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2020.01.29

AI作曲を仕組みから事例、AIが自動作曲する無料サイトまで紹介

最終更新日:

AI作曲-メリット・デメリット仕組みや事例からAI作曲ソフトも紹介

2019年の紅白歌合戦で、最新のAI技術を用いて容姿や歌声が再現された「AI美空ひばり」が日本中で注目を浴び、AIと音楽業界の関わりに興味を持った人も多いのではないでしょうか。

本記事では、AIと音楽業界の関わりについて、AIが作曲する仕組みから実用例、無料も含めたAI自動楽曲生成サイトを紹介していきます。

▼AI人工知能)について詳しく知りたい方はこちら

AIと音楽業界の関わり

AIはデータをもとに何かを作ったり、分析することができます。その技術は音楽業界の制作からマーケティングにまで関わってきています。

例えば、自分自身が楽器を弾けなくても楽器のデータがあれば誰でも音楽制作ができたり、AIに歌を歌わせたり、ヒューマンビートボクサーが自身のクローンAIとビートボックス即興バトルをすることさえもできます。

また、AIの分析技術を用いて音楽配信サービスではユーザーの好みに合わせた楽曲を表示させたり、AIが将来の再生数や収益性のデータを事前に予測することもできます。AIの参入により、新しいアプローチの仕方がされてきています。

AIの音楽制作における活用シーン

AIの音楽制作の主な活用には2つあります。

以下で具体的に説明していきます。

作詞作曲

既存の楽曲をAIに学習させることで作詞作曲をすることも可能です。

例えば、作曲したものにリアルタイムで音声を自動生成するAIによって歌詞が加わり、曲に即興性や独自性が生まれます。また、その逆で作曲をすることも可能になっています。

実際に、イーロン・マスク氏が設立に関わったOpenAIが発表した「Jukebox」では、音だけでなく曲が生まれた年やジャンルなど細かい要素まで学習しています。そのことによって、聴き馴染みのある楽曲を生成することが可能になっています。

これからさらに、音楽情報を学習すればより特徴的なリズムを、多言語にわたり学習すれば言語も自由に生成することが可能になるかもしれません。

分析

毎日膨大な数の楽曲が生まれる中、期待できる新人アーティストを見つけるのはとても労力がかかります。しかし、レコード会社にとってはビジネスにおいて将来性のあるアーティストを見つける必要性があります。そこで、人力では届かない部分もAIが役に立つと考えられます。

また、既存のアーティストにとっては自分の曲がどういう経緯でどこで知られているのかなどのデータを分析することで、楽曲のマーケティングに活かしているのは音楽業界の基本的な方法になっています。

このように、これからも音楽業界のさまざま場面で、集めたデータをAIによる機械学習で分析したり自動化するのが普通になっていくと考えられます。

AIを音楽制作に活かすメリット

従来では、レコーディングにもたくさんの機器が必要だったり、家で行うにも騒音が気になります。AIによる制作は、いつでも演奏ができることが最大のメリットです。

また、音楽制作にAIを用いることで楽曲の表現の幅を広げることができます。例えば、既存の楽曲をAIが違うジャンルとしてメロディーを制作したり、AIと自分でセッションしたりすることができます。

AIを音楽制作に活かすデメリット

頭の良いAIでも音楽制作においてデメリットはあります。

それは、AIが学習したデータの元の作曲家をまねた曲が製作されるので、独自性がある曲はできないということです。また、音楽の知見をもった人から見ると、AIによる自動作曲はコードとスケールがマッチしていない場合があるということも挙げられます。

作曲は専門知識だけでなく、AIの苦手とする感性を頼りにすることもあります。デメリットを補うために、AIが自動生成した後に、経験者が細かい修正をすることができれば、短時間でクオリティの高い楽曲を制作することは可能になっています。

AIによる作詞作曲の仕組み

では、AIはどうやって作詞や作曲をしているのでしょうか。

作曲

作曲には重要な三要素として、スケール(調)とコード(和音)、メロディ(旋律)があります。そして、現代ではこの3つの要素に加えて「ジャンル」「サウンド」という2つの要素が加わり、主に5つの要素によって作曲されます。

AIが自動作曲する場合、作りたい曲のスケールを決めて大量の曲の譜面をAIに読み込ませ、コードのパターンを学ばせます。そして、曲調のような一定の指示をAIに出すことによって、AIは学習したデータをもとに作曲作業が可能になります。これはディープラーニング(深層学習)の技術を活用したものです。

ディープラーニングの発展により、AIが自ら学習することは可能になりました。ただし、AIは譜面のパターンを学習しなければ作曲することができないため、独創的な音楽を一からつくりあげるということはできません。

音声を合成

作曲のほかに、似たような技術で音声の合成があります。

2019年の紅白歌合戦ではヤマハ株式会社とNHKが共同開発した「AI美空ひばり」が注目を浴びました。これは、ヤマハ株式会社が開発を進めるディープラーニングを利用した音声合成技術「VOCALOID:AI」が美空ひばりさんの歌声や歌い方、話し声の特徴などを再現したボーカルパート・セリフパートを作成して実現しました。

