アカデミアとビジネスをつなぐ期待値調整のプロ集団「澪標アナリティクス」

AINOW編集部のかめきちです。
今回は人工知能・データ分析界隈で注目されている「澪標アナリティクス」と「AI TOKYO LAB」代表の井原渉さんにお話を伺いました。

かめきち
もともとはアカデミックな世界にいらっしゃいましたよね。起業された背景について教えてください。

2016年、個人事業主からスタートしました。
当時、大学で研究を続けていました。いわゆるポスドクですね。いろんな企業と一緒に活動することが多かったんです。その中でだんだんと、常駐などのかたちでちゃんと仕事をしてみたくなったんです。しかし、「共同研究」という座組みだと大学がうるさかったんですね。そこで、個人事業主としてスタートしたのがきっかけです。

かめきち
大学の時の専攻は?

学部の時は、法学部で国際政治。けど、統計分析してましたね。たとえば、多変量解析で条約破棄の可能性を。選挙予測みたいなやつ…とお伝えするとイメージしやすいでしょうか。学部は文系でしたが、高校時代はむしろ数学が得意でした。だから、AIや統計に関する講義によく潜っていましたね。

そんな流れで、大学院からは機械学習を専攻しました。今もそうですが国内だと「統計学部」もないんです。そこで、オックスフォード大学に渡りました。このころはフェイスブックも日本に上陸していない時代でしたね。機械学習は人工知能の技術のひとつとされますから、そこで学び、日本に戻り、いつのまにか人工知能系の研究者になっていました。

かめきち
起業して一番苦労したことは?

んー。「できないことはしない」と決めているので、あまり苦労は・・・。もともと学者ですから、私の専門分野は決まっています。それ以外はしません。たとえば、人事・経理はわからないので諦めてますし、社員にも諦めてもらっています。

かめきち
エンジニアは何人程度いらっしゃるんですか。
20名くらい。案件は持ち帰りがメイン。基本、常駐はさせていません。

かめきち
え!データ、持ち帰れるんですか?

抵抗したら、こちらからお断りしています(笑)
けど、大手都市銀行も、自動車会社も持ち帰りでやらせてくれてますよ。

かめきち
一番の強みは?

データ分析“コンサル”の会社ということです。すごい分析レポートを出すよりも、分析結果でお客さんの利益につなげることを重視します。だから時には「見える化」だけでも十分なケースもありますね。

かめきち
お問い合わせの多い分野は?

AIですね。業界としては、製造業系の方。ネット系の会社はすでに何かしら取り組まれてるところが多かったり、「しょせんAIは・・・」みたいなフェーズにあるところが多く、ボリュームが小さいです。

かめきち
製造業ですか?

はい。製造業は「AI、ください!」で連絡がきます(笑)。
「全部AIにしたいんだけど、AIくれなーい?」みたいなやつですね(笑)

かめきち
何をやりたいのか決まってなくて、大変そうですね・・。

いえ、むしろ、そういった方には、「何も決めないできてください」とお伝えします。
日本人は真面目だからちゃんと考えてきちゃうんです。けど、本当に何ができるかを分かっていないと、考えた結果「オペレーションセンターを全自動したい」みたいな依頼になりがち。それは、厳しいです。

けど、よくよくお話聞いてみると「売上予測」が一番できると嬉しいけど、勝手に諦めていたりするんですね。私たちにとっては「全自動化」より「売上予測」の方が簡単ですし、成果もあげられます。

お客さんの認識と、実際に私たちのできることにズレがあるんですよね。

かめきち
そのなかでAI開発をする上で、課題になっていることは?

