
AIエージェントの導入効果は、業務時間やコストの削減にとどまらず、対応品質の安定や売上・顧客体験の改善にまで及びます。
とはいえ、経営層から「入れると何がどれだけ良くなるのか」と問われ、効果を根拠付きで説明できずに稟議が止まる担当者は少なくありません。
PwCの2026年の調査では、日本企業で生成AIが「期待を大きく上回る効果」を生んだ割合は9%にとどまりました。効果の種類と測り方を決めないまま導入すると、AIエージェントも同じ結果になるでしょう。
本記事では、AIエージェントで得られる8つの導入効果と、公式発表で数値を確認できた企業事例を中心に解説します。効果を測る指標と、効果が出ない原因もあわせて紹介します。
読み終えるころには、自社で狙う効果を他社の実績値とともに経営層へ説明し、導入後に成果を数値で示せる計画を立てられるようになります。
目次
AIエージェントで得られる8つの導入効果
AIエージェントの導入効果は、以下の8つに整理できます。
- 業務時間が削減される
- 人件費や外注費が下がる
- 24時間365日対応できる
- 対応スピードが上がる
- ミスと品質のばらつきが減る
- 人手不足を補える
- 顧客満足度が上がる
- 社員が付加価値の高い業務に集中できる
前半の4つは時間や金額で測りやすい定量効果で、後半の4つは数値に表れるまで時間がかかる定性効果です。
| 分類 | 該当する効果 | 特徴 |
|---|---|---|
| 定量効果 | ・業務時間の削減 ・人件費や外注費の削減 ・24時間365日対応 ・対応スピードの向上 | 導入から数か月で数値に表れやすく、稟議の根拠にしやすい |
| 定性効果 | ・ミスと品質のばらつきの減少 ・人手不足の補完 ・顧客満足度の向上 ・付加価値業務への集中 | 効果が出るまで時間がかかるが、中長期の競争力に直結する |
業務時間が削減される
もっとも早く表れる導入効果は、業務時間の削減です。
従来の生成AIは質問に答えるだけでした。一方でAIエージェントは、社内システムを検索し、資料を作り、申請まで進めるなど複数の作業を一続きで実行します。人の手が離れる範囲が広いため、削減できる時間も大きくなります。
たとえば営業日報の作成では、商談の記録を読み取り、要約し、SFAへ入力するところまでをAIエージェントが担えます。担当者は内容を確認するだけで済みます。
削減時間は「1件あたりの短縮時間×月間件数」で算出できるため、経営層にも伝わりやすい指標です。
人件費や外注費が下がる
業務時間が減ると、残業代や外注費といった直接的なコストも下がります。
とくに効果が大きいのは、件数が多く手順が決まっている業務です。問い合わせの一次対応やデータ入力をコールセンターやBPO事業者に委託している場合、AIエージェントに置き換えると委託費そのものを見直せます。
ただし、AIエージェントにもライセンス費用やAPIの従量課金、運用担当者の工数がかかります。削減額から運用コストを差し引いた金額で効果を評価しましょう。
コスト削減の効果を正しく示せれば、次の投資判断に進むための根拠になります。
24時間365日対応できる
AIエージェントは休まず稼働するため、営業時間外の問い合わせや受付にも対応できます。
人が対応する窓口では、夜間や休日に届いた問い合わせが翌営業日まで放置されがちです。AIエージェントなら受付から手続きの完了までを時間帯に関係なく処理できます。
大同病院(愛知県名古屋市)は、コールセンターが担っていた診療予約の受付をAIエージェントに任せ、夜間・休日も含めて予約できる体制を整えています。症状を聞き取って診療科を選び、予約完了まで自動で進める仕組みです。
出典:大同病院、患者さん体験の刷新に向けて「Agentforce」を導入(セールスフォース・ジャパン)
営業時間外の取りこぼしが減ると、機会損失の解消と顧客の利便性向上を同時に実現できます。
対応スピードが上がる
AIエージェントは情報の検索と判断を同時に進めるため、1件あたりの処理時間が短くなります。
人が対応する場合、マニュアルや過去の履歴を探す時間が処理時間の多くを占めます。AIエージェントは社内のナレッジを瞬時に参照して回答を組み立てるため、待ち時間と調べる時間の両方が縮まります。
Google Cloudの調査では、カスタマーサービスで生成AIを活用した企業が、問い合わせ1件あたり120秒の時間を節約した例が紹介されています。
出典:AIの費用対効果:AIエージェントがビジネスに役立つ方法(Google Cloud)
