隠れAI大国イスラエル!実はAIの基礎もイスラエルが築いていた!?

AppleやAmazon, Intelやアリババなど世界的な企業が数々、イスラエルに研究拠点をおいています。その数はなんと300社を超えています。

そのイスラエルは、今となってはIT大国とも呼ばれ、特にセキュリティの分野などの高い技術が世界的に評価されています。多くの企業が研究拠点を置くイスラエルの魅力とは何でしょうか?

今回はイスラエルが世界中の注目を浴びる理由を『スタートアップ大国イスラエルの秘密』の著者であり、株式会社イスラテックを経営する加藤清司さんに伺いました。

IT大国としてのイスラエルの歴史

イスラエルは中東に位置する四国程度の大きさの国です。人口は約868万人(2017年5月 イスラエル中央統計局)と東京都の人口よりも小規模の小さな国です。

しかし、そんなイスラエルに多くの企業が注目し、さまざまな研究拠点が置かれています。

イスラエルの首都 エルサレムの街並み

なぜイスラエルはIT大国となり得たのでしょうか。

加藤さん:1991年に起きた旧ソ連の崩壊が大きいでしょう。100万人がイスラエルに流入しました。そのうち10万人くらいがソ連で宇宙開発などに携わっていた技術者でした。これは、私の推測なのですが、その技術者たちが継続して最先端の研究ができる仕組みを作ろうとしたことがきっかけだと思います。これによりイスラエル全体の技術レベルが向上しました。

当時、600万人ほどだった規模のイスラエルに100万人が流入してくる。日本でいえば、2000万人近くの人口がいきなり増えることに等しいインパクトです。しかし、この人口流入によって、イスラエルの先端研究の基盤が整いました。

また、加藤さんによると、イスラエルはどうしてもIT大国とならなくてはいけない理由があったといいます。

加藤さん:イスラエルは囲まれている4つの国と戦争をしていたこともあり陸路での貿易ができませんでした。また、国内の市場規模が小さいため、貿易をして外貨を稼がなくてはいけません、そこでITの存在が大きくなったと考えています。

イスラエル周辺の地図(AINOW編集部作成)

まさに地の利。国内に大きな市場を形成することが難しいだけでなく、陸路での貿易にも制限があったのです。しかし、その制限がかえってイスラエル国内でのITへの意欲を掻き立てるきっかけにもなりました。

しかし、IT技術の研究開発を積極的に行っても、売り先がいなければ意味がありません。イスラエルはどのように技術の販路を広げていったのでしょうか?

加藤さん:問題は技術だけ作っても売り先がないことでした。ただ、尖った技術をビジネスにしていく際に、リスクを取らなければいけない。そこで、国がまず、ベンチャーキャピタルの役割を果たし、リスクマネーをスタートアップへ供給する。そうするとそれに民間の投資会社がついてくる。これが、今のイスラエルのベンチャーキャピタル産業の基礎になっています。

それと並行して、グローバル企業をイスラエルに誘致することをはじめました。

そうしたスタートアップが、グローバル企業からの買収を狙うことで、ベンチャーキャピタルに投資したお金がしっかり戻ってくるというサイクルが生まれます。1998年にICQというメッセンジャーの元となる企業がAOL社に2億8700万ドルで買収されたことがモデルケースになりました。

一度企業が買収され起業家が富を得ると、次は他の企業への支援側に回ることでさらなる投資、その後の買収に繋がります。そんなエコシステムが2000年代に入る頃からから発展していきました。

まさにピンチはチャンス。限られた環境でイスラエルの人々は、国際社会の中で生きていく術を考え、実行してきたのです。

イスラエルはAI大国でもあった!?

そして、そんなイスラエルの魅力はなんといっても、その「数学を基礎とした技術力」です。旧ソ連からの技術者の受け入れや研究・開発の環境整備により、数学的なバックグラウンドが強く、その技術は世界で活用されています。

昨今、機械学習技術の台頭によりAIのブームが起こっています。この機械学習においても数学的な知識は必須で、多くの学習コンテンツの中にも数学のカリキュラムが盛り込まれています。

なんとAIの有名なアルゴリズムはイスラエルが発祥のものもあるといいます。では、隠れAI大国としてのイスラエルの魅力を紐解いていきましょう。

ーー数学の研究が盛んなイスラエルですが、やはりAIの研究に盛んなのでしょうか?

加藤さん:イスラエルの人々は時代の流れを読むのが早く、今の機械学習がAIと呼ばれる10年以上前から、グリッドコンピューティングとして研究開発が盛んでした

今、第三次AIブームが起きていますが、1980年代、第二次AIブームの終わりにジュリアパールがベイジアンネットワークを提唱しており、今のAI・人工知能技術の発展の基礎づくりに貢献しました。当時は見向きもされませんでしたが、20年ほど経ってからコンピュータのスペックが上がり、統計学的な手法で処理することが可能になりました。

他にもエルゴード理論など、突飛なアイディアを時代に先駆けて構想していました。イスラエルの人々は物事を本質的に捉えたり、将来の傾向を読み解いたりする力が強いんです。

ーーイスラエル企業の研究ドメインはどのようなものが多いのでしょうか?

