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2020.03.17

日系ITメーカー御三家のAIに関する最新の取り組み

最終更新日:

AIに積極的なIT企業といば、どんな企業を思い浮かべるでしょうか。

アメリカのGoogleをはじめとする「GAFA」や中国の百度など「BAT」を思いつく人は多いかと思います。

しかし今回注目したいのは、日系大手IT企業のAI事情です。

例えば、NEC・富士通・日立という日系ITメーカー”御三家”は独自のAI技術を開発し企業が抱える経営課題を解決するソリューションを提供しています。

今回は、ITメーカー御三家企業(グループ企業含む)のAI分野における取り組みの最新情報をご紹介します。

ITメーカー御三家の基礎情報

ITメーカー御三家とはNEC、富士通、日立製作所の3つの企業の総称です。

”メーカー”と名がついているいるのは、もともと通信機器やパソコンなどハードウェアを製造していたからですが、今ではハードウェアだけでなくシステム開発やITコンサルティング事業など幅広いITサービスを手掛けていることからIT企業と分類できます。

NEC(正式名称:日本電気株式会社)

引用:https://www.thestatesman.com/

NECは東京都港区三田に本社を置き住友財閥御三家の一角をなすグローバルIT企業です。

1889年に米ウェスタン・エレクトリック社との合弁会社という形で日本初の外資系企業として創業しました。

通信機器や電子機器など数々のハードウェアから始まり、生体認証や画像認識を生かしたAIシステム、サイバーセキュリティシステムに強みを持っている企業です。それ以外にも人工衛星や海底ケーブルなども手掛けています。

世界各国において海底から宇宙まで幅広く事業を展開しているのが特徴です。

https://jpn.nec.com/

富士通

引用:https://www.fujitsu.com/jp/

富士通は川崎市に本店を置く大手ITベンダーです。

1935年に富士電機製造株式会社(現 富士電機株式会社)から通信機部門が分離し富士通信機製造株式会社として誕生しました。

現在ではパソコンや携帯電話を製造するほか、通信システムや情報処理システム、電子デバイスの製造・販売まで幅広い事業を手掛けています。

公共インフラを支えるシステムから企業の通信ネットワークまで社会のさまざまな部分で貢献しているのが特徴だと言えます。

日立製作所

引用:https://www.hitachi-solutions.co.jp/katsubun/case11/

日立製作所は日立グループの中核をなす大手総合電機メーカーです。

茨城県日立市の銅と硫化鉄鉱を産出する久原鉱業所日立鉱山付属の修理工場が起源となったことから、日立の名が付いています。

多くのグループ企業を有し、ハードウェアから始まりソフトウェアや情報機器、システムなど幅広い事業を手掛けています。

ちなみに、本拠地のある日立市では都市名の「日立」と区別するために「日製(にっせい)」と呼ばれることが多いそうです。

世界でのAI関連特許数では上位に

国内におけるAI関連特許の取得数は年々増加しています。

特に2019年度は、世界でのAI関連特許数でNECが4位、富士通が5位と上位にランキング入りしています。

日本のAIは世界から遅れていると言われることも多いのは事実ですが、上位に日本企業がランキング入りしているのは日本のAIにとって大きな進歩であると言えます。

国内外のAI関連特許に関する記事はこちら▼

提供するAIサービス

【NEC】NEC the WISE

引用:https://jpn.nec.com/

NECは社会が抱える課題を解決する手段としてNEC the WISEというブランドでAI技術群を提供しています。

リアルの世界をAIを生かして可視データとして取り込みます。そして、そのデータをAIで分析し課題を明確化した上で、AIを生かしたソリューションを提供します。

社会課題に対して一つの汎用的なAIで解決を目指すのではなく、世界でもNo.1、Only1のあらゆるAI技術を組み合わせて解決に導きます。

引用:https://jpn.nec.com/

Bio-IDiom(バイオイディオム)