応答の速さは顧客の満足度に直結するため、後述する定性効果の土台にもなります。
ミスと品質のばらつきが減る
決められたルールと手順に沿って処理するため、入力ミスや確認漏れが減り、対応品質が揃います。
人の作業は、疲労や経験の差によって品質が変わります。AIエージェントは同じ条件なら同じ手順で処理するため、担当者による品質の差が生まれにくくなります。
請求書と発注データの照合や、申請書類の不備チェックが代表例です。人が見落としやすい細かな差異も、AIエージェントが一次チェックで拾い上げます。
ただし、AIエージェントも誤った判断をすることがあります。金額や契約にかかわる処理は、人が最終確認する工程を残しておきましょう。
人手不足を補える
AIエージェントが定型業務を引き受けると、採用を増やさずに業務量の増加へ対応できます。
問い合わせや申請が増えるたびに人を採用していては、採用費と教育費が膨らみ続けます。AIエージェントは処理件数が増えても稼働を増やすだけで済むため、業務量の増加と人員の増加を切り離せます。
後述するTAPPは、見込み顧客が年41%のペースで増えるなか、セミナーに関する問い合わせを月約100件減らしています。顧客が増えても窓口の負担が比例して増えない状態をつくれた例です。
人材の確保が難しい部門ほど、この効果は事業継続の面でも大きな意味を持ちます。
顧客満足度が上がる
対応の速さと品質が安定すると、顧客の満足度も上がります。
顧客の不満は「待たされる」「担当者によって回答が違う」「何度も同じ説明をさせられる」ことから生まれます。AIエージェントは即時に回答し、過去のやり取りを踏まえて対応できるため、こうした不満の原因を減らせます。
Google Cloudの調査では、経営幹部の63%が生成AIによって顧客体験が向上したと回答しています。
出典:AIの費用対効果:AIエージェントがビジネスに役立つ方法(Google Cloud)
ただし、すべてをAIに任せると「人と話したい」顧客の不満を招きます。人へ引き継げる導線を残しておくと、満足度の向上を長く維持できます。
社員が付加価値の高い業務に集中できる
AIエージェントの導入効果のうち、もっとも事業へのインパクトが大きいのは、社員が考える仕事に時間を使えるようになることです。
削減した時間を別の定型作業で埋めてしまうと、業績は変わりません。浮いた時間を提案や企画、難しい顧客対応に振り向けて初めて、売上や品質の向上につながります。
富士通は、問い合わせの一部をAIエージェントに任せることで、オペレーターが緊急度や難易度の高いケースに集中できる体制を目指しています。削減した時間を「何に使うか」まで設計した例です。
稟議では、削減時間とあわせて「浮いた時間で何をするか」を示すと、投資の意義を伝えやすくなります。
調査データで見るAIエージェントの導入効果の実態
国内外の調査を見ると、AIエージェントの導入効果には以下の3つの傾向があります。
- 経営幹部の74%が1年以内に投資効果を得ている
- 日本企業は効果が期待を下回る傾向にある
- 全社規模で効果を出せている企業はまだ一部にとどまる
良い面と課題の両方を押さえておくと、経営層に対して偏りのない説明ができます。
経営幹部の74%が1年以内に投資効果を得ている
Google Cloudの「2025年のAIの費用対効果に関するレポート」では、74%の経営幹部が1年以内に費用対効果を達成したと回答しています。
同じ調査では、39%の経営幹部が「組織全体で10以上のエージェントをすでにデプロイしている」と回答しました。また、本番環境でAIエージェントを導入している組織の経営幹部の52%が、AIが業務の遂行方法を根本的に変えていると述べています。
出典:AIの費用対効果:AIエージェントがビジネスに役立つ方法(Google Cloud)
投資から1年以内に効果が出るケースが多いことは、短期の成果を求められる稟議で使いやすい材料です。
ただし、この調査は生成AI全般を含むグローバルの結果です。自社の業務で同じ効果が出るかは、小さく試して確認する必要があります。
日本企業は効果が期待を下回る傾向にある
PwC Japanグループの「生成AIに関する実態調査2026 春 6カ国比較」によると、日本企業で「期待を大きく上回る効果」を得た割合は9%でした。米国の38%、英国の32%を大きく下回り、6カ国で最も低い結果です。
