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おざけんです。
アクセンチュアの最新調査によると、 AI・人工知能などデジタル技術によってもたらされるべき経済成長が、 時代のニーズに合わない教育や企業研修システムによって達成できない恐れがあることが明らかになりました。
G20のうち14カ国では、 人工知能・AIやアナリティクスなどの先端技術への投資により、 今後10年間で合わせて11兆5,000億ドルのGDP成長が見込まれます。 しかし、 これらの国々の企業や教育機関などが新しい学習アプローチを積極的に取り入れない限り、 求められるスキルとのギャップを埋めることは難しく、 経済成長の可能性を逸してしまう恐れがあることが判明しました。
目次
求められるスキルに対応できなければ、 新技術がもたらす経済成長も限定的に
調査レポート「求められる教育の変革(It’s Learning. Just Not As We Know It)」には、 企業が将来の労働力を把握し、 スキル習得の戦略策定に役立つ分析が含まれています。 このレポートは、 先端技術によって職務や役割がどのように変化するかを明らかにした上で、 新たな職務や役割の実行に求められる新しいスキルを特定しています。 さらに、 これらの新しいスキルを効果的に習得するには、 教育や企業研修を3つのアプローチで変革することが必要であると指摘しています。
このレポートによると、 労働時間の51%(対象14か国平均)および54%(日本単独)は、 先端技術による高度化の余地があることが分かりました。 また、 労働時間の38%(14か国平均)および36%(日本)に自動化の可能性があるものの、 その影響は職務内容や地域によってさまざまで、 高度化機会を増やし、 リスクを管理するためのターゲットを絞った施策の実行が必要になります。
例えば、 アメリカの場合、 最も多い職種が看護師などのケア&サポート関連の職種であり、 先端技術の導入による生産性を最も高める余地がある分野です。 この職種では労働時間の64%(14か国平均)および66%(日本)が高度化できる可能性があり、 10年以内にこのうち14%(14か国平均)および22%(日本)の高度化が達成される可能性があることが分かりました。 これらの職種では、 今後10年間で140万人もの増員が必要になると見られており、 この需要に対応するには、 先端技術を活用するためのスキル習得に向けた適切な投資が不可欠です。
アクセンチュアのシニア・マネジング・ディレクターで人材・組織管理のグローバル統括であるエバ=セージ・ギャビン(Eva-Sage Gavin)は次のように述べています。 「新しいテクノロジーが人の仕事を助けるか、 自動化するかに関わらず、 労働者のスキル向上は最も緊急性の高い優先事項です。 経営者に求められることは、 研修内容の改善に取り掛かる前に、 自分たちの業界がテクノロジーによってどのように変わるのか、 またその変化に対応するためにはどのような新しいスキルを従業員に習得させる必要があるのかを、 事前に正しく理解しておくことです。 」
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 人材・組織管理 マネジング・ディレクターの宇佐美潤祐は、 「日本におけるリスキルの重要性は殊の外大きいと言えます。 人工知能・AIなどの先端技術を活用できる人材を効果的かつ効率的に育成できなければ、 10年間で5,440億ドルの日本の経済成長が危機にさらされ、 GDPに毎年1.6ポイントのマイナス効果を与えるという調査結果が出ています。 この数値は調査対象14か国の中で、 中国、 インド、 米国、 ブラジルに次ぐ5位の規模となっていますが、 逆に言えばAIの活用余地が大きいことを意味しており、 経営のトップアジェンダとして位置付けて、 取り組みを進めることが重要です」と述べています。
新しいスキルセットの重要性の高まり
レポートによると、 ほぼすべての職種で、 高度な論理的思考、 創造性、 社会的知性、 センシング力といったスキルの重要性が高まりつつあります。 先端技術の導入によって、 これらの動向にさらに拍車がかかることになります。
重要性が高まりつつあるスキルセット
各職種で重要性が高まるスキルセットは、 いずれも座学ではなく、 実践や経験を通して習得されるものです。
各職種で重要性の高まりつつあるスキルセットは、 いずれも実践や経験を通して習得される
アクセンチュア・リサーチのプリンシパル・ディレクターであるアルメン・オーバンソッフ(Armen Ovanessoff)は
現在の学習アプローチは時代のニーズに沿っておらず、 ましてや、 将来にわたって使い続けられるものではありません。 脳科学や行動科学の見地からも、 より有効な学習法があることは明らかです。 未来の職場で必要となる重要なスキルの多くは、 実践や実地経験を通して習得するのが最も効果的です。 企業のリーダーや教育機関は、 直ちにスキル習得に向けたアプローチの抜本的な見直しを行ない、 経験に基づく学習を中心に据えることが重要です。
と述べています。
アクセンチュアでは、 求められるスキルとのギャップ解消に向けて次の3つのアプローチを推奨しています。
- 経験学習の加速化:企業では、 経営陣も巻き込んだデザイン思考の導入、 実課題を題材にしたケース演習、 現任訓練(OJT)、 徒弟制度的実践教育など、 幅広い方法論を取り入れながら経験学習を加速化させていくことが求められています。 教育機関では、 座学での知識習得に留まらず、 プロジェクトベースのアクティブラーニングやチーム学習の場を提供することが重要です。 仮想現実(AR)やAIといった新技術を取り入れることで、 個々の特性に応じた、 エンゲージメントの高い教育を行うことが可能になります。
- 組織ではなく個人に焦点を当てる:教育やトレーニングは、 特定の領域のみに秀でた一定数の人材を輩出することが目的ではなく、 個々の特性に応じた意味のあるスキルセットを習得させることを目標とすべきです。 スキルセットの中でも、 特に、 高度な論理的思考、 創造性、 社会的知性に力点をおいた育成が重要となります。
- AI弱者に学習の機会を与える:高齢者や教育水準の低い労働者、 肉体労働者、 中小企業の社員などは、 職の安定性が低く、 教育を受ける機会も少ないのが現状です。 これらの人々に合わせた施策を導入し、 適切なトレーニングやキャリアパスの提供が必要です。 生活スタイルに合わせて柔軟に学習することができるモジュール式のコースのほか、 自己学習計画のための助成金など、 生涯学習を促す新たな財政支援策も欠かせません。
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 人材・組織管理 マネジング・ディレクターの植野蘭子氏は
日本企業は、 元々現場でのOJTに根差した経験学習や、 幅広いスキルセットを持った人材の育成に長けており、 リスキルの土壌はあると言えます。 したがって、 AI時代において求められる新たなスキルセットを明確に定義することが出来れば、 むしろ、 今後の日本企業の優位性の源泉になる可能性があると考えます。
と述べています。
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