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長年検索サービスをほぼ独占してきたGoogle検索は、近年、その品質が劣化しつつあります。ドイツの研究チームが1年間にわたってGoogle検索をはじめとする各種検索サービスにおけるスパムサイトの実態を調査したところによると、検索上位にスパムサイトを表示してしまう傾向を発見しました。
こうした検索サービスの劣化は、AI生成コンテンツの台頭によってさらに悪化しています。例えば悪質なAI生成サイトは、人間が書いた記事が公開された直後にコピーして、そうしたコピー記事をサイトに掲載することで検索上位に表示されるようにしています。
検索サービスの劣化をうけて、一部のネットユーザはもはや検索で情報を得るのをあきらめて、TikTokやReddit(英語圏最大級の掲示板サイト)でつながった人間ユーザから欲しい情報を教えてもらおうとしています。
以上のような事態をうけて、今後の情報収集ソースはインターネットから人間に回帰するかもしれない、とロンケ氏は述べています。
以下の翻訳記事本文では、読みやすさを考慮して原文記事にはない見出しを追加しました。
なお、以下の記事本文はロンケ・ババジデ氏に直接コンタクトをとり、翻訳許可を頂いたうえで翻訳したものです。また、翻訳記事の内容は同氏の見解であり、特定の国や地域ならびに組織や団体を代表するものではなく、翻訳者およびAINOW編集部の主義主張を表明したものでもありません。
以下の翻訳記事を作成するにあたっては、日本語の文章として読み易くするために、意訳やコンテクストを明確にするための補足を行っています。
目次
Googleの検索結果は低品質なAIコンテンツで溢れかえっており、それゆえネットユーザは答えを人間に求めている
Googleの検索アルゴリズムの内部構造は、ずっと秘密を保ってきた。
その仕組みを解明しようとすることで、人々は大金を稼いできた。
SEO最適化、つまりGoogleにコンテンツを上位表示させる技術は、本当に高給取りのスキルなのだ。
人間が人間を凌駕しようとしている限り、Googleは最悪のスパムコンテンツのうえにトップの座を守り続けていた。
しかし、AIが登場し、検索エンジンのランキングをウサギとカメのレースに変えた。
Googleが負けているレースだ。
ネットユーザは探しているものを見つけられないので、人間から直接回答を得るためにTikTokやRedditのようなプラットフォームを利用するようになったのだ。
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Googleがネットユーザにとって重要であり続けるためには、ユーザがGoogleを使って探しているものを見つけることと、同社が儲けることのバランスを保たなければならない。
ユーザは、Google検索から得た結果が有用であることを信頼しなければならない。あるいは、少なくとも探しているものが見つかることを信じなければならない。
しかし今、GoogleアルゴリズムはAIを駆使したSEOスパムに圧倒され、探し物を見つけるのを妨げている。
ロボットがロボットのために書いたコンテンツが、検索結果を詰まらせている。
AIを駆使したコンテンツ製造所(※訳注1)は、人間のライターでは太刀打ちできないスピードでコンテンツを生み出している。
そして、そのスパム的で低品質なコンテンツは、AIによってGoogle SEOに最適化され、人間が書いたコンテンツを凌駕している。
最近の検索結果の上位をクリックすると、しばしば間違いや偽情報にまみれた低品質なコンテンツが表示される。しかし、Googleのアルゴリズムはそれを認識できない。
その結果、ロボットがロボットのために書いたコンテンツが検索結果を詰まらせているのだ。
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スパムに侵食される検索サービス
私たちは25年間、指先に情報を届けてくれるGoogleに頼ってきた。そして長いあいだ、同社は素晴らしい仕事をしてきた。
Googleが世界の検索市場全体の91%以上を独占(※訳注2)しているのには、それ相応の理由があったのだ。
しかし、Googleの検索結果がどんどん悪くなっていることは周知の事実だ。アフィリエイトスパムサイトとGoogleアルゴリズムの開発者の戦いは、何年も繰り広げられてきた。
そして、この検索をめぐる戦いにAIが乱入してきたため、Googleはもはやうまく応戦しているようには見えないのだ。
2023年12月、Search Engine Journalは、大規模なスパム攻撃がGoogleアルゴリズムを完全に圧倒したことを報じた。
Googleの検索結果はここ数日、完全に制御不能としか言いようのないスパム攻撃に見舞われている。
スパマーたちはGoogleアルゴリズムの重要な要素を悪用し、正規の検索結果を抑え込んだ。
If you currently Google "craigslist used auto parts," every single result in the top 20 is spam, minus the first two results from Craigslist.