一方で、日本の生成AIの活用・推進度は87%まで広がっています。導入は進んでいるものの、成果に結びついていない企業が多い状況です。
出典:生成AIに関する実態調査2026 春 6カ国比較(PwC Japanグループ)
同調査では、効果を上げている企業の特徴として、経営に近い推進体制やAIエージェントの導入、業務プロセスへの正式な組み込みが挙げられています。
つまり、ツールを配るだけでは効果は出ません。業務の進め方そのものにAIエージェントを組み込む企業が、成果を手にしています。
全社規模で効果を出せている企業はまだ一部にとどまる
McKinseyの「The state of AI in 2025」によると、AIエージェントを組織のどこかで本格展開している企業は23%でした。実験を始めた段階の企業は39%です。
同調査で、AIがEBIT(利払い前・税引き前利益)に何らかの影響を与えたと回答したのは39%です。その多くは、AIによる貢献がEBITの5%未満だと答えています。
出典:The state of AI in 2025: Agents, innovation, and transformation(McKinsey & Company)
さらにGartnerは、2027年末までにAIエージェント関連のプロジェクトの40%超が中止されると予測しています。理由として挙げられているのは、コストの増大、ビジネス価値の不明確さ、リスク管理の不備です。
出典:Gartner Predicts Over 40% of Agentic AI Projects Will Be Canceled by End of 2027(Gartner)
個別業務での効果は出やすい一方、全社の利益にまで広げられる企業は限られています。導入前に評価指標を決めておけば、中止の判断を迫られる側に回らずに済みます。
【部門別】AIエージェントの導入効果
AIエージェントの導入効果が出やすい部門は、以下の5つです。
- カスタマーサポート
- 営業
- 経理・バックオフィス
- IT・システム開発
- 人事
部門ごとに効果が表れる指標は異なるため、自社で最初に狙う部門を決める参考にしてください。
| 部門 | 効果が出やすい業務 | 数値が動く指標 |
|---|---|---|
| カスタマーサポート | 問い合わせの一次対応、手続きの受付 | 自己解決率、平均処理時間、有人対応件数 |
| 営業 | 商談記録、日報、提案書の下書き | 報告書の作成時間、商談化率、受注率 |
| 経理・バックオフィス | 請求書の照合、経費精算のチェック | 処理件数、差し戻し件数、締め日数 |
| IT・システム開発 | 社内ヘルプデスク、コードの生成とテスト | 自己解決率、問い合わせ件数、開発リードタイム |
| 人事 | 応募者対応、面接の日程調整 | 選考期間、日程調整の工数 |
カスタマーサポート
カスタマーサポートは、AIエージェントの導入効果がもっとも数値に表れやすい部門です。
問い合わせの件数が多く、回答の根拠となるFAQやマニュアルが整っている企業が多いためです。AIエージェントは回答するだけでなく、日程変更やキャンセルといった手続きまで完結させられます。
効果を測るときは、AIだけで解決した割合を示す自己解決率と、1件あたりの平均処理時間を見ます。有人対応に回った件数の推移もあわせて追うと、オペレーターの負担がどれだけ減ったかがわかります。
導入実績が多い分野のため、他社の数値を稟議の比較材料に使いやすい点も利点です。
営業
営業部門では、事務作業の削減と売上の向上という2つの効果を同時に狙えます。
営業担当者は、商談記録や日報、SFAへの入力に多くの時間を取られています。AIエージェントが通話や商談の内容を自動で記録・要約すれば、顧客と向き合う時間を増やせます。
さらに、過去の受注データから見込みの高い商談を判定したり、成功事例に沿った次の打ち手を提示したりすることも可能です。事務作業が減るだけでなく、商談化率や受注率そのものが上がる余地があります。
売上に直結する指標を動かせるため、経営層の関心を引きやすい部門でもあります。
経理・バックオフィス
経理やバックオフィスでは、処理時間の短縮とミスの削減が主な導入効果です。
請求書の照合や経費精算のチェックは、手順が明確で件数も多い業務です。AIエージェントが書類の読み取りから照合、差異の洗い出しまでを担うと、担当者は例外的な案件の判断に集中できます。
