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おざけんです。
最近は学生の間で長期的にインターンに取り組む人が増えてきました。AI系でいうとデータサイエンスを学んでいる学生が企業で研究開発をするケースが多いでしょうか。
多くの学生は大学ではリアルなデータを扱うことができないという不満がある人も多いようです。インターンとして企業で務め、実データを扱うことで実践的なスキルを身に着けている人も多くいます。学びを教科書ではなく現場に求めている人が多いんですよね。
データサイエンスの重要性が高まったのはAI・機械学習が急速な浸透でしょうか。その教育体制構築のニーズが高まっています。そして、大学教育でもデータサイエンス関連のプログラムが積極的に組み込まれ始めています。
先日、武蔵野大学のデータサイエンス学部の設置がアナウンスされました。2019年度から本格的に始動します。
今回は、教授陣へインタビューしてきました。インタビューを通して、データサイエンス学部の機械学習への想いや、真に使える教育について考えさせられました。
目次
2019年に設立!武蔵野大学データサイエンス学部
話を伺ったのは教授陣のみなさんと熊谷さん(企画部でデータサイエンス学部の設置を担当)です。
武蔵野大学データサイエンス学部はデータサイエンスに関わる広範な人材を育成することを目的として、2019年の設立が決まりました。今は定期的に集まって細かなカリキュラムの策定などを行っているそうです。
「データサイエンス」学部ということでデータの分析や統計分析はもちろん、そこから派生してIoTやAI、さらにはVR(構想中)などまで派生させた学びを提供します。特に注目すべきは、アルゴリズムに偏った学習ではなく、ビジネスでの活用を想定したプロジェクト形式の授業を中心に進められていくということです。
上林先生:「2017年の初めに情報系の学部を作りたいという話が出て計画が始まりました。武蔵野大学は毎年新しい学部を設置しています、時代の流れに合わせて情報系、データサイエンス学部の必要性を感じ、設立に至りました。教員もすぐに集まり、2018年度から着任できる6人は早めに着任し、詳しいカリキュラムを作っている最中です。」
単なるアルゴリズムを学ぶ場ではない「未来創造プロジェクト」
データサイエンス学部の中でも目玉となる授業が「未来創造プロジェクト」です。年次で隔たれない、さまざまな学年が参加する縦のコミュニティを構築し、さらに学外の企業や官公庁を取り込むことで、リアルなスキルを学べるようにするといいます。
プロジェクトはいくつかに分かれており、「サービスデザイン」から「ビジネスマーケティング」など実用的なものが多いことが特長です。
上林先生:「 1年生の後期からプロジェクト型授業を取り入れようと思っています。目的を達成する中でスキルや知識を身に着けてほしいと思っていて、プロジェクトは強力な教育ツールだと思っています。」
上林先生:「未来創造プロジェクトは2〜4単位のカリキュラムで、1年生の後期から学べます。学年で分けられない学習コミュニティが特長です。学年に関係なく受講できるようにすることで縦の関係を構築していこうと思っています。」
佐々木先生:「未来創造プロジェクトは順番に履修してもいいし、いくつか同時に並行して履修することも可能です。企業や官公庁との共同研究の中で実データを取り入れていくことも考えています。」
ーーどんな企業とのコラボを考えているのでしょうか?
上林先生:「地の利を活かしていきたいと考えています。データサイエンス学部が設置されれる有明、お台場地区はが先進的企業が集まる地域です。
データサイエンティストが今すぐにでも欲しいという企業がとても多いので、教育連携も模索しています。」
ーーなぜ「未来創造」なんですか?
