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2021.02.10

AIの基礎からAI活用まで『漫画』で解説! -連載漫画「教養知識としてのAI」最終回【第3回 人工知能学会誌コラボ】

最終更新日:

人工知能学会が刊行する学会誌『人工知能』2021年1月号が、1月5日に発刊されました。

『人工知能』は編集委員がテーマを決め、AIに関連する有識者が記事を持ち寄って掲載している学会誌で、2ヶ月に1回発行されます。私たちに身近な分野や話題のAI研究などが扱われていて、AIの現状の課題や最新のAI情報を得ることができる、30年以上の歴史がある学会誌です。AINOWでは各号の特集内容を、研究者の方々へのインタビューを通して紹介しています。

前回の学会誌紹介記事はこちらから▼

今回の学会誌では、これまで8回に渡って連載されてきた漫画「教養知識としてのAI」が最終回を迎えました。

論文ばかりが掲載されているイメージの学会誌ですが、『人工知能』では分かりやすくAIを伝える取り組みとして2019年5月号から漫画を連載していました。

最終回のタイトルは「人工知能学会とは」です。

そこで今回のインタビューは、漫画を担当された櫻井翔氏、原案を担当された宮本道人氏にAI技術をテーマとした漫画を作成する上での狙いや苦労、そして最終回に込める思いを伺いました。

 櫻井翔氏 プロフィール

2014年東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了.同大学大学院情報理工学系研究科特任研究員,首都大学東京システムデザイン学部特任助教を経て,2016年電気通信大学大学院情報理工学研究科情報学専攻特任助教(現職).主な研究分野はHCI,VR,認知心理学.五感情報技術と人間の情報処理メカニズムを利用して身体性を拡張するメディア技術の研究に従事.博士(工学).国内外の学会にて,マンガ家・イラストレータとしても活動中.

宮本道人氏 プロフィール

1989年生。科学文化作家、応用文学者。筑波大学システム情報系研究員、株式会社ゼロアイデア代表取締役、博士(理学、東京大学)。フィクションと科学技術の新しい関係を築くべく、研究・評論・創作。編著『プレイヤーはどこへ行くのか』(南雲堂)、対談連載「VRメディア評論」(日本バーチャルリアリティ学会誌)など。主な寄稿先にユリイカ、現代思想、実験医学などがある。原作を担当した短編漫画「Her Tastes」は昨年、国立台湾美術館に招待展示された。Twitter:@dohjinia

漫画を描くことになったきっかけ

ーー研究者であるお2人がこの漫画制作に携われたきっかけは何でしょうか。

櫻井氏:もともとAIを詳しく伝えるためのツールとして、人工知能学会に「What’s AI?」というサイトがあったのですが、最近では更新がされていなかったこと、かつ新しくわかりやすくする必要があるということで、漫画をつくろうという話が学会で上がっていました。
そのとき学会委員であった私が先端研究を漫画で紹介するアウトリーチ活動をしているのを知っていてくださった方がいて、お話をいただきました。私の研究自体AIが専門ではないので、AIに詳しい方で原案を書いてくださるならということで参加することになりました。

宮本氏:僕は修士課程の頃から大学院での研究とは別に執筆業をしていて、漫画作品に関わった経験も多少あったので、それを知っている先生に紹介頂いたのがきっかけです。連載第4回から原案担当として参加し、それまでの設定を引き継ぎながら、シナリオを執筆させて頂きました。

引用:第6回「音声対話・画像認識AI のやさしい話」5ページ目
LINE株式会社への取材風景

「高校生が読んでもわかるような」漫画を目指して

この漫画では、高校生の男の子と女の子、そして1人の教授を中心に毎回ストーリーが繰り広げられています。親しみやすいキャラクター、分かりやすい展開になっていて、AIについて知らない人でも読みやすい内容に工夫されています。

ーーどのような方に読まれることを狙いとしていますか。

櫻井氏:この企画が立ち上がった時、企画グループで最初に目指していたのは​「高校生が読んでもわかるような」漫画にする​ということです。AIに初めて触れる人がわかるようにというのを目指していました。私自身、漫画を描いていてもまだ理解できていないところが多くあります。その思いを共有していただき、わからない人が少しずつわかるようになってくれたら嬉しいなと思っています。