効果は、月間の処理件数や差し戻し件数、月次決算の締め日数で測ります。月末月初に業務が集中する部門のため、繁忙期の残業時間の変化も追うと効果が見えやすくなります。
ミスが減ると監査や修正の手間も減るため、削減時間以上の効果が生まれます。
IT・システム開発
IT部門では、社内ヘルプデスクの負担軽減と開発スピードの向上が主な導入効果です。
パスワードの再設定やアカウント申請といった社内の問い合わせは、内容が似通っており自動化に向いています。AIエージェントが一次対応すれば、情報システム部門は本来の改善業務に時間を使えます。
開発の現場では、コードの生成やテスト、不具合の調査をAIエージェントに任せる動きが広がっています。Google Cloudの調査でも、AIエージェントの投資効果が出ている領域としてソフトウェア開発が挙げられています。
ヘルプデスクの自己解決率と開発のリードタイムを追えば、IT部門全体の生産性の変化を示せます。
人事
人事部門では、採用業務の工数削減と選考スピードの向上が主な導入効果です。
採用活動では、応募者への連絡や面接の日程調整といった調整業務が大きな負担になっています。AIエージェントが候補者とのやり取りを担うと、担当者は面接や見極めに集中できます。
候補者にとっても、返信を待つ時間が減るため、選考の途中辞退を防ぐ効果が期待できます。社員からの制度や手続きに関する問い合わせ対応にも応用可能です。
効果は、応募から内定までの選考期間や、日程調整にかかる工数の変化で測りましょう。
AIエージェントの導入効果が数値で出た企業事例6選
公式発表で導入効果の数値を確認できた企業事例は、以下の6つです。
- パナソニック コネクト
- 富士通
- Klarna
- 横浜銀行
- ジャロック
- TAPP
大企業から社員数約50名の企業まで規模が異なるため、自社に近い事例を探してみてください。
| 企業名 | 対象業務 | 主な導入効果 |
|---|---|---|
| パナソニック コネクト | 全社の業務 | 2025年度に78.8万時間を削減 |
| 富士通 | サポートデスク | 8回のやり取りが必要な問い合わせを1回で解決 |
| Klarna | カスタマーサービス | 解決時間が11分から2分未満に短縮 |
| 横浜銀行 | 証明書発行の電話受付 | 一部証明書で約9割を自動受付 |
| ジャロック | 営業 | 受注率が15ポイント向上 |
| TAPP | セミナーの問い合わせ対応 | 問い合わせ解決率約90.3% |
パナソニック コネクト
パナソニック コネクトは、自社AIアシスタント「ConnectAI」の活用により、2025年度に78.8万時間の業務時間を削減しました。前年度の2倍で、年間総労働時間の3.4%に相当します。
利用回数は361万回、1回あたりの削減時間は33分で、月間ユニークユーザー率は61%に達しました。図面と設計仕様の照合業務では、AIエージェントの利用も始めています。
出典:パナソニック コネクト、AI活用で総労働時間の3.4%削減(パナソニック コネクト)
同社は2030年に総労働時間の10%をAIで削減する目標を掲げています。
削減時間を総労働時間に対する割合で示している点は、全社の導入効果を経営層へ報告する際の参考になります。
富士通
富士通は、Salesforceのサポートデスクに「Agentforce for Service」を採用しました。パイロット検証では、従来のチャットボットで8回のやり取りが必要だった問い合わせを1回で解決できることを確認しています。
今後は、コンタクトセンターに寄せられる月間問い合わせの約15%をAIエージェントが対応できる体制を目指しています。
出典:富士通、Agentforce for Serviceを採用(セールスフォース・ジャパン)
オペレーターは、緊急度や難易度の高いケースに集中できるようになります。富士通はこれにより顧客満足度の向上も見込んでいます。
全件を任せるのではなく「月間問い合わせの約15%」と範囲を区切って目標を置いている点は、現実的な効果目標を立てる際の参考になります。
Klarna
スウェーデンの決済サービス企業Klarna(クラーナ)は、2024年2月にAIアシスタントの導入効果を発表しました。稼働から1か月で230万件の会話を処理し、カスタマーサービスのチャットの3分の2を担っています。
処理量はフルタイム従業員700人分に相当し、問題の解決時間は11分から2分未満に短縮されました。再問い合わせは25%減り、2024年に4,000万ドルの利益改善を見込むとしています。
