自然言語処理が徐々に発展している中、Pythonを使って自然言語処理を行ってみたい人もいるでしょう。
自然言語処理分野では、Python・Java・C++などの言語が多く使われています。
その中から本記事ではPythonを使った自然言語処理で何ができるのか、自然言語処理によく使われるライブラリやおすすめの勉強方法を紹介していきます。
目次
Pythonを使った自然言語処理でできること
ここではいくつかの自然言語処理の利用事例を紹介していきます。
▼自然言語処理(NLP)について詳しく知りたい方はこちら
▶AI×テキストマイニング|メリット、おすすめツール、利用法までご紹介>>
自然言語処理がもつ4つの基礎解析
自然言語処理の基礎解析には様々なものがあります。自然言語処理は性質上、扱う言語によって大きく処理が異なります。
ここでは日本語を処理する基礎解析について紹介していきます。
それぞれを解説していきます。
①形態素解析
形態素解析とは、言葉や文章を形態素に分割し、分けた言葉をそれぞれの品詞ごとに分別する処理のことを指します。
「形態素」とは、言葉や単語の最小単位のことです。
簡単に言うと「私は散歩に出かけた。」という文章を形態素解析すると
「私・は・散歩・に・出か・け・た。」という分割になります。
そして分割した一つ一つに品詞を割り振っていきます。
②構文解析
構文解析とは、形態素に分けた単語同士の関連を明確にする作業のことを指します。
文を分割し、それぞれに品詞を割り振った状態から、分けられたもの同士の関係性を明らかにして、文を把握するというものです。
具体的には、どの語がどの語を修飾しているのか、補足しているのかなど単語同士の関係性のことを言います。
③意味解析
意味解析とは、単語の意味を正しく決める処理のことを指します。
一つの単語が複数の意味を持つ場合、文によって単語の意味が変わってきます。そのため、複数の意味がある場合は”どの意味であれば文が違和感なく成り立つか”を決定する必要があります。
その処理を行うのが、意味解析です。
④文脈解析
文脈解析とは、その名の通り文脈を解析していくものです。
単語の意味や単語同士の関係性が判別できたら、次は文それぞれの関係性も解析していきます。しかし、文脈の解析は単語の解析よりも非常に複雑なものであるため、現時点ではまだ文脈を解析できるシステムは存在しておらず、今後の研究に期待されています。
Pythonを使った自然言語処理の事例
Pythonを使った自然言語処理の事例を4つ紹介します。
それぞれ紹介します。
▶自然言語処理でできることまとめ|活用事例からpythonとBERTでの使い方を解説>>
翻訳 – DeepL
DeepLとは人工知能の技術である、「ディープラーニング」を活用した翻訳ツールです。
DeepLは、一部有料機能を除いてブラウザまたはアプリから無料で使用することができ、自然言語処理が活用されていることからかなり精度の良い翻訳をすることができます。言葉を直訳するだけでは本来の意味で伝えられない場合が多くあります。そこで、自然言語処理を活用することで複雑な文章でも、本来の意味を伝えることができます。
音声対話システム – Siri、Googleアシスタント
SiriとGoogleアシスタントはそれぞれAppleとGoogleが開発し、AIを搭載したバーチャルアシスタントです。
今や私たちの生活の一部ともなってきているバーチャルアシスタントにも自然言語処理は利用されています。主に、「人間の言葉を理解し、それに対する返答をする」という仕組みに活用されています。
感情分析 – Twitter
Twitterは、自身の投稿することができるソーシャルネットワーキングサービスの1つです。
自然言語処理では人間の言葉を理解し、それに対する返答をするだけでなく文章から人の感情を分析することも可能です。Twitterなどでは、ポジティブかネガティブなのか分析するなど、様々な場面での活躍が増えています。
チャットボット – ChatPlus
ChatPlusはAIチャットボットツールです。様々なツールと連携しながら、質問に対して自動回答をすることができます。
チャットボットは自動的に会話をするプログラムなので、違和感のない対話を必要とするために自然言語処理が利用されています。
▼チャットボットについて詳しく知りたい方はこちら
Pythonで自然言語処理をする方法
Pythonで自然言語処理をするには、「自然言語処理の流れ」と主に使われている「主要なライブラリ」について知っておくと良いでしょう。
