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AIの技術が進んでいる中、「AIが職業を奪うかもしれない」という話もよく出てきます。アナウンサーもそのうちの一つかもしれません。現在、AIアナウンサーが民放の放送でも使用され、注目もされています。
そんなAIアナウンサーはどのような部分が注目されているのでしょうか。今回はAIアナウンサーの仕組みから活用シーン、現在活躍しているAIアナウンサー、そしてこれからの未来についても徹底的に解説していきます。
あなたの家にもAIアナウンサーがくる日が近いかも!?
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目次
AIアナウンサーとは?
AIアナウンサーとは、アナウンサーの役割を担うAIのことを指します。実際にアナウンサーが読んでいるニュース音声を、人工知能エンジンで機械学習を行い、様々なニュースのシーンで原稿を読み上げるバーチャル・アナウンサーです。
用意された原稿を人間らしく読み上げることで有名となったAIアナウンサーですが、実はAIアナウンサーよりも前から既に似た機能を持つAIが存在していました。
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文章を音声にする機械はすでに存在している
AIアナウンサーが登場するよりもずっと前から、決められた文章を音声にする機能は存在しています。
Google音声読み上げ機能はその代表的な例です。2008年11月に発表され、現在まで2021年現在までさまざまな場面で活用されています。
AIアナウンサーは、それらの応用技術と言えるでしょう。
AIアナウンサーの独自性
もちろん、AIアナウンサーも「与えられた文章を音声にする」という機能の面ではボーカロイドと共通しているといえます。
AIアナウンサーが持つ独自性は、そこからさらに先にあります。
膨大なデータから人間の喋り方を学習し、文章を与えるだけで自然な話し方を自動で完成させられるのです。
AIアナウンサーの大まかな仕組み
AIアナウンサーはどのような仕組みで実際のアナウンサーのような自然な表現ができるのでしょうか。従来のアナウンサーと比較して見ていきましょう。
アナウンサーはまず、ニュースの話題に関するさまざまなデータから伝える内容の優先順位、番組の長さを考慮して番組の時間内に情報が収まるように話す内容を考えています。
AIアナウンサーの場合は、これらのノウハウをルール化し、コンピューターによって自動化することによって時間に丁度収まるような適切な内容の原稿を作ります。
また、アナウンサーは視聴者にわかりやすい話し方を意識し、伝えていきます。この際に必要となっていくのは、イントネーションといった「読みのスキル」です。
AIアナウンサーではこれらのスキルを持つために、実際にアナウンサーが読みあげた音声データと原稿を学習させます。学習をすることによって、自由なテキスト原稿を自然なイントネーションで読み上げさせることができるようになるのです。
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AIアナウンサーを一挙紹介
現在、既にAIアナウンサーを展開している会社があります。ここでは各会社が提供しているAIアナウンサーを紹介します。
荒木ゆい
荒木ゆいは株式会社 Specteeが運営するAIアナウンサーです。文章があれば、自動で音声をファイル生成して読み上げてくれます。各テレビ局や、YouTubeのホリエモンチャンネルなど活躍の幅を広げていて、私たちの身近なところで活用が進んでいます。
こちら記事では、SpecteeのPR担当マネージャーの方がAIアナウンサーの荒木ゆいの“どこが”AIなのかを分かりやすく解説しています。
ヨミ子
ヨミ子は、NHKが開発しているAIアナウンサーです。
実際のNHKの番組「ニュース シブ5時」のコーナー「気になるニュースランキング」にt出演しています。
Google アシスタントやAmazonのEcho端末に呼びかけるとヨミ子に繋げることができ、聞きたいジャンルを選んでヨミ子さんにニュースを選んで貰えます。
アオイエリカ
アオイエリカは日本テレビが研究・開発しているアンドロイドです。2018年の日テレの合同入社式に出席したことでも話題になりました。
アオイエリカは音声を読み上げるだけでなくて、アンドロイドとしての実物が存在します。その表情まで人間にそっくりです。
エリカチャンネルのYoutuberとしても活躍しています。
今後もグループ会社のメディア等でも活用していくとのこと。
中国のAI アナウンサー
日本の他に、中国でもAIアナウンサーが開発されています。
動画のアナウンサーは、中国の国営通信社「新華社」などが開発したものです。本物のキャスターをモデルにしています。
滑らかに中国語を読み上げる姿が、全国人民代表大会という中国最高の立法機関の開幕式に先だって発表され話題になりました。
バーチャルアナウンサー事務所所属のアナウンサー
アナウンサーが事務所に所属するように、バーチャルアナウンサーにも専門事務所があります。ここではバーチャルアナウンサー専門事務所「AICOCONO(アイここの)」に所属している6名のアナウンサーを紹介します。
三園 綾音(みぞの あやね)