出典:Klarna AI assistant handles two-thirds of customer service chats in its first month(Klarna)
一方で2025年5月には、同社CEOがBloombergの取材に対し、AI中心の対応で品質が下がったと認め、人のオペレーターの採用を再開したと報じられています。
出典:Klarna Is Hiring Customer Service Agents After AI Couldn’t Cut It on Calls(Entrepreneur)
コスト削減だけを追うと顧客体験を損なうことがわかる事例です。効果を評価する際は、品質の指標もあわせて追いましょう。
横浜銀行
横浜銀行は、ローンに関する証明書の発行申請を電話で自動受付するサービスを新設しました。受付には、モビルスのAIエージェント型ボイスボット「MOBI VOICE(モビボイス)」を導入しています。
住宅ローン年末残高証明書などの一部証明書では、オペレーターの折り返し確認なしに受付を完了した割合が約9割に達しています。
削減効果は、電話応対で年間約175時間、郵送作業で約270時間の合計約445時間を見込んでいます。電話応対の削減時間は、4か月間の実績である約65時間を年間に換算した数値です。
出典:横浜銀行が「MOBI VOICE(モビボイス®)」のAIエージェント型ボイスボット導入(モビルス)
電話応対だけでなく、その後の郵送作業まで含めて削減効果を算出している点が参考になります。
ジャロック
物流機器の製造・販売・施工を手がけるジャロックは、社員数約50名の企業です。2025年10月にAgentforceを営業部門へ導入し、受注率が15ポイント向上しました。
このほか、報告書の作成時間が80%減り、商談化率も5%向上しています。
出典:ジャロック、物流機器の営業活動を「Agentforce」により変革(セールスフォース・ジャパン)
同社は、通話や商談内容の自動記録・要約、商談のスコアリング、社内外向けのAIエージェントを2026年1月から順次実装しました。
中小規模の企業でも、事務作業の削減にとどまらず売上の指標まで動かせることを示した事例です。
TAPP
投資用不動産の販売・コンサルティングを手がけるTAPPは、資産運用セミナーの問い合わせ対応にAgentforceを導入しました。
セミナーの日程変更やキャンセル、特典の付与に関する問い合わせでは、2,794件中2,522件を解決し、約90.3%の解決率を実現しています。
見込み顧客が年41%のペースで増えるなか、問い合わせを月約100件減らしました。さらに、月60件の来場者の確保にもつなげています。
出典:TAPP、「Agentforce」を導入し資産運用セミナーの顧客体験を刷新(セールスフォース・ジャパン)
問い合わせの削減というコスト面の効果と、来場者の確保という売上面の効果を両立させた事例です。
AIエージェントの導入効果を測る指標
AIエージェントの導入効果を測る指標は、以下の3つに分けられます。
- 時間とコストの指標
- 品質とリスクの指標
- 売上と顧客体験の指標
どの指標でも、導入前の数値を記録しておかなければ効果を比較できません。対象業務を決めたら、導入前の1〜3か月分の実績を先に集めておきましょう。
時間とコストの指標
時間とコストの指標は、導入効果を最初に示すための基本の指標です。
- 1件あたりの処理時間
- 月間の削減時間
- AIが処理した件数の割合
- 残業代や外注費の削減額
削減時間は、以下の式で金額に換算すると経営層に伝わりやすくなります。
削減額 =(1件あたりの短縮時間 × 月間件数 × 時間単価)- AIエージェントの月額運用コスト
運用コストを差し引いた金額で示すと、効果を過大に見積もった資料だと指摘されずに済みます。
品質とリスクの指標
品質とリスクの指標は、時間の削減によって品質が下がっていないかを確かめるための指標です。
- エラー率や差し戻し件数
- 初回で解決した割合
- 人へ引き継いだ件数
- 誤回答やインシデントの件数
Klarnaの事例のように、処理件数が増えても品質が下がれば顧客は離れます。時間の指標と品質の指標は必ずセットで追いましょう。
品質を担保した状態で効果を示せると、対象業務を広げる際の承認も得やすくなります。
売上と顧客体験の指標