Pythonで自然言語処理をやってみたいと思う方向けのおすすめの勉強方法も紹介していきます。
自然言語処理をするなら「BERT」
「BERT」(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)とは、翻訳や文章分類など自然言語処理における仕事の分野で2018年当時に最高スコアを叩き出したことで話題になりました。
以降、BERTをベースとしたモデルが次々と登場しています。
こうして話題となったBERTですが、特徴として「文脈を読むことが可能になった」ことが挙げられます。
▼BERT(バート)について詳しく知りたい方はこちら
自然言語処理の流れ
自然言語処理で行われる6つの処理の流れを紹介します。
それぞれ解説していきます。
①機械可読目録
機械可読目録とは、図書館などで書籍検索システムに使用されている規格です。
機械可読目録は自然言語で前処理として使用されます。文字を認識して読み取り、変換をするという処理を行い、辞書的な役割を果たします。
②コーパス
コーパスは自然言語の使用方法を蓄積・記録した言語集のようなデータのことを指します。
機械可読目録と同様に、コーパスも前処理として行われ、コーパスを分析して言語の特徴を捉えることで自然言語処理に活用していきます。
③形態素解析
前処理が終わると、次の段階に進みます。
形態素解析というのは、文章を最小単位に分解して判別する作業のことを言います。
日本語は複雑な単語や文法が混在しているので、分解して判別する必要があります。
前述したように、「私は散歩に出かけた。」という文章を形態素解析すると、
「私・は・散歩・に・出か・け・た。」という分割になります。
④構文解析
構文解析では、形態素解析で分割した単語同士を木(ツリー)のように繋げ、図式化していきます。
分割された単語をツリーのように図式化することで、分割された単語の関係性を明らかにして、文を把握するということができます。
⑤意味解析
意味解析とは、解析する上で適切な意味になるようにする処理のことを指します。
構文解析の段階では単語の関係性を明らかにしていきますが、単語それぞれに複数の意味がある場合、繋げた際に意味が通らなくなる可能性があります。そこで、繋げた単語同士が違和感のないように意味を分析し、処理をしていくのが意味解析です。
⑥文脈解析
最後に、文脈解析です。
文脈解析は、様々な単語から成り立つ文を、文ごとの繋がりや背景にある情報なども加味して分析・処理していく自然言語処理の最終段階とされる処理です。
しかし、文脈解析は非常に複雑で難しい技術が必要とされるため、前述したようにまだ実用化に至っていないというのが現状です。しかし、実用化されれば今よりもより精度の高い自然言語処理が可能になるため、今後に期待される技術の1つです。
自然言語処理に使われるライブラリ
PythonはAIに特化した多くのライブラリが存在します。
ここでは言語処理の分野で主に使用されているライブラリを紹介します。
それぞれ紹介していきます。
①Transformers(トランスフォーマー)
Transformersは2017年に発表された深層学習モデルです。
それまで使用されてきたCNNやRNNなどの学習モデルと比較して、時系列データを逐次処理する必要がなく、学習時間が大きく短縮されたモデルです。学習時間が短いだけでなく、精度が高いという特徴も持ち合わせています。
②Numpy(ナムパイ)
NumpyとはPythonで計算を簡単に行うための、数値計算ライブラリです。
C言語で開発されたライブラリで、平均や分散、標準平均などの計算から、ベクトル演算や行列演算で用いる多次元配列を取り扱うこともでき、かつ高速な処理が可能です。
③Pandas(パンダス)
PandasとはPythonでデータ分析を効率的に行うためのライブラリです。
様々な形式のデータの読み込みから統計量の表示、データ分析、グラフ化をすることができ、データ分析の際には非常によく使われます。
④GiNZA(ギンザ)
GiNZAは日本語対応の自然言語処理ライブラリです。
日本語の解析処理、依存構造(係り受け)解析や固有表現抽出などがフレームワーク上で利用できるという特徴を持っており、形態素解析や構文解析を行うことで、単語同士の関係性を明らかにすることができます。
⑤NLTK(エヌエルティ―ケー)
NLTKは英語用の自然言語ライブラリです。
NLTKはテキスト分類や意味論的推論、ステミングなど様々な機能を備えているほか、英語の構文解析や単語に品詞をタグ付けすることができ、意味解析や形態素解析なども行うことができます。
