、ウェザーニュースの天気予報と連携して、未来の温度変化に応じた部屋の暖め方に自動で調整するなど、データ分析を駆使した製品を開発しており、今後もデータ分析を用いた家電の製造が見込まれます。
②音声・言語
パナソニックの自然言語処理技術は、複数のサービスに採用されていますが、今回は通訳なしでの対面接客をサポートする「対面ホンヤク」をご紹介します。
このサービスでは、接客の際に互いが対面しながら、それぞれのマイクに向かって話しかけ、機械が翻訳した音声を再生します。
ちなみに、翻訳した外国語を日本語に逆翻訳した結果も表示されるので、どのように翻訳されているかを確認できます。
さらに、業界や現場独自の固有名詞の登録や、よく使うフレーズの登録、呼び出しを簡単に行うことができ、現場に合わせたカスタマイズが可能です。
そして、このサービスの仕組みは次の画像の通りです。
発話音声データを翻訳エンジン(みらい翻訳[NICTベース])に送り、そこで音声認識、翻訳、音声合成されたデータが端末に送られ、機械が出力するという仕組みです。
アフターコロナで外国人観光客の増加が見込まれる中、こうしたサービスの需要が今後高まっていくでしょう。
③生体データ分析
パナソニックの生体データ分析は、現場のケア品質の向上と業務負担の軽減を目的として介護の現場にも用いられており、「ライフレンズ」というサービスに採用されています。
具体的には、AI処理ができる「ビューレカ」というカメラやバイタルセンサーによって、介護施設の入居者の体調の異変や様子の変化を、遠隔で把握できます。
蓄積したデータを活用し、人員負担に配慮した介護プランを作成することも可能となります。
さらに、パナソニックはこの生体データ分析を進化させ、AIが映像やセンサーを分析し、随時介護スタッフに報告するような「Smart Aging(スマートエイジング)」のコンセプトも発表しています。
したがって、今後もますます介護分野におけるパナソニックのAI研究が進むと見込まれています。
Panasonic×AIが今、最も力を入れる顔認証技術
パナソニックの顔認証は、長年培ってきた画像認識の技術に加え、ディープラーニングの技術を応用しています。特徴としては、顔の⾓度の違いや経年による変化、メガネやマスクをしていても、世界最⾼⽔準(NIST公式の評価レポート)の精度で顔を認証することができることです。
そのため、コロナ禍において、マスクを着けることがスタンダードになった今日、パナソニックの顔認証技術が様々な施設やイベント会場で導入されています。
例えば2022年3月から、東京ドームにおいて、顔認証クラウドサービスの「KPAS」を採用した「facethru(フェイスルー)」という新サービスが導入され、顔認証による入場・決済が可能となりました。
具体的には、事前に顔写真やクレジットカード情報を登録し、会場に設置された端末のカメラで認証を行うことによって、マスクをしたままでの入場・決済が行えるようになりました。
それらによって、接触機会の削減(感染リスク低減)や待ち時間の削減、なりすまし入場の防止などの効果を生みだしています。
パナソニックの将来性(成長可能性)
結論から言うと、パナソニックのAI開発は将来性が十分あるといえるでしょう。
なぜなら、パナソニックはソーラーパネルや液晶パネルなどの構造的赤字事業から撤退すると発表した一方、AI開発には成長に向けた投資として、今後ビジネスモデルの確立に向けた施策を行うと中期戦略において発表しているためです。
そして、パナソニック本体が開発するAI以外にも、2021年に完全子会社化したBlue Yonder社の機械学習を用いたソフトウェアプラットフォームにも力を入れると表明するなど、今後もますますAI分野への研究・投資に力を入れていくでしょう。
さらに、パナソニックは先ほど紹介したマスクをしながらの顔認証や介護負担を軽減するための生体データ分析のサービスに力を入れるなど、コロナや介護といった日本社会が抱える問題をAIによって解決しようとするビジョンを打ち出しています。
したがって、今後も日本における社会問題をAIによって解決しようとするパナソニックには注目が集まるでしょう。
パナソニックグループの採用情報
パナソニックグループの募集職種や給与などの関しては事業会社ごとに異なるので、それぞれご確認ください。
また、パナソニックではAI開発の有給インターンシップの募集を行っており、参加する学生がそれぞれ個別のテーマを持ち、研究開発を行うことができます。
パナソニックの持つ豊富なデータセットの活用や、研究の社会実装など、他の職業体験が目的のインターンシップでは得られない経験となるでしょう。
まとめ
今回は、「パナソニックが力を入れるAI(人工知能)」について紹介しました。
同社は、積極的にAI開発研究に投資を行っており、今後も将来に向けた投資を行っていく方針であるため、その動向に注目が集まっています。
さらに、就活生にとってもパナソニックは、学会発表や論文発表も活発な企業であるため、今後社会人としてAIに関する研究開発を行いたい方にとって、この上ない環境といえるでしょう。
これからますますIoT化・DX化が進む社会において、パナソニックの動向はもちろん、株価の動きにも目が離せません。
The Players シリーズでは、AI企業にフォーカスした記事を書いています。さまざまなAI企業を比較することで、成功するAI企業の法則が見えてくるかもしれません。
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AINOW編集部
難しく説明されがちなAIを読者の目線からわかりやすく伝えます。