HOME/ AINOW編集部 /“学んでも結局転職できないとは言わせない!” キカガクの教え合いプラットフォーム「teach4me」
2018.07.10

“学んでも結局転職できないとは言わせない!” キカガクの教え合いプラットフォーム「teach4me」

最終更新日:

おざけんです。

キカガクはAI・機械学習スクールとして、今まで6000人の人材を育成し、国内におけるAI人材不足解消に大きく貢献してきました。

そんなキカガクが6000人を育成することで感じた課題。それは

スクールで学んでもビジネスで応用できず転職につながらない

ということです。

キカガクが先日発表した新たな取り組み「teach4me」はそんな課題を正面から見つめた奥深い取り組みでした。

その特長はプログラミングを組めることをゴールにしていないということです。

インタビューしたのは吉崎さんと多森さんです。

吉崎 亮介さん(左)
株式会社キカガク代表取締役社長 1991年生まれ、26歳。舞鶴高専、京都大学大学院卒業後、ITベンチャー企業を経て、2017年1月に株式会社キカガクを設立。人工知能関連技術の教育を行う。現在は東京大学やG’sアカデミーなどでも教鞭を執る。設立1年半で受講生は6000名を超える。
多森 康二さん(右)
株式会社キカガク 執行役員COO兼CFO
大学ではプログラミングを用いた素粒子物理シミュレーションを専門とし、
卒業後、大手カラオケ店にて店長業、上場広告代理店にて経理・税務・ファイナンスに従事。機械学習から組織運営・ファイナンスまで分野を問わない広い知見を持ち、現在はteach4meのプロジェクトマネージャーに注力。

学び合いプラットフォーム「teach4me」とは

キカガクの新たな取り組み「teach4me」は教え合いによるオンラインのAI人材教育プラットフォーム。

従来の一般的な教科書を学ぶスタイルを脱却し、学んだことを人に教えることで、ビジネス課題解決のプロセスを身につけられるようにするプログラムです。

teach4meのプロジェクトマネージャー多森さんにお話を伺ってみました。

多森さん

簡単に言うとこのサービスは教え合いをベースにしたAI教育プラットフォームです。

人と人が教え合う場所という意味も込めてプラットフォームという言葉を使っています。

機械学習系のプログラミングスクールは増えてきましたが、一方的に教えるだけだと、教科書を追いかけるだけのスキルしか身に付かないんです。

ビジネスの現場で「このデータがあるから、ちょっと分析しといて」というときに、結局、前工程と後工程をやらずに、学習用の綺麗なデータセットでしか分析をしていないとうまく対応できないことがあります。

お行儀の良いデータだけを勉強するのではなく、人に説明することで、「あれ何でこんな分析しているんだっけ」と、背景や課題解決のプロセスを理解する人を育てたいという思いで、「教える、教わる」プラットフォームを作りました。

おざけん

サービスを出して反響はいかがですか!?

吉崎さん

すごい勢いで応募がきてびっくりしました。

最初は10人くらいをマックスで募集しようとしていたのですが、2日で30人以上の応募が来てしまって…

具体的なカリキュラムは!?

多森さんに具体的なカリキュラムを伺いました。

多森さん

ステップ1からステップ4まで用意しています。それぞれ実際のプロジェクトを模した模擬プロジェクトを用意しています。

模擬プロジェクトの前に基礎的な部分はテキストや動画の教材を用意しています。教え合いは模擬プロジェクト内でカリキュラムに組み込んでいます。

ステップ1では、まずAzure Machine Learningを触って、難しいプログラミングなしで、精度がどれぐらい出るかが大まかにわかるようなイメージです。

ステップ2、3、4と進むにつれてビジネスの実務運用できる(ユースケースを考える)ところまで持っていきたいと思っています。

転職まで考えているのでステップ3、4辺りで、見える成果物を残せるようにしたいと考えています。

teach4meはエンジニアリングはある程度GUIを駆使することで、簡単なプロトタイプを残せる人材を発掘しようとしていることが特長です。

GUI : コードを書かずにアイコンやメニューが表示されマウスなどで操作できるユーザインターフェースのこと。スマートフォンの画面もGUIの一つ。

吉崎さん

機械学習のプラットフォームを使えば、GUIでデータだけ準備しておく必要はありますが、環境構築などは基本的にいりません。デプロイ(実装)までGUIで操作可能なんです。

結局ポートフォリオで見るのって、成果物ですから細かい工程はGUIで一貫して取り組み、アウトプットをとにかく出すというところを重視しています。

AIのプログラミングスクールを卒業してもAIを仕事にする人が少ない

おざけん

このサービスをリリースするにあたって、今まで6000人を育成することで感じていた課題があったのでしょうか!?