引用:https://jpn.nec.com/

また、NECは生体認証(バイトメトリックス)の技術力の高さにも定評があり、Bio-IDiomというブランドでサービスを提供しています。顔認証や指紋認証、虹彩認証など人体のあらゆる部分に関する認証技術を持ち、企業の業務効率化やセキュリティの向上、設備の利便性向上に貢献しています。

例えば、成田空港の出国ゲートにはNECの顔認証技術が活用されており、出国手続きが自動化されたことで手続きにかかる時間を大幅に短縮することができました。

Bio-IDiomは世界約70の国と地域に1000システム以上もの導入実績を持っています。

NECは社内に顔認証による自動決済コンビニを設置

引用:https://jpn.nec.com/press/201912/20191223_02.html

NECは入店と決済に顔認証を活用した社内コンビニを設置しました。

入店の際にカメラで社員の顔を認証し、決済時には顔認証か社員証で給与から天引きの形で精算します。お昼時に課題たっだ社内コンビニの混雑が解消したことで社内環境の改善につながったそうです。

また、店舗スタッフの業務負担を軽減するために、商品の発注を天候や売れ行き状況からAIで自動化しています。

【富士通】FUJITSU Human Centric AI Zinrai

引用:https://www.fujitsu.com/jp/

「AI Zinrai」は富士通が提供するAI技術群の総称です。

「人をサポートし、人とともに成長していくAI」を目指していることから「Human Centric」の名前が付いています。

センシング技術を用いてリアルの社会からあらゆるデータを取得し、画像処理や音声認識、自然言語処理といった技術で知識化します。そして、そのようにして得られた知識を基に人間がリアルの社会に対して課題解決に取り組んでいくサイクルを目指しています。

【日立】Hitachi AI Technology/H

引用:https://www.hitachi.co.jp/

顧客のデータを分析し適切なソリューションを提供するためのAIです。

幅広い目的に対応可能で、データを分析して100万個を超える仮説を自動で生成。重要な要因を選出し、人が予め設定したオプションから最適な選択を行います。

分野別AIの最新動向

画像認識

NEC

NECが手掛ける顔認証AIエンジン「NeoFace」は高い精度で個人の顔を認証できるのが特徴で、成田空港の出国ゲートにも活用されています。クラウド型とエッジ型の両方に適用可能です。

また、NECは画像認識サービス「GAZIRU」を提供しています。スマートフォンなどのエッジ端末のカメラで様々な画像を高い精度で分類できます。定型物から否定形物まで幅広く画像認識が可能です。絵画や植物など名前のわからないものをスマートフォンで撮影して検索したり、SNS上に使われる画像を分析したマーケティングなどに応用することができます。

富士通

富士通も画像認識の分野で幅広いソリューションを手掛けています。

静止画像や映像を問わず、物体検知や異常検知、人の行動分析など企業が抱える課題解決に向けてあらゆるサービスをカバーしているのが特徴です。

都市のセキュリティ向上によるスマート都市監視や建造物の劣化状況把握などに貢献しています。

また、手書き文字を自動で認識するOCRも手掛けており、配送伝票のデータ化の自動化などに活用されています。

日立製作所

日立は保守点検や異常検知の業務を効率化するために、ディープラーニング を生かした画像認識ソリューションを提供しています。

従来、熟練労働者や専門家に頼っていた業務をAIで学習し、高い精度で再現することで人手不足の解決につながります。また、危険作業のリスク低下にもつながるため働き方改革にも貢献するのではないでしょうか。

音声認識

NEC

NECは高い技術力を生かした音声認識ソリューションを手掛けています。

NECは音声認識技術を生かし、人の声から話者を特定する「声認証」を開発しています。

話す内容や言語に関わらずスマホや電話などあらゆる端末で利用できるのが特徴です。

電話でのお問い合わせに対し自動で顧客を特定できるなど業務効率化やオレオレ詐欺防止に貢献しそうです。

また、耐騒音音声認識「VoiceDo」は騒音の多い環境でも高精度な音声認識が可能な技術です。工場などの現場での点検・検査業務において、検査結果を音声で自動入力するといった形で業務効率化を実現することができます。