ディープラーニングの活用によって人間の普通の声だけでなく、歌声も再現することができるようになりました。

▶美空ひばりの感動再び!「涙腺崩壊」との声も出たAIとホログラムによる再現手法を紹介!>>

作詞

2017年、地下アイドルの「仮面女子」と電気通信大学がコラボし、人工知能「AI仮面」が作詞した楽曲「電☆アドベンチャー」を初披露しました。

「仮面女子」のメンバーが曲のイメージを各パートに分かれてイラストにし、それをAIが読み込むことで、AIがイラストに関連するワードを選び、歌詞にする企画です。この企画ではAIがオノマトペを数値化する技術と色・イメージから言葉を作る技術が利用されています。

元になった絵

出典:https://www.alice-project.biz/report?id=790

▼歌詞

 星、見つけよう!!まぶしい世界 三日月に響け

 ブルーの川をきらり染める 黄金(こがね)がブルーに照らす時

 白い川と落ち合うバラード 初夏のりんごが憧れそうで

 オレンジ咲いてひらひら 若い星を運ぼう

 デビューで咲こうラブストーリー 月夜のふと影に

 星、見つけよう!!暖かい羽

 おしゃれとデビューに憧れ 好きな話し出して飾ろう

 ずきずき三日月 響いて活躍 Yeah!

 フルーツみたいに染める黄金

 夕日がおしゃれに浸かる時 

 浅いルージュ屈託の時 僕の背中が泣いていそうで

 一つ一つ始めて 星の花火まとおう

 海とデビューに泳ごう Pyuee

 闇を蹴り飛ばそう

 月、追いかけて!!眩しい星 オシャレに極めに飛ぼうじゃん

 すぐ眠らないストーリーで

 かわいいドレス 運ぼうオーロラ!Yeah!

 柚子の羽舞う冬に 星の船シラシラと

 翼の幻 夢見るぞ 明日と詞紡ぎ

 さら舞おう

 夜、抱きしめる! 月を祈りに うさぎを招いて笑おう

 にこにこうぱうぱブルーベリー

 月明かりを 包みこめ

 夜、追いこそう!!詩的な自由

 輝く川がこみ上げる 助け合って月を染める

 いろんな明日

 挑戦、 めちゃくちゃ!Yeah!

 無邪気に伝説!Yeah!

(出典:https://www.alice-project.biz/report?id=790)

AI作曲の有名な実用例

「AI美空ひばり」や人工知能「AI仮面」による作詞を紹介してきました。ここからは、AIが実際に作曲した曲を紹介します。

Daddy’s Car

この曲はソニーコンピュータサイエンス研究所(SONY CSL)が開発したAIソフト「Flow Machines」がThe Beatles(ビートルズ)の楽曲を学習して作曲し、ブノワ・カレが編曲したものです。「Flow Machines」は楽曲データベースから「特定の歌手の共通点」を抽出して作曲するシステムです。

ビートルズの雰囲気がよく捉えられており、話題になりました。

Break Free

この曲は株式会社Amperが提供するサービスがAmper Musicによって作曲され、アメリカのシンガーソングライターであるタリン・サザンが編曲したものです。

この曲は無料でも一部の機能を利用できるAmper Musicが作曲したものですが、とても質がいいことで話題となり、AIによる作曲が人間に劣らないということを示しました。

AIが自動作曲するソフト5選

AIによる自動作曲ができるソフトを紹介します。無料ソフトなので興味があればダウンロードして使ってみてください。

MuseNet

出典:MuseNet

MuseNetでは10種類の楽器から4分の曲を作ることができます。スタイルもカントリーからモーツァルト、ビートルズまで、様々なものを組み合わせることができます。また、シンプルモードとアドバンストモードがあり、自分の目的に合わせて切り替えることができます。

▼ダウンロードはこちらから

Humtap

出典:Humtap

Humtapでは、声でハミングするだけでAIがさまざまな楽曲を使用しながら作曲してくれます。ボーカルを追加したり、スマホの画像やビデオをアップロードして音楽を追加したりすることもでき、様々な機能があります。

▼ダウンロードはこちらから

Computoser

出典:Computoser

Computoserでは伴奏、ドラムなどの楽器を組み合わせてオリジナル音楽を生成することができます。またスマートフォンでも利用することができ、生成された音楽を再生した後、「Good(いいね)」または「Bad(ないね)」を付けることで、次に作曲するときにアルゴリズムが改善され、より良い音楽を生成することができます。

▼ダウンロードはこちらから

Google Magenta tools

Google Magenta toolsではディープラーニングの技術が利用され、声紋特性に応じて各音の相互関係を可視化し、リズムアレンジできる分かりやすくて直感的な操作インターフェースを提供しています。各カテゴリから好きなサウンドを4つ選択し、それぞれ組み合わせた音楽が作成されます。さらに、元の組み合わせをランダムで変えたり、テンポを変更することもできます。