ーー高校生からAIを知って関わっていくことは大切なのでしょうか。

櫻井氏:高校生が進学するときにいきなり「AIがやりたい」と言って大学を目指す人は、決して多くはないと思いますし、逆に興味がある人であればもう自分でたくさん調べていると思うんです。でも、これからの時代にAIについての知識を持つことに損はないので、興味の取っ掛かりとしてこの漫画を活用してほしいです。

一方で、高校生じゃなくても、例えば大学に進学してから興味を持ったり、全く別の分野の研究をしていてAIの分野の研究に携わることになる人もいるかもしれません。あるいは研究は関係なくてもAIについて興味がある、知識を得たい、という人もいるでしょう。つまり、誰もがAIの初心者になりうるわけです。しかし、そこでいざAIについて学ぼうとするとAIに関する関連書籍やサイトは膨大にあるわけで、まずは何を参考にすれば良いのか迷われることもあるのではないでしょうか。

正直、AIの研究に限らず新しい分野について知ろうとした時にどこから着手すべきかわからないという問題は発生します。そのため、ここではまずAIの研究という枠において、誰もが気軽に読めてかつわかりやすいAI入門のための情報源を実現したいという考えは執筆中ずっと頭の中にありました。

宮本氏:僕は中高生向けのワークショップをすることがあるのですが、そこで未来を想像して下さいというと、話がAIに集中することがよくあります。ただ、みんな具体的な面では既存の技術の自動化くらいのことしか想像できていない。
気候変動や価値観の変化など、未来にはAI以外にも考慮すべき要因はたくさんあって、そのなかでAIが絡んでくれば面白いのですが、解像度が低いままAIの未来を話そうとする人が多いんです。そういう人に「企業がAIをどのように活用しているか想像してみてください、あなたが興味ある業界ではどのようにAIが関わってきますか」という質問をすると、途端に答えられなくなってしまいます。
AIに関心はあるのに、AI脅威論やAIで豊かになること、バーチャルなキャラクターやゲームの話くらいしか話せない。この解像度の差を埋めるためのツールが必要だなと思っていたんです。なので、この漫画でそういうギャップを解消したいなと思って執筆してきました。

ーー最近では漫画やテレビ、映画でAIが取り上げられることが多いですが、具体的に「機械学習」や「ディープラーニング」というテーマで取り上げられることは少ないですよね。なのでここまで専門性のある漫画というのは今までにないかもしれませんね。

櫻井氏:そうですね。人のイメージではやはり、ヒューマノイドロボットやコンピューターそのものだったり実態のないAIが先行してしまいがちですよね。この漫画はそうしたイメージを取り払って、AIが具体的にどのような形で使われているのかを知る機会となってくれたらと思ってます。

AIというカタチないものの認識と表現の難しさ

ーーAIが実際にどのように使われているのかを具体的に考えることが重要ということですね。漫画の第3回以降では、AIを活用している企業にインタビューして具体的なAI活用にフォーカスが当てられていました。実践的内容をメインに扱った狙いをお教えください。

宮本氏:すべての回で実際に自分たち自身が取材をしているのですが、インタビュー時には漫画の主人公の高校生になった気持ちになって、そのくらいの年齢だったらどういうことを聞くかなと想像しながら質問をしていました。
特に高校生にとってはAIを「技術」として見る面は理解しづらいかなと思ったので、そういう部分は意識して企業に詳しく聞きました。フィクションの中に登場するAIは、技術というより人型ロボットの形をしている生命のように描かれることが多いので、そういうイメージは理解してもらえやすいと思うのですが、馴染みのない裏方的な技術は頭の中でイメージするのも難しいと思います。
僕自身にとってもそこはハードルが高いので、取材時間も長くなり、4時間くらい取材を続けさせて頂いたこともありました。自分がその場で理解できなかった部分を後から何とかすることはできないので、限られた取材時間内にどこまでストーリーを思い浮かべられるかが問われてきて、試験みたいな緊張感がありましたね(笑)