吉崎さん

そうです。

キカガクの卒業生に「AI使えていますか?」と聞くと「いや結局できていないんですよ!」という声が多かったんです。

まずそれを解決したいというのが、teach4meを始めた最初のモチベーションなんですよね。

結局、この問題を分解してみると理由は「会社に仕事がないから」「AIの案件がないから」という、外的な要因なんです。仕事がもし降ってくれば、そのために「勉強をしなきゃ」とモチベーションが上がりますよね。まずは仕事がある環境を作ることが大事なんです。

吉崎さん

また、研修や入門編の本を読んで学ぶ内容と、実務が乖離しすぎていて、どうしても学びきれないからこそ、自信が出ないという問題もあります。

「カリキュラムが実ビジネスと乖離していて、学び続けるモチベーションが維持できない。」

これが専門家が少ないAI業界で起きている問題なので、その解決のために考えた答えが「teach4me」なんですよね。

おざけん

教え合うことをカリキュラムに組み込むことで、モチベーションを管理するということなんですね!

AIを教えるスクールはとても増えてきていますよね。やはり他社を含めた全体の課題として転職する人は少ないのでしょうか?

吉崎さん

転職しましたという人は今まで見てきた中で本当に数人ですね。教えること=教育じゃないと常々感じています。

自己研鑽で終わってしまう人がとても多いんです。今まで見ていて99%はそうじゃないかと思います。もしかしたらこれから転職するかもしれませんが笑

おざけん

転職がしづらい理由としてAIのプロジェクトが少ないという問題もあるのでしょうか?

吉崎さん

完全にそのとおりだと思います。ビジネスサイドが企画できないので、結局エンジニアサイドに仕事が回ってこないという流れです。

だからこそ、エンジニアサイドの前にビジネスサイドを育てないといけません。企画をして予算を取ってくる。そのためにしっかりとしたプロトタイプを作る。実はteach4meのターゲットはこの部分なんです。

teach4meのターゲットは企画。そのためにプロトタイプを重視

吉崎さん

エンジニア側の人に「会社にAIの予算がない」と1年間、何度も言われてきました。予算を取ってくるためには、「精度が出ているかどうか」「見込みがあるかどうか」を検証しないといけません。

エンジニアの人をアサインするためには、まず予算を採らないといけないので、企画の人がまずプロトタイプを作って、どんなデータを揃えておけばいいかを考えられる必要があります。

プロトタイプをパパッと作れることが、エンジニアを養成するための1番大事な所なんです。

私たちのようにAIの教育系の人は、ほとんどエンジニア育成をしているんですね。

これって矛盾だなって思って…

なぜ、この問題が起きるかというとAIって、テクノロジーから来るところが多いので、技術者の人がAIスキルを教えるときに目の前の自分の技術を教えちゃうんですよ。

振り返ってみて「結果出せるところが1番大事だな」と思いました。

エンジニアリングより、問題設定とか、ビジネス側で解決できることに注力するように工夫しました。

今、Azure Machine Learningなどのフレームワークに手元のデータをあげてみたら、どれぐらいの成果がでるのかがわかるんですよね。

それをプロトタイプと呼んでいて、プロトタイプさえ作れれば、あとはエンジニアを養成していけばいいわけなんですよね。だからこそ「teach4me」のゴールとしていることは、プログラミングを組めることではありません。まず、上司から予算を取って、AIのプロダクトをブーストするためのファーストプロジェクトを作るためのカリキュラムになっています。

転職にもつながる「teach4me」なぜ受講生同士が教え合うのか

吉崎さん

教える人が不足している問題があります。

シリコンバレーで働いている人って、ほとんど中国人とかインド人の優秀な人が流入していますよね。それなら「日本も教育よりも外国人を入れていけばいいじゃん」と言われたことがあります。

でもアメリカのほうが給料が高いし、わざわざ日本語を勉強してから、日本に来ないといけないからなかなか実現しづらいと思います。

だからこそ、もし日本を盛り上げるというミッションを、もし掲げるとすれば日本人を育てる以外に選択肢がなかなかないわけなんですよね。それか日本人の公用語をすべて英語にするか笑

やっぱり、日本人を育てないといけない。そのためには講師が不足している。講師が不足しているという問題を解決するには、講師を増やすしかないわけなんですよね。

じゃあ専門家を増やせるかというと、国の予算も当然ついてないから、増やせない。

教育って、それこそ専門家に教えてもらわなければ知識がつかないのかというとそうではありません。

バトンを渡し合うような教え合いこそが、講師不足が解決できると思っています。これがteach4meの醍醐味ですね。

おざけん

講師不足は確かに問題ですね。知識のある人が教える側に回りづらいという背景がありそうですが…

吉崎さん

技術力を付けると転職できるチャンスになるので、エンジニアリングを極めれば、エンジニアとして働くほうが、楽しくなってくるんですよね。

となると講師の数を担保するのはとても難しいです。

教えるのが好きじゃない人もいますし、AIを教える事で極められてしまったら、今度は転職してしまいます。

だからこそ、我々で優秀な講師を保持するのは、なかなか無理だよねと感じています。

では、転職してビジネスにAIを適用していきたいのであれば、そのプロセスを「teach4me」に入れてしまおうと考えました。カリキュラムに教える過程も入れながら、転職にもつながるような工夫をしているんです。

