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東京メトロのトンネル保守におけるデータサイエンス ーData Science Fes 2019レポート
2019年11月11日、「データサイエンスフェス 2019 ビジネスデベロップメントフォーラム」が東京都千代田区で開催されました。
データサイエンスを軸にビジネスの変革を目指すイベントで産・官・学から幅広い関係者が一同に会してサービスの展示や講演が行われます。
今回は、企業講演の1つとして東京地下鉄株式会社経営企画本部企業価値創造部の川上幸一氏が「東京メトロのトンネル保守におけるデータサイエンス ~現場の最前線で働くメンバーの達成感を創出する~」をテーマに東京メトロのトンネル保守におけるデータサイエンス活用に関してご講演された内容を紹介します。
私たちの足として活躍する東京メトロ
東京都民の足として欠かせない東京メトロ。
私たちに安全で当たり前の日常を提供することを目指し、毎日758万人もの乗客を運んでいるそうです。
東京都民にとっては当たり前の存在となっている東京メトロですが、その裏側には安全運行の追求を目指して社員一人ひとりによる地道な努力が欠かせません。
しかし、地下鉄の保守点検は従来全て人による手作業で行われており、土木技術者の人手不足と業務負担が課題でした。
そこで、それらの課題を解決するために活躍するのがデータサイエンスです。
トンネルの深刻な老朽化と保守管理業務の実態
東京メトロの全長は195kmで、その85%がトンネルを占めています。
そして、そのトンネルの半分以上が築40年以上経ってもなお使用されているのが現状です。
そのため、経年劣化が原因でトンネルのいたるところでひび割れや剥脱などの不良が発生しています。
手作業頼りの保守点検作業
東京メトロの保守点検作業は営業時間終了後に全て社員による手作業で行われていました。
長いトンネルの中を社員が自分の足で歩き回ることで不具合を発見し、そのメモを作って事務所でパソコンに入力します。そして、不具合箇所の補修計画を作成した上で、修復に向かいます。
非常に煩雑で時間のかかる作業であり、不具合の発見から修復に至るまでおよそ3ヶ月もかかっていました。
データサイエンスを活用して保守点検作業を効率化
非効率な業務形態を改善するために東京メトロが活用したのがデータサイエンスです。
まず、東京メトロはトンネルの保守点検作業を効率化すべく、iPadを導入しました。
点検結果をiPadに入力するだけで、システムで結果を管理しアプリでトンネルの不具合をわかりやすい表で可視化することができます。
今まで東京メトロでは不具合に関するデータを個人で保有していましたが、iPadの活用によって不具合に関するデータをシステムで一元的に管理できるようになりました。
コンクリートの剥落をAIで予測
トンネル内のコンクリートが剥離し落下するのは特に危険です。
そこで、コンクリートの落下に関しては、劣化具合のデータからAIのベイジアンネットワークを生かして事前に高い確率で予測しています。
さらに集めたデータから、トンネルを5mごとに区切ってどこが一番危ないかという順位付けを行うことができます。
こういった取り組みから、東京メトロは今まで3ヶ月かかっていた業務をわずか1日で終えられるようになりました。
そして、今まで以上に東京メトロは設備の安全に力を入れられるようになったのです。
まとめ
私たちの足として愛される東京メトロ。だからこそ当たり前の安全を守ることが最重要課題になります。
今まで非効率で時間のかかっていたトンネルの保守点検作業ですが、データサイエンスを活用することで今まで以上に効率的で高い水準の安全を維持できるようになりました。
そして、今後も日々の安全運行をデータサイエンスの力でより進めていくことで、アジアを代表する地下鉄として世界に発信できるようになると期待できます。
慶應義塾大学商学部に在籍中
AINOWのWEBライターをやってます。
人工知能(AI)に関するまとめ記事やコラムを掲載します。
趣味はクラシック音楽鑑賞、旅行、お酒です。