▼ダウンロードはこちらから

CHROME MUSIC LAB

CHROME MUSIC LABには、Chrome Song Makerなど様々な種類の作曲ツールがあります。こちらはAIが作曲するというよりもインターネットツールを利用して自分で自由に楽器をひくことができるサイトです。楽しみながら作曲ができるかもしれません。

▼サイトはこちら

AIが自動作曲する有料ソフト(一部無料版あり)

AIが自動で作曲してくれる有料のソフトでは、無料のソフトよりも機能が充実しています。本格的なAIによる作曲に取り組んでみたい人におすすめです。一部の機能は制限されますが、無料版を配信しているサービスもあります。

Amper Music

出典:Amper Music

Amper Musicでは音楽の知識が全くない人でも、楽曲スタイル、楽曲の雰囲気、楽曲の長さの3つを選択するだけで一つの曲が完成します。また、作成された楽曲はフリーで使用することができることも大きなメリットです。ここまでが無料版でできることです。

有料のPro版では、編曲をする機能や曲中で使用する楽器の指定もできるようになり、より本格的にAI自動作曲を活用できます。

▼サイトはこちら

AIVA

出典:AIVA

AIVAが作曲した音楽は、NVIDIAのカンファレンスやボーダフォンのコマーシャル、ゲームの挿入歌などに使われているほか、2019年にはアントニン・ドヴォルザークによる未完の遺作の残りを作曲して話題になりました。非営利目的であれば作曲したものを使用することができます。こちらも無料版もありますが、有料版の方がより専門的な機能を使えるようになります。

▼サイトはこちら

Ecrett Music

出典:Ecrett Music

Ecrett Musicでは、シーンやムード、ジャンル、曲の長さを選択するだけで、AIが数秒で楽曲を自動生成します。現在では、5000万通り以上の作曲が可能です。無料版もありますが、有料版は月額8ドルで音楽の商用利用をすることができるようになります。

▼サイトはこちら

Amadeus Code

出典:Amadeus Code

Amadeus Codeはパソコンでもスマートフォンでも使うことができます。最大の特徴はAIが学習するコードが毎日更新されることです。そのため、常に新しい曲と出会うことができます。ビートのパターンを指定し、ベースとなる楽曲の選択を行うだけでAIが自動でメロディを作曲してくれます。

▼パソコン用サイトはこちら

▼スマートフォン用ダウンロードはこちらから

Brain.fm

出典:Brain.fm

Brain.fmは、科学者、ミュージシャン、エンジニアからなるチームにより開発された、様々な場面に応じて脳の働きを高める効果を持つ音楽を生成するための作曲サイトです。オリジナル音楽をその場で作成するのではなく、仕事、リラックス、および睡眠などの日常活動をサポートするために機能的な音楽を提供しています。

▼サイトはこちら

AIが作った曲に著作権はあるのか?

AI作曲サイトを紹介してきましたが、これらのサービスを利用して作られた楽曲には、著作権はあるのでしょうか?

著作権で保護されるためには「思想又は感情を創作的に表現」する必要があります。しかし、AIに創作指示をするだけでは、創作物に人間の思想や感情が反映されているとは言えません。

そのため、現在、日本では著作物と認められるためにはあくまで人間の関与が必要で、人間が関与して創作したものだけが著作物になるとされています。そのため、AIが作曲したものに著作権はあたえられていません。

▶AIの法律上の注意点は?|責任は誰がとるのか・著作権はあるのか>>

これからの音楽業界とAI

AIを活用して作曲する場合、音楽の専門知識がなくてもAIが様々な音楽を自動で学習し、短時間で作曲することができます。AIは何万通りとあるデータを解析しているので、曲のコンセプトや曲調を指示すれば、AIがその条件に合わせた曲を手軽に作成することが出来ます。

しかし、デメリットもあります。
それは、AIが学習したデータの元の作曲家をまねた曲が出来るので、独自性がある曲はできないということや、音楽の知見を持った人から見ると、AIによる自動作曲はスケールとコードがマッチしていない場合があるということです。

作曲は、音楽理論のような専門知識だけではなく、作曲家の感性を頼りに作成することもあります。そのため、AIが自動作曲した後、経験を積んでいる人間の手のより細かく修正していけば、短時間で高クオリティの曲を作成する事ができます。

このように、今後は人間の能力とAIの能力を掛け合わせた作業が重要になっていくでしょう。

まとめ

本記事ではAIによる作曲について、仕組みや自動作曲ソフトなどを紹介しました。AIを活用することによって、人間が表現、創造できる幅が広がってきていることをお分かりいただけたのではないかと思います。

音楽業界でも作曲や作詞などの面で、表現の幅を広げるためにAIを活用してみてはいかがでしょうか。

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