加藤さん:AIやIoTを支えているコンピューティングや暗号理論に強いのがイスラエルの特徴です。

グローバル企業が発祥の有名なサービスであっても、その裏を支えている仕組みなどはイスラエルが発祥なことも多く、見えないところでイスラエル企業の貢献が大きいんです。

また、数学的な知見が強いため、微分や積分などAIに関連する知見もあり、無線技術を活用した画像認識なども得意領域になっています。AIだけでなく5Gなどの領域でも研究は盛んで、グローバル企業がこぞってイスラエルの技術を求めている理由になっています。

日本企業よりもリスクをとって挑戦するイスラエルの人々

一般的に、日本はAIの開発が、アメリカや中国などの国よりも遅れていると言われること多くなりました。確かに世界的に展開するIT企業も少なく、国際的な立ち位置が曖昧なのは事実かもしれません。

ではイスラエルと日本を比較してみると、どんな違いが見えてくるのでしょうか?

ーーイスラエル企業にはどのような傾向がありますか?

加藤さん:AIやブロックチェーンなど、これから流行る分野を攻めるアグレッシブな性格の人が多く、リスクを積極的にとる人が多いのがイスラエル企業の特徴です。

例えば、「スパークビヨンド」というAIエンジンを開発する企業は、AIの領域で検索エンジンのGoogle並の規模を目指すなど描いているビジョンが壮大です。

また、国内に市場がないため、サービスをリリースしたその日から何十億という海外市場への展開を考えられることができます。

ーー日本企業の印象とはかなり違いますね。

加藤さん:日本企業は非常に組織的な印象です。一度動けば早いのですが、動き出すまでが非常に遅いです。

また、日本企業は本音と建前を使い分けます。そして、「何を言ったか」よりも「誰が言ったか」という部分だけで物事を判断することが多いです。

それに対して、イスラエルではストレートで積極的に意見を言うことが多いです。そして「誰が言ったか」に関わらず、「何を言ったか」という本質的な部分で判断するのが特徴です。

徴兵制という制度が、1つ大きく影響しています。たとえば、生死の境目となる戦場など厳しい状況下で隊長の判断に間違いがあれば、自分の命の保障はされないため、。若者であっても積極的に上長や隊長へ発言せざるを得ません。発言そのものの本質が問われる理由は、軍隊という厳しい状況に置かれることが影響しているからでしょうか。

このようにイスラエルの企業のマインドは、本質を見て判断することやリスクを取っていくマインドが強いことがわかりました。

では、ひとりひとりの能力ではどのような違いがあるのでしょうか?

ーー能力的には違いはありますか?

加藤さん:セキュリティなどの分野で、イスラエルのトップ人材と日本のトップ人材を比べてみると、実はそれほど才能に違いはないかもしれません。

しかし、トップ100人というようなある程度の優秀な層になるとイスラエル企業の方が日本企業よりも優秀だと言えます。平均してイスラエルのほうが、技術力がある人が多いと思います。

国民性だけをとっても、大きな違いがあることがわかりました。特に「徴兵制」という独自の制度が本質的な意見を尊重する文化につながっていることは意外です。世界にユニークな技術力を提供し続けるイスラエルの人々からは学べる部分も多いかもしれません。

加藤さんおすすめのイスラエル企業

最後にに加藤さんが注目しているイスラエルの企業について教えてもらいました。

  • SparkBeyond
    データの意味を理解し、さまざまなパターンを発見するリサーチエンジン「SparkBeyond」を提供する企業。
  • Quantum Machines
    量子コンピュータのオペレーションやコントロールシステムを開発し、量子コンピューティングを実現しようとする企業。
  • Epsagon
    サーバーレス開発のためのツールを提供する企業。AWS Lambdaをサポート。
  • Altostra
    サーバーレスのアプリケーションを早期に取り入れるためのGUIツール。

まとめ

イスラエルでは、年に約1000社ほどの企業が生まれているそうです。まざまなビジネスモデルや思想が誕生しては消え、目まぐるしいスピードで進化しています。

旧ソ連の崩壊からここ30年の間に隠れAI大国に成長したイスラエル。その強みである数学的な研究は、私たちの身の回りで活躍するさまざまなサービスを背後から支えています。また、積極的に新しいことに挑戦する姿勢がグローバルに通用する競争力の源泉を生んでいます。

現在もAIの分野ではさまざまな最新技術が生まれています。その急速な発展の中で、これからはイスラエルの貢献にも目が離せません。

加藤さんは、イノベーションの国 イスラエルと日本のビジネスの懸け橋となるためにさまざまな活動をしています。

加藤さん:2019年9月に日本→イスラエルのチャーター便が飛びますが、ビジネス利用がどんどん増えていくことで、直行便就航につなげていくために微力ながら貢献できていければと思います。2019年、7月9月にはイスラエルへのビジネスツアーなども企画しています。

興味のある人は、さらにイスラエルについて、ぜひ調べてみてください。

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