おざけん

「教える側が教えられる側の気持ちを理解できる」という教え合いならではの利点があると思います。やはりわからない人の気持を理解することが大切なのでしょうか。

吉崎さん

最初は私もわからないという気持ちがわかることで、ピンポイントで教えることができていました。しかし、だんだんわからない人の気持がわかりづらくなってきてしまいました。

プロフェッショナルが教えるよりもわからない人の気持ちがわかる人が教えるべきなんですよね。教える直前まで、まだ素人だった人たちですから。

しかし、ちゃんと教える側のサポートもします。教える側がどうしてもわからないところなどは私たちが入っていって、それからまたカリキュラムをブラッシュアップしていくことも考えています。

多森さん

教えるためのサポートはしっかりとやっていきます。最初は教えているときに何かあっても大丈夫なように見ていようと思います。

その中で、教えてもらう側の人から質問した際に、教える側の人が、答えられないポイントを目の前で見ていく過程で、どんなガイドラインが必要だろうと考えていこうと思っています。

おざけん

何も知らなかったという人だからこそ、「ここは、難しいよね」「僕もここでつまずいたんだよ」と教えることができるようになるんですね。吉崎さんや多森さんが部活の顧問だとしたら、教える側は先輩みたいなイメージですね!

今後の展望

吉崎さん

1人が2人に教えれば、2人が4人に教えて、4人が8人に教える。

どんどんteach4meの学びの輪を広げていきたいと考えています。だからこそ、かなりの低価格でご提供できるようにしました。

今までうまく教育プラットフォームに馴染めず、なかなか転職するチャンスがなかった人も、teach4meでは学べる機会を提供できるようにしていきたいです。

またカリキュラムをどんどん増やしていきたいと考えています。教え合いの中で、さまざまな課題が今後見つかると思います。そこから改善を加えてカリキュラムをブラッシュアップするだけでなく、卒業生が新しいカリキュラムを作れるようにするなど柔軟にネットワークを構築していきたいと考えています。なにせ今AIの教育業界にはカリキュラムが足りていませんからね笑

おざけん

確かにカリキュラムは不足しているように感じます。入門編ばかりありますよね笑

吉崎さん

応用編とかアドバンスコースなどを出すんですけど、全然人が集まらないのでビジネスとしては成り立たなかったんです。teach4meのネットワークを広げて応用カリキュラムも幅広く作っていきたいと思っています。

またデータの提供や転職先などでさまざまな会社とも協力していきたいです。

最後に

AIの教育というと、どうしてもエンジニアリングに寄ってしまいます。数多くの機械学習教育プラットフォームが出てきています。出版される本もエンジニアリングの入門編が数多くあります。

AI業界内で顕在化して来たニーズは、会社の中でいかにして予算を取るか。そこからすべてのAIプロジェクトが始まります。

予算を取るためには、機械学習独自のプロジェクトの特長を掴んだ上で、期待値の調整をしなければなりません。そのスキルを学ぶサービスがなかったんですよね。

橋渡し人材といってエンジニアリングはできなくても、ディープラーニングのことを理解してビジネスへの応用が進められる人が求められています。

日本ディープラーニング業界理事の佐藤さんも同じようなことをおっしゃっていました。

【佐藤理事インタビュー】ディープラーニング協会は国内のAI状況をどう見ているのか

今回取材したteach4meも全く同じように、それぞれの業界にAIをしっかりと実装できる人を養成するんだという意気込みが感じられました。

確かに機械学習エンジニアは必要ですが、まずは現場の人がある程度機械学習のことを理解して、最初は外注でもいいのでとりあえずプロジェクトをスモールスタートで始める。そしてそれがスケールするにあたって、社内で機械学習エンジニアを採用していく。

こんな柔軟なプロセスが求められていると思います。

本当にAIを社会に実装できる人、エンジニアリングだけじゃなくビジネス課題を見据えた人材。
その育成ができるのがteach4me独自の強みだと感じました。

無料メールマガジン登録

週1回、注目のAIニュースやイベント情報を
編集部がピックアップしてお届けしています。

こちらの規約にご同意のうえチェックしてください。

規約に同意する

あなたにおすすめの記事

生成AIで“ウラから”イノベーションを|学生起業家が描く、AIを活用した未来

特許技術×AIでFAQを次のステージへ|Helpfeel

GPUの革新からAI時代の主役へ|NVIDIA

あなたにおすすめの記事

生成AIで“ウラから”イノベーションを|学生起業家が描く、AIを活用した未来

特許技術×AIでFAQを次のステージへ|Helpfeel

GPUの革新からAI時代の主役へ|NVIDIA