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2017.12.03

医療とAI (ARアドバンストテクノロジ株式会社 岩田良之氏)

最終更新日:

2017年 アドベントカレンダー企画「AIの未来予測」の12/3分の記事です。
はじめまして、私はARアドバンストテクノロジにて医療事業を担当しています岩田です。
これまで調剤薬局、医療機関、放射線分野などを約20年間経験し、2016年から現職。AIを利用し医療機関に効率化をもたらすシステム開発に取り組んでおります。

昨今、医療分野にAIを導入するという動きが政府や民間企業を中心に、積極的になされています。皆さんはどれくらいご存知でしょうか?

例えば、PACS(Picture Archiving and Communication Systemsの略で、X線写真・CT・MRIなどの病気の診断と治療のために撮影された写真を電子的に保存し、院内で確認するシステム。以前の病院はすべての画像を一旦フィルムに印刷し、フィルム庫に保管していましたが、現在は、サーバー内に電子的に保管されています)などでは、業界大手の富士フィルム株式会社は、富士フイルムのAI技術と、静岡がんセンターの持つ約1,000例の確定診断のついた豊富な症例データベースを組み合わせて開発し、CT画像の読影を行う際に、病巣をクリックして検索を実施すると、データベースから類似した特徴を持つ症例を瞬時に探しだし、似ている順に複数表示するシステムを提供しています(出展:日本経済新聞。https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1100N_R10C12A4000000/)。

また、サンフランシスコに拠点を置くスタートアップ企業であるEnlitic社はDeep Learningを医療データに応用し、画像診断(CTやMRI等)による悪性腫瘍などの疾患を医師が正確かつ早期に発見するためのサポートシステムを開発していますが、大手総合商社である丸紅株式会社と日本市場向けビジネス構築において独占的業務締結を結んでいます。(出展:丸紅株式会社ニュースリリース。https://www.marubeni.co.jp/news/2017/release/20170801.pdf)。

日本は世界で一番CT及びMRIを保持しており、今後、大いに導入される可能性があると考えています。
政府においても医療分野へのAI活用に関して議論を重ねています。内閣総理大臣を議長とする「未来投資会議」において、「AIを用いた診療支援技術の確立」及び「診療報酬改定においてAIを用いた診療支援に向けたインセンティブ付の検討」と明記しています(出展:第2回未来投資会議配布資料。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h28/shouchou/170116_shiryou_s_4.pdf#search=%27%E7%94%BB%E5%83%8F%E7%AE%A1%E7%90%86%E5%8A%A0%E7%AE%97+2018%E5%B9%B4+%E6%B5%B7%E5%BA%95%27)。

このような状況の中、弊社、ARアドバンストテクノロジ株式会社(略称:ARI)は違う視点で医療分野にAIの導入を計画しています。

ご存知の通り、日本の医療費は少子高齢化の影響を受け年々上昇し、年間40兆円を超えている状況となっています。日本の医療機関においては約7割が赤字経営となっており、診療報酬改定や消費税増税等により、今後も厳しい経営は続くものと言われております。また、少子高齢化は医療費の上昇のみではなく、人材確保という面でも影響を及ぼし始めています。

某居酒屋チェーンは運営する居酒屋の1割にあたる60店舗を閉店させた事も思い出され、3大都市圏のアルバイト・パート募集時の平均時給は1,000円を突破しています。いかなる分野に限らず、さらに医療機関においても同じく、人材確保が困難という問題が起こっていると聞いています。

弊社は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によって公募された「次世代人工知能・ロボット中核技術開発/次世代人工知能技術分野」(調査研究)において「人工知能による診療科推論等の調査研究」というテーマで優秀賞・審査員特別賞を受賞する事が出来ました。この研究は初診患者が病院に来院する際、適切な診療科に案内するのを助け、病院の効率化を実現するものです。患者が間違った診療科に案内され、再予約が必要な事もあり、医療機関において初診患者を適切な診療科に案内する事が、病院経営・効率化にとって大きな肝となっていいます。つまり患者負担・医療従事者負担の改善は経営改善にもつながる!という理念です。

弊社が行う医療機関へのAI導入は、現在、広く行われている様なマッチング画像診断等で「医師の診療・診断を支える」ものとは異なり、「医療機関の黒字化・効率化を支える」ものです。今後、診療報酬改定や消費税増税によって大きな増収を期待出来ない医療機関では、効率化によりどれだけ増益するかという視点と、少子高齢化に時代において、優秀な人材の雇用確保するのかも重要になって行きます。そして、これらを解決していくのもAIの力が不可欠になりつつあります。

もしAIが受付担当者と同じように、初診患者を適切な診療科に案内する事が出来れば、受付担当職員が採用できない場合でも業務に影響が出る事もなく、合わせてコストも安く済ませることが出来ます。

高いレベルの医療を国民に提供するには、経営の健全さは必要不可欠なもので、切り離すことは出来ないものです。安心して働く事が出来る職場があって初めて、医療従事者は最高の質の医療を提供する事が出来ると思います。

多くの業界では「現場の効率化」という視点でAIが導入されています。しかしながら、医療機関においてはまだまだその傾向にないと感じています。今後、日本の医療において「医師の診療・診断を支えるAI」だけでなく、「医療機関の黒字化・効率化を支えるAI」も合わせて導入していく事で、医療費を抑制しながらも、世界の中でもレベルが高い医療を末永く維持し、またその先の高いレベルにまで到達できるのではないか!と思っており、弊社もAIの研究開発・社会実装を通して、その一役を担えればと切望している次第です。

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