— Lily Ray 😏 (@lilyraynyc) December 20, 2023
もちろん、Googleはこの問題を解決しようとしている。しかし、それはネコとネズミのゲームのようなもので、勝つこともあれば負けることもある。
現時点では、Googleが信頼できる答えを提供してくれているとは言い難い。特に、購入したい商品に関する情報を探している場合はなおさらだ。
アフィリエイトリンクのスパムは、本物の情報よりも常に上位にランクされ、その数も非常に多い。本当に欲しい情報を得るのは、干し草の山から針を見つけるようなもので不可能に近い。
ネットユーザは以前から、このことについて声を上げてきた。
あるRedditユーザは、以下のように書き込んでいる。
最近、Googleが関連性のある結果を頻繁に返さないことに気づいた。広告など見たくないのに、欲しい結果がなかなか得られない。
以前はググれば完璧だったのに、正確な単語を検索するために””などで何度も検索を絞り込まなければならなくなった(※訳注3)。そうしたとしても、うまく行かないのだが。
あるいは、こんな書き込みもある。
ググろうとするたびに、入力した内容とはまったく関係のない検索結果が出てくるような気がする。例えばネコ用の歯磨き粉と入力すると、最初の検索結果はイヌ用の歯磨き粉になる。ニッチなテーマらしいから、できるだけ具体的な単語を使って質問してググってみても、探しているものが含まれない同じ検索結果が出る。
これらの投稿のコメント欄には、同じ問題を報告するユーザで溢れている。
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ドイツのある研究チームは、検索結果が悪くなっているという私たちの集団的な印象に真実があるかどうかを調べようとした。
彼らは丸1年かけて、SEOスパムが検索エンジンに与える影響を分析した。
すると驚くなかれ、すべての検索エンジンが同じ問題を抱えていることを突き止めたのだ(※訳注4)。
Google、Bing、DuckDuckGoを7,392の製品レビュークエリについて1年間監視した。我々の調査結果は、すべての検索エンジンが高度に最適化された(アフィリエイト)コンテンツに関して顕著な問題を抱えていることを示唆している。検索結果は、もはやウェブ全体を代表するものではないのだ…。
…さらに、アフィリエイトマーケティングの利用とコンテンツの複雑さの間に逆相関があること、そして、全ての検索エンジンが大規模なアフィリエイトリンクスパムキャンペーンの犠牲になっていることを観察した。
要するに、検索エンジンはアフィリエイトリンクの多い低品質なテキストを配信していることがわかった。
検索エンジンは、よく書かれ、信頼できるソースにもとづいたコンテンツをもはや優先していない。
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ロボットが他のロボットを喜ばせるために膨大な数の記事を書き続ける
しかし、以上の研究結果は最悪の事態ではない。
現在は研究結果が報告する惨状を超えて、まるでインターネット全体が破滅に向かっているように感じられる。
ChatGPTが登場した後、私たちはAIボットがモデルを訓練するためにインターネット上のコンテンツをかき集めているという現実を受け入れなければならなかった。
私たちは、自分たちが創作した文章、アート、写真、そして生み出したすべてのものに関する無差別なコピーと共存しなければならない。そして、そんなコピーは読者にとって何の役にも立たないのだが、人間が書いたような低品質な文章を量産するために使われる。
しかし、SEOに最適化され、AIを搭載したウェブサイトは、以上のような状況を新たなレベルに引き上げようとしている。
一部の「ブロガー」は、1日に何百ものAI記事を公開するサイトを作っている。何の価値も付加しないまま、情報を再利用している。
低品質なAI生成記事は、今やインターネットを支配するロボットの神々を喜ばせるために、完全にカスタマイズされている。
彼らの唯一の使命は、「新鮮な」コンテンツを好むGoogleアルゴリズムのいいなりになることだ。
彼らは、人間が書いたすべてのコンテンツを、雪崩のように押し寄せるAIのゴミの下に葬り去ろうとしている。そのゴミは、今やインターネットを支配するロボットの神々を喜ばせるために完全にカスタマイズされている。