中西先生:「 データサイエンスに関するツールは揃いつつあり、調べれば大体の情報はWebで探すことができるようになりつつあります。新しいアルゴリズムはGitHubに載っていて、ダウンロードして使えるようになってきました。
私たちはその次を考えないといけないと思っています。アルゴリズムを使って何をするのかを考えていく、そのために未来創造プロジェクトをやっていくことが大事だと思っています。」
3つの専門コースをカスタムして自分にあった将来を構築する
データサイエンティストは比較的新しい職業です。学生がカリキュラムを決めるときには将来的にどんなスキルが必要になるのか、どんな職業につくのかを具体的に想定することが大切です。
データサイエンス学部は具体的なコースを3つ用意することで、学生が将来を想像しやすくする工夫をしています。
上林先生:「このコースは完全にこの通りに学習を進めるわけではありません。あくまでも履修モデルです。
いろいろな科目が用意されている中で、自分の方向性を整理するために用意しました。メジャーな選択とサブの選択を組み合わせて将来を想定しながら学習を進められるようにしています。」
具体的には「AI社会創造」「データサイエンス / AIエンジニアリング」「解析的社会創造」の3つのテーマが用意されています。この中からメインとサブの2つのコースを選ぶことで、卒業後の進路を見据えた履修を決めやすくしています。
ーーこう見るとガチガチの理系やアルゴリズム寄りの内容ではないですよね!?
上林先生:「分析だけしても意味がなく、分析から知見や価値を創出できるところまでが機械学習だと思っているので、価値創出まで含めて学べるようにしていきたいです。
従来の統計学をベースにした伝統的なデータサイエンスでは、21世紀のデータサイエンスにならないと考えています。機械学習をベースにしたデータサイエンス(スマートデータサイエンス)の可能性に全面的にかけていきたいです。」
学生の卒業まで待てない企業も多い…そこで生まれたアジアAI研究所
データサイエンス学部が始動するのは2019年の4月です。学生が2019年から4年間大学に通うことを考えれば、1期生の卒業を2023年3月まで待たなければなりません。
しかし、急速に企業内ニーズが高まるデータサイエンス領域の状態に鑑みて、武蔵野大学は先行してアジアAI研究所(以下AAII)を設けました。
武蔵野大学はAAIIを通して企業との連携やアジアを拠点とするエコシステムの構築にも取り組んでいます。
AAIIはデータサイエンティストやデータ保有者、学生やビジネスパートナーが集う場所で、それぞれがAAIIを中心に協力し合い、共同研究やビジネス創造に取り組むといいます。
熊谷さん:「2018年の4月1日に設立しました。データサイエンス学部の1期生が卒業するのは4年後なので、それまで待てないという企業が多いんです。
社会人教育のニーズが大きかったことが設立の大きな理由です。データサイエンス学部として、いろいろな企業との提携や共同研究も一つの柱になっているので、AAIIとして今年から取り組んでいこうと思っています。」
佐々木先生:「アジアの提携拠点と共同研究やコンソーシアムのプラットフォームにしていきたいと思っています。アジアの学生を教育してインターンとして呼び込むプロジェクトなども企画しています。」
ーーなぜアジアに焦点を当てているのでしょうか?
熊谷さん:「 東南アジアが武蔵野大学データサイエンス学部のマーケットだと考えています。これからは少子化などで国内の学生の20%くらいは留学生になるかもしれません。
そのときにアジアを中心に学生を集められたらいいなと思っています。AIのいろいろな技術や学問を広く浸透させて、それを活かしながら共同研究していきたいです。」
佐々木先生:「海外の学生を教育してビジネスの場に出したり、逆にアジアで拠点を作りたい人を繋ぐ場にしたいと思っています。」
編集後記
今回は、初めてデータサイエンス学部を取材しました。
国内の学生は座学を重視した教科書通りの教育を受けがちです。そのため、大学を卒業して企業で働くときには、プロジェクトを一貫して理解できていない場合があり、対応しきれないという話をよく耳にします。
データサイエンス学部に関しても、従来の統計から機械学習の手法まで幅広く学ぶだけの学部だと当初は考えていました。
しかし、取材させていただくと、アルゴリズムの先を見据えた「ビジネスの創出」を目指している学部なんだとわかりました。
1年生からプロジェクト型の学習を取り入れ、社会との接点を積極的に設けていく。素晴らしい学部です。
来年、学部がスタートするときには、学生の方にもインタビューしてみたいですね(笑)というより高校生に戻って武蔵野大学のデータサイエンス学部を受験したいと思ってしまいました。
取材にご協力いただいたみなさん。ありがとうございました。
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