三園 綾音は若手の女性アナウンサーです。明るく若々しい声を生かし、テレビ局の朝の情報番から博物館の音声ガイドや企業のナレーションまで、テレビを超えた幅広いジャンルで活躍をしています。
文野 一成(ふみの いっせい)
文野 一成は35歳のベテラン男性アナウンサーです。安心感があり、伝わりやすい声に定評があり、災害時の放送音声や緊急速報時の担当として活躍しています。
廣田 アスナ(ひろた あすな)
廣田 アスナは親しみやすい声を持つ女性アナウンサーです。情報番組のアシスタントとして活躍することがとても多いです。
白鳥 茉莉(しらとり まり)
白鳥 茉莉はベテラン女性報道キャスターとして活躍しています。明瞭性のある声が特徴です。
胡紋 仙児(こもん せんじ)
胡紋 仙児は語りかけるような優しい口調の男性アナウンサーです。朗読やドキュメンタリーのナレーションを得意分野としています。
AIアナウンサーの活用シーン
メディアでのニュース読み上げ
毎日全国に向けてニュースを発信する人間のアナウンサーの代わりに、AIアナウンサーがニュースを読み上げる事例は増加しています。
多忙な人間のアナウンサーの出勤の機会を減らすことで、仕事の負担軽減、コロナ禍での感染対策にも繋がるなど、メリットの多い活用の仕方といえます。
▼実際にAIアナウンサーがニュースを読み上げている動画はこちら
施設での案内
2019年には、玉川高島屋がアナウンスにAIアナウンサーの荒木ゆいを活用開始しました。
人間の係が行うショッピングセンターのアナウンスでは、人材の確保やそのトレーニングが必要なうえ、アナウンスミスも起こりえます。
しかし、AIアナウンサーを活用したことで、これらの問題を大きく軽減できました。
医療関連
新型コロナウイルスの影響で重労働を強いられている医療関係ですが、AIアナウンサーの導入は、その負担軽減につながっています。
株式会社SpecteeとTOA株式会社は、共同でAIアナウンサーの荒木ゆいを活用した検温・問診システムを提供しました。
神戸市立医療センター中央市民病院では感染対策のため案内を行っていましたが、人間のスタッフが来院者全員にこれを行う負担は小さくありませんでした。
AIアナウンサーを活用することで医療従事者の負担を軽減している代表的な例と言えます。
防災関連
災害時の情報発信には問題点が多くあります。特にスタッフなどの人的な資源が不足する際など、情報発信が不十分になってしまうケースがあります。
このような問題点を改善するために、NPO法人和歌山エフエムはAIアナウンサーを活用しました。人員を減らすことで絶え間のない情報発信を可能にしており、平成29年の台風18号、翌年の台風30号の際などに実際に活躍を残しています。
AIアナウンサーのご利用価格
さまざまな場面で活躍するAIアナウンサーですが、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。
荒木ゆいのご利用価格
荒木ゆいの利用価格は月額9800円となっています。回数制限がされており、20回分の音声ファイルのダウンロードが可能となっています。回数の上限を超えた場合、5回当たり2,450円でダウンロードが可能です。
また、テレビ局およびラジオ局に広く利用してもらうことを目的に、テレビ局やラジオ局には無償で提供されています。
バーチャルアナウンサー事務所ご利用価格
バーチャルアナウンサー事務所の利用価格は、話者1名に対し、1ヶ月当たり30000円となっています。ただし、この価格はメディア向けの価格となっており、その他企業には「AITalk声の職人」法人ライセンスの提供を行っています。
AIアナウンサーのメリット
AI アナウンサーには、人間のアナウンサーに比べてさまざまなメリットがあります。
例えば、実際に人間を拘束する必要がなくなるため、緊急時の放送や店舗・イベントの繰り返す場内アナウンスなどでも活躍できます。
また、人間にはありがちな言い間違えがないこともメリットの一つです。
更には好きな声優の声や、自分でカスタマイズした声で、聞けるようなサービスも出てくるかも知れません
AIアナウンサーのデメリット
AIアナウンサーだけでなく、音声合成分野全体で指摘できるデメリットが2つあります。
1つ目は、同じ言葉でも文章の繋がりによって違う読み方をする言葉についてです。
例えば、「人気」という漢字は、「にんき」と「ひとけ」の2つの読み方ができるうえ、意味も違います。そのため、文脈に応じて判断をする必要があります。
2つ目は、イントネーションの問題です。
私たちは自然に言葉を滑らかに発音していますが、機械に文章を読ませると、どうしても一辺倒な発音になってしまい、聞きづらくなります。そのため、人間の強弱や間の取り方を学習させることがこれからも必要となっていきます。
大量の音声や文章を学習させることで、上記の課題が解消され、AIアナウンサーが実際に活用されてきています。
AIアナウンサーのこれから
AIアナウンサーの読み上げの精度は、かなり実用に耐えうる精度になりました。
また、画像生成によってアナウンサーのデザイン自体から作りだしたり、自然言語処理と組み合わせたリアルタイムでのコミュニケ―ションを可能にしたりなど、他のAI技術と組み合わせた進化にも期待です。
私たち一人ひとりが、デザイン・音声をカスタマイズしたマイアナウンサーからニュースを聞く日も、そう遠くないかも知れません。