引用:第8回「レシピサービスとAI」1ページ目 リモート取材の様子

ーーAIを説明するときにロボットや人間の脳のモチーフは使いやすいように思いますが、一方で誤った認識を生んでしまうのでしょうか。

宮本氏:誤った認識を生んでいるという課題があること自体も研究対象としてしまうくらいの視点の持ち方が大切だと思います。
むしろ、HAIやHCIなど、「人」と「エージェントやコンピュータ」とのインタラクションを対象とした研究も含んでいるのがAI分野なので、そういう認識も大事です。この連載の中でも、LINEのスピーカーのキャラクター性の話(第6回)が出てきますよね。
ですが、AI分野の知識があいまいの人にありがちなのは、『人から独立したロボットのイメージ』もしくは『ディープラーニングなどの理論のイメージ』のどちらかしか持っていない、というパターンです。どちらかのイメージしかなく、その間にある様々な研究が抜けてしまっているために、実際のAI分野の広がりと乖離しているように感じます

櫻井氏:たしかにイメージが先行していると思います。HAIとかのエージェント研究を含め、AIの研究は「知識とは何か」「人とは何か」を明らかにしていく研究でもあります。しかし、AIにそういうイメージがないのはなぜだろうという疑問はずっとあります。

ーーAI技術という難しいテーマをポップ、分かりやすく描く上で難しかったことはなんでしょうか。

宮本氏:正確性と速度を求められるところが大変でした。僕は文字でシナリオを書くわけですが、そこから漫画を完成させるまでには様々な工程があって、そこを詰まらせてはいけないので、登場する科学技術を理解してすぐに原案を執筆しなくてはならないんです。
一方で、僕は自分で具体的なイラストを描くわけではありません。取材の過程で頂いたスライドや写真を使ってざっくりとはイメージを補足していましたが、ここから先を担当する櫻井さんの方がもっとご苦労されていたのではないでしょうか? 論文の図を描く感じで毎回取り組まなくてはいけないとおっしゃっていましたね(笑)

櫻井氏:そうですね(笑)まず宮本さんや企業の方に説明していただいたものを自分で噛み砕くのに時間がかかって、次に調べながら描いたものを一度企業の方にみていただいて、訂正をいただいて、、、ということを繰り返していました。
HAIの話だとしたら、人がどんな認知をするのかなどの概念的な話や多層パーセプトロン(第5回)などの理論といった実物のないものをイラストにするのは難しかったです。

宮本氏:それから、AIの知識以外も漫画の中で大切になってくることがあったのも大変でした。例えば、マテリアルズインフォマティクス(第4回)の話だと電池やトランジスタの知識が紹介されたりします。こういう話題は、漫画にする時に突然言葉だけ出てきても分かりにくくなってしまいます。

説明してくださった企業の方々にとっては基礎的なことだと思うのですが、それを高校生でも分かる言葉に直しつつ、流れの中で間違えず伝えるのには、幅広い知識と柔軟な言い換えが必要で、教科書を作っているようでした。

引用:第4回「マテリアルズインフォマティクス」5ページ目
元素表や電気の法則、トランジスタの図解なども櫻井氏が分かりやすく描画している

最終回「人工知能学会とは」:学会と研究の役割とは?

「教養知識としてのAI」は現在Web上でオープンアクセスになっており第1回〜第9回(最終回)まで全て閲覧できます。▼

『人工知能』2021年1月号にも掲載されている最終回では、人工知能学会 会長の野田 五十樹氏へのインタビュー形式で描かれており、学会の存在意義や今後どのような役割を担っているのかを分かりやすく説明しています。

最後に、お2人が最終回に込められた思いを伺いました。

宮本氏:学会を最終回にすることを提案したのは僕なのですが、その出発点には、僕自身を含む若手研究者から、そもそも学会ってなんのためにあるんだろうという疑問が出てくるような状況を改善したいという思いがありました。
そのためには、外からは知ることが難しい運営方法などにスポットを当てて、「学会は(これまで漫画の中で紹介されてきたような)企業とは何が違うんだろう」というメタ的な目線でみることも大事かなと。
また、最後にふたたび広い視点でAI分野を俯瞰することで、それまでの一つ一つの話の価値もあらためて理解してもらえるのではないかと思い、こういう話題をチョイスしました。