形態素解析ツール「mecab」
日本語を扱う自然言語処理で切っても切れないのが「Mecab」です。
Mecabはオープンソースの形態素解析エンジンです。
言語、辞書、コーパスに依存しない汎用的な設計を基本方針としているので、Pythonの他にもC、C++、Ruby、Javaなど多くの言語で使用することが可能です。
ChaSen、Jumanなど他の形態素解析エンジンよりも高速に動作し、日本語の形態素解析エンジンの中では最もよく使用されています。
自然言語処理をPythonでするためにおすすめな勉強方法
Pythonの注目度は、可読性の高さやAI関連ライブラリの豊富さから非常に高まっています。
そんなPythonの学習は、独学であれば書籍やサイトで学んだり、そうでなければスクールに通って学ぶこともできます。多くの学び方から、ここでは独学で学習出来るサイトと書籍を紹介していきます。
▼スクールでの勉強に興味がある方はこちら
▶AIを学べるスクールおすすめ5選|メリット・デメリット、選び方まで紹介
無料学習サイト&解説サイトで学ぶ
Progate
ProgateはPythonの基礎を習得する事のできる非常に人気の学習サイトです。
スライド形式で説明がされており、イラストや図が多いのが特徴です。Python以外にも様々な言語を学ぶことができ、それぞれ練習問題もついているため熟練度を確かめることにも使うことができます。
paiza ラーニング
paizaラーニングは、Progate同様プログラミング初心者のための学習サイトです。
Progateと大きく異なる点は、動画でかなり細かく指導してくれるという点です。動画を見ながら女性声優の解説者と同じスピードで実際に手を動かして学習することができるため、Progateなどの他の学習サイトで続かなかった方にはかなりお勧め出来る学習サイトです。また、採用試験で問われる問題などを効率よく学習することができます。
言語処理100本ノック 2020
言語処理100本ノック2020は、東北大学が公開している自然言語処理の練習問題が100問集められた問題集です。
全体的に良問も多いため企業や研修、勉強会でもよく使われており、自然言語処理のスキルを楽しみながら身に付けられます。
Qiita
Qiitaは、エンジニアに関する知識や技術などを記録し・共有することができるサービスです。
Qiitaはプログラム作成者やICT技術などを調べている人にとって非常に便利な解説サイトとなります。
解説が載っているだけでなく、具体的なコードや実行方法、必要な環境の構築方法など、様々な情報がまとめられています。また、Qiitaでは解説を見るだけでなく、自分自身で記事を投稿することもできるため、技術が付いてきたら他に困っている人のために解説記事を投稿してみるのもいいでしょう。
自然言語処理を本で学ぶ – 入門者におすすめの本3選
自然言語処理〔改訂版〕 (放送大学教材)
自然言語処理〔改訂版〕は放送大学で使われている教材で、ページ数約200ページとコンパクトで読みやすい教材です。
コーディングの例などはありませんが、まず自然言語処理分野を俯瞰したい方、基礎を理解したい方におすすめの教材です。
機械学習・深層学習による自然言語処理入門
機械学習・深層学習による自然言語処理入門は自然言語処理、機械学習の基礎的なところから実装まで学ぶことができる教材です。自然言語処理で有名なBERTについての記載もあるので、それらについても勉強したい方におすすめの教材です。
▶機械学習とは?定義から学習手法・5つのアルゴリズム・活用事例までわかりやすく解説>>
▶ディープラーニングとは【初心者必読】-基礎知識からAIとの違い、導入プロセスまで細かく解説>>
Pythonで動かして学ぶ 自然言語処理入門
Pythonで動かして学ぶ 自然言語処理入門は、テキストデータの準備、解析、活用まで幅広く自然言語処理について学ぶことができる教材です。データベースやWebアプリケーションなどにも幅広く触れているので、プログラミングが少し慣れてきた方におすすめの教材です。
まとめ
今回の記事では、自然言語処理の利用例やPythonでの勉強方法を紹介しました。
自然言語処理は、自動翻訳や音声対話システムなどAppleやGoogleなどの大企業が開発を続けており、需要があるHOTな分野だと言えるでしょう。
また、更なる発展が見込まれる分野でもあります。
この記事を参考に、ぜひ自然言語処理の勉強を進めてみてください。