富士通

富士通は音声認識技術を生かして、業務効率化につながるサービスを提供しています。

例えば、「FUJITSU AI Zinrai TalkVisible」は音声の文字起こしを自動化することができます。今まで人手に頼っていた会議での議事録作成や講演録の作成をAIで自動化することで、業務の効率化・省人化に繋がります。特に、複数の話者も自動で識別できるほか、周辺ノイズを除去したり容易に内容を編集できるのが特徴です。

また、「FUJITSU AI Zinrai Contact Center Knowledge Assistant」はコールセンター 業務の効率化をサポートするソリューションです。

会話内容を自動でテキスト化し適切な回答を表示することでお問い合わせによる顧客満足度の向上に役立つのではないでしょうか。

日立製作所

日立も音声認識技術による業務効率化サービスを手掛けています。

「音声デジタルソリューション」はコールセンターなどにおける顧客の声などのデータを、業務データと組み合わせて活用し業務課題解決をサポートするソリューションです。業務効率化だけでなく顧客の声を分析し、見えない課題を把握した上でサービス向上につなげることができます。

また、「デジタル対話 音声書き起こし支援サービス」は音声データを高い精度でデータ化することで、記録作業の効率化を実現します。

自然言語処理

NEC

NECは自然言語処理において、テキスト含意認識技術という独自のコア技術を生かしたサービスを展開しています。同じ意味で異なる表現で記載された内容を正しく認識できるのが特徴です。顧客からお問い合わせ内容を分析し見えないニーズを把握したり、自由記述のアンケートの自動集計、社内文書の自動精査が可能になります。

また、音声認識技術と組み合わせた「多言語音声翻訳サービス」は11の言語に対応し、スマートフォンなどのデバイスを使って高精度な翻訳ができるのが特徴です。国籍の壁を超えたコミュニケーションを実現するのではないでしょうか。

富士通

富士通のZinraiシリーズでも自然言語処理を用いたサービスが展開されています。

プロレベルの翻訳精度を誇る文書翻訳や文書から関連した内容を検索できる意味検索、チャットボット、要約など幅広いソリューションを提供しているのが特徴です。

業務の中で発生するあらゆる課題の解決に貢献するのではないでしょうか。

日立製作所

日立は自然言語処理の分野ではメディアに寄せられた声の可視化し分析結果を活用するサービスを手掛けています。新製品やプレスリリースの発表に際して、世間からの声をいち早く集計しフィードバックできるようになるのがメリットです。

時間がかかっていたレポート作成を効率化できるため業務効率化につながるのではないでしょうか。

予測

NEC

NECはAIを生かした需給最適化プラットフォームを提供しています。多種多様なデータをAIが学習し気象条件や取引実績なども加味することで、高い精度で商品の需要を予測することができるので在庫最適化や発注業務の効率化を実現できます。

店舗にとって無駄の削減というメリットがあるほか、国内で深刻化する食品ロス問題の解決にも貢献するのではないでしょうか。

富士通

富士通は「FUJITSU Business Application Operational Data Management & Analytics 需要予測ソリューション(ODMA需要予測ソリューション)」を開発し、量販業の発注を効率化しています。

量販業の現場ではパートタイム従業員が多く発注に不慣れなため、在庫余りや在庫不足が頻繁に発生します。そこでAIを生かして正確に需要を予測し、それに応じて適切な量を発注できるようになるので、在庫の無駄を削減することができます。

従来の自動発注システムとも連携し、変動の大きい商品にも適応できるのが特徴です。

日立製作所

日立は店舗が抱える廃棄ロスや転売差損といった課題を解決するために、AIを生かした需要予測サービスを手掛けています。AIを生かした精度の高い需要予測によって発注業務を効率化し、店舗にとって最適な在庫量を維持することができます。

予測が難しい新商品であっても類似商品から需要を予測することもできるのが特徴です。

AIの分野では違いがない!?