櫻井氏:私自身、学会との関わり方がわからなくなる時もあったりします。ですが研究成果の発表や、研究に関心のある人がつながる機会の設定など、学会は重要な役割を果たしています。この漫画を通して、学会が何をやってるのかを理解していただければ嬉しいです。
そもそも研究が何かがわからない人もいると思いますし、ちょっと専門が違うだけでも他の研究者が何をやっているかもわからないということは多々あります。なので、そういったことを知る手がかりにもなれば嬉しいですね。

人工知能学会 学会誌 『人工知能』 2021年1月号

2021年1月号では今回紹介した「教養知識としてのAI」の他に特集として、

  • 「Affective computing」(人の感情を表情や声色からAIが識別する技術)
  • 博士論文に見る研究テーマの動向(研究分野別に紹介) 
  • 新たなレクチャーシリーズ「AI哲学マップ」

などが取り上げられています。

「AI哲学マップ」はAIマップβに新たに追加される予定の俯瞰図であり、レクチャーシリーズではAI 研究者と哲学者の交互による リレー形式の連載が計画されています。「AI研究におけるさまざまなテーマ」と「これまでAI研究の発展を支えてきた哲学」の関連性を1つのマップ上で把握できるように作成される予定です。

『人工知能』編集委員長、そして「AI哲学マップ」の制作を推進している清田氏に今月号に込めた思いをコメントしていただきました。

清田氏:野田会長による漫画の解説記事「人工知能学会とは」でも言及されているのですが、いま、学会の在り方は大きな変化を求められています。コロナ禍により、「学会の場での思いも寄らない出会いが新たな共同研究につながる」といったことは起きづらくなっています。

一方で、この状況は、研究者ひとりひとりが「これからはどんな研究に取り組むべきか」について思索を深め、これから10年、20年先に進む方向を腰を据えて考える絶好の機会でもあります。新たなレクチャーシリーズ「AI哲学マップ」は、学会の役割として「一人でも多くの方に考えるヒントを提供できないか」というところから、企画がスタートしました。企画の趣旨についての記事が公開されていますので、ぜひお読みください。
特集「Affective Computing」は、知能の重要な機能の一つである「感情」のコンピューターによる処理・実現を目標とした研究分野について、7本の記事を掲載しました。もう一本の特集「人工知能分野における博士論文」は、これから活躍が期待される博士学位取得の23名の方々から寄稿いただきました。こちらもぜひお目通しください。

人工知能学会の個人会員であればこちらから無料で閲覧可能です。▼(非会員でも一部無料で閲覧できます。)

ご購入はこちらから▼(Amazonページに飛びます)

おわりに

中高生から見ると、AIという分野は遠い存在ではないかもしれません。

普通科の高校生であれば、専門性を身につける教育課程ではないためAI技術に授業で触れることはまずないでしょう。

一方で、近年では映画やテレビ番組、家電の宣伝等でAIが扱われることは多くあります。そうした効果で、AIに詳しくない人には「イメージ上でのAI」が刷り込まれてきているように思います。例えば、「人よりも頭がいいもの」「人の仕事を奪うもの」「Pepper君」などです。

しかしそれはAIの本質ではありません。背景にはさまざまな理論があり、さまざまな研究がされています。そして、その技術を実際に使っていくための検討や実証実験では泥臭い努力や試行錯誤があります。

この連載漫画ではAI技術からその活用までリアルに、そして分かりやすく描かれています。AIを専門的に伝えることに特化しながら簡単に読めるため、高校生などAIが初めての人におすすめの作品です。

こうした分かりやすいAIの入り口をきっかけにAIに関心を抱く若者が増えることで、今後のAI発展に貢献する人材となることが期待されます。

『人工知能』2021年1月号、ぜひ手に取ってお読みください。

「教養知識としてのAI」第1回〜第9回はこちら▼

過去の学会誌はこちら▼

人工知能学会に関して詳しくはこちら▼

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