404mediaが、以下のように伝えている。
一方、より広範なSEO業界は、人間が書いたとしてもすでに定型的と感じられるタイプのコンテンツをさらに最適化するために、生成AIを使用している、あるいは使用するつもりの企業で溢れている。BingとGoogleは現在、AIが生成した検索結果を展開している。これらすべての最終的な結果として考えられるのは、ロボットが他のロボットを喜ばせるために膨大な数の記事を書き続けるということだ。
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Googleニュースでさえ、信頼できるウェブサイトからのニュースを期待できなくなった。
ひどい日には、人間が書いた質の高いジャーナリズムよりも、質の低いAIサイト(※訳注5)を優先してランク付けしている。
新しいAIコンテンツをわざわざ作ろうとしないサイトもあることがわかった。
404media.coは、最近のポッドキャストエピソード「なぜ今のGoogle はクソなのか」のなかで、AIサイトがいかに人間のライターからコンテンツを盗んでいるかについて報告している。
悪質なAIサイトは評判の良いサイトで公開された記事をコピーし、最初に公開されてから数秒以内にAI駆動のコンテンツ製造サイトで再公開する。
そして、この盗んだコンテンツによってGoogleニュースの上位にランクされる。
彼らを止める方法はないようだ。
あなたのサイトに「AI禁止フラグ」を立てることはOpenAIに対してのみ有効で(※訳注6)、他のボットに対しては有効ではない。
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情報収集はインターネットから人間に回帰する?
Googleがユーザの信頼を失っていることに気づいていないわけではない。そして正直なところ、同社はこれを解決しようとしている、と私は信じている。
しかし、AIツールは人間よりもはるかに速い。
ボットは検索エンジンを圧倒し、状況を是正しようとするあらゆる試みをものともしない。
一般的なインターネットがますます多くのゴミ記事やスパムで溢れるにつれ、ネットユーザは質問に答えてもらうために人間に回帰している。
そんな彼らはTikTokやRedditに行き、もはやGoogleでは見つけられない答えを探す。
そこでは、意見を求めたり製品をレビューしてもらったりするために、少なくとも現実の人間に頼める。
この解決策にリスクはないのだろうか。もちろん、リスクはある。
企業はTikTokのインフルエンサーに大金を支払い、劣悪な製品を動画で宣伝している。私たちは皆、TikTokで過剰に宣伝された不味いレストランに行ったことがあるだろう。
しかし、結局は何を信用するかということだ。
そして私は、間違ったボットよりも間違った人間を信用したい。
Redditは、ユーザがボットアカウントを作成し、AIコメントでサブRedditをスパムすることと無縁ではない。しかし、そうしたスパム行為に対しては、スパムをブロックしたり削除したりできる人間のモデレーターがいる。
人間の介入は、悪質なAI生成コンテンツに対する防弾となるのだろうか。決してそうはならないだろう。AIスパマーがこれらのチャンネルを圧倒する方法を見つけるのは間違いない。
そして、この問題の解決策を見つけるまでしばらくかかるかもしれない。
今回の騒動でポジティブなことがあるとすれば、人々が人々に意見を求めることに回帰したという事実だろう。
インターネット上の情報の完全性が失われた今、私たちは皆、友人や家族にアドバイスを求めるようになるかもしれない。
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原文
『AI Has Made Google Search So Bad People Are Moving to TikTok & Reddit』
著者
ロンケ・ババジデ(Ronke Babajide)
翻訳
吉本幸記(フリーライター、JDLA Deep Learning for GENERAL 2019 #1、生成AIパスポート、JDLA Generative AI Test 2023 #2取得)
編集
おざけん