上記のように、NECの生体認証技術を除いて3社とも提供しているAIソリューションや技術に大きな違いがあるわけではありません。もちろん、他の分野ではNECは海底ケーブルや人工衛星、日立は鉄道など独自の事業を持っています。

3社とも画像認識や音声認識、自然言語処理などあらゆる分野で高い技術力を持ち、業務効率化やデジタルトランスフォーメーションに向けたソリューションを提供しています。

そのため、競争を勝ち抜いていくためには営業力やブランド力など技術力以外の面で差別化を図る必要があるのではないでしょうか。

グローバルな舞台でも活躍

NECは世界各地でAIなどの技術を生かした都市のスマート化を促進

NECはグローバルな舞台でAIなどの最新技術を生かした都市のスマート化を目指す「NEC Safer Cities」に取り組んでいます。

例えば、NECはポルトガルの首都リスボン市のスマートシティ化を目指して、「リスボン・インテリジェント・マネジメント・プラットフォーム」を開発し導入しました。AIやIoT技術を生かして街中のデータを収集し分析することで、50万人の市民のQOL(Quality of Life:生活の質)の向上を実現しました。

また、NECは自社の生体認証技術を生かして発展途上国における幼児の予防接種率向上を目指すことを発表しました。2020年前半にバングラデシュとタンザニアで実証実験を実施するそうです。

富士通はカナダにAI新会社を設立

2018年11月、富士通はカナダのバンクーバーにAIビジネスを統括する新会社「FUJITSU Intelligence Technology」を設立しました。AI開発が活発な北米の地においてAIビジネスを強化していくことが狙いです。

カナダでは政府が最先端IT技術に対する支援を積極的に行なっているほか、周囲にはAI開発でトップのトロント大学といった研究機関、スタートアップ企業が多いため人材確保の面でメリットがあります。

現地の人材を採用するなどして規模の拡大を目指していくそうです。

AI人材育成への取り組みも

学生から社会人までAI人材を輩出!NECアカデミー for AI

引用:https://jpn.nec.com/nec-academy/

NECはSociety5.0を実現するために、AIを生かした課題解決ができる人材育成に取り組んでいます。

AIに関する幅広い知識を体系的に学習できるだけでなく、“学び”と”実践”の場を通してAIを生かして社会課題を解決するプロフェッショナルな人材を目指すことができます。

また、メンターとの面談や受講者同士のコミュニティなども充実しています。

AI人材としての能力を短期間で習得!データ活用プロフェッショナル育成研修(富士通総研)

引用:https://www.fujitsu.com/jp/group/fri/businesstopics/bigdata/services/ai-training/

富士通グループの富士通総研が取り組むAI人材育成です。

AIに取り組みたいが人材が不足しているという企業課題に対して、求められるAI人材育成をサポートします。

AIに取り組むにあたって何をすればいいかわからないという課題からデータ分析スキルを持つ人材確保まであらゆるニーズに対応していますので、これからAIに注力していきたい企業の方にはおすすめです。

新入社員向けに最新のAI動向を提供!日立アカデミー

引用:https://www.hitachi-ac.co.jp/

日立グループの株式会社日立アカデミーは新入社員向けにAIに関する教育を行なっています。AI関連の最新動向などAI人材として必要な知識を体系的に教育し、次世代を担う人材育成をサポートします。

まとめ

最先端のAI技術を保有し優れたITソリューションを提供するIT御三家企業。AIを生かした企業の課題解決だけでなく社内の労働環境改善、AI人材の育成まで幅広いAI関連活動に取り組んでいます。

また、これらの企業は業界のリーディングカンパニーや政府などへのサービス導入が多いのも特徴です。社会に対する強い影響力やネットワークを生かし、国内外を問わずAIによるデジタルトランスフォーメーションに今後も貢献するのではないでしょうか。

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