売上と顧客体験の指標は、AIエージェントが事業の成長にどれだけ貢献したかを示す指標です。
- 商談化率や受注率
- 営業時間外に獲得した問い合わせや予約の件数
- 顧客満足度(CSAT)やNPS
- 解約率
売上の指標は、景気や施策など他の要因でも変動します。AIエージェントを使ったチームと使っていないチームを比べるなど、比較対象を用意してから効果を判断すると、根拠のある報告ができます。
コスト削減に加えて売上への貢献を示せれば、AIエージェントへの投資を「守り」ではなく「攻め」の施策として位置づけられます。
AIエージェントの導入効果が出ない4つの原因
AIエージェントを導入しても効果が出ない原因は、以下の4つに集約されます。
- 導入目的と評価指標が曖昧になっている
- 効果の出にくい業務を選んでいる
- データと業務プロセスが整っていない
- 現場で使われず定着しない
いずれも導入前に手を打てる原因のため、計画の段階で確認しておきましょう。
導入目的と評価指標が曖昧になっている
もっとも多い原因は、何のために導入し、何をもって成功とするかが決まっていないことです。
「話題だから」「他社が入れたから」という理由で導入すると、効果を判断する基準がありません。Gartnerも、AIエージェント関連プロジェクトが中止される理由の1つにビジネス価値の不明確さを挙げています。
導入前に「問い合わせの一次対応で自己解決率を◯%にする」のように、対象業務と指標と目標値をセットで決めておきましょう。
評価の基準が明確なら、効果が出なかった場合も原因を特定して改善に移れます。
効果の出にくい業務を選んでいる
AIエージェントに向かない業務を対象にすると、時間をかけても効果は出ません。
件数が少ない業務や、毎回判断の基準が変わる業務は、自動化しても削減できる時間がわずかです。反対に、件数が多く手順が決まっている業務ほど効果が大きくなります。
最初からあらゆる業務をこなすAIエージェントを作ろうとすると、精度が上がらず失敗しがちです。問い合わせの一次対応や書類の照合など、範囲を絞った業務から始めましょう。
小さな業務で効果を示してから対象を広げれば、社内の協力も得やすくなります。
データと業務プロセスが整っていない
AIエージェントの精度は、参照するデータと業務の手順がどれだけ整っているかで決まります。
FAQやマニュアルが古いままだったり、部署ごとにデータが散らばっていたりすると、AIエージェントは誤った回答を返します。手順が担当者の頭の中にしかない業務も、AIに任せることはできません。
導入前に、参照させるナレッジの更新と、業務手順の文書化を済ませておきましょう。この作業自体が業務の無駄を見直すきっかけにもなります。
データの整備に時間をかけた企業ほど、導入後の精度が安定し、効果も早く表れます。
現場で使われず定着しない
AIエージェントを導入しても、現場の社員が使わなければ効果はゼロです。
使い方がわからない、今までのやり方のほうが早いと感じる、AIの回答を信用できないといった理由で、利用が広がらないケースは少なくありません。現場を巻き込まずに導入を進めることが、定着しない最大の要因です。
導入の初期から現場の担当者を検証に加え、使いにくい点を改善し続けましょう。パナソニック コネクトのように、利用率を指標として追うのも有効です。
現場が効果を実感すれば、新たな活用のアイデアも現場から生まれるようになります。
AIエージェントの導入効果に関するよくある質問
AIエージェントの導入効果に関する質問は以下の4つです。
- 導入効果が出るまでにどのくらいかかりますか
- 中小企業でも導入効果は出ますか
- 生成AIやRPAとは導入効果がどう違いますか
- AIエージェントの導入は人員削減につながりますか
質問に対する回答を確認して、自社の導入計画づくりの参考にしてみてください。
導入効果が出るまでにどのくらいかかりますか
対象業務を絞って導入すれば、数か月で効果を確認できるケースが多いでしょう。
Google Cloudの調査では、74%の経営幹部が1年以内に費用対効果を達成したと回答しています。横浜銀行も、4か月間の実績をもとに年間の削減効果を算出しています。
ただし、全社展開や売上への貢献まで含めると、効果が出るまでに1年以上かかることもあります。短期で測る指標と中長期で測る指標を分けて計画を立てましょう。
中小企業でも導入効果は出ますか
中小企業でも導入効果は出ます。
社員数約50名のジャロックは、営業部門への導入で受注率を15ポイント向上させました。人員が限られる企業ほど、1人あたりの業務負担が減る効果を実感しやすくなります。
最近は、既存の業務システムに組み込まれたAIエージェント機能も増えています。自社で開発せず、使っているSaaSの機能から試すと、初期費用を抑えて始められます。
生成AIやRPAとは導入効果がどう違いますか
AIエージェントは、生成AIやRPAよりも自動化できる範囲が広い点が違いです。
| 種類 | できること | 主な導入効果 |
|---|---|---|
| 生成AI | 指示に応じて文章や画像を作る | 個人の作業時間の短縮 |
| RPA | 決められた手順を繰り返し実行する | 定型作業の自動化 |
| AIエージェント | 目的に沿って自ら判断し、複数の作業を実行する | 判断を含む業務プロセス全体の自動化 |
生成AIは人の作業を補助し、RPAは手順が固定された作業を自動化します。一方でAIエージェントは、状況に応じた判断を含む業務まで任せられるため、効果の及ぶ範囲が業務プロセス全体に広がります。
AIエージェントの導入は人員削減につながりますか
多くの企業は、人員削減ではなく人員の配置転換を目的にAIエージェントを導入しています。
富士通は、AIエージェントが一部の問い合わせを担うことで、オペレーターが難易度の高いケースに集中できる体制を目指しています。浮いた時間を付加価値の高い業務へ振り向けることが、導入効果を最大化する方法です。
Klarnaのように、AIへの置き換えを急いだ結果、人の採用を再開した例もあります。人を減らすことより、人の役割を変えることに目を向けましょう。
AIエージェントの導入効果は測れる業務から小さく始める企業が手にする
AIエージェントの導入効果は、業務時間やコストの削減といった定量効果と、品質の安定や付加価値業務への集中といった定性効果の8つに整理できます。パナソニック コネクトやジャロックのように、時間削減から売上向上まで数値で成果を出す企業も増えています。
一方で、日本企業で期待を大きく上回る効果を得た割合は9%にとどまります。効果を手にするには、件数が多く手順が決まっている業務を選び、導入前の数値を記録したうえで、時間と品質の指標をセットで追うことが欠かせません。
まずは自社で効果が出やすい業務を1つ選び、導入前の処理時間と件数を記録するところから始めてみてください。
ただ、効果を測る計画を立てても、AIエージェントを業務に組み込み、改善し続けられる人材が社内にいなければ成果は続きません。導入効果を継続して生み出すには、ツールの選定と並行して、AIを使いこなす人材の育成にも目を向ける必要があります。
出典・参考リンク
- AIの費用対効果:AIエージェントがビジネスに役立つ方法(Google Cloud)
- 生成AIに関する実態調査2026 春 6カ国比較(PwC Japanグループ)
- The state of AI in 2025: Agents, innovation, and transformation(McKinsey & Company)
- Gartner Predicts Over 40% of Agentic AI Projects Will Be Canceled by End of 2027(Gartner)
- パナソニック コネクト、AI活用で総労働時間の3.4%削減(パナソニック コネクト)
- 富士通、Agentforce for Serviceを採用(セールスフォース・ジャパン)
- Klarna AI assistant handles two-thirds of customer service chats in its first month(Klarna)
- Klarna Is Hiring Customer Service Agents After AI Couldn’t Cut It on Calls(Entrepreneur)
- 横浜銀行が「MOBI VOICE(モビボイス®)」のAIエージェント型ボイスボット導入(モビルス)
- ジャロック、物流機器の営業活動を「Agentforce」により変革(セールスフォース・ジャパン)
- TAPP、「Agentforce」を導入し資産運用セミナーの顧客体験を刷新(セールスフォース・ジャパン)
- 大同病院、患者さん体験の刷新に向けて「Agentforce」を導入(セールスフォース・ジャパン)
