たとえば、いまだに手書き文字などが残っていることでしょうか。「データ」として落ちていないんです。その場合、データの取得方法から情報提供します。
製造系なら、後からデータを取ろうとしても無理がない。全国40箇所で、300ラインなら、必要なデータが1日で12,000データ集まりますよね。費用対効果が出やすいので、設備投資にも積極的な印象です。

かめきち
webだとデータがあるので、そこに溺れがちですよね。

そうですね。製造業は必要とわかればデータを取ることにも積極的なのでやりやすいです。必要なデータや自動化のポイントは、3日間、実際に製造ラインに立たせてもらえばよくわかりますね。
けど、webは実態がないからわかりにくい。あと、ABテストだったら、すでにやりまくっているし…我々のところにくる依頼は、もう絞りかすですよ(笑)

マイナス埋める方が成果出しやすい。製造業は何もしてないところからのスタートなので、非常にやりやすいです。

かめきち
具体的な事例をお聞かせいただけますか

たとえば、カタログを作っているある会社さん。カタログの誤字脱字、型番の統一をするAIを作ってというリクエストがありました。

そんなのwebならどこでもやっている技術ですよね。すぐに成果が上がります。カタログを1つに対して3日かかっていた校正が5分で終わるようにしました。さらに、それが1000冊あるので、3000日分のコストカット。また、誤字脱字は刷り直しや再輸送のコストも大きい。これで1億の利益が増えました。削減効果が大きいです。
web系で試したものを、リアルなところで実装しています。メーカーさんは良くも悪くも頼りっきりになってくれるんです。Webでの成功実績を踏まえて、メーカーさんの全体を設計する。だからWeb系の利益は薄いけど、実験的なチャレンジと位置づけています。

かめきち
最先端の技術って使われてないんですかね・・・。

そんなことないですよ。うちの事例では出せるものはないですが、三井住友さんはクレジットの与信審査にディープラーニング導入していますね。SVMみたいな直近3ヶ月の合計値ではなく、生で数字を入れられるので効果は抜群です。データ量が膨大にある三井住友さんクラスならできますよね。

かめきち
本当に忙しそうですね

ありがたいことに!
けど、人がいないです。専門性が必要ですから、誰でも良いというわけにはいかないので。

かめきち
2045年までに実現したいことは?

R&D部ではなく、ちゃんと基礎研究からできる研究機関を完成させ、走らせたいです。ポスドクの子が二足のわらじをはきながら基礎研究ができる機関を。そこでポスドクの子を受け入れ、やりたい研究をやらせたいです。私も、もともとポスドクで苦労したので・・・。

社内の研究機関だと、社内データしかさわれないですし、良くも悪くも事業に近いのでROIの観点がすごく短くなってしまう。けど、私たちは外注。いろんなデータをさわれますし、長い目でROIを見ることができます。例えば、「この研究は5年後にぜったい金になる」という研究は、私の判断でやらせてあげられます。研究成果も学術の場で発表して欲しい。

かめきち
それだと技術が流れてしまいませんか?

世の中で広く知見が活用されればいいと思います。けど、やっぱり、作った人が一番詳しいから、一番おいしい依頼だけが私たちのところに来ると思っています。学術界とノウハウが共有化されていて、オープンにしていきたいですね。

かめきち
クリーク・アンド・リバー社さんとジョイントベンチャーをつくりましたね。

日本では、求人と新卒のマッチングがうまくいっていないと思います。ある大手のお客さんから「AIやりたいんだけど、社内にできる人いなくて」とリクエストがありました。だけど、その会社さんには、私の研究室だった子が入っているんですよね(笑)。彼と連絡を取ると、「今は人事やっている」とのこと。これが大手企業の「総合職」採用のよくないところ。総合職として入社すると、研究のキャリアはストップ。本来的には会社の中で、必要とされるはずなのに、もったいない・・・。

特に私たちの研究分野はROIが挙げられるテーマです。ちゃんと、専門職として受け入れられる社会をつくりたいと思ってつくりました。

編集後記

「人工知能」を業務のどこに用いればROIが最大になるか。思い込みではなく、課題ベースで相談をすると思いもよらぬポイントでの活用ができるかもしれませんね。
また、AI人材のキャリアとビジネスをうまくつなぐ構想に、学術界と産業界のさらなる発展が期待できると感じました。

構成:くぼち(